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外伝 ~ヨツバ王国編~
六聖将
「それでシズネのお父さんとクレナイという人はどっちが勝ったの?」
「引き分けよ、決着は着かなかったと聞いているわ」
「引き分け……」
レナはシズネの父親は会ったことはないが、牙竜を打ち倒したゴウライと互角に渡り合う程の実力者であったと聞いており、少なくともクレナイの実力が剣聖と同程度である事は間違いない。だが、シズネは更に言葉を続けた。
「正確に言えば引き分けにして貰ったというべきね……父はクレナイとの一騎打ちで重傷を負い、三日三晩は生死の境を彷徨ったらしいわ。一方でクレナイの方は武器が破損しただけで掠り傷一つ負わなかったそうよ」
「え?」
「試合の結果自体はクレナイが終始優勢にすすめていたわ。だけど、父の反撃を受けてクレナイは自分の武器が壊れた事を理由に勝負を放棄したのよ。武人の誇りである武器を失ってしまった以上、この勝負は自分の敗北であると宣言したわ。だけど、負傷した父はクレナイの言い分に納得出来ずに勝負を続けようとしたけど、クレナイは頑なに断ったそうよ」
負傷を追い込まれながらも相手の武器を破壊して戦闘不能に追い込んだ父、武器を失いながらも致命傷を相手に与えたクレナイ、結局は両国の王が相談した結果この試合は「引き分け」という形で終了した。当然だがギランは納得しなかったが、文句を言う前に彼は負傷の影響で気を失ってしまい、その間にヨツバ王国の一行は国へ引き返してしまう。
勝負自体はクレナイの勝利で間違いはないが、ギランが彼の武器を破壊した事は紛れもない事実のため、もしも実戦だった場合は武器を失ったクレナイがギランに殺されていた可能性もある。だからこそ二人の勝負は「試合の勝者はクレナイ、勝負の勝者はギラン」だと判断されたが、ギランは最後まで納得しなかったという。
「父はよく手紙を書いてヨツバ王国に送っていたわ。内容はクレナイとの再戦を申し込んでいたようだけど、そもそも同盟国同士で国を代表する将軍の決闘を行う事自体がおかなしな話だったのよ。結局、クレナイは父の提案を受け入れることはなかったわ」
「へえ……そんな事があったのか」
「という事は、クレナイという将軍はシズネの父と同格、あるいはそれ以上の使い手なのか」
会話の最中にゴンゾウも割込み、彼もクレナイという六聖将に強い興味を抱いたらしく、一体どのような人物なのかエリナに尋ねた。
「エリナ、そのクレナイという将軍はどんな御仁だ?」
「そうっすね……とにかく寡黙な人で普段は滅多に他人と口を利く事もない人です。アカイさんも無口な方ですけど、クレナイ将軍の場合は本当に滅多に口を開きません。アカイさんを相手にするときですら必要最低限の会話しかしませんね」
「結構、冷たい感じ?」
「どうですかね……あたしはあんまり関わり合いはありませんけど、でも部下の人達から慕われていますよ。あ、ちなみにクレナイさんの役職は「守備将」です。王都近辺の守衛を任されている六聖将っす。ちなみに防護将の人はツバサという名前の綺麗な女の人です。六聖将であると同時にミドリ家の現当主のお姉さんでとても偉い御方です」
「ミドリ家?確かそれってハヤテやライコフの……」
ミドリ家という単語にレナの脳裏にハヤテとライコフの顔が思い浮かび、両者共にレナの家系である「ハヅキ家」と同様にヨツバ王国の貴族の中でも「三大貴族」に数えられる程の名家である。ツバサと呼ばれる女性は六聖将を務めるミドリ家の者らしく、六聖将の中でも特別な存在らしい。
「ツバサさんは本当に優しくて綺麗な御方で皆からも慕われています。実はリンダの姐さんやシュンの兄さんも元々はツバサさんの元で指導を受けてたんですよ」
