不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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最終章 前編 〈王都編〉

今後の方針は?

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――エリナ達と合流を果たし、深淵の森の屋敷に戻って来たレナ達は王都に向かう緑影を見送るとひとまずは休憩する。全員がここまでに辿り着くまでに披露しており、今晩はこの屋敷で過ごす事にした。幸いにも屋敷の中には腐敗石と結界石が配備されているので森の中の魔物は侵入する事はない。

ちなみにウルとアインが屋敷の中に入れるのは腐敗石の異臭に耐えられるように訓練されているため、腐敗石に近寄りすぎなければ特に影響を受けない。並の魔物でも訓練を受ければ腐敗石の異臭にも耐えきれるので先日に冒険都市を襲撃したゴブリン達も調教を受けていたと考えられる。


「すぴぃ~……」
「グゥウウッ……」
「なあ、この1匹と1人が全然起きないんだけど大丈夫なの?」
「平気っすよ。ラナさんの話だとそれほど強い睡眠薬じゃないそうなのでしばらくすれば起きるらしいっす」
「ならいいけどさ……何で僕達は屋敷の庭で野営の準備してるの?家の中で休めばいいじゃん……」
「いや、家の中は大分荒らされている。どうやら前に俺達が来た後にも誰かが入った痕跡があるな」
「こんな場所に誰が……あ、そうか。ここって元々はバルトロス王国が管理している屋敷だったっけ」


深淵の森に存在する屋敷は元々はバルトロス王国の重要人物を隔離するために作り出された場所のため、この場所の存在は王国の人間に知られている。どうやら定期的に王国の人間が立ち寄っているらしく、本来ならば隠れ家には向いていない場所である。

だが、現在の状況では返って都合が良く、王国側もまさか自分達が管理している屋敷にレナ達が滞在しているとは予想出来ない可能性が高い。短期間の間ならば十分に隠れ家として利用出来るため、一週間後に王都でナオ達の処刑が実行されるまでの間はここを拠点として行動する事を決めた。


「キュロロロッ」
「お、水を汲んできてくれたのか。ありがとうアイン」
「キュロンッ」


井戸から水を汲み上げて大きな壺に移したアインが戻ってくると、全員が集まった事を確認してレナは今後の方針を決めるための話し合いを行う。


「じゃあ、皆に最初に聞いてほしい話がある。さっきラナから聞いた話によると王都の方で俺の義姉……ナオが国王殺しの罪で処刑される事が決まったらしい」
「ええっ!?」
「レナのお姉さんが……?」
「それは本当か!?」
「間違いないっす!!その噂ならあたしも耳にしました!!」


本当はラナではなくアイリスから教わっていた情報なのだが、彼女の存在を明かすわけにはいかないのでラナから情報を受け取ったようにレナは話すとエリナも便乗して頷く。どうやら冒険都市や王都以外の村や街でも噂は広まっているらしく、今から一週間後にナオの処刑が民衆の面前で行われる。

国王は一命はとりとめたが危篤状態に陥っており、もう間もなく命が尽きようとしている情報まで一般市民に流れているが、実際の所はアイリスの話によれば国王に毒を仕込んだのはナオではなく王妃の仕業である。だが、それを証明する術はなく、犯人として疑われたナオは現在は王都で監禁されている事を話す。


「噂によればナオは王都で拘束されている。けど、ナオが父親を殺すなんて真似をするはずがない……これは王妃の陰謀だ」
「け、けどさ……それを知って僕達に何が出来るんだよ?まさか助け出そうなんて言うつもりじゃないよな……」
「ダイン、レナの姉君だぞ?見捨てるつもりか?」
「ち、違うって!!でも、今回の相手は国だぞ!?救い出すにしてもどうやって救い出すんだよ!?」


今までに様々な強敵と相対してきたレナ達だが、今回の相手は国家であるため下手な行動は出来ない。王都には数万の軍隊も滞在し、既にミドルや他の大将軍が待機している可能性も高い。ナオを救い出すとしても城内には既に厳重な警備が敷かれていると考えられるため、迂闊に忍び込む事も出来ない。


