不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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最終章 前編 〈王都編〉

処刑日まで5日

――翌日、まだ朝日が昇る前にレナはウルに乗り込み、リンダとゴンゾウの見送りを受けてガイラの街へ向かう準備を整える。必要な荷物は全て用意すると、相棒の背中を撫で上げながら頼む。


「頼んだぞウル、ちょっと無理するかもしれないけど頑張ってくれ」
「ウォンッ!!」
「お気をつけて下さい。恐らく、既にガイラの街にも王国兵が派遣されているはずです」
「気を付けていけ。何かあったらすぐに戻ってくるんだぞ」
「大丈夫だよ。ゴンちゃん、リンダさん、皆の事は任せたよ」


他の全員はまだ寝静まっているのでレナはわざわざ起きてくれたゴンゾウとリンダと別れを告げると、屋敷を離れて木々を潜り抜ける。幼少の頃から住んでいる森の中なので二人は迷わずに足を運び、平地と移動するのと変わらぬ速度で森の中を駆け出す。


「こうしてると昔を思い出すな……といっても、あれから1年とちょっとぐらいしか経ってないのか」
「ウォオンッ!!」


森を抜け出してから色々な出来事が多すぎて気分的には何年も離れていたように感じるが、実際の所はレナが森を抜け出してから1年程度しか経過していない。それでも1年前と比べればレナもウルも立派に成長を果たし、多くの仲間や友人も出来た。

出来る事ならば自分を育ててくれたアリアが傍に居ればとレナは考えてしまうが、彼女の死がなければ今のレナは存在せず、今はナオを救い出すために集中する。無論、シズネやジャンヌの事も忘れてはおらず、彼女達を救い出すためにはガイラの街に向かう必要があった。


「ウル、魔法を掛けるぞ。頑張ってくれよ」
「ウォンッ!!」


レナはウルの身体にしがみつきながら掌を構え、普段は自分にしか施さない「限界強化」の魔法を施す。この魔法は身体能力の限界まで上昇させる反面、身体の負担が大きすぎるので並みの生物では耐え切れずに身体を壊してしまう。だがら普段は滅多にレナは他者にこの魔法を施す事はないが、今回はどうしてもガイラの街に今日中に到着するためにウルに魔法を実行した。


「ガアアッ……!!」
「うぐっ……頑張れウル!!」


森を抜け出した瞬間にウルの移動速度が格段に跳ね上がり、正面から当たる風に吹き飛ばされないようにレナは背中にしがみつく。苦痛の表情を浮かべながらもウルは主人の願いを叶えるために草原を駆け抜け、ルドリ荒野にまで到着する。

ルドリ荒野は「土竜」の住処のため、本来は極力音を立て過ぎないように移動をする必要がある。だが、身体を強化された状態のウルは風のような速度で駆け出すために移動の際の足音も大きく、荒野に到着して早々に地響きが鳴り響く。


「くっそ、もう気づかれたか……行けるところまで走れウル!!」
「ウォオオンッ!!」


土竜が接近している事に気付いたレナはウルの体力が尽きるまで走らせ、やがて地中から岩石の外殻で覆われた竜種が出現し、二人の前に立ちはだかる。


『オァアアアアッ……!!』
「現れたか……逃げろウル!!」
「ハッ、ハッ……ウォンッ!!」


ここまで全力疾走で移動し続てきたため、疲労が隠しきれなくなったがウルはレナの命令に従い、土竜の巨体を迂回して荒野を駆け抜けた。だが、逃走する二人に土竜は狙いを定め、大口を開いて後を追う。


『オオオッ……!!』
「嘘、小柄な分だけ成体よりも足が速いのか!?」
「ウォンッ……!!」


土竜は外見は鈍重そうに見えるが、巨体の割には移動速度は高く、徐々に速度が落ち始めているウルと距離を縮めていく。その様子を見たレナは魔法で牽制するか考えたが、下手に強力な魔法を発動出せると走行中のウルにも影響が訪れるため、仕方なくウルに任せる。


「頑張れウル!!俺が合図したら止まるんだぞ!!」
「ウォオオオオンッ!!」
『オオオオッ……!!』


相棒を信じてレナはウルを走らせ、土竜との距離を測りながら空を仰ぎ、右腕の風の聖痕を確認して脱出の準備を行う。距離が10メートルにまで迫ると、上半身を起きあげてレナはウルの前方に空間魔法を発動させて「黒渦」を作り出す。


「今だ!!止まれ!!」
「オオンッ!?」


レナの命令にウルは慌てて立ち止まろうとしたが、勢いを殺しきれずに黒渦の中に飲み込まれる。それを確認したレナはウルが完全に黒渦に飲み込まれる前に上空に飛び出すと、氷塊の魔法で円盤を作り出して空中に避難した。


『オアアッ!?』
「じゃあな、岩亀!!」


地上に展開した黒渦を閉じた事で土竜はウルを見失い、空中に逃げたレナを見上げるが、既にレナはダインから借りた「収納石」のブレスレットを利用して異空間に収めておいたハンググラインダーを取り出す。ハンググラインダーに乗り込むと勢いよく跳躍し、風の聖痕を利用して風の力でハンググラインダーを遥か上空にまで飛翔させる。



――オアアアアッ……!!



