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放浪編
複雑な親子関係
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「まあ、パールさんには色々と感謝してます。落ち込んでいた僕を慰めてくれたり、料理を作ってくれたりしてくれましたからね。母さんとも仲が良かったし、もう一人の母親のように感じていました」
「あら、お母さんなんて照れちゃいますね」
「だ、け、ど!!この馬鹿親父は母さんが死んでから一か月もしないうちにパールさんと再婚したんですよ!!分かりますか?その時の僕の気持ち!!」
「それは……ショックだよね」
ネズミとしてはパールに不満があるわけではなく、むしろ彼女には感謝の心を持っていた。しかし、父親である看守長の行動だけは許すことが出来ず、母親が亡くなってから一か月もしないうちに別の女性と再婚した事に関しては未だに許せないという。
正確に言えば看守長とネズミはパールとは母親が亡くなる前から親交があり、良好な関係を築いていた。ネズミもパールにはよく懐いており、彼女が母親になる事自体は別にそれほど不満があるわけではない。だが、父親が母親が死んでからそれほど時間も経たないうちに別の女性と関係を築いた事は子供だったネズミにとっては死んでしまった母親を裏切ったようにしか思えず、それ以降は別れて暮らしていた。
「僕が情報屋をやって生活を始めたのはこの男の世話になる事が嫌だからです。そして名前もネズミと名乗っているのはこの男の付けた名前が気に食わなかったからですよ。だから僕は本名は誰にも言いません」
「複雑な親子関係だったんだね。父親に悩まされる気持ちは良く分かるよ、うん。凄く分かる」
「分かってくれますか……この気持ちを」
レナもネズミと同様に実の父親のせいで苦労しているのでネズミの気持ちは理解出来るため、慰めるように頭を撫でる。普段は子ども扱いされる事を嫌うネズミだが、今回は同情してくれる人物に巡り合えたので抵抗せずに受け入れた。そんな二人の仲睦まじい姿を見て看守長は鎖で拘束された状態にも関わらずに起き上がる。
「ちょ、ちょっと待て!!どうして今日来たばかりの君が僕のネズミ君とそんなに仲がいいんだ!?そもそもネズミ君も何で君達に協力しているんだ!?」
「うるさいですね、色々と遭ったんですよ。ほら、それよりも馬車が来たようですよ」
「おおっ!!」
校庭に兵士が引率する鋼鉄製の馬車が出現し、レナ達の前で立ち止まる。レナが最初に都市に送り込まれたときは気付かなかったが、馬車に繋がれている馬は通常の馬よりもかなり大きく、巨人族でも乗り込めるほどの大きな黒馬だった。
「ブルルルッ……!!」
「うわ、なんか凄い馬だな……もしかして魔獣?」
「いえ、これは獣人国と巨人国の領地にだけ生息している馬王種と呼ばれる馬です。普通の馬よりも力も強く、耐久力もありますよ」
「馬の王か……ニンジンでも食べる?」
「何処から取り出したんだ!?」
レナが空間魔法で異空間からニンジンを取り出して差し出すと、馬王種と呼ばれる大きな馬は鼻を近づけ、臭いを嗅ぐと嫌がるようにそっぽを向く。
「あ、馬王種は雑食ですが、基本的に肉を好みます。だから野菜よりも肉を与えると喜びますよ」
「馬の癖に肉食とは……よし、なら転がっている兵士の腕でも齧らせるか」
「レナ、流石にそれは可哀そうだぞ」
「冗談だって……でも、これに乗れば監獄都市を抜け出して獣人国の軍隊が管理している検問所まで移動できるの?」
「出来ますね。だけど、検問所を抜けるには監獄所長の許可証が必要になりますけど」
馬車の中を覗いてレナはゴンゾウでも乗り込めることを確認すると、これを使えばハンググラインダーなど使わずとも検問所まで移動できると知り、有難く使わせてもらう事にした。
「じゃあ、この馬車は借りるよ。用件が終わったら返すからいいよね?」
「それを僕に聞くのかい?このまま黙って僕が逃がすと思うのか?」
「鎖で拘束されている状態で言われても全然怖くないけど……」
馬車を堂々と拝借しようとするレナ達に看守長が苦し紛れの反論を行うが、確かに都市を抜け出すにしても看守達を放置するわけにはいかず、追跡されたら面倒なのでレナはネズミの肩に手を回す。
「言っておくけど、あんたの息子も連れて行くよ。もしも追って来ようとしたらこの子の無事は保証しない」
「な、何だと!?」
「え、マジですか?」
「レナ、本気か?」
「あら、まあ……」
レナの言葉に全員が驚愕するが、他の者には聞こえないようにレナはネズミとゴンゾウに囁く。
