不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
575 / 2,090
最終章 王国編

人質との合流

しおりを挟む
「やった!!兜を破壊した……えっ!?」
「お、女ぁっ!?」
「嘘!?女性だったのでござるか!?」
「あらあら……驚いたわ」
「ま、マジかよ……」


ゴウライの素顔が露わになった瞬間にシズネ以外の全員が驚愕の声を上げ、中年男性だと思い込んでいた相手が女性のしかもダークエルフだと知って動揺を隠せない。しかし、今は時間がないのでゴウライの素顔を気にしている暇はなく、隙を見せた彼女を正気に戻すために動く。


「今だ!!全員で掛かれ!!」
「ちっ、しょうがないね……撃剣!!」
「輪脚!!」
「勁撃!!」
「抜刀!!」
「螺旋槍!!」
「回転!!」
「あぐぅっ!?」


シュンの言葉を聞いて即座にバル、アイラ、リンダ、ハンゾウ、ミナ、ジャンヌが動き出し、兜が破壊された事で隙を見せたゴウライに対して全く同時に戦技を放つ。一度に多人数に攻撃されればゴウライであろうと防ぐ事は出来ず、全身に衝撃を受けたゴウライは膝を付いた。


「ブモォオオオッ!!」
「キュロロッ!!」
「糸縛り!!」
「ぬおっ……!?」


その隙にアインとミノがゴウライの両腕を抑えつけ、更にラナが両手から細い糸を取り出してゴウライの首筋を縛り付ける。続けてシュンが駆け抜け、ティナの身体を掴んでゴウライの元へ放り投げた。


「後は頼んだぞティナ様!!」
「うわわっ!?」
「シュン!?貴方、ティナ様になんてことを……!!」


放り投げられたティナは悲鳴を上げながらもゴウライの元へ向かい、そのまま露わになった彼女の顔に向けて手を伸ばすが、若干距離が足りずにゴウライの目の前で落下する。


「あわわっ!?」
「ティナ様!?」
「ういっ!!」
「ぷるるんっ!?」


城壁に居たコトミンが落下するティナを見て咄嗟にスラミンを彼女の元へ放り投げると、地面に墜落する寸前にスラミンが先に地面に叩きつけられると、そのまま弾力を利用してティナの身体を跳ね飛ばす。


「とらんぶりん!!」
「はわわっ!?」
『えええっ!?』


まるでトランポリンのようにスラミンがティナの胸元から彼女の身体を上空へ吹き飛ばすと、今度こそゴウライの頭の上にティナは乗り込み、目を回しながらも回復魔法を施す。


「え、ええ~い!!」
「おああっ!?」


頭に聖属性の魔力を流し込まれたゴウライは目を見開き、彼女の身体に宿っていた闇属性の魔力が浄化され、やがて煙と化してゴウライの身体から離れていく。その際、煙に一瞬だけ老人の顔のような物が浮かんだが、誰にも気付かれる事はなく煙は消散した。

完全に闇属性の魔力を放出したゴウライに全員が視線を向け、冷や汗を流しながらティナはゴウライの目元を覆っていた両手を離すと、そこには虚ろな瞳の彼女の顔が存在し、ゆっくりと地面に倒れ込む。


「うぐっ……」
「わわわっ!?」
「ご、ゴウライ様!?」
「おい、どうした!?」
「退きなさい!!」


唐突に倒れ込んだゴウライの元に慌ててシュンとジャンヌが駆けつけると、シズネが先にゴウライの元へ近づき、頭に手を伸ばす。しばらくの間は沈黙が走り、やがてシズネは手を離すと呆れた表情を浮かべる。


「……気絶した、というよりは疲れて寝ているわ」
『はあっ!?』
「ふごぉおおおっ……ふがっ、んごぉおおおっ……!!」


シズネの言葉の直後にゴウライの寝言が裏庭に響き渡り、その様子を見てシズネは頭を抑え、他の者達は呆れた表情を浮かべる。あれほどの戦技を浴びせてもゴウライの肉体には大きな損傷は見当たらず、遊び疲れた子供が眠るように穏やかな表情を浮かべながら眠るゴウライに全員がため息を吐く。


