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最終章 王国編
居合剣士
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――通路にてダインがオウネンを打ち倒し、城壁ではエリナとコトミンが敵を倒した頃、地下牢に向かったレナとゴンゾウは兵士達を蹴散らして無事に拘束されているはずのシズネの元へ辿り着く。
「シズネ!!無事か……あれ?」
「……随分と遅い白馬の王子様ね」
『どうも~』
「これは……どういう状況だ?」
地下牢の扉を開くと、そこには牢屋から抜け出したシズネとホネミンの姿があり、一体何が起きているのかとレナとゴンゾウは呆気に取られると、既に魔鎧術で人間状態に戻っていたホネミンが牢屋の中で割れた状態で転がっている壺を指差しながら状況を説明してくれた。
『いや、大変でしたよ。わざと捕まったふりをして他の人を助けようと思ったんですけど、どうもここで待ってても他の人が来る様子がないので自力で脱出しました』
「手錠や檻の鍵は……」
『あ、魔鎧術の応用で簡単に開きましたよ。ほら、こんな感じに……』
ホネミンは指先に魔力を集中させると鍵の形をした魔力の塊を生み出し、どうやらこの能力でシズネの手錠と檻の鍵を開けたらしく、無事に脱出に成功したシズネはため息を吐きながらレナ達に現状を尋ねる。
「それで、今はどういう状況なのかしら?」
「えっと……もう戦闘は始まってるよ。とにかく、王妃を捕まえてナオ達を救う必要がある」
「そう、分かったわ……迷惑を掛けたわね。助けてくれてありがとう」
『いや、助けたのは私ですけど』
「……そ、そうね。礼を言うわ」
あまり時間に余裕がないのでレナは手短に説明するとシズネはだいたいの状況を察し、彼女はやっと自由になった身体を動かすと、自分も戦闘に参加するためにレナに振り返る。
「それで……私の武器も用意してくれたのかしら?」
「ああ、とっておきの奴を持ってきたよ。ほら、受け取って」
敵に捕まった時点でシズネの装備は取り上げられた事を予測してレナは笑みを浮かべ、彼女に自分が愛用していた「反鏡剣」を差しだす。武器を受け取ったシズネは驚いた表情を浮かべ、本当に受け取っていいのか戸惑う。
「これは……貴方の武器じゃない。本当に借りてもいいの?」
「仕方ないよ、魔剣と釣り合える武器なんてそれぐらいしかないから」
「でも、それだと貴方に負担が……いえ、こうもあっさりと渡すという事は何か考えがあるのね?」
「ああ、代用品はあるよ」
レナから反鏡剣を受け取ったシズネは鞘から刀身を引き抜き、その鏡のように煌めく刀身を見て笑みを浮かべ、実は前々からこちらの剣に対して興味を抱いていた。鞘を腰に収めるとシズネは素振りを行い、重さも大きさも雪月花と酷似している事から扱いやすい。
以前に彼女が所持していたレナが作り出したアダマンタイト製の刀は少々重すぎたのでシズネでは完全には扱いこなせなかったが、反鏡剣を手にした彼女は予想以上の扱いやすさに喜び、素直に礼を言う。
「なら、しばらくの間だけこの剣を借りるわ」
「大切にしてね」
『じゃあ、早速こんな陰気臭い所から脱出しましょうか。兵士が降りてきたら面倒ですよ』
「そうだな……ぬっ!?」
ゴンゾウが率先して地下牢から抜け出そうとした瞬間、扉に手を伸ばそうとした瞬間、外側から強烈な殺気を感じ取ったゴンゾウは慌てて引き下がる。次の瞬間、鋼鉄製の扉に外側から緑色の刀身の刃が出現し、そのまま3つに切り裂かれた扉が崩壊して地下牢内に煙が舞う。
一体何が起きたのかと全員が身構えると、叩き切った扉を踏みつけながら現れたのは緑色の大太刀を構えた剣聖の「ハヤテ」が姿を現す。外見は可憐な少女にしか見えないが、いともたやすく鋼鉄の扉を破壊した彼女の剣技を見て全員が冷や汗を流す。
