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最終章 前編 〈王都編〉
ヨツバ王国の第一王女カレハ
「カレハ様は産まれたときから国王の継承者として育てられてきた。だが、ティナ様が産まれたときにその座を失ってしまった……あの方は子供の頃から英才教育を受けて国王になるために学や武芸を学んできた。それにも関わらずにティナ様が王位の継承者として定められてからおかしくなってしまわれた」
エリナの代わりにラナが口を開き、カレハがティナを恨むまでの経緯を語る。国王の第一子で王位継承者として育てられたカレハは自分が将来ヨツバ王国の王となる事を信じてきた。しかし、その将来を奪ったのがよりにもよって末の妹である事に衝撃を受ける。
知識や武芸においてティナはカレハの足元にも応じないだろう。だが、彼女には圧倒的な魔法の才気が満ち溢れており、国王を凌ぐその魔力の高さはマリアにも並ぶ。カレハは姉弟の中では魔法の才能という点ではティナの次に高いが、残念ながら生まれ持っ魔法の資質は努力だけでは帰る事は出来ない。
魔術師としての資質に勝るティナが新たな国王の継承者として選ばれたカレハは荒み、他の姉弟とも関わらなくなった。それを心配したデブリは彼女が居心地の悪さを感じる王都から離れさせ、彼女の世話役を任せていた公爵家の元へ送る。だが、その行為が逆にカレハを追い込んでしまう。
「国王様はカレハ様を王都に引き離してから数年後、王都にティナ様の命を狙った暗殺者の集団が現れた。幸い、当時の王国四騎士が暗殺者集団の撃退に成功したが、捕まえた暗殺者に拷問を掛けた所、暗殺者を送り込んだのはカレハ様だと判明した」
「そんな!?」
「残念ながら事実です。当然ですけど普段は温厚な国王様も怒ってカレハ様を呼び出して詰問しました。カレハ様はあくまでも自分は関りはないと言い続けましたが、次々と証拠が発見して最終的には自白したそうです……いくら自分の子供とはいえ、罪を犯した者を許せないという事で国王様はカレハ様の王位継承権を永久剥奪しました。だからその存在を無暗に語る事も許されない御方だ」
「それは……ちょっと甘いんじゃないの?」
姉弟であるティナを殺そうとしたにも関わらずにカレハの処罰が甘すぎるのではないかとレナは考えたが、国王としても苦渋の決断をしたらしく、実際にその後のカレハは苦難な人生を歩んだという。
「確かに処罰は軽いと思われるかもしれないが、実の妹を殺そうとしたカレハ様は軟禁に近い状態で王都から離れた場所で暮らす事を強要された。カレハ様の境遇に同情を感じていた貴族達も去り、あの方はヨツバ王国の片隅に存在する土地で暮らしているはずだった」
「でも、その人がどうしてライコフを迎え入れる事が出来たの?」
「ライコフはティナ様が産まれる前にカレハ様と面識があったと聞いている。だからライコフが牢獄に送り込まれると聞いたカレハ様が書状で国王様にライコフの釈放を願ったらしい。国王様はカレハ様の願いを聞き入れ、特例としてライコフの罪を免除してカレハ様の側近の兵士の一人として認めた」
「それはいくら何でも甘すぎるでしょ!!」
ライコフはティナを襲っただけでなく、ヨツバ王国の重要機密を旧帝国に渡そうとした大罪人であるのにあっさりと娘の願いだからと許してしまうヨツバ王国の国王にレナは怒るが、この処遇はエリナもラナも同意なのかなんとも言えない表情を浮かべる。
「国王様はカレハ様に強く出られないのはヨツバ王国の慣わしとはいえ、王位の座をティナに譲らせた事を未だに気にかけている。だからカレハ様の行動を強く咎められないのだろうが……」
「それでもライコフの件は相当に揉めましたね。結局は監視付きという条件でライコフの他に数名の兵士をカレハ様の側近として就任させる事で反対派の人間も納得したそうですけど」
「国王、親バカ」
