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放浪編
見え透いた罠
「ここか……監獄の割には随分と無駄に豪勢な扉だな」
普通の鉄ではなく、ミスリルを混じ合わせた合金製の扉を前にしてレナは念のためにノックを行う。すると内側からラルフの声が返ってきた。
『入りたまえ』
「……失礼します」
律儀に挨拶を行う必要もあるのかと思いながらもレナは扉を開くと、中の部屋の方はレナの想像を超える程に豪勢な部屋である事が判明した。
「どうかしたかい?遠慮なく入りたまえ」
「……何だこの部屋?」
最初に部屋を見たレナは自分が貴族の屋敷にでも入り込んだのかと錯覚する程に所長質には豪華な美術品が並べられていた。壁際には恐らく金貨単位で取引される程の絵画が飾られ、部屋の隅には設置する必要があるのかと疑問を抱く程の見事に彫られた裸の所税の石像が置かれていた。天井に至っては光石が取り付けられたシャンデリアまで存在した。
(まるで成金が作り出したような部屋だな……叔母様の部屋と比べるとセンスが悪いな)
氷雨のギルドマスターを務めるマリアの部屋も豪勢な飾り物は多いが、彼女の場合は訪れる人間が気おくれしないように考えた間取りで設置しているが、ラルフの所長室はいかにも訪れる人間に自慢するように目立つ場所に美術品が設置されている。
「さあ、そこに座ってくれ。ここには君と僕しかいないから遠慮するな」
「……どうも」
ラルフは部屋の中央に置かれている椅子を指差し、何故かこの椅子だけは古ぼけて薄汚れた椅子であり、部屋の雰囲気とは合わなかった。あからさまに自分と相手の立場を理解させるように用意された薄汚い椅子を見てレナはラルフの度量が狭い事を感じ取りながらも座り込む。
レナが座ったのを確認するとラルフは自分だけ純金製の椅子から立ち上がり、机の引き出しから酒瓶を取り出すと、グラスを用意してレナに差し出す。
「まずは試験を突破した事を祝おうか。酒はイケる口かい?」
「いえ、あまり飲みません」
「そうか、なら安心したよ。僕も下戸でね……中身は果実と水を混ぜ合わせた飲料水さ」
グラスを受け取ったレナは臭いを嗅ぐと確かに酒の臭いは感じられず、何か盛られている可能性はあるがレナは「毒耐性」を身に着けているので大抵の毒物の免疫力を持っているので躊躇なく飲み込む。幸い、口の中に広がったのは葡萄と炭酸水を掛け合わせたような味が広がり、一気に飲み干す。
「いい飲みっぷりだね。大抵の囚人は差し出された物を素直に受け取らないんだが……君は器が大きいようだ」
「……それほどでも」
「さて、本題に入ろうか」
あっさりとレナがグラスの中身を飲んだ事にラルフは感心するが、すぐに表情を引き締めてレナと向かい合うように椅子に座る。そして開口一番にレナの正体を問いただす。
「君を呼び出した理由は当然理解していると思うが、一体何者なのか教えてもらおうか」
「……犯罪者と間違えられた善良な市民?」
「そういう冗談は嫌いだよ」
予想していたとはいえ、レナの返答を聞いてもラルフは信じるはずがなく、彼は看守が持ち込んできた資料に目を通す。
「……今日の間に送り込まれる囚人の資料の中には君の名前は載っていない。それどころか君は囚人服すら着用していない。こんな事は僕が監獄の所長を務めてから初めての事態だよ」
「だから言ってるでしょ、俺は囚人じゃないって……」
「いや、そんなはずはない。この監獄都市に送り込まれるのは死刑が確定された犯罪者だけだ」
ラルフは立ち上がると資料を机の上に叩きつけ、レナの元へ向かう。警護の兵士も部屋の中に入れずに堂々と近寄ってくるラルフにレナは疑問を抱くが、彼は気にした風もなくレナに顔を近づけて睨みつける。
「君はこの監獄が何処に存在するのか知っているかい?獣人国の領土内ではあるが、あまりにも辺境に存在して一般人の間では存在すら知られていない場所にある」
「へえ……初耳です」
「ふざけるのもたいがいにしろ!!この監獄都市の周囲は荒野で囲まれているが、その先にはさらに高度が1000メートルを超える岩山で取り囲まれている!!外界に繋がる通路は一つだけ、しかも獣人国の軍隊が厳重な警備を行っている。つまり、この監獄都市に犯罪者や兵士以外の人間が入り込めるはずがない!!」
「……そうなんですか」
自分の想像以上にとんでもない場所に送り込まれていた事を知ったレナは内心で驚き、こんな事ならば監獄都市に入ったというバルの昔話を真面目に聞いておくべきだったと後悔する。しかし、今はラルフから情報を引き出す事に集中し、敢えて彼を煽るように返事を行う。
「それで、所長は俺の何が知りたいんですか?」
「……随分と余裕じゃないか。言っておくが君が飲んだ物の中には遅効性の毒が混じっている。特に魔術師には効果的な毒薬をね」
「……何?」
予想通りにラルフが渡したグラスには毒が盛られていたようだが、実際の所はレナもラルフが二人分のグラスを用意したのに自分が飲まなかった事から毒薬が仕込まれているのだと確信していた。しかし、彼の語る「魔術師に効果的な毒薬」という言葉に違和感を抱く。
