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放浪編
作業区と闘技区
「……というか、魔法が使えないとか言ってたくせに普通に使えたな。毒耐性のスキルを身につけておいて良かった。苦労して覚えておいて良かった」
監獄所長のラルフは魔術師が魔法を使えなくなる毒薬をレナに仕込んだと言っていたが、今の所は毒の効果は全く感じられず、普通に魔法も扱えた。レナが深淵の森で暮らしていた時にアイリスの助言に従って微量の毒物を毎日身体に馴染ませ、毒物に対して抵抗力が芽生える「毒耐性」と呼ばれる技能スキルを身に着けたお陰と考えられた。
「さてと、脱出する前に少し探索してみるか。監獄なのに基本的に自由行動が認められているのはいいな」
最初にレナは囚人区の隣に存在する作業区に向かい、監獄の仕事場というのがどういう物なのか気にかかり、観察に向かう。だが、恐らくは区の境目と思われる場所には金網が設置されており、しかも乗り越えられないように有刺鉄線まで取り付けられていた。錬金術師の能力を使用すれば金網を壊して潜り抜ける事も出来なくもないが、流石に警備を行う兵士も多く、無暗に目立つ行動は出来ない。
「ここを超えれば作業区なのか……でも、出入口の方も厳重な警備が敷かれているな」
金網の出入口には巨人族の兵士が待機しており、作業区に入ろうとする人間を見張っていた。レナは話しかけてみるべきかと考えたとき、丁度一人の囚人が掲示板に張り出されていた紙を握りしめながら兵士の元へ駆けつけてきた。
「や、やべえ……寝過ごした!!おい、開けてくれ!!まだ作業時間中だろ!?」
「……いいだろう、入れ」
囚人が兵士に張り紙を差し出すと、巨人族の兵士は張り紙の内容を確認して頷き、出入口へ通す。差し出した張り紙は兵士が回収するらしく、そのまま無造作に懐に仕舞い込む。
(なるほど、作業区に入るには掲示板の張り紙を持ち込む必要があるのか)
張り紙を差し出せば簡単に入り込めると知ったレナは宿舎に戻って自分も適当な仕事を引き受けるべきかと考えたが、先に監獄の地形を把握するべきかと考え直し、作業区は後回しにして次の区画に向かう――
――しばらく歩いた後、遂にレナは自分が訪れていない最後の「闘技区」に到着する。こちらも作業区と同様に金網で隔離されてはいるが、自由に出入りは出来るらしく配備されている兵士達もレナが出入口を通過しても何も反応しなかった。そしてレナはこれまでに訪れた区画の中でも最も異様な光景を目の当たりにした。
「何だこれ……闘技場みたいだな?」
闘技区に到着して早々にレナが見たものは石畳で構成された試合場が複数設置され、鍛錬用と思われる器具が大量に存在し、大勢の囚人が身体を鍛えたり試合場で殴り合っていた。
「うらぁっ!!」
「負けるかっ!!」
「やっちまえ!!負けたらぶっ殺すぞ!!」
試合場では上半身が裸になった男達が拳だけで殴り合い、その様子を見て試合場の周囲で観戦している囚人達が騒ぎ出す。端の方では鍛錬器具を利用して身体を鍛える人間も多く、中には木製の武器を所持する物も居た。
「86、87、88……」
「ふんっ!!ふんっ!!」
「筋肉、筋肉!!」
石製のバーベルを持ち上げる巨人族、地道に木刀で素振りを行う獣人族、ボディービルダーのように筋肉を見せつけるように力を籠める小髭族の囚人を目にしてレナは頭を抑え、まるでスポーツジムに入り込んだような感覚に陥る。
(ここは囚人の鍛錬場なのか……でも、いくら何でもやり過ぎじゃないのか?)
