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外伝 ~ヨツバ王国編~
アトラス大森林
――レナ達が王都を発ってから数日が経過し、遂にアトラス大森林へと辿り着く。予定よりも大分早く到着したが、問題なのはここから先はヨツバ王国の領地に入るため、森の中に潜む兵士の警備を掻い潜って進まなければならない。
大森林という名前が付けられている事からレナは密林のような場所だと思い込んでいたが、実際のアトラス大森林はレナの想像を遥かに超えていた。1つ1つの樹木の大きさが尋常ではなく、まるで自分が小人になったような錯覚を感じる程に巨木が延々と続いていた。
「ここがアトラス大森林……なんか、想像していたよりも凄い光景だな」
「人間の方々を連れてくるとだいたいそういう感想を抱かれますね。あたし達は産まれた時からこの森の中で育っているのでよく分からないんですけど、そんなに変な光景なんすか?」
「いや、変と言うより壮大過ぎて他の感想が思いつかないんだよ……」
「拙者たちの知る「森」とは大きく異なるようでござるな……」
「気圧されるな、これから我等はこの森の中を進むんだぞ」
「ウォンッ……」
どんなに小さい樹木でも全長が50メートルを超える巨木のため、深淵の森と比べても遥かに規模や雰囲気が違う森に圧倒されてしまうが、何時までも立ち止まっていても仕方がないのでレナ達は先に進む。ここから先は警備を行う兵士に見つからないように移動しなければならないため、慎重に進む。
「じゃあ、しっかりとあたしに付いてきてください。産まれた時から住んでいるとはいえ、この森は広大なのであたしも全部把握しているわけじゃありませんから気を付けて進まないと迷子になって一生出てこれなくなりますから……」
「怖い事を言うなよ……もしも兵士に見つかったどうする?」
「出来る限り交戦は避けなければならん。相手は1万の軍隊、一方でこちらは4人と2体……最悪の場合は撤退するしかあるまい」
「ここから先は見つからないようにスキルを駆使して移動するでござる」
「ウルとアインは野生の魔獣のふりをして過ごせよ」
「ウォンッ……」
「キュロロッ……」
レナは久々に「隠密」「無音歩行」「気配遮断」の戦技を発動させ、更に周囲の状況を詳しく把握するために「気配感知」「魔力感知」で周囲の警戒、お呼び「遠視」「観察眼」「鑑定眼」のスキルも発動させて様子を伺う。本来ならば複数のスキルの同時の使用は体力を消耗するが、今のレナならば苦にもならない。
(森の中にも生物の気配が結構感じるな……深淵の森と比べても魔獣が多く生息しているようだ。時々、魔力が強い個体がいるけどこれは樹精霊かな?)
森の中を進みながらレナは次々と生物の存在を感じ取り、中には魔獣ではなく魔人族らしき反応も確認した。敵は森人族の兵士だけではなく、森の中に巣食う凶悪な魔獣も相手にしなければならない。深淵の森と比べても魔物の数や質は高いらしく、時折強力な反応を感じとる。
「待て、あちらの方角から強い獣臭を感じる……恐らく、赤毛熊だろう」
「え?臭いだけで種類が分かるの?」
「兄者の嗅覚は確かでござる。犬型の獣人族にも負けない程の鋭い嗅覚を持っているから拙者たちでも嗅ぎ取れない臭いでも分かるのでござる」
「凄いっすね、あたしも鼻には自信があるけど全然臭わないのに……」
「グルルルッ……!!」
先頭を移動していたカゲマルが赤毛熊の臭いを感じ取ると、ほぼ同時にウルも気づいたらしく、こちらに向けて接近してくる赤毛熊の存在を感知した。戦闘になると厄介な相手のため、レナ達はお互いに散って身を隠す。
「ウガァッ……?」
レナ達が身を隠してからしばらくすると、森の奥から体長が5メートルを超える赤毛熊が姿を現し、鼻を鳴らしながら周囲の様子を伺う。どうやらレナ達の臭いを嗅ぎ取って訪れたようだが獲物の姿が見えない事に疑問を抱き、しつこく周囲の様子を探る。
余計な戦闘は避けなければならないが、臭いを嗅ぎ取って追跡されると面