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最終章 前編 〈王都編〉
カイとの再会
――移動を開始してから半日以上が経過した頃、既に時間帯は昼を超えて夕方を迎えようとした頃、遂にレナはガイラの街を発見した。既に意識は朦朧としていたが、風を操作してハンググラインダーを下降させると、街の近くに降り立つ。
「くっ……うわっ!?」
精神疲労のせいか着地に失敗してしまい、地面にハンググラインダーごと倒れ込む。身体に痛みが走って眉をしかめるが、皮肉にも痛覚のお陰で朦朧としていた意識を取り戻す。身体全体に錘を取りつけられたように重く感じるが、壊れたハンググラインダーから抜け出してレナは街の方向に向けて歩む。
「あと、少し……」
最早走る事も難しい身体を動かし、街の城壁に向けて歩く。意識を失えば屋敷に設置した黒渦も解除されるため、何としても用事を済ませるまでは眠るわけにはいかず、足を止めずに街に向かう。
「プギィッ!!」
「ギギィッ!!」
「くそ、こんな時に……!?」
だが、街に近寄る途中でレナは背後から魔物の声を耳にして振り返ると、そこにはゴブリンとオークの群れが近づいていた。空から落ちてきたレナに気付いて襲い掛かってくる魔物達に対し、風の聖痕を利用してレナは魔物達を薙ぎ払う。
「邪魔だ!!」
「ギャウッ!?」
「プギャアッ!?」
自分を取り囲む魔物の群れを腕を振り払う動作だけで吹き飛ばしたレナは街に向けて走り出す。既にガイラの街に王国兵が送り込まれているのならば城壁からレナの存在に気付く可能性もあるが、それでもレナは街に向けて体力を絞って駆け抜ける。
体力が少ない状態で戦技を発動させるのは危険のため、風の精霊の力を借りながらレナは草原を駆け抜け、ガイラの街の城門に向かう。それでも諦めの悪い魔物達の何体かは後を追いかけ、背後から襲い掛かろうとした。
「ギギィッ!!」
「うわっ!?」
ゴブリンの1匹が握りしめた手斧を放り投げてレナの肩を掠らせると、移動のために装備を軽装にしていた事が仇となり、刃で斬りつけられた肩から血が舞う。それでもレナは肩を抑えて足を動かし、反撃ではなく前進する事に集中して城門に向かう。
「プギィイイッ!!」
「ぐうっ……おおっ!!」
オークが手製の石槍をレナに向けて投げつけ、今度は左の頬を掠めるがレナは立ち止まらず、走り続けた。だんだんと街に近付いてきたことで魔物達も警戒心を抱き、早急にレナを抑えつけるために武器を次々と投擲してきた。
「ギィッ!!」
「ギィアッ!!」
「プギィイッ!!」
「うわっ……!?」
武器だけではなく、落ちていた石を拾い上げて投げつけてくる魔物も現れ、遂にレナの背中に大きな石が当たって体勢を崩して倒れてしまう。意識を失わずには済んだが、それでも身体の感覚が麻痺して視界も歪み、このままでは危険な状態だった。
(不味い……このままだと、死ぬ)
あと少しで城門にまで辿り着ける所まで来たにもかかわらず、地面に倒れたレナは身体が動かせず、その間に魔物達が接近して止めを刺そうとする。どうにか逃げようとレナは城門に向けて掌を伸ばした直後、一つの影がレナの目の前に現れた。
「――戦技、一刀両断!!」
「ッ――!?」
次の瞬間、何かが切り裂かれる音と同時に魔物の声が聞こえなくなり、周囲に軽い衝撃波が生じた。一体何が起きたのかとレナは顔を見上げると、視界に現れた影の正体が杖を持った老人である事に気付く。
「ふうっ……この年齢で戦技は答えますな」
「カイ、さん……!?」
そこに立っていたのは額に汗を流した状態のカイが存在し、笑顔を浮かべながら倒れているレナに手を伸ばす。差し伸べられた手に無意識にレナは手を伸ばすと、支えられながらも立ち上がる事に成功した。
「おお、やはりレナ殿でしたか……ご無事で何よりです」
「どうして、カイさんがここに……」
「この道は私が大迷宮から戻る時に通る道なんですよ。本当は先ほどまで知り合いの馬車で運んでもらったのですが、戻る途中で魔物に襲われる人物を見つけて助けに向かったのですが……まさか貴方だったとは」
「あははっ……流石は元冒険者」
高齢者でしかも片足が義足の状態にも関わらず、魔物に襲われている人間を見つけて真っ先に駆けつけてくれたカイに対してレナは感謝する。あと少しでもカイが助けるのが遅れて居たら魔物達に殺されていたかも知れず、礼を告げる。
「ありがとうございます。お陰で助かりました……」
「いえいえ、貴方には色々とお世話になりましたからね。少しでも恩返しできれば幸いです……それにしても随分とやつれているようですが、大丈夫なのですか?」
「ここに来るまでに少し無理をしまして……うぐっ」
「これは不味い……すぐに回復薬を!!」
