不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
488 / 2,091
放浪編

緑影のラナ

しおりを挟む
「姿を見せろエリナ!!正々堂々と戦え!!」
「この臆病者が……!!」
「王国四騎士の恥知らずがっ……卑怯者めっ!!」


倒れた部下達が負傷した箇所を抑えながら騒ぎ出し、その姿を見て隊長は彼等が敢えてエリナの注意を引くために暴言を吐いている事を悟る。暗殺業を生業とする緑影の人間が「卑怯」などという言葉を使うはずがなく、戦闘不能に追い込まれながらも隊長のために部下達はエリナを罵倒して自分達に狙いを移そうとした。

100年以上も付き合いのある部下達の配慮に隊長は頷き、森の中で隠れているエリナの様子を伺う。片腕を封じられた状態でも隊長はエリナに反撃する術を持ち合わせており、腕の中に仕込んでいた短剣を取り出す。エリナが隠れている位置さえ特定できれば「投擲」のスキルで短剣を狙い撃つ事は難しくはなく、狙うとしたらエリナが矢を打ち出した直後である。


(見事だエリナ、お前を侮った自分が恥ずかしい)


次の攻撃でエリナか自分の命が確実に失う事を覚悟した隊長は内心でエリナを侮った事を謝罪する。新参者の兵士が王女ティナのお気に入りという理由で王国四騎士に選抜されたという事に隊長は不満を抱いていたが、そ自分のの認識が間違っていた事を悟る。

ただの成り上がり者が緑影の中でも精鋭である自分達をここまで追い詰めるはずがなく、緑影の隊長である「ラナ」はエリナの実力を認めた。彼女の狙撃の腕は間違いなく王国四騎士の名に恥じぬ程の正確性を誇り、あと数年も修行すれば一流の狩人として誰もが認める存在になるだろう。

しかし、いくら相手の事を認めようと任務の妨げになるのならば容赦はせず、短剣を背中に隠しながらラナは茂みの様子を伺う。一瞬でもエリナの注意が自分以外の存在に向いたら短剣を投擲して仕留める自信はあり、彼女の行為を察した部下達は喚き散らす。


「エリナ!!我々は王女様を連れ出す様に命じられている……しかし、最悪の場合は殺害の許可も下りているぞ!!」
「貴様が姿を現さないのならばティナ様はここで殺す!!」
「さあ、姿を現せ!!そうすれば命は奪わん……約束する!!」


部下達の言葉にラナは茂美の様子を伺い、一瞬だけエリナが躊躇したようにボーガンの照準を揺らした事を見抜く。それを見たラナは最後の警告を行う。


「エリナ、これが最後の警告だ!!我々に投降しろ、そうすればティナ王女もこの白狼種も見逃してやる!!」


ラナの言葉が森中に響き渡り、しばらくの間は沈黙が訪れた。ラナはエリナが投降する事を願い、これほどの逸材を逃すのは惜しいと考えた。森人族は「約束」を尊ぶ存在なので彼女達の言葉には嘘はなく、もしもエリナが投降すれば宣言通りに彼女を許すつもりだった。



――警告から十数秒経過すると、茂みの中からボーガンを取り出したエリナが姿を現す。その様子を屋敷の敷地から確認したラナは彼女が投降する気になったのかと思ったが、姿を現したエリナはボーガンを下ろさずに叫ぶ。



「アイン!!今っす!!」
「キュロロロッ!!」
「何だと!?」


エリナが叫び声を上げた瞬間、森の中からアインの雄たけびが響き渡り、木々が震える。そのあまりの音量に聴覚が人間よりも優れている森人族であるラナ達は咄嗟に耳を抑えてしまい、その隙を逃さずに事前に耳栓をしていたエリナはボーガンを射抜く。


「強化射撃!!」
「うぐぁっ!?」


戦技を発動させて射抜かれた矢はラナの右足の爪先に突き刺さり、鏃が地面にめり込んで足元を固定させる。激痛を味わいながらもラナは足に突き刺さった矢を抜こうとしたが、余程深く刺さっているのか引き抜けない。


「くそっ!!こんな物……!?」


矢が地面から抜けないと判断したラナは引き抜くのを辞めて突き刺さった箇所を短剣で切ろうとしたが、自分の足に刺さっている矢が「黒色の金属」で構成されている事に気付き、短剣の刃で切りつけても掠り傷一つ与えられない。


「何だこれは!?こんな物……ぐあっ!?」
「アダマンタイト製の矢だから簡単には抜けないよ」
「っ!?」


背後から声をかけられたラナは振り返ると、何時の間にか屋敷の敷地内に少年が立っており、その足元には気絶した部下が倒れていた。その光景を見たラナは少年の顔を見て恐怖の表情を浮かべる。


「お前は……!?」
「人の家の前でよくも色々と騒ぎを起こしてくれたな……容赦はしないぞ」


退魔刀を抱えたレナはラナの元へ近づき、鋭い視線を向ける。その瞳を異様な威圧感を感じ取ったラナは冷や汗を流し、握りしめていた短剣を投げつけた。


「近寄るなっ!!」
「おっと」
「なっ!?」


だが、3メートルの距離から投げられた短剣に対してレナは何事もないように空中で掴み取る。ラナはこれまでの暗殺稼業の中で自分の短剣を正面から受け止めた人間など一度も遭遇した事はなく、しかも人間の子供に受け止められたことに動揺を隠せない。


「な、何者だ……お前は一体何なんだ!?」
「……この家の住居人だよ。元、だけどね」


受け止めた短剣を握り締めながらレナはラナを睨みつけ、自分が住んでいた屋敷を荒らす存在に対して若干の怒りを抱き、短剣を放り捨てて退魔刀を引き抜いた。




※ちょっと中途半端ですが、これで今回の章は終了します。それと2話投稿も申し訳ありませんが終了となります……ですが、物語も終わりが見えてきましたので気合を入れて投稿しますよ!!

( ゚Д゚)つつつキーボード
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。