「……否定できない」
コトミンの辛辣な言葉にエリナとラナは顔を逸らし、レナも頭を悩ませる。まさか自分が捕まえたライコフが犯罪者から王女の側近に成り上がり、しかも現在は冒険都市にてシャドル公爵家のオウネンと手を組んでいるという事実に溜息を吐く。
カレハの側近として仕えたライコフがオウネンと手を組み、緑影の精鋭部隊を洗脳で操ってティナの命を狙った事から今回の事件の黒幕は「カレハ」である可能性が高い。過去に失敗したにも関わらずに性懲りもせずにティナの命を狙った事から未だにヨツバ王国の王位の座を狙っている事は間違いなく、このまま放置すればいずれティナの身に災いが襲い掛かるだろう。
「くそっ、ナオやシズネの事も救わないといけないのにティナまで命を狙われるなんて……仕方ない、こうなったらエリナ達もしばらくは俺達と一緒に行動してもらうよ。この様子だと国に戻るのも危険でしょ?」
「マジっすか?兄貴が傍にいてくれるなら百人力っす!!」
「……私と部下はどうするつもりだ?」
レナの言葉にエリナは喜びの声を上げるが、捕縛されている状態のラナはレナを睨みつけ、自分達の処遇を尋ねる。洗脳されていたとはいえ、彼女達がティナの命を狙ったのは事実である。だが、そんなラナに対してレナは落ちていた彼女の短剣を拾い上げ、彼女に差し出す。
「力を貸してほしい、といったらどうする?」
「断る……ハヅキ様を守れなかったお前の言う事を聞く義理はない」
「なっ……おい、お前!!レナはあの時……」
「ダイン!!」
ラナの言葉にダインが怒りを抱いて言い返そうとしたが、それをレナは止める。ハヅキが殺される場に居たゴンゾウやコトミンもラナに対して言いたいことはあったが、我慢して話を聞く。
「確かに俺はハヅキさんを……いや、御祖母様を守れなかった。だけど、俺はあの人と約束をした。その約束を果たすまで俺はこの聖痕を手放すつもりはない」
「黙れ!!その聖痕はハヅキ家の正統後継者のみに受け継がれる物だ。人間のお前がそもそも受け継いで良いものではない!!」
「それを決めるのはあんたじゃない、ハヅキ家の人間だろ?」
レナの言葉にラナは何も言い返せず、彼女はあくまでもハヅキ家に従う緑影の暗殺者に過ぎない。他者が何を言おうとレナが風の聖痕を継承したのは前任者のハヅキの意思であり、当主が存在しなくなったハヅキ家の後継者はレナしか存在しない。
「母上も叔母様もハヅキ家から出た。なら今のハヅキ家の後継者は俺だ……なんて言ってもあんたは俺に従わないんだろう?」
「……当然だ」
「これだけは言っておく……あんた達に御祖母様を殺したミドルは倒せない、だから無駄死にするような真似はよせ」
「っ……!!」
ラナは自分が解放されれば真っ先に主君を殺したミドルを見つけ出し、殺害するつもりだった。しかし、ミドルの実力を知らないラナにレナは忠告する。
「本当にミドルを倒したいと考えているなら俺達と協力してくれ。それが無理ならせめて俺達とここで起きた事は誰にも話さないでほしい……それだけだよ」
「……くだらない、お前と協力すればミドルを殺せるというのか?奴の背後にはあの王妃がいる、お前達のようなガキ共に何が出来る?」
「そのガキ共に負けたあんた等がそれを言う?年齢なんて関係ない、俺達は皆を救ってあのむかつく王妃をぶちのめす。それだけだよ」
「…………」
レナの言葉がただの子供の戯言には聞こえなかったラナは黙り込み、このまま自分達が王都に向かったところでミドルを殺害できる保証はなく、だからといって任務を破棄して国に戻るような真似をすれば命はない。ラナはどうしても主君の仇であるミドルを討ちたいと考え、恥を忍んでレナの要求を受け入れた。
「……私達は何をすればいい?」
「俺達の仲間を探してほしい、それと早急に王都の様子を知りたい。出来ればあと3日以内に」
「分かった……なら、仲間たちと話をさせてくれ」