魔物に傷つけられた箇所が痛み、苦痛の表情を浮かべたレナにカイは慌てて回復薬を差し出して傷の治療を行おうとしたが、それを止めてレナはカイに頼み事を行う。
「カイさん……それよりも貴方に協力して欲しい事があるんです」
「協力?いや、それよりも怪我の治療を……」
「いいんです。今、怪我が治ると意識を失ってしまう……それだけは駄目なんです」
「一体何が駄目だというのですか!?」
事情を知らないカイはレナの言葉を理解できず、どうして治療を拒むのか尋ねるが説明する暇もないレナはカイの肩を掴んで頼み込む。
「お願いします、もう時間がないんです……貴方の、持っている経験石を、どうか渡してください」
「経験石を……?」
かつてレナはカイに頼まれて「エクスカリバー」を彼の元に持ち込んだ時、お礼の品として「竜種の経験石」を渡された。前の時はアイリスからの助言で断ったが、今回はミドルを倒すためにどうしても必要だった。
――地竜の経験石を破壊した事でさらなる力を手に入れたミドルに対抗するには、彼のようにレナも竜種の経験石を破壊する事で膨大な経験値を手に入れ、大幅なレベルアップを行う必要があった。アイリスの見立てでは今の状態ではレナはミドルには勝てず、王都のナオを救い出す事は出来ない。
『竜種の経験石を破壊すればレナさんも英雄の領域に至ります。英雄を打ち倒せるのは英雄だけなんです』
この世界ではレベル70を超える人間は歴史上の「英雄」に匹敵する力を得られると信じられ、実際に英雄の領域に至っているゴウライやマリアは単独で竜種を撃破する程の力を所有している。王国最強の大将軍であるミドルも英雄の領域に到達し、更に地竜の経験石を破壊した事で彼は更に大きな力を入手した。
『正直に言えばレナさんが英雄の領域に至ってもミドルには勝てないかもしれません。ですけど、他にミドルを倒す手段はありません。レナさん……貴方は英雄になる覚悟はありますか?』
アイリスからの言葉を思い出したレナは最後に見たミドルの顔を思い出し、剣鬼の力を完全に開放した状態でも勝てなかった。だからこそレナは自分の限界を超えるため、カイに頼み込む。
「お願いします……どうか、経験石を俺に渡してください」
「レナさん……」
「お願い、します……」
カイの胸元に顔を押し付けながらレナは何度も同じ言葉を口にすると、カイはレナの両肩を掴んで起き上がらせると、にっこりと笑顔を浮かべた。
「まずは私の家に向かいましょう……温かいスープとパンぐらいなら用意出来ますよ」
「……お願いします」
レナがカイの言葉を理解したのかは不明だが、彼に肩を担がれたまま街の中へ向かう――
「くっ……うわっ!?」
精神疲労のせいか着地に失敗してしまい、地面にハンググラインダーごと倒れ込む。身体に痛みが走って眉をしかめるが、皮肉にも痛覚のお陰で朦朧としていた意識を取り戻す。身体全体に錘を取りつけられたように重く感じるが、壊れたハンググラインダーから抜け出してレナは街の方向に向けて歩む。
「あと、少し……」
最早走る事も難しい身体を動かし、街の城壁に向けて歩く。意識を失えば屋敷に設置した黒渦も解除されるため、何としても用事を済ませるまでは眠るわけにはいかず、足を止めずに街に向かう。
「プギィッ!!」
「ギギィッ!!」
「くそ、こんな時に……!?」
だが、街に近寄る途中でレナは背後から魔物の声を耳にして振り返ると、そこにはゴブリンとオークの群れが近づいていた。空から落ちてきたレナに気付いて襲い掛かってくる魔物達に対し、風の聖痕を利用してレナは魔物達を薙ぎ払う。
「邪魔だ!!」
「ギャウッ!?」
「プギャアッ!?」
自分を取り囲む魔物の群れを腕を振り払う動作だけで吹き飛ばしたレナは街に向けて走り出す。既にガイラの街に王国兵が送り込まれているのならば城壁からレナの存在に気付く可能性もあるが、それでもレナは街に向けて体力を絞って駆け抜ける。
体力が少ない状態で戦技を発動させるのは危険のため、風の精霊の力を借りながらレナは草原を駆け抜け、ガイラの街の城門に向かう。それでも諦めの悪い魔物達の何体かは後を追いかけ、背後から襲い掛かろうとした。
「ギギィッ!!」
「うわっ!?」
ゴブリンの1匹が握りしめた手斧を放り投げてレナの肩を掠らせると、移動のために装備を軽装にしていた事が仇となり、刃で斬りつけられた肩から血が舞う。それでもレナは肩を抑えて足を動かし、反撃ではなく前進する事に集中して城門に向かう。
「プギィイイッ!!」
「ぐうっ……おおっ!!」
オークが手製の石槍をレナに向けて投げつけ、今度は左の頬を掠めるがレナは立ち止まらず、走り続けた。だんだんと街に近付いてきたことで魔物達も警戒心を抱き、早急にレナを抑えつけるために武器を次々と投擲してきた。
「ギィッ!!」
「ギィアッ!!」
「プギィイッ!!」