「剣聖のハヤテか……!!」
「また、面倒な相手が降りて来たわね」
「……あんたも俺達の敵か?」
「…………」
現れたハヤテはレナに向けて指差して小声で何かつぶやくが、あまりにも声量が小さすぎて普通の人間には聞き取れない。但し、元々は森人族であるホネミンだけは聞き取れたのか彼女が代わりに代弁する。
『やっと見つけた。お前を探していたと言ってますよ』
「俺を……なんで?」
「…………」
『前回に自分を虚仮にしてくれた借りを返しに来たとか言ってますけど』
「借りってなんだよ……あっ、もしかしてあの時のあれか?」
レナは以前に冒険都市でハヤテと対峙した事を思い出し、あの時は彼女の「居合」の弱点を突いて逃げ出した事を思い出す。ハヤテは絶対の自信を持っていた剣技がレナにあっさりと敗れた事を気にしていたらしく、今回は前回の決着をつけるために現れたという。
「…………っ!!」
『今日こそはお前と正面から挑んで来いと言ってますね。どうします?』
「そんなこと言われても……しょうがない、シズさんやっておしまいなさい」
「誰がシズさんよ!!というか、まだ身体が解れていないのに私に剣聖の相手をさせる気?」
「…………っ!!」
『ふざけるな、お前が来い!!と言ってます』
「仕方ないな……ゴンちゃん、二人を頼むよ」
「大丈夫か?」
退魔刀を引き抜いたレナはハヤテと向き合うと、彼女も大太刀を鞘に戻して「居合」の体勢に入る。本来、小柄な体格の彼女が大太刀を扱う時点で不利に思えわれるかもしれないが、外見は少女のようでも実際はレナ達の何倍も生きている剣士であり、体格の不利など彼女には関係ない。
剣聖の中でも「疾風の剣聖」と呼ばれている彼女の「居合」は攻撃速度も威力も凄まじく、彼女の剣の一撃はゴウライさえも上回ると言われている。そんなハヤテに対して今回は足場を崩して居合の体勢を乱す方法は出来ず、レナは退魔刀を正面から構えた。
(カイさん……力を貸してください)
レナは遂に実戦で「一刀両断」を発動させるために意識を集中させ、レナの雰囲気が変化した事を同じ剣士であるシズネとハヤテだけが感じとる。先ほどまでと表情を一変させたレナに対してハヤテは笑みを浮かべ、自分の本来の役目を行う前に彼とはどうしても決着を付けたかった。
二人の一流の剣士が向き合い、攻撃のタイミングを計る中、地下牢に静寂が包まれる。だが、最初に動いたのはレナでもハヤテでもなく、なんとホネミンがハヤテに向けて駆け出す。
『ぶるぁあああっ!!』
「ホネミン!?」
「……!?」
奇声を上げながら突如としてハヤテに飛びつこうとした彼女に全員が驚くが、ハヤテは即座に冷静になって彼女に向けて鞘から刀を引き抜く。ハヤテの扱う太刀は弟子であるシュンと同様に「風の斬撃」を纏うが、その一撃の威力はシュンを遥かに上回り、ホネミンの胴体を切り裂くだけではなく天井に亀裂を生じさせた。
「ほ、ホネミン!?」
「そんな!?」
「ああっ!?」
空中で切り裂かれたホネミンを見てレナ達は悲鳴を上げそうになるが、切り裂かれたはずの上半身と下半身が突如として魔鎧術を解除して骨の状態に戻ると、顎をカタカタと動かしながらホネミンはハヤテに襲いかかる。
「カタカタカタッ……!!」
「っ……!?」
唐突に自分の身体に無数の骨が降りてきてハヤテは驚愕するが、その隙を逃さずにホネミンは全ての骨を利用して魔鎧術を再び発動させ、今度は骨同士を組み合わせて「光の鎖」のようにハヤテの肉体を拘束する。そして頭部はハヤテの顔の前に移動させると、高らかな笑い声をあげた。
『あははははっ!!どうですか?私の切られる演技は?本当に切ったと思ったでしょう?』
「っ……!?……!?」