「こう言わなければ兵士達が追ってくるでしょ?それにネズミも脱獄の共犯者と思われるよりは脅されて協力していたという体裁にしておかないと色々と不味いんじゃないの?」
「まあ、そうですね。僕はそれでいいですよ」
「なるほど、そういう事か」
「おい、こそこそと何を話し合っているんだ!!僕のネズミ君から離れろ!!」
「まあまあ、落ち着いて下さい看守長~」
三人だけでひそひそと話し合う姿を見て看守長は必死に鎖を振り解こうとするが、事情を悟ったのかパールが看守長を抑えつける。その様子を見たレナはネズミにはもうしばらくだけ協力してもらう事を決め、馬車に乗り込む。
「あら、お母さんなんて照れちゃいますね」
「だ、け、ど!!この馬鹿親父は母さんが死んでから一か月もしないうちにパールさんと再婚したんですよ!!分かりますか?その時の僕の気持ち!!」
「それは……ショックだよね」
ネズミとしてはパールに不満があるわけではなく、むしろ彼女には感謝の心を持っていた。しかし、父親である看守長の行動だけは許すことが出来ず、母親が亡くなってから一か月もしないうちに別の女性と再婚した事に関しては未だに許せないという。
正確に言えば看守長とネズミはパールとは母親が亡くなる前から親交があり、良好な関係を築いていた。ネズミもパールにはよく懐いており、彼女が母親になる事自体は別にそれほど不満があるわけではない。だが、父親が母親が死んでからそれほど時間も経たないうちに別の女性と関係を築いた事は子供だったネズミにとっては死んでしまった母親を裏切ったようにしか思えず、それ以降は別れて暮らしていた。
「僕が情報屋をやって生活を始めたのはこの男の世話になる事が嫌だからです。そして名前もネズミと名乗っているのはこの男の付けた名前が気に食わなかったからですよ。だから僕は本名は誰にも言いません」
「複雑な親子関係だったんだね。父親に悩まされる気持ちは良く分かるよ、うん。凄く分かる」
「分かってくれますか……この気持ちを」
レナもネズミと同様に実の父親のせいで苦労しているのでネズミの気持ちは理解出来るため、慰めるように頭を撫でる。普段は子ども扱いされる事を嫌うネズミだが、今回は同情してくれる人物に巡り合えたので抵抗せずに受け入れた。そんな二人の仲睦まじい姿を見て看守長は鎖で拘束された状態にも関わらずに起き上がる。
「ちょ、ちょっと待て!!どうして今日来たばかりの君が僕のネズミ君とそんなに仲がいいんだ!?そもそもネズミ君も何で君達に協力しているんだ!?」
「うるさいですね、色々と遭ったんですよ。ほら、それよりも馬車が来たようですよ」
「おおっ!!」
校庭に兵士が引率する鋼鉄製の馬車が出現し、レナ達の前で立ち止まる。レナが最初に都市に送り込まれたときは気付かなかったが、馬車に繋がれている馬は通常の馬よりもかなり大きく、巨人族でも乗り込めるほどの大きな黒馬だった。
「ブルルルッ……!!」
「うわ、なんか凄い馬だな……もしかして魔獣?」
「いえ、これは獣人国と巨人国の領地にだけ生息している馬王種と呼ばれる馬です。普通の馬よりも力も強く、耐久力もありますよ」
「馬の王か……ニンジンでも食べる?」
「何処から取り出したんだ!?」
レナが空間魔法で異空間からニンジンを取り出して差し出すと、馬王種と呼ばれる大きな馬は鼻を近づけ、臭いを嗅ぐと嫌がるようにそっぽを向く。
「あ、馬王種は雑食ですが、基本的に肉を好みます。だから野菜よりも肉を与えると喜びますよ」
「馬の癖に肉食とは……よし、なら転がっている兵士の腕でも齧らせるか」
「レナ、流石にそれは可哀そうだぞ」
「冗談だって……でも、これに乗れば監獄都市を抜け出して獣人国の軍隊が管理している検問所まで移動できるの?」
「出来ますね。だけど、検問所を抜けるには監獄所長の許可証が必要になりますけど」
馬車の中を覗いてレナはゴンゾウでも乗り込めることを確認すると、これを使えばハンググラインダーなど使わずとも検問所まで移動できると知り、有難く使わせてもらう事にした。
「じゃあ、この馬車は借りるよ。用件が終わったら返すからいいよね?」
「それを僕に聞くのかい?このまま黙って僕が逃がすと思うのか?」
「鎖で拘束されている状態で言われても全然怖くないけど……」
馬車を堂々と拝借しようとするレナ達に看守長が苦し紛れの反論を行うが、確かに都市を抜け出すにしても看守達を放置するわけにはいかず、追跡されたら面倒なのでレナはネズミの肩に手を回す。
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「まあまあ、落ち着いて下さい看守長~」
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