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最終章 王国編

破壊の化身

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「ブモォッ!!」
「きゃあっ!?」
「キュロロッ!?」


咄嗟にミノは背負っていたティナの身体をアインに向けて投げ飛ばすと、慌ててアインは彼女の身体を抱きかかえる。だが、その間にもゴウライはミノタウロスの元へ迫り、胴体に向けてデュランダルを振りぬく。


『ぬぅんっ!!』
「ッ……!?」
「ああっ!?」


ゴウライが大剣を振りぬいた瞬間、ミノの腹部に鮮血が舞い、巨体が吹き飛ばされた。それを目撃したティナは悲鳴をあげ、そんな彼女をアインは抱えてその場を離れる。


「は、離してアインちゃん!!ミノ君が……」
「馬鹿野郎!!下がってろ!!」
「ティナ様、逃げて下さい!!」


必死にミノを助けるためにティナは手を伸ばすが、彼女の横をシュンとリンダが横切り、ゴウライの前に立つ。ゴウライは大剣の地下を振り祓うと二人に視線を向け、黙って大剣を構えた。


「おい、ゴウライ!!不意打ちなんて、てめえらしくないだろうが!!一体どうした!?」
「ティナ様に危害を加えるようならば容赦はしません……!!」
『……敵、か』


二人の言葉が届いていないのか、ゴウライは黙って大剣を横に構え、それを確認したシュンとリンダは彼が普通の状態ではないと悟って身構える。


「こいつ……どうしたってんだ?」
「分かりません……ですが、この者が敵になった事だけは確かなようですね」
「ちっ……まさかここでてめえとの因縁に決着を着ける事になるとはな……来やがれデカブツ!!」
『ぬぅんっ!!』


ゴウライが横薙ぎに大剣を振り払った瞬間、強烈な剣圧が発生して周囲に衝撃派の様に広がる。シュンとリンダの身体が後方に押し込まれ、そのあまりの威圧に裏庭に存在した全員が硬直し、圧倒的な存在感を放つゴウライに目を離せない。

大剣を両手で握り閉めたゴウライは頭上に刃を抱えると、それを目撃したシュンは目を見開き、即座にリンダに警告を行う。


「やばい……逃げろリンダ!!」
「えっ……!?」
『兜……割りぃっ!!』


頭上に構えた大剣が振り下ろされた瞬間、剣士ならば誰もが最初に覚えるはずの「兜割り」の戦技が発動し、刃が振り下ろされた瞬間に強烈な衝撃波が発生して地面を切り裂く。そのあまりにも馬鹿げた威力を誇る斬撃にシュンとリンダは左右に分かれて回避に成功したが、続けてゴウライは大剣を横薙ぎに振り払った。


『旋風』
「うおおっ!?」
「きゃあっ!?」


今度は横薙ぎに振り払わた大剣から衝撃波が発生し、慌ててシュンは地面に伏せて回避するが、リンダは髪の毛の一部が切れてしまう。衝撃波は城壁にまで届いて壁に亀裂を生じさせ、まともに受けていたら身体は引き裂かれていいただろう。


「う、嘘でしょ……ゴウライさんって、こんなに強いの!?」
「当たり前です……あの方は正真正銘、この世界最強の剣士なのですから」


ミナとジャンヌはお互いに戦っていた事を忘れて唐突に現れたゴウライに視線を奪われ、他の兵士達もあまりの強さを誇るゴウライに恐怖して身体が動かず、悲鳴をあげる事も出来ない。この場に残るのは危険だとは分かっているが、獅子に睨まれた鼠のように身体が言う事を利かない。


「このっ!!よくもティナ様を傷つけさせないっす!!」
「ミノの仇……!!」
「ぷるるんっ!!」


城壁の上から様子を伺っていたエリナとコトミンがゴウライに向けて倒した兵士が使用していたボーガンを拾い上げて射出し、スラミンが放水を行うが、ゴウライはその場を跳躍して空中で回転しながら別の場所へ着地する。全身を甲冑で覆っているのに獣人族顔負けの身軽さを見せつけたゴウライにリンダは驚愕した。