『ふふん、あの程度の攻撃で私を殺せる思わないで下さい。というか、正直自分でもどうすれば死ぬのか分からないぐらいに不死身ですからね!!さあ、降伏しなさい!!』
「え、ええ~……」
まさかの予想外の大活躍を果たしたホネミンに全員が何とも言えない表情を浮かべ、ハヤテは自分に纏わりつくホネミンを引き剥がそうとしたが、魔鎧術で構成された鎖は簡単には破壊出来そうになかった。
※さ、流石はホネミン……シリアスブレイカーですね!!(; ゚Д゚)ゴクリッ
「シズネ!!無事か……あれ?」
「……随分と遅い白馬の王子様ね」
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『いや、大変でしたよ。わざと捕まったふりをして他の人を助けようと思ったんですけど、どうもここで待ってても他の人が来る様子がないので自力で脱出しました』
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『あ、魔鎧術の応用で簡単に開きましたよ。ほら、こんな感じに……』
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「それで、今はどういう状況なのかしら?」
「えっと……もう戦闘は始まってるよ。とにかく、王妃を捕まえてナオ達を救う必要がある」
「そう、分かったわ……迷惑を掛けたわね。助けてくれてありがとう」
『いや、助けたのは私ですけど』
「……そ、そうね。礼を言うわ」
あまり時間に余裕がないのでレナは手短に説明するとシズネはだいたいの状況を察し、彼女はやっと自由になった身体を動かすと、自分も戦闘に参加するためにレナに振り返る。
「それで……私の武器も用意してくれたのかしら?」
「ああ、とっておきの奴を持ってきたよ。ほら、受け取って」
敵に捕まった時点でシズネの装備は取り上げられた事を予測してレナは笑みを浮かべ、彼女に自分が愛用していた「反鏡剣」を差しだす。武器を受け取ったシズネは驚いた表情を浮かべ、本当に受け取っていいのか戸惑う。
「これは……貴方の武器じゃない。本当に借りてもいいの?」
「仕方ないよ、魔剣と釣り合える武器なんてそれぐらいしかないから」
「でも、それだと貴方に負担が……いえ、こうもあっさりと渡すという事は何か考えがあるのね?」
「ああ、代用品はあるよ」
レナから反鏡剣を受け取ったシズネは鞘から刀身を引き抜き、その鏡のように煌めく刀身を見て笑みを浮かべ、実は前々からこちらの剣に対して興味を抱いていた。鞘を腰に収めるとシズネは素振りを行い、重さも大きさも雪月花と酷似している事から扱いやすい。
以前に彼女が所持していたレナが作り出したアダマンタイト製の刀は少々重すぎたのでシズネでは完全には扱いこなせなかったが、反鏡剣を手にした彼女は予想以上の扱いやすさに喜び、素直に礼を言う。
「なら、しばらくの間だけこの剣を借りるわ」
「大切にしてね」
『じゃあ、早速こんな陰気臭い所から脱出しましょうか。兵士が降りてきたら面倒ですよ』
「そうだな……ぬっ!?」
ゴンゾウが率先して地下牢から抜け出そうとした瞬間、扉に手を伸ばそうとした瞬間、外側から強烈な殺気を感じ取ったゴンゾウは慌てて引き下がる。次の瞬間、鋼鉄製の扉に外側から緑色の刀身の刃が出現し、そのまま3つに切り裂かれた扉が崩壊して地下牢内に煙が舞う。
一体何が起きたのかと全員が身構えると、叩き切った扉を踏みつけながら現れたのは緑色の大太刀を構えた剣聖の「ハヤテ」が姿を現す。外見は可憐な少女にしか見えないが、いともたやすく鋼鉄の扉を破壊した彼女の剣技を見て全員が冷や汗を流す。
「剣聖のハヤテか……!!」
「また、面倒な相手が降りて来たわね」
「……あんたも俺達の敵か?」
「…………」