「うわっ……!?」
武器だけではなく、落ちていた石を拾い上げて投げつけてくる魔物も現れ、遂にレナの背中に大きな石が当たって体勢を崩して倒れてしまう。意識を失わずには済んだが、それでも身体の感覚が麻痺して視界も歪み、このままでは危険な状態だった。
(不味い……このままだと、死ぬ)
あと少しで城門にまで辿り着ける所まで来たにもかかわらず、地面に倒れたレナは身体が動かせず、その間に魔物達が接近して止めを刺そうとする。どうにか逃げようとレナは城門に向けて掌を伸ばした直後、一つの影がレナの目の前に現れた。
「――戦技、一刀両断!!」
「ッ――!?」
次の瞬間、何かが切り裂かれる音と同時に魔物の声が聞こえなくなり、周囲に軽い衝撃波が生じた。一体何が起きたのかとレナは顔を見上げると、視界に現れた影の正体が杖を持った老人である事に気付く。
「ふうっ……この年齢で戦技は答えますな」
「カイ、さん……!?」
そこに立っていたのは額に汗を流した状態のカイが存在し、笑顔を浮かべながら倒れているレナに手を伸ばす。差し伸べられた手に無意識にレナは手を伸ばすと、支えられながらも立ち上がる事に成功した。
「おお、やはりレナ殿でしたか……ご無事で何よりです」
「どうして、カイさんがここに……」
「この道は私が大迷宮から戻る時に通る道なんですよ。本当は先ほどまで知り合いの馬車で運んでもらったのですが、戻る途中で魔物に襲われる人物を見つけて助けに向かったのですが……まさか貴方だったとは」
「あははっ……流石は元冒険者」
高齢者でしかも片足が義足の状態にも関わらず、魔物に襲われている人間を見つけて真っ先に駆けつけてくれたカイに対してレナは感謝する。あと少しでもカイが助けるのが遅れて居たら魔物達に殺されていたかも知れず、礼を告げる。
「ありがとうございます。お陰で助かりました……」
「いえいえ、貴方には色々とお世話になりましたからね。少しでも恩返しできれば幸いです……それにしても随分とやつれているようですが、大丈夫なのですか?」
「ここに来るまでに少し無理をしまして……うぐっ」
「これは不味い……すぐに回復薬を!!」
魔物に傷つけられた箇所が痛み、苦痛の表情を浮かべたレナにカイは慌てて回復薬を差し出して傷の治療を行おうとしたが、それを止めてレナはカイに頼み事を行う。
「カイさん……それよりも貴方に協力して欲しい事があるんです」
「協力?いや、それよりも怪我の治療を……」
「いいんです。今、怪我が治ると意識を失ってしまう……それだけは駄目なんです」
「一体何が駄目だというのですか!?」
事情を知らないカイはレナの言葉を理解できず、どうして治療を拒むのか尋ねるが説明する暇もないレナはカイの肩を掴んで頼み込む。
「お願いします、もう時間がないんです……貴方の、持っている経験石を、どうか渡してください」
「経験石を……?」
かつてレナはカイに頼まれて「エクスカリバー」を彼の元に持ち込んだ時、お礼の品として「竜種の経験石」を渡された。前の時はアイリスからの助言で断ったが、今回はミドルを倒すためにどうしても必要だった。
――地竜の経験石を破壊した事でさらなる力を手に入れたミドルに対抗するには、彼のようにレナも竜種の経験石を破壊する事で膨大な経験値を手に入れ、大幅なレベルアップを行う必要があった。アイリスの見立てでは今の状態ではレナはミドルには勝てず、王都のナオを救い出す事は出来ない。
『竜種の経験石を破壊すればレナさんも英雄の領域に至ります。英雄を打ち倒せるのは英雄だけなんです』
この世界ではレベル70を超える人間は歴史上の「英雄」に匹敵する力を得られると信じられ、実際に英雄の領域に至っているゴウライやマリアは単独で竜種を撃破する程の力を所有している。王国最強の大将軍であるミドルも英雄の領域に到達し、更に地竜の経験石を破壊した事で彼は更に大きな力を入手した。
『正直に言えばレナさんが英雄の領域に至ってもミドルには勝てないかもしれません。ですけど、他にミドルを倒す手段はありません。レナさん……貴方は英雄になる覚悟はありますか?』
アイリスからの言葉を思い出したレナは最後に見たミドルの顔を思い出し、剣鬼の力を完全に開放した状態でも勝てなかった。だからこそレナは自分の限界を超えるため、カイに頼み込む。
「お願いします……どうか、経験石を俺に渡してください」
「レナさん……」
「お願い、します……」
カイの胸元に顔を押し付けながらレナは何度も同じ言葉を口にすると、カイはレナの両肩を掴んで起き上がらせると、にっこりと笑顔を浮かべた。
「まずは私の家に向かいましょう……温かいスープとパンぐらいなら用意出来ますよ」
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