「あれほどの重装備でなんと身軽な……!!」
「ガアアッ!!」
「おい、止めろ犬コロ!?」


ウルがゴウライに向けて駆け出し、その鋭利な牙を放とうとしたが、ゴウライは振り返りもせずに背後に迫るウルに対してデュランダルを振りぬき、裏庭に血飛沫が舞う。


「ギャウンッ!?」
「う、ウルちゃん!?」
「キュロロロッ!?」


右目から血を噴き出したウルが地面に倒れ込み、そのままゴウライは止めを刺すつもりなのか大剣を振り上げようとした時、アインが咄嗟にティナを地面に下ろしてゴウライに突進する。


「キュロロロッ!!」
「駄目、アインちゃっ……」
『ふんっ』


両手で顔を覆いながら突進を仕掛けてきたアインに対してゴウライは今度は大剣を正面に構え、アインの両腕を切り落とす。


「ギュロォオオオッ!?」
「いやぁあああっ!!」


アインとティナの悲鳴が裏庭に響き渡り、サイクロプスの頑丈な鱗で覆われた腕をまるでバターでも切るかの様に斬り落としたゴウライに誰もが怯え、剣聖であるシュンとジャンヌ、そして王国四騎士のリンダまで圧倒される。


「つ、強すぎる……」
「ゴウライ様は本気で私達を……」
「くそがっ……うおおおっ!!」


それでもシュンは剣を握り締めて刃を振るい、ゴウライに向けて無数の風の斬撃を放つ。だが、避けるまでもないのかゴウライは甲冑に斬撃を受けながらも大剣を上段に構え、両腕を失って膝を付いたアインの頭部に振り下ろそうとした。それを見たティナは彼を守るため、駆け出す。


「止めてぇええっ!!」
「ティナ様!?駄目です!!」
「なっ!?」


ティナの予想外の行動にリンダは止めようとしたが距離が遠く、シュンはゴウライへの攻撃を中断してしまう。その間にもゴウライの大剣がアインに迫り、頭部を叩き割ろうとした瞬間、ゴウライの頭上から人影が誕生した。


「はああああっ!!」
『っ……!?』


頭上から現れた人物がゴウライに目掛けて飛び蹴りを放ち、予想外の攻撃に大剣の起動がずれてアインの頭部を横切って地面に突き刺さる。一体何が起きたのかと全員が視線を向けると、そこには長剣を握り締めたアイラの姿が存在し、彼女は空中で回転しながら追撃とばかりに蹴りを放つ。


「輪脚!!」
『ぐうっ……!?』


甲冑越しにも関わらずにアイラが繰り出した蹴りを受けたゴウライは呻き声を上げ、地面に片膝を付く。その間にもティナとアインを後方から抱きかかえる人物が現れ、ゴウライがアイラに気を取られている内に二人を引き離す。


「ほら、あんた達はこっちだよ!!」
「ギュロォッ……!?」
「わわっ!?」
「バル殿!?どうしてここに……」


アインとティナを両腕で抱えたバルの姿を見てリンダは驚愕の声を上げ、更に彼女達以外にもゴウライに攻撃を仕掛ける人物が存在した。


「抜刀!!」
「辻斬り!!」
『ぬうっ!?』


ゴウライの背後から金属音が鳴り響き、彼女が振り返るとそこには地下通路で交戦していたはずのハンゾウとラナの姿が存在し、彼女達は武器を構えてゴウライと向かい合う。その姿を見てエリナは歓喜の声を上げた。


「ハンゾウさん!!それにラナの姉さんも!!どうしてこんなに早くここへ辿り着いたんですか!?」
「思わぬ援軍が来たのでござるよ……既に地下通路の脱出路は確保しているでござる!!」
「そこの二人に助けられた……退路は確保したぞ」
「ふふふっ……息子が頑張っているのに寝てられないわ」
「たく、どういう状況だい……こりゃ、引退している場合じゃないね。あたしも今日から現役復帰だよ!!」
『おおっ……!!』


地下通路で黒影と交戦していたハンゾウ達はどうやらバルとアイラが援軍として現れたらしく、無事に黒影を殲滅して場外への脱出路を確保した。しかし、地上に出ると何故かゴウライと他の皆が戦闘中だったため、急いで加勢に訪れたらしい。

大勢の武人に囲まれたゴウライは何故か歓喜の声を上げ、大剣を引き抜いて全員と向き合う。敵が増えたにも関わらずにゴウライは恐れる様子も怯える姿も見せず、逆に興奮したように咆哮を上げた。
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