「へえ……あの二人が?」
「今の世代で有名な騎士の殆どはツバサさんの元で指導を受けてますからね。あ、それとツバサさんは兄貴の御婆さんのハヅキさんと仲が良かったですよ」
「御婆様と?」
「何でも二人は幼馴染らしくて昔はよく一緒に行動していたらしいですよ。それにハヅキさんも現役の頃は六聖将を務めていたそうですから、そこら辺は兄貴は聞いてないんすか?」
「いや、初耳だよ」
ハヅキが六聖将を務めていたという話はレナも初めて知り、そもそも六聖将という存在自体が今日初めて知ったのだが、エリナによればハヅキとツバサの幼馴染だという。
「そのツバサという将軍は六聖将の中でどんな役職をしていたの?」
「ツバサさんは防護将っす!!本来は王族の身辺を守るための護衛部隊を組織しています!!本当なら今回の遠征も同行する予定だったんですけど……急遽、病にかかって同行できなかったんです」
「あらら……そんなに重い病なの?」
「分かりません。あたしも病気で同行出来なくなったとしか説明されていませんから……でも、ツバサさんなら事情を話せば絶対にあたしたちの味方をしてくれると思うんです!!ツバサさんは誰よりも争い事を嫌うから、きっと今頃は戦争を引き起こそうとしているカレハ様にも反対していると思います!!」
エリナは余程ツバサという人物を信用しているらしく、鼻息荒く彼女が戦争に参加するはずがない事を断言する。それ程までにエリナが信頼を置く人物ならばレナも出来れば会ってみたいと考えるが、今は他の将軍の特徴も聞かなければならない。
「他の将軍に関しては?名前と特徴を教えて貰えると助かるんだけど」
「特徴ですか?えっと、北聖将を務めるのは「ハシラ」という男の将軍です。弓矢の名手であたしも手ほどきを受けたことがありますね。南聖将は「レイビ」と呼ばれる女の将軍で、鞭を得意とする魔物使いの職業の将軍です。東聖将は「ギンタロウ」と呼ばれる大男の将軍が居ます。この人は森人族何ですけど特殊な退室の持ち主で巨人族の人にも負けない怪力を誇ります。最後の西聖将は「シン」あたしも会った事はありませんけど、守人家と呼ばれる貴族の当主を務めています。普段は王都から離れた場所に存在する遺跡の守護を任されています」
「守人家……」
守人家の名前はレナも何度か聞いたことがあり、ハヅキ家、ミドリ家と並ぶヨツバ王国の中でも三大貴族に数えられる名家である。エリナもこの人物だけは顔を合わせた事はなく、将軍でありながら西聖将だけは王都から離れた森の奥地に存在する古代遺跡を守護しているという。
「その西聖将というのが気になるわね。どうしてその将軍だけ王都から離れているのかしら?」
「詳しい事はあたしも知りませんけど、何でも西聖将は必ず守人家の末裔だけが就任する事が義務付けられているそうです。そして西聖将の役目は王族を守る事ではなく、国を守る事を第一にしているとか……すいません、それ以上の事はあたしも分からないっす」
「国を守る……?」
どうして王家を守るはずの六聖将の一角が王都から離れた場所に存在する遺跡を守護する事が義務付けられているのかはエリナも知らないらしく、少なくとも西聖将に関しては立場上、遺跡の守護のために戦力を分ける事は出来ないと考えられ、バルトロス王国へ責め上がる事はないと考えられた。
「ちなみに各聖将の部隊は守備将が王都近辺を管理する「警備部隊」防護将が王族の護衛を任せられる「護衛部隊」北聖将は後方支援を得意とする「弓兵部隊」南聖将は魔獣を扱う「魔獣部隊」東聖将は狩猟を得意とする「狩猟部隊」最後の西聖将に関しては精霊魔法を得意とする「魔法部隊」に分けられます」
「なるほど、各聖将ごとに部隊が分けられているのか……」
聖将によって役割が振り分けられており、この中で戦争に参加しない事が確定しているのは西聖将の「魔法部隊」である。