地上から土竜の餌を逃がした事による悔し気な鳴き声が響き渡り、それを耳にしながらレナは笑みを浮かべてハンググラインダーでガイラの街の方角に向けて飛び立つ。ウルのお陰で大分距離を稼げたので後は障害物が存在しない空からガイラの街へ向かい、塔の大迷宮で商売を行っているカイが暮している屋敷に向けて目指す。




――レナが考えた作戦は1日でガイラの街を往復するため、ウルとハンググラインダーに空間魔法を利用した大胆な移動方法を実行する。

最初に屋敷の裏庭に空間魔法で生み出した「黒渦」を設置した後、ウルに乗り込んでルドリ荒野まで向かう。支援魔法で身体能力を強化させたウルならば短時間でも相当な距離を移動出来るため、限界が訪れたと判断したら空間魔法を発動させて新たな黒渦を作り出し、屋敷に設置した黒渦と繋げて先に戻す。

この方法の弱点があるとすれば空間魔法は二つの黒渦を繋げると異空間から物体を取り出せないため、事前にダインが所有していた収納石を借りてレナはハンググラインダーを収める。そして頃合いを見計らってウルからハンググラインダーに乗り換えて荒野を抜けた先に存在する森や山を上空から通過してガイラの街に向かう。

ここまでは上手くいったがこれからが問題が多く、まず空間魔法を常に維持し続ける事でレナの負担が多くなり、魔力が切れる前にガイラの街へ到着しなければならない。街に到着しても油断は出来ず、もしもレナが意識を失えば魔法の効果が無くなるため、屋敷に設置しておいた黒渦も消失する。


「ここからが本番だな……御祖母様、力を貸して下さい」


既に魔力の消耗によって頭痛が始まっており、自分の意識が切れる前にレナはカイが住むガイラの街に向かうため、風の聖痕の力を利用してハンググラインダーを浮上させる。風の精霊の力を借りれば魔力を消費する事なく移動出来るため、この際に聖痕の力を使いこなすために訓練も行う。


「あと5日……必ず今日中に辿り着いてやる」


周囲に風の精霊を呼び寄せ、ハンググラインダーの移動速度を限界まで伸ばしながらレナは到着までの間に聖痕の力を極めるために集中する――




※前回の話で料理が出来るキャラクターと出来ないキャラクターの表です。


ハヅキ家

ハヅキ(母親)――料理は出来るが基本的な家事は使用人に任せている
キラウ(長女)――料理は意外と出来る
アイラ(次女)――冒険者時代に覚えた
マリア(三女)――姉と同様に料理は出来る。姉よりも上手
レナ(孫)――屋敷を離れた後にずっとウルと暮らしていたので自然と料理が出来る。アイリスの助言のお陰で「調理」のスキルも習得している
アリア(おまけ)――料理は出来るがそんなに美味くはない(アリア(;´・ω・)エッ)


バルトロス王国家

バルトロス13世――出来ない
王妃(イレアミド)――料理の腕前はプロ級。但し、滅多に作らない
ナオ――出来ない
双子――出来ない
レア――そもそも料理をしたことがない
バル(おまけ)――料理は出来ると思い込んでいるが、実際は下手


ヨツバ王国(ティナは除く)

デブリ――若い頃に苦労して料理は美味い
アルン――料理はしない
ノル――料理はしない


ヒロイン組

コトミン――焼き魚とおにぎりぐらいなら作れる
シズネ――傭兵暮らしが長いので料理は美味い
ミナ――料理はした事がない
ティナ――お菓子作りは得意
ジャンヌ――料理はあまり得意ではない

ゴンゾウ(!?)――肉料理が得意
ダイン(!?)――バルと行動していた時に彼女に料理させないために覚えた
スラミン(メインヒロイン)――料理の手伝いぐらいなら出来る
ヒトミン(サブヒロイン)――上記と同じ
プルミン(おまけヒロイン)――料理しない
ホネミン(あ、私もヒロイン枠ですか?)――自分が食べられる状況じゃないので料理はしない。でも、腕前はプロ級
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