不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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最終章 前編 〈王都編〉

退魔刀の強化

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「なんじゃお主はさっきから……百面相などしおって、何か言いたいことがあるのか?」
「いや、そういうわけじゃ……あのガジンさん、実はこいつの剣に関してですがちょっと問題がありまして」
「アダマンタイト製の武器の加工が難しい、という事じゃろう?」
「えっ!?ご存じだったんですか!?」
「当り前じゃっ!!最初に見たときから見縫い取ったわい!!」


ガジンはレナの退魔刀が伝説の金属のアダマンタイトが使用されている事に気付いていたらしく、それを知った上で自分ならば打ち直せる事が出来るという。


「ふん!!真の鍛冶師ならばどんな金属であろうと打ち直して見せるわ!!というわけで坊主、お主の剣を持ってこい。この儂が打ち直してやろう!!」
「あ、じゃあ……お願いしていいですか?」
「うむ。ついでにそこの小僧も身に着けている刀を見せてみろ。見たところ、それも相当な業物じゃな?」
「え、僕のも!?」


レナが空間魔法を発動させて退魔刀を取り出すと、ダインも腰に身に着けていた紅蓮を目を付けられ、二人は机に上に大剣と刀を置く。ガジンはそれを確認するとまずは退魔刀に視線を向け、刃に刻まれた魔術痕を見て感心したように頷く。


「ほう、坊主は魔法剣も扱うのか?うむ、中々に見事な魔術痕ではないか。綺麗に刻まれておるのう……これは誰が刻んだ?」
「あ、そこのゴイルさんに協力して貰いました」
「何!?それは本当か?」
「あ、いや……俺は魔石を流し込んだだけで……紋様はこの坊主に刻んで貰いました」


ゴイルが退魔刀に魔術痕を刻んだという話にガジンは驚くが、実際の所はレナの錬金術師の能力で退魔刀の刃に紋様を刻み、その後にゴイルが魔術痕の加工を行っただけである。その事情を話すとゴイルは驚いた表情を浮かべた。


「ほう、坊主は錬金術師だったのか。儂の知り合いに何人かおるぞ、だが坊主のように魔法金属に影響を与えられる能力は持ち合わせていないが……まあいい。それにしても見事な紋様じゃな」
「あの、俺実は魔法の適性が全属性あると思うんですけど、全ての属性の魔術痕を刻む事は出来ますか?」
「ほほう!!それは凄いのう……それにしても全属性の魔術痕を大剣に刻むか、まあ出来なくはないがな」


レナの退魔刀に複数の属性の魔術痕が刻まれているが、聖属性などの魔術痕は未だに刻まれていない。理由としてはゴイルが聖属性の魔術痕の打ち方を知らなかったためだが、流石に伝説の鍛冶師と謳われるガジンは知っている様子だった。

ガジンは退魔刀を眺めながら刀身を観察し、魔術痕に指先を触れたり、剣の柄の具合を確かめる。やがて背中に抱えていた鉄槌で表面を叩くと、その頑丈さを確認して頷く。


「ふむ、確かにこれは伝説の金属のアダマンタイトで間違いはないな。だが、剣の形をしてはいるがこれは剣とは呼べん」
「えっと……」
「分かりやすく言えばこれは只の剣の形をした金属の塊じゃ。どちらかというと鈍器に近い、重さを利用して叩き切る事に特化しておる」


退魔刀の特徴を説明しながらガジンは鉄槌を刃の至る箇所に打ち込み、音を聞き分けながら退魔刀の改良点を話す。


「惜しいのう。この大剣は剣と呼ぶにはあまりにもお粗末じゃ。折角の伝説の金属を使っているにも関わらずにこれではただの頑丈が取り柄の剣でしかない。だが、儂が打ち直せば一流の剣に生まれ変わるはずじゃ」
「ですがガジンさん、アダマンタイトはあまりにも硬すぎます。高温で熱しても溶かす事も難しく、打ち直すにしても生半可な金属の道具だと逆に壊されちまうんですよ?」
「ふん、それはお主の腕が未熟なだけじゃ。よく見ておれ……真の鍛冶師はどんな金属にも屈しはせん!!」
『えっ?』