「な、何なのだこいつは……」
「完全に眠っていますね……起こすべきでしょうか?」
「もういい、そんな馬鹿は放っておけ……くそ、魔力も体力も使い切っちまった」
「ふうっ……こんなに疲れたのは久しぶりだね」
「やっぱり身体が訛っているわ。もう少し普段から運動しておくべきだったわね」
「でも、良かったぁっ……私達、勝ったんだよね」


ゴウライを戦闘不能に追い込んだ事でバルたちは安堵の表情を浮かべるが、そんな彼女達に対してシズネは冷静に否定する。


「いえ、まだ終わっていないわよ。王妃と他の人質を救出するまでは安心出来ないでしょう?」
「あっ!?そうだった!!」
「こうしてはいられません!!すぐに国王様達を見つけ出さないと……!!」
「それにナオちゃんも助けないと!!」
「その必要はないぞ……」


シズネの言葉を聞いて慌ててリンダとティナは立ち上がったが、そんな彼女達の後方から声が響き渡り、全員が振り向くとそこにはナオの肩を抱えたデブリ国王とアルンとノルが歩く姿が存在した。彼等を見て全員が驚き、慌てて4人の元へ向かう。


「国王様!!ご無事だったのですね!?」
「お父さん!!それにお兄ちゃんとお姉ちゃんも!!」
「おお、ティナ!!お前も無事だったのか!!」
「会いたかったですわ!!」
「これは……どういう事なの?」


唐突に現れたデブリ達にティナは涙目で駆けつけ、彼等を抱きしめる。だが、どうして彼等がこの場に現れたのかシズネは疑問を抱くと、デブリに肩を貸してもらったナオが背後を指差す。


「レミアだ……レミア将軍に私達は助けてもらったんだ」
「申し訳ありません……救援が遅くなりました」
「レミア!!貴女も無事だったのね?」


4人の背後にはレミアの姿も存在し、どうやら彼女が牢屋から脱出して捕まっているナオ達の元へ駆けつけたらしく、全員を救い出したらしい。鍵に関してはホネミンのように魔鎧術を応用して突破したらしく、無事に全員の拘束を解除して抜け出したようだった。


「遅れて申し訳ありません……監視が厳しく、抜け出す隙が見つからずに今まで捕まって猪田ですが、地上の様子が騒がしい事に気付いてやっと脱出出来ました」
「そうだったの……随分と苦労したようね」
「いえ、私などよりもナオ様やヨツバ王国の王族の方々が辛い目にあっていたようです……もっと早く私が抜け出していればこんな事には……」
「何を言うかレミア殿、お主のお陰でこうして我等は再会できた。この御恩、一生忘れんぞ」
「あ、ありがとうございます」


デブリに頭を下げられて慌ててレミアも顔を上げるように促すと、これで人質は全員が救出された事になり、後は王妃とミドルを捕まえ、ついでに城門を解放して民衆を城内に引き込めば革命団の目的は果たされる。


「悪いけど、再会の喜びを分かち合うのは後にしましょう。今は他にするべき事があるわ」
「何だ?自分だって捕まってたくせに仕切り始めやがって……」
「今は貴方とくだらない争いをしている暇はないわ。レナとダインが王妃とミドルの元へ向かってる……恐らく、もう戦闘は始まっているわ」
「何だって!?レナが……城内に!?」


義弟のレナが既に城内に存在している事を知ったナオは傷を抑える腕を離して走り出そうとしたが、数日間も牢屋で捕まっていたせいか身体が思う様に動かず、足をもつれて転んでしまう。


「うぐっ……く、くそっ……こんな時に」
「ナオちゃん!!無理しちゃ駄目だよ!!」
「ここは拙者たちに任せて欲しいでござる!!シズネ殿、御二人は今何処に?」
「玉座の間よ……だけど、今から言っても間に合わないわ」
「どういう意味ですか?」


シズネの言葉に全員が驚くと、彼女は深刻な表情を浮かべながら玉座の間が存在する方角へ視線を向け、二人の無事を祈るように呟く。


「……恐らく、もう決着はついているわ」
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。