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放浪編
看守長
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「何だ、やっぱり居るじゃないか……誰だ君は?」
「あ、えっと……」
扉を開いて現れたのは身長が180センチは超える美青年が現れ、一見は女性と間違える程の美しさを誇る。だが、何故か仮面で右半分の顔面を隠しており、この世界では比較的に珍しい黒色の髪をしていた。
(男の人……だよな、という事はパールさんが目当ての囚人か?でも、囚人服じゃないし……)
青年が身に着けている衣服は囚人服ではなく、紳士服を想像させるスーツを着込んでいた。更に囚人は武器の所持が禁止されているにも関わらずに青年は腰にレナが見覚えのある日本刀を装着しており、右耳には三日月の形をしたピアスを取り付けていた。
(囚人や兵士には見えないし、もしかして看守か?まさか、例の看守長じゃ……)
レナが黙り込んでいると青年は不思議そうな表情を浮かべ、部屋の様子を伺う。そして中にパールが存在しない事を確認して表情を一変させる。
「……ここで何をしている?この部屋はパールだけしか立ち寄る事しか許されていないはずだぞ」
「あの……」
「すぐに外に出るんだ。命令を聞かなければ……ここで切る」
青年は刀の柄に手を伸ばし、目つきを鋭くさせてレナに退出するように促す。青年の雰囲気を感じ取ってレナは逆らえば斬られると判断して素直に頷く。
(この人……かなり強いな)
これまでに幾人の武人と遭遇した事があるレナは青年が只物ではない事を悟り、両手を上げて部屋の外で出ると、自分の言葉に従った事に少しは安心したのか青年は柄から手を離す。
「よし、そこに立つんだ。まず、名前から教えて貰おうか」
「えっと……」
「どうした?名前ぐらい言えるだろう?」
名前を尋ねられたレナはどのように答えるべきか悩み、流石に本名は不味いので頭に思い浮かんだ適当な偽名を名乗る事にした。
「る、ルノです……ルノと言います」
「ルノ……?ふっ、あの伝説の初級破壊魔術師と同じ名前か」
「え、破壊?」
レナがルノという名前を口にしたのは従弟の名前だったからだが、どうやらこの世界でもルノという名前の魔術師が居たらしい。だが、ひとまずは名前を名乗った事で青年は柄から手を離して次の質問を行う。
「君は……新入りか?見た事がない顔だが……随分と若いな」
「あ、えっと……今日ここに来ました?」
「今日?ならまだ報告を受けていないだけか。だが、どうしてパールの部屋に入っていた。そもそもここは今の時間帯は使用禁止のはずだぞ」
青年は訝しみながらレナの様子を調べ、無断でパールの部屋に入り込んだ事を詰問する。流石に誤魔化しきれないかと判断したレナは青年の隙を伺うが、相当な強者なのか刀の間合いから決してレナを逃さない。
(下手に動けば切られそうだな……しかもあの刀、間違いなく「紅蓮」だ。という事はやっぱりこいつが看守長なのか……)
レナは青年の腰に掲げられている刀を見て「紅蓮」である事を確認し、刀身に触れた瞬間に爆発を引き起こす事は知っているので刃を受け止めるだけでは防ぎきれない。どうにか距離を取れば空間魔法を発動して退魔刀を取り出す事も出来るが、レナの考えを読み取ったように青年は刀の柄を再び掴む。
「逃げようとは考えない方がいい。僕は居合を習得している……この距離なら君が逃げる前に身体を五等分に切り裂く事も出来るよ」
「居合……」
剣聖であるハヤテが得意とする剣技を青年も習得しているらしく、レナが次の行動を移す前に先に攻撃を仕掛ける自信があるのか不敵な笑みを浮かべながらレナの周りを歩む。だが、その際にレナは彼の足元に動く物体を発見し、声を上げる。
「あっ……あの、足元」
「何だい?そんな古典的な罠に引っかかるはずがぁああっ!?」
「ぶるりんっ!!」
丁度良く汚水を吐き出すためにプールから這い出したスライムが青年の足元に現れ、そのままスライムの柔らかな身体を踏み込んだ青年は足を滑らせて派手に転倒してしまう。しかもその際に腰に身に着けていた紅蓮と顔を隠していた仮面も剥がれ落ちてしまい、両方ともレナの足元に転がり込んだ。
「あいだぁっ!?」
「あっ……えっと、ごめんなさい!!」
「ま、待て!?」
紅蓮と仮面を反射的に拾い上げるとレナはその場を駆け出し、足元に転がっていたスライムに心の中で感謝しながら窓に向かう。そのまま刀を握り締め、閉ざされている窓に刃を振りぬく。
「せいっ!!」
「ああっ!?」
刀身が触れた瞬間にレナの魔力を吸い上げて爆炎が発生し、窓を内側から破壊して見事に外へ抜け出す事に成功する。目的の魔法腕輪どころか紅蓮も取り返したレナは氷塊の魔法で空中に次々と足場を作り出し、女囚館の敷地を抜け出すために向かう。
(こうしてると、屋敷を抜け出した事を思い出すな……!!)