「ナオを救う方法はまだ思いつかない……だけど、今言える事は俺達だけでは無理だってこと。だからまずは散らばった仲間を集めよう」
「リンダさんや他の王国四騎士の人達っすね!!」
「シズネやハンゾウか?」
「氷雨のギルドの連中だな!?」
「……スラミンとヒトミン?」
「うん、出来れば全員と合流したい所だけど……あんまり時間はない。それに転移で飛ばされた人間は見つけるのは難しいと思う」


現状の戦力はレナ、コトミン、ゴンゾウ、ダイン、エリナの5人のため、非戦闘員のティナを除くとウルやアインや緑影の森人族達も含めても圧倒的に戦力が不足しており、ナオの救出は難しい。


「今の状態で城に忍び込んでナオを救い出すのは難しいと思う。だから処刑の実行日までに仲間を一人でも多く集めたい……そのために目立たないように街に忍び込む必要がある」
「でも兄貴、この屋敷から冒険都市や王都は結構距離がありますよ?」
「そこはウルとアインに移動を頑張ってもらう。大丈夫だよねアイン?」
「キュロロッ!!」


自分に任せろとばかりにアインは力こぶを作ると、屋敷から移動の際はアインとウルに乗れば問題なく、緑影が戻ってくる前に出来る限りの仲間を集める必要があった。


「じゃあ、明日の朝から行動を移そう。俺とエリナは冒険都市に戻って偵察してくるから、コトミンは川を下って他の村の様子を調べてくれる?偵察に不向きなゴンちゃんは悪いけど待機という事で……」
「むうっ……すまない」
「あの、僕は?」


巨人族であるゴンゾウは目立ちすぎるため、偵察行動には不向きという理由で屋敷の防備とティナの護衛を任せる事にした。だが、残されたダインは自分が何をすべきなのかを質問すると、レナは眠っているティナに視線を向ける。


「エリナ、前にティナは魔物使いの職業も覚えているといったよね?」
「え?ええ、まあ……言いましたけど?」
「それならダインとゴンゾウにお願いしたい事がある。多分、俺の勘だけどこの森にあいつが戻ってきていると思う。そいつを捕まえてティナに服従させてほしい」
「あいつ、だと?」
「何か嫌な予感がするんだけど……」


レナの言葉に二人は疑問を抱くと、これからの事を考えると一人でも多くの戦力が必要のため、アイリスから教わった冒険都市から深淵の森に逃げ帰ってきた魔人族の情報をレナは言い渡す。


「ここに来る途中にミノタウロスの痕跡を見つけた……多分、あいつがこの森の中にいる」
「ミノタウロスって……あの化物か!?」
「まだ生きていたのか……」
「うええっ!?」


冒険都市でも暴れていたミノタウロスの存在を思い出したゴンゾウ達は驚愕の表情を浮かべるが、確かに味方にすれば心強い相手であり、同時に敵に回すと危険な相手である。


「あいつがこの森に戻っている事は間違いない。多分、前の住処に戻っているはずだからゴンちゃんたちはあいつを捕まえてティナの能力で味方にしてほしい」
「ちょ、ちょっと兄貴!?その方法はいくらなんでも危ないっす!!ティナ様に何かあったら……!!」
「でもティナもミノタウロスを仲間に出来たら心強い護衛になるでしょ?」
「それはそうですけど……でも、う~ん……」


護衛役のエリナとしてはティナを危険な目に遭わせる事は反対だが、ミノタウロスという存在を味方にすれば確かにティナの身の回りを守る存在としては心強い。しかし、ミノタウロスの気性の荒さをしっているだけに素直には賛成できず、他に方法はないのかと考え込む。

現状ではティナの能力ならばミノタウロスの使役化は不可能ではなく、彼女の魔法の才能ならば仮に竜種であろうと従わせることが出来るとアイリスから太鼓判を受けているレナはティナを危険に晒さず、安全にミノタウロスをほかくする方法を伝える。
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