「引き分けよ、決着は着かなかったと聞いているわ」
「引き分け……」
レナはシズネの父親は会ったことはないが、牙竜を打ち倒したゴウライと互角に渡り合う程の実力者であったと聞いており、少なくともクレナイの実力が剣聖と同程度である事は間違いない。だが、シズネは更に言葉を続けた。
「正確に言えば引き分けにして貰ったというべきね……父はクレナイとの一騎打ちで重傷を負い、三日三晩は生死の境を彷徨ったらしいわ。一方でクレナイの方は武器が破損しただけで掠り傷一つ負わなかったそうよ」
「え?」
「試合の結果自体はクレナイが終始優勢にすすめていたわ。だけど、父の反撃を受けてクレナイは自分の武器が壊れた事を理由に勝負を放棄したのよ。武人の誇りである武器を失ってしまった以上、この勝負は自分の敗北であると宣言したわ。だけど、負傷した父はクレナイの言い分に納得出来ずに勝負を続けようとしたけど、クレナイは頑なに断ったそうよ」
負傷を追い込まれながらも相手の武器を破壊して戦闘不能に追い込んだ父、武器を失いながらも致命傷を相手に与えたクレナイ、結局は両国の王が相談した結果この試合は「引き分け」という形で終了した。当然だがギランは納得しなかったが、文句を言う前に彼は負傷の影響で気を失ってしまい、その間にヨツバ王国の一行は国へ引き返してしまう。
勝負自体はクレナイの勝利で間違いはないが、ギランが彼の武器を破壊した事は紛れもない事実のため、もしも実戦だった場合は武器を失ったクレナイがギランに殺されていた可能性もある。だからこそ二人の勝負は「試合の勝者はクレナイ、勝負の勝者はギラン」だと判断されたが、ギランは最後まで納得しなかったという。
「父はよく手紙を書いてヨツバ王国に送っていたわ。内容はクレナイとの再戦を申し込んでいたようだけど、そもそも同盟国同士で国を代表する将軍の決闘を行う事自体がおかなしな話だったのよ。結局、クレナイは父の提案を受け入れることはなかったわ」
「へえ……そんな事があったのか」
「という事は、クレナイという将軍はシズネの父と同格、あるいはそれ以上の使い手なのか」
会話の最中にゴンゾウも割込み、彼もクレナイという六聖将に強い興味を抱いたらしく、一体どのような人物なのかエリナに尋ねた。
「エリナ、そのクレナイという将軍はどんな御仁だ?」
「そうっすね……とにかく寡黙な人で普段は滅多に他人と口を利く事もない人です。アカイさんも無口な方ですけど、クレナイ将軍の場合は本当に滅多に口を開きません。アカイさんを相手にするときですら必要最低限の会話しかしませんね」
「結構、冷たい感じ?」
「どうですかね……あたしはあんまり関わり合いはありませんけど、でも部下の人達から慕われていますよ。あ、ちなみにクレナイさんの役職は「守備将」です。王都近辺の守衛を任されている六聖将っす。ちなみに防護将の人はツバサという名前の綺麗な女の人です。六聖将であると同時にミドリ家の現当主のお姉さんでとても偉い御方です」
「ミドリ家?確かそれってハヤテやライコフの……」
ミドリ家という単語にレナの脳裏にハヤテとライコフの顔が思い浮かび、両者共にレナの家系である「ハヅキ家」と同様にヨツバ王国の貴族の中でも「三大貴族」に数えられる程の名家である。ツバサと呼ばれる女性は六聖将を務めるミドリ家の者らしく、六聖将の中でも特別な存在らしい。
「ツバサさんは本当に優しくて綺麗な御方で皆からも慕われています。実はリンダの姐さんやシュンの兄さんも元々はツバサさんの元で指導を受けてたんですよ」
「へえ……あの二人が?」
「今の世代で有名な騎士の殆どはツバサさんの元で指導を受けてますからね。あ、それとツバサさんは兄貴の御婆さんのハヅキさんと仲が良かったですよ」
「御婆様と?」