氷の円盤を次々と作り出して金網が存在する場所まで移動したレナは一気に飛び越えようとした時、背後から強烈な威圧を感じ取り、後方を振り返る。
「待てぇえええっ!!」
「ぷるぷるりんっ」
「ええっ!?」
頭にスライムを乗せた状態の青年がレナの作り出した円盤を飛び越えて追跡し、恐るべき勢いで距離を縮めていた。
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「あ、えっと……」
扉を開いて現れたのは身長が180センチは超える美青年が現れ、一見は女性と間違える程の美しさを誇る。だが、何故か仮面で右半分の顔面を隠しており、この世界では比較的に珍しい黒色の髪をしていた。
(男の人……だよな、という事はパールさんが目当ての囚人か?でも、囚人服じゃないし……)
青年が身に着けている衣服は囚人服ではなく、紳士服を想像させるスーツを着込んでいた。更に囚人は武器の所持が禁止されているにも関わらずに青年は腰にレナが見覚えのある日本刀を装着しており、右耳には三日月の形をしたピアスを取り付けていた。
(囚人や兵士には見えないし、もしかして看守か?まさか、例の看守長じゃ……)
レナが黙り込んでいると青年は不思議そうな表情を浮かべ、部屋の様子を伺う。そして中にパールが存在しない事を確認して表情を一変させる。
「……ここで何をしている?この部屋はパールだけしか立ち寄る事しか許されていないはずだぞ」
「あの……」
「すぐに外に出るんだ。命令を聞かなければ……ここで切る」
青年は刀の柄に手を伸ばし、目つきを鋭くさせてレナに退出するように促す。青年の雰囲気を感じ取ってレナは逆らえば斬られると判断して素直に頷く。
(この人……かなり強いな)
これまでに幾人の武人と遭遇した事があるレナは青年が只物ではない事を悟り、両手を上げて部屋の外で出ると、自分の言葉に従った事に少しは安心したのか青年は柄から手を離す。
「よし、そこに立つんだ。まず、名前から教えて貰おうか」
「えっと……」
「どうした?名前ぐらい言えるだろう?」
名前を尋ねられたレナはどのように答えるべきか悩み、流石に本名は不味いので頭に思い浮かんだ適当な偽名を名乗る事にした。
「る、ルノです……ルノと言います」
「ルノ……?ふっ、あの伝説の初級破壊魔術師と同じ名前か」
「え、破壊?」
レナがルノという名前を口にしたのは従弟の名前だったからだが、どうやらこの世界でもルノという名前の魔術師が居たらしい。だが、ひとまずは名前を名乗った事で青年は柄から手を離して次の質問を行う。
「君は……新入りか?見た事がない顔だが……随分と若いな」
「あ、えっと……今日ここに来ました?」
「今日?ならまだ報告を受けていないだけか。だが、どうしてパールの部屋に入っていた。そもそもここは今の時間帯は使用禁止のはずだぞ」
青年は訝しみながらレナの様子を調べ、無断でパールの部屋に入り込んだ事を詰問する。流石に誤魔化しきれないかと判断したレナは青年の隙を伺うが、相当な強者なのか刀の間合いから決してレナを逃さない。
(下手に動けば切られそうだな……しかもあの刀、間違いなく「紅蓮」だ。という事はやっぱりこいつが看守長なのか……)
レナは青年の腰に掲げられている刀を見て「紅蓮」である事を確認し、刀身に触れた瞬間に爆発を引き起こす事は知っているので刃を受け止めるだけでは防ぎきれない。どうにか距離を取れば空間魔法を発動して退魔刀を取り出す事も出来るが、レナの考えを読み取ったように青年は刀の柄を再び掴む。
「逃げようとは考えない方がいい。僕は居合を習得している……この距離なら君が逃げる前に身体を五等分に切り裂く事も出来るよ」
「居合……」
剣聖であるハヤテが得意とする剣技を青年も習得しているらしく、レナが次の行動を移す前に先に攻撃を仕掛ける自信があるのか不敵な笑みを浮かべながらレナの周りを歩む。だが、その際にレナは彼の足元に動く物体を発見し、声を上げる。
「あっ……あの、足元」
「何だい?そんな古典的な罠に引っかかるはずがぁああっ!?」
「ぶるりんっ!!」
丁度良く汚水を吐き出すためにプールから這い出したスライムが青年の足元に現れ、そのままスライムの柔らかな身体を踏み込んだ青年は足を滑らせて派手に転倒してしまう。しかもその際に腰に身に着けていた紅蓮と顔を隠していた仮面も剥がれ落ちてしまい、両方ともレナの足元に転がり込んだ。
「あいだぁっ!?」
「あっ……えっと、ごめんなさい!!」
「ま、待て!?」
紅蓮と仮面を反射的に拾い上げるとレナはその場を駆け出し、足元に転がっていたスライムに心の中で感謝しながら窓に向かう。そのまま刀を握り締め、閉ざされている窓に刃を振りぬく。
「せいっ!!」
「ああっ!?」
刀身が触れた瞬間にレナの魔力を吸い上げて爆炎が発生し、窓を内側から破壊して見事に外へ抜け出す事に成功する。目的の魔法腕輪どころか紅蓮も取り返したレナは氷塊の魔法で空中に次々と足場を作り出し、女囚館の敷地を抜け出すために向かう。
(こうしてると、屋敷を抜け出した事を思い出すな……!!)
氷の円盤を次々と作り出して金網が存在する場所まで移動したレナは一気に飛び越えようとした時、背後から強烈な威圧を感じ取り、後方を振り返る。
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