普通の鉄ではなく、ミスリルを混じ合わせた合金製の扉を前にしてレナは念のためにノックを行う。すると内側からラルフの声が返ってきた。
『入りたまえ』
「……失礼します」
律儀に挨拶を行う必要もあるのかと思いながらもレナは扉を開くと、中の部屋の方はレナの想像を超える程に豪勢な部屋である事が判明した。
「どうかしたかい?遠慮なく入りたまえ」
「……何だこの部屋?」
最初に部屋を見たレナは自分が貴族の屋敷にでも入り込んだのかと錯覚する程に所長質には豪華な美術品が並べられていた。壁際には恐らく金貨単位で取引される程の絵画が飾られ、部屋の隅には設置する必要があるのかと疑問を抱く程の見事に彫られた裸の所税の石像が置かれていた。天井に至っては光石が取り付けられたシャンデリアまで存在した。
(まるで成金が作り出したような部屋だな……叔母様の部屋と比べるとセンスが悪いな)
氷雨のギルドマスターを務めるマリアの部屋も豪勢な飾り物は多いが、彼女の場合は訪れる人間が気おくれしないように考えた間取りで設置しているが、ラルフの所長室はいかにも訪れる人間に自慢するように目立つ場所に美術品が設置されている。
「さあ、そこに座ってくれ。ここには君と僕しかいないから遠慮するな」
「……どうも」
ラルフは部屋の中央に置かれている椅子を指差し、何故かこの椅子だけは古ぼけて薄汚れた椅子であり、部屋の雰囲気とは合わなかった。あからさまに自分と相手の立場を理解させるように用意された薄汚い椅子を見てレナはラルフの度量が狭い事を感じ取りながらも座り込む。
レナが座ったのを確認するとラルフは自分だけ純金製の椅子から立ち上がり、机の引き出しから酒瓶を取り出すと、グラスを用意してレナに差し出す。
「まずは試験を突破した事を祝おうか。酒はイケる口かい?」
「いえ、あまり飲みません」
「そうか、なら安心したよ。僕も下戸でね……中身は果実と水を混ぜ合わせた飲料水さ」
グラスを受け取ったレナは臭いを嗅ぐと確かに酒の臭いは感じられず、何か盛られている可能性はあるがレナは「毒耐性」を身に着けているので大抵の毒物の免疫力を持っているので躊躇なく飲み込む。幸い、口の中に広がったのは葡萄と炭酸水を掛け合わせたような味が広がり、一気に飲み干す。
「いい飲みっぷりだね。大抵の囚人は差し出された物を素直に受け取らないんだが……君は器が大きいようだ」
「……それほどでも」
「さて、本題に入ろうか」
あっさりとレナがグラスの中身を飲んだ事にラルフは感心するが、すぐに表情を引き締めてレナと向かい合うように椅子に座る。そして開口一番にレナの正体を問いただす。
「君を呼び出した理由は当然理解していると思うが、一体何者なのか教えてもらおうか」
「……犯罪者と間違えられた善良な市民?」
「そういう冗談は嫌いだよ」
予想していたとはいえ、レナの返答を聞いてもラルフは信じるはずがなく、彼は看守が持ち込んできた資料に目を通す。
「……今日の間に送り込まれる囚人の資料の中には君の名前は載っていない。それどころか君は囚人服すら着用していない。こんな事は僕が監獄の所長を務めてから初めての事態だよ」
「だから言ってるでしょ、俺は囚人じゃないって……」
「いや、そんなはずはない。この監獄都市に送り込まれるのは死刑が確定された犯罪者だけだ」
ラルフは立ち上がると資料を机の上に叩きつけ、レナの元へ向かう。警護の兵士も部屋の中に入れずに堂々と近寄ってくるラルフにレナは疑問を抱くが、彼は気にした風もなくレナに顔を近づけて睨みつける。
「君はこの監獄が何処に存在するのか知っているかい?獣人国の領土内ではあるが、あまりにも辺境に存在して一般人の間では存在すら知られていない場所にある」
「へえ……初耳です」
「ふざけるのもたいがいにしろ!!この監獄都市の周囲は荒野で囲まれているが、その先にはさらに高度が1000メートルを超える岩山で取り囲まれている!!外界に繋がる通路は一つだけ、しかも獣人国の軍隊が厳重な警備を行っている。つまり、この監獄都市に犯罪者や兵士以外の人間が入り込めるはずがない!!」
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自分の想像以上にとんでもない場所に送り込まれていた事を知ったレナは内心で驚き、こんな事ならば監獄都市に入ったというバルの昔話を真面目に聞いておくべきだったと後悔する。しかし、今はラルフから情報を引き出す事に集中し、敢えて彼を煽るように返事を行う。
「それで、所長は俺の何が知りたいんですか?」
「……随分と余裕じゃないか。言っておくが君が飲んだ物の中には遅効性の毒が混じっている。特に魔術師には効果的な毒薬をね」
「……何?」
予想通りにラルフが渡したグラスには毒が盛られていたようだが、実際の所はレナもラルフが二人分のグラスを用意したのに自分が飲まなかった事から毒薬が仕込まれているのだと確信していた。しかし、彼の語る「魔術師に効果的な毒薬」という言葉に違和感を抱く。
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