ガジンは鉄槌を振り上げると、握りしめている腕の筋肉を肥大化させ、気合の雄たけびと共に振り下ろす。その際に鉄槌が光り輝き、退魔刀の刃の中腹部分に衝突した。


「ぬぅんっ!!」
「うわっ!?」
「嘘やろっ!?」
「へ、凹んだ!?」


退魔刀に鉄槌が叩きつけられた瞬間、轟音と共に退魔刀の刃が大きく凹む。これまでに様々な魔物を叩き切りながらも今までに一度も刃毀れを起こした事すらない退魔刀の刃が凹んだ光景に全員が驚愕し、一方でガジンは額の汗を拭って朗らかな笑みを浮かべる。


「がはははっ!!どうじゃ?儂の言った通りじゃろう?この程度の金属など儂の手にかかれば造作はない!!」
「そ、そんな……凄すぎる」
「これが、伝説の鍛冶師の実力……」


大剣の刃を凹ませたガジンに全員が呆然とする中、ガジンはレナが装着している魔法腕輪に気付き、装着している希少な魔水晶の数々に気付いて興味を抱いたように覗き込む。


「ほう、お主のその腕輪……中々に希少な魔水晶を装着しておるな。どれ、ちょっと見せてくれんか?」
「え?あ、はい……」
「ふむふむ、これは中々の品物だな……ぬ?この腕輪はもしや……いや、まさか」
「あの、どうかしました?」


魔法腕輪を受け取ったガジンはレナの腕輪に視線を向けて首を傾げ、この腕輪を何処で入手したのかを問い質す。


「お主、これを何処で手に入れた?これは儂の作品だぞ」
「え?そうだったんですか?」
「うむ、まだ儂が伝説の鍛冶師と呼ばれる前に作り出した代物じゃ。これを何処で手に入れた?」


レナの装着している魔法腕輪は「ミル」という森人族の女性が所持していた物であり、ウルの元々の飼い主である。彼女は深淵の森で暮らしていた時にミノタウロスに殺され、紆余曲折あって現在はレナが所有している。だが、詳しい事情を説明する時間もないのでレナは端的に話す。


「それは深淵の森に生息していたミノタウロスが持っていた物です。奪い取った……という訳でもないんですけど、とにかくミノタウロスから回収しました」
「ぬうっ……そうか、ミノタウロスが持っていたのか」


ガジンはレナの説明に難しい表情を浮かべ、ミノタウロスがどうして自分の知る森人族の魔法腕輪を所持していた事に疑問を抱くが、この魔法腕輪を作った時の事を話す。


「この腕輪はまだ儂が師匠の元を離れ、独り立ちした頃に知り合いの森人族に頼まれて作り出した代物でな。そいつとは古い仲だったのだが、最近は全然顔を会わせなくなった……」
「そうなんですか……」
「すまんが坊主、これを儂に渡してくれんか?ミノタウロスから奪った戦利品である事は分かるが、この腕輪は儂にも思い出深い品物なんじゃ。代わりに新しい魔法腕輪を用意するぞ」
「え、本当ですか?」
「ああ、未熟だったころの儂が作ったこの魔法腕輪よりも優れた魔法腕輪を用意してやろう。だが、その前に聞きたいことがあるのだが……この魔法腕輪に取り付けられている魔水晶を大剣の素材に利用して構わんか?」


レナの魔法腕輪に取り付けられた魔水晶が全て希少な代物である事に気付いたガジンは退魔刀の魔術痕に視線を向け、腕輪の魔水晶を利用すれば更に退魔刀の強化が施せる事が出来るという。


「この腕輪の魔水晶を全て素材に使えばより強力な魔法剣が扱えるようになる。しかも大剣を身に着けているだけで魔法腕輪のように魔法を強化する事も出来るはずじゃが……どうする?」
「えっと……どうしよう?」
「ぼ、僕に聞くなよ……」


思いがけないガジンの言葉にレナは困った風にダインに振り返るが、色々と考えた末にガジンの要求を受け入れ、退魔刀の更なる強化のために託す。




※退魔刀の強化フラグ!!

カタナヅキ「公開ボタンを渡せ、でないとお前は挿絵には絶対に出さないぞ」(#●ω●)つヨコセ
アイリス「くっ……な、なんて卑劣な!!ごめんなさい読者の皆さん……」(;´・ω・)ノ公開ボタン
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