鍛錬器具で身体を鍛えるだけならばともかく、試合場で殴り合う男達は本気で相手を殺す程の勢いで戦い、実際に試合場の傍の地面には放り出された状態の怪我人も多い。見回りを行う兵士達は彼等の行動を見ても何も反応せず、武器の所持が禁じられているにも関わらずに木刀を持つ獣人族の囚人を見ても咎めもしない。
(少し様子がおかしいな。どうしてあれほどになるまで殴り合っているんだ?ん、あれは……そういう事か)
試合場の傍には机が設置されており、そこには木造の籠がいくつも用意され、見張り役と思われる兵士の姿も存在した。籠の中には監獄都市の通貨が山盛りになっており、観戦している囚人達は試合場で戦う人間に賭け事を行っていた。
「おいボガード!!これで負けたらてめえにはもう二度と賭けないからな!!」
「ぐうっ……!!」
「ガルニ!!もしも負けたら俺が直々にぶっ殺してやる!!」
「うるせえっ!!」
観客の罵声を耳にしながら試合場で戦う囚人同士も必死に戦い、彼等も負けたら後がない事は理解しているのか何としても相手を倒そうとする。その様子を兵士は無言で見つめ、賭け事が行われているにも関わらずに何も言わない当たり、どうやら闘技区での囚人同士の賭け事は兵士も公認しているらしい。
(なるほど……ここで身体を鍛えたり、戦いや賭け事で囚人達もストレスを発散しているのか。だから闘技区と呼ばれているのか)
闘技区の名前の由来は文字通りに囚人同士が本気で戦える場所を意味しており、試合場では比喩ではなく命懸けで戦う囚人の姿を見てレナは冒険都市の闘技場の事を思い出し、とある囚人の存在が頭に浮かぶ。
監獄所長のラルフは魔術師が魔法を使えなくなる毒薬をレナに仕込んだと言っていたが、今の所は毒の効果は全く感じられず、普通に魔法も扱えた。レナが深淵の森で暮らしていた時にアイリスの助言に従って微量の毒物を毎日身体に馴染ませ、毒物に対して抵抗力が芽生える「毒耐性」と呼ばれる技能スキルを身に着けたお陰と考えられた。
「さてと、脱出する前に少し探索してみるか。監獄なのに基本的に自由行動が認められているのはいいな」
最初にレナは囚人区の隣に存在する作業区に向かい、監獄の仕事場というのがどういう物なのか気にかかり、観察に向かう。だが、恐らくは区の境目と思われる場所には金網が設置されており、しかも乗り越えられないように有刺鉄線まで取り付けられていた。錬金術師の能力を使用すれば金網を壊して潜り抜ける事も出来なくもないが、流石に警備を行う兵士も多く、無暗に目立つ行動は出来ない。
「ここを超えれば作業区なのか……でも、出入口の方も厳重な警備が敷かれているな」
金網の出入口には巨人族の兵士が待機しており、作業区に入ろうとする人間を見張っていた。レナは話しかけてみるべきかと考えたとき、丁度一人の囚人が掲示板に張り出されていた紙を握りしめながら兵士の元へ駆けつけてきた。
「や、やべえ……寝過ごした!!おい、開けてくれ!!まだ作業時間中だろ!?」
「……いいだろう、入れ」
囚人が兵士に張り紙を差し出すと、巨人族の兵士は張り紙の内容を確認して頷き、出入口へ通す。差し出した張り紙は兵士が回収するらしく、そのまま無造作に懐に仕舞い込む。
(なるほど、作業区に入るには掲示板の張り紙を持ち込む必要があるのか)
張り紙を差し出せば簡単に入り込めると知ったレナは宿舎に戻って自分も適当な仕事を引き受けるべきかと考えたが、先に監獄の地形を把握するべきかと考え直し、作業区は後回しにして次の区画に向かう――
――しばらく歩いた後、遂にレナは自分が訪れていない最後の「闘技区」に到着する。こちらも作業区と同様に金網で隔離されてはいるが、自由に出入りは出来るらしく配備されている兵士達もレナが出入口を通過しても何も反応しなかった。そしてレナはこれまでに訪れた区画の中でも最も異様な光景を目の当たりにした。
「何だこれ……闘技場みたいだな?」
闘技区に到着して早々にレナが見たものは石畳で構成された試合場が複数設置され、鍛錬用と思われる器具が大量に存在し、大勢の囚人が身体を鍛えたり試合場で殴り合っていた。
「うらぁっ!!」
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試合場では上半身が裸になった男達が拳だけで殴り合い、その様子を見て試合場の周囲で観戦している囚人達が騒ぎ出す。端の方では鍛錬器具を利用して身体を鍛える人間も多く、中には木製の武器を所持する物も居た。
「86、87、88……」
「ふんっ!!ふんっ!!」
「筋肉、筋肉!!」
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