覚悟を決めたラナはレナから差し出された短剣を受け取り、気絶している仲間達に視線を向けると、レナはコトミンに倒れている彼女の仲間の治療を願う――
※ラナは残念ながらヒロインじゃありません。ツンデレ枠はシズネで埋まっています。
エリナの代わりにラナが口を開き、カレハがティナを恨むまでの経緯を語る。国王の第一子で王位継承者として育てられたカレハは自分が将来ヨツバ王国の王となる事を信じてきた。しかし、その将来を奪ったのがよりにもよって末の妹である事に衝撃を受ける。
知識や武芸においてティナはカレハの足元にも応じないだろう。だが、彼女には圧倒的な魔法の才気が満ち溢れており、国王を凌ぐその魔力の高さはマリアにも並ぶ。カレハは姉弟の中では魔法の才能という点ではティナの次に高いが、残念ながら生まれ持っ魔法の資質は努力だけでは帰る事は出来ない。
魔術師としての資質に勝るティナが新たな国王の継承者として選ばれたカレハは荒み、他の姉弟とも関わらなくなった。それを心配したデブリは彼女が居心地の悪さを感じる王都から離れさせ、彼女の世話役を任せていた公爵家の元へ送る。だが、その行為が逆にカレハを追い込んでしまう。
「国王様はカレハ様を王都に引き離してから数年後、王都にティナ様の命を狙った暗殺者の集団が現れた。幸い、当時の王国四騎士が暗殺者集団の撃退に成功したが、捕まえた暗殺者に拷問を掛けた所、暗殺者を送り込んだのはカレハ様だと判明した」
「そんな!?」
「残念ながら事実です。当然ですけど普段は温厚な国王様も怒ってカレハ様を呼び出して詰問しました。カレハ様はあくまでも自分は関りはないと言い続けましたが、次々と証拠が発見して最終的には自白したそうです……いくら自分の子供とはいえ、罪を犯した者を許せないという事で国王様はカレハ様の王位継承権を永久剥奪しました。だからその存在を無暗に語る事も許されない御方だ」
「それは……ちょっと甘いんじゃないの?」
姉弟であるティナを殺そうとしたにも関わらずにカレハの処罰が甘すぎるのではないかとレナは考えたが、国王としても苦渋の決断をしたらしく、実際にその後のカレハは苦難な人生を歩んだという。
「確かに処罰は軽いと思われるかもしれないが、実の妹を殺そうとしたカレハ様は軟禁に近い状態で王都から離れた場所で暮らす事を強要された。カレハ様の境遇に同情を感じていた貴族達も去り、あの方はヨツバ王国の片隅に存在する土地で暮らしているはずだった」
「でも、その人がどうしてライコフを迎え入れる事が出来たの?」
「ライコフはティナ様が産まれる前にカレハ様と面識があったと聞いている。だからライコフが牢獄に送り込まれると聞いたカレハ様が書状で国王様にライコフの釈放を願ったらしい。国王様はカレハ様の願いを聞き入れ、特例としてライコフの罪を免除してカレハ様の側近の兵士の一人として認めた」
「それはいくら何でも甘すぎるでしょ!!」
ライコフはティナを襲っただけでなく、ヨツバ王国の重要機密を旧帝国に渡そうとした大罪人であるのにあっさりと娘の願いだからと許してしまうヨツバ王国の国王にレナは怒るが、この処遇はエリナもラナも同意なのかなんとも言えない表情を浮かべる。
「国王様はカレハ様に強く出られないのはヨツバ王国の慣わしとはいえ、王位の座をティナに譲らせた事を未だに気にかけている。だからカレハ様の行動を強く咎められないのだろうが……」
「それでもライコフの件は相当に揉めましたね。結局は監視付きという条件でライコフの他に数名の兵士をカレハ様の側近として就任させる事で反対派の人間も納得したそうですけど」
「国王、親バカ」
「……否定できない」
コトミンの辛辣な言葉にエリナとラナは顔を逸らし、レナも頭を悩ませる。まさか自分が捕まえたライコフが犯罪者から王女の側近に成り上がり、しかも現在は冒険都市にてシャドル公爵家のオウネンと手を組んでいるという事実に溜息を吐く。