「何でも二人は幼馴染らしくて昔はよく一緒に行動していたらしいですよ。それにハヅキさんも現役の頃は六聖将を務めていたそうですから、そこら辺は兄貴は聞いてないんすか?」
「いや、初耳だよ」
ハヅキが六聖将を務めていたという話はレナも初めて知り、そもそも六聖将という存在自体が今日初めて知ったのだが、エリナによればハヅキとツバサの幼馴染だという。
「そのツバサという将軍は六聖将の中でどんな役職をしていたの?」
「ツバサさんは防護将っす!!本来は王族の身辺を守るための護衛部隊を組織しています!!本当なら今回の遠征も同行する予定だったんですけど……急遽、病にかかって同行できなかったんです」
「あらら……そんなに重い病なの?」
「分かりません。あたしも病気で同行出来なくなったとしか説明されていませんから……でも、ツバサさんなら事情を話せば絶対にあたしたちの味方をしてくれると思うんです!!ツバサさんは誰よりも争い事を嫌うから、きっと今頃は戦争を引き起こそうとしているカレハ様にも反対していると思います!!」
エリナは余程ツバサという人物を信用しているらしく、鼻息荒く彼女が戦争に参加するはずがない事を断言する。それ程までにエリナが信頼を置く人物ならばレナも出来れば会ってみたいと考えるが、今は他の将軍の特徴も聞かなければならない。
「他の将軍に関しては?名前と特徴を教えて貰えると助かるんだけど」
「特徴ですか?えっと、北聖将を務めるのは「ハシラ」という男の将軍です。弓矢の名手であたしも手ほどきを受けたことがありますね。南聖将は「レイビ」と呼ばれる女の将軍で、鞭を得意とする魔物使いの職業の将軍です。東聖将は「ギンタロウ」と呼ばれる大男の将軍が居ます。この人は森人族何ですけど特殊な退室の持ち主で巨人族の人にも負けない怪力を誇ります。最後の西聖将は「シン」あたしも会った事はありませんけど、守人家と呼ばれる貴族の当主を務めています。普段は王都から離れた場所に存在する遺跡の守護を任されています」
「守人家……」
守人家の名前はレナも何度か聞いたことがあり、ハヅキ家、ミドリ家と並ぶヨツバ王国の中でも三大貴族に数えられる名家である。エリナもこの人物だけは顔を合わせた事はなく、将軍でありながら西聖将だけは王都から離れた森の奥地に存在する古代遺跡を守護しているという。
「その西聖将というのが気になるわね。どうしてその将軍だけ王都から離れているのかしら?」
「詳しい事はあたしも知りませんけど、何でも西聖将は必ず守人家の末裔だけが就任する事が義務付けられているそうです。そして西聖将の役目は王族を守る事ではなく、国を守る事を第一にしているとか……すいません、それ以上の事はあたしも分からないっす」
「国を守る……?」
どうして王家を守るはずの六聖将の一角が王都から離れた場所に存在する遺跡を守護する事が義務付けられているのかはエリナも知らないらしく、少なくとも西聖将に関しては立場上、遺跡の守護のために戦力を分ける事は出来ないと考えられ、バルトロス王国へ責め上がる事はないと考えられた。
「ちなみに各聖将の部隊は守備将が王都近辺を管理する「警備部隊」防護将が王族の護衛を任せられる「護衛部隊」北聖将は後方支援を得意とする「弓兵部隊」南聖将は魔獣を扱う「魔獣部隊」東聖将は狩猟を得意とする「狩猟部隊」最後の西聖将に関しては精霊魔法を得意とする「魔法部隊」に分けられます」
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聖将によって役割が振り分けられており、この中で戦争に参加しない事が確定しているのは西聖将の「魔法部隊」である。
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