現れたハヤテはレナに向けて指差して小声で何かつぶやくが、あまりにも声量が小さすぎて普通の人間には聞き取れない。但し、元々は森人族であるホネミンだけは聞き取れたのか彼女が代わりに代弁する。
『やっと見つけた。お前を探していたと言ってますよ』
「俺を……なんで?」
「…………」
『前回に自分を虚仮にしてくれた借りを返しに来たとか言ってますけど』
「借りってなんだよ……あっ、もしかしてあの時のあれか?」
レナは以前に冒険都市でハヤテと対峙した事を思い出し、あの時は彼女の「居合」の弱点を突いて逃げ出した事を思い出す。ハヤテは絶対の自信を持っていた剣技がレナにあっさりと敗れた事を気にしていたらしく、今回は前回の決着をつけるために現れたという。
「…………っ!!」
『今日こそはお前と正面から挑んで来いと言ってますね。どうします?』
「そんなこと言われても……しょうがない、シズさんやっておしまいなさい」
「誰がシズさんよ!!というか、まだ身体が解れていないのに私に剣聖の相手をさせる気?」
「…………っ!!」
『ふざけるな、お前が来い!!と言ってます』
「仕方ないな……ゴンちゃん、二人を頼むよ」
「大丈夫か?」
退魔刀を引き抜いたレナはハヤテと向き合うと、彼女も大太刀を鞘に戻して「居合」の体勢に入る。本来、小柄な体格の彼女が大太刀を扱う時点で不利に思えわれるかもしれないが、外見は少女のようでも実際はレナ達の何倍も生きている剣士であり、体格の不利など彼女には関係ない。
剣聖の中でも「疾風の剣聖」と呼ばれている彼女の「居合」は攻撃速度も威力も凄まじく、彼女の剣の一撃はゴウライさえも上回ると言われている。そんなハヤテに対して今回は足場を崩して居合の体勢を乱す方法は出来ず、レナは退魔刀を正面から構えた。
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二人の一流の剣士が向き合い、攻撃のタイミングを計る中、地下牢に静寂が包まれる。だが、最初に動いたのはレナでもハヤテでもなく、なんとホネミンがハヤテに向けて駆け出す。
『ぶるぁあああっ!!』
「ホネミン!?」
「……!?」
奇声を上げながら突如としてハヤテに飛びつこうとした彼女に全員が驚くが、ハヤテは即座に冷静になって彼女に向けて鞘から刀を引き抜く。ハヤテの扱う太刀は弟子であるシュンと同様に「風の斬撃」を纏うが、その一撃の威力はシュンを遥かに上回り、ホネミンの胴体を切り裂くだけではなく天井に亀裂を生じさせた。
「ほ、ホネミン!?」
「そんな!?」
「ああっ!?」
空中で切り裂かれたホネミンを見てレナ達は悲鳴を上げそうになるが、切り裂かれたはずの上半身と下半身が突如として魔鎧術を解除して骨の状態に戻ると、顎をカタカタと動かしながらホネミンはハヤテに襲いかかる。
「カタカタカタッ……!!」
「っ……!?」
唐突に自分の身体に無数の骨が降りてきてハヤテは驚愕するが、その隙を逃さずにホネミンは全ての骨を利用して魔鎧術を再び発動させ、今度は骨同士を組み合わせて「光の鎖」のようにハヤテの肉体を拘束する。そして頭部はハヤテの顔の前に移動させると、高らかな笑い声をあげた。
『あははははっ!!どうですか?私の切られる演技は?本当に切ったと思ったでしょう?』
「っ……!?……!?」
『ふふん、あの程度の攻撃で私を殺せる思わないで下さい。というか、正直自分でもどうすれば死ぬのか分からないぐらいに不死身ですからね!!さあ、降伏しなさい!!』
「え、ええ~……」
まさかの予想外の大活躍を果たしたホネミンに全員が何とも言えない表情を浮かべ、ハヤテは自分に纏わりつくホネミンを引き剥がそうとしたが、魔鎧術で構成された鎖は簡単には破壊出来そうになかった。
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