カレハの側近として仕えたライコフがオウネンと手を組み、緑影の精鋭部隊を洗脳で操ってティナの命を狙った事から今回の事件の黒幕は「カレハ」である可能性が高い。過去に失敗したにも関わらずに性懲りもせずにティナの命を狙った事から未だにヨツバ王国の王位の座を狙っている事は間違いなく、このまま放置すればいずれティナの身に災いが襲い掛かるだろう。
「くそっ、ナオやシズネの事も救わないといけないのにティナまで命を狙われるなんて……仕方ない、こうなったらエリナ達もしばらくは俺達と一緒に行動してもらうよ。この様子だと国に戻るのも危険でしょ?」
「マジっすか?兄貴が傍にいてくれるなら百人力っす!!」
「……私と部下はどうするつもりだ?」
レナの言葉にエリナは喜びの声を上げるが、捕縛されている状態のラナはレナを睨みつけ、自分達の処遇を尋ねる。洗脳されていたとはいえ、彼女達がティナの命を狙ったのは事実である。だが、そんなラナに対してレナは落ちていた彼女の短剣を拾い上げ、彼女に差し出す。
「力を貸してほしい、といったらどうする?」
「断る……ハヅキ様を守れなかったお前の言う事を聞く義理はない」
「なっ……おい、お前!!レナはあの時……」
「ダイン!!」
ラナの言葉にダインが怒りを抱いて言い返そうとしたが、それをレナは止める。ハヅキが殺される場に居たゴンゾウやコトミンもラナに対して言いたいことはあったが、我慢して話を聞く。
「確かに俺はハヅキさんを……いや、御祖母様を守れなかった。だけど、俺はあの人と約束をした。その約束を果たすまで俺はこの聖痕を手放すつもりはない」
「黙れ!!その聖痕はハヅキ家の正統後継者のみに受け継がれる物だ。人間のお前がそもそも受け継いで良いものではない!!」
「それを決めるのはあんたじゃない、ハヅキ家の人間だろ?」
レナの言葉にラナは何も言い返せず、彼女はあくまでもハヅキ家に従う緑影の暗殺者に過ぎない。他者が何を言おうとレナが風の聖痕を継承したのは前任者のハヅキの意思であり、当主が存在しなくなったハヅキ家の後継者はレナしか存在しない。
「母上も叔母様もハヅキ家から出た。なら今のハヅキ家の後継者は俺だ……なんて言ってもあんたは俺に従わないんだろう?」
「……当然だ」
「これだけは言っておく……あんた達に御祖母様を殺したミドルは倒せない、だから無駄死にするような真似はよせ」
「っ……!!」
ラナは自分が解放されれば真っ先に主君を殺したミドルを見つけ出し、殺害するつもりだった。しかし、ミドルの実力を知らないラナにレナは忠告する。
「本当にミドルを倒したいと考えているなら俺達と協力してくれ。それが無理ならせめて俺達とここで起きた事は誰にも話さないでほしい……それだけだよ」
「……くだらない、お前と協力すればミドルを殺せるというのか?奴の背後にはあの王妃がいる、お前達のようなガキ共に何が出来る?」
「そのガキ共に負けたあんた等がそれを言う?年齢なんて関係ない、俺達は皆を救ってあのむかつく王妃をぶちのめす。それだけだよ」
「…………」
レナの言葉がただの子供の戯言には聞こえなかったラナは黙り込み、このまま自分達が王都に向かったところでミドルを殺害できる保証はなく、だからといって任務を破棄して国に戻るような真似をすれば命はない。ラナはどうしても主君の仇であるミドルを討ちたいと考え、恥を忍んでレナの要求を受け入れた。
「……私達は何をすればいい?」
「俺達の仲間を探してほしい、それと早急に王都の様子を知りたい。出来ればあと3日以内に」
「分かった……なら、仲間たちと話をさせてくれ」
覚悟を決めたラナはレナから差し出された短剣を受け取り、気絶している仲間達に視線を向けると、レナはコトミンに倒れている彼女の仲間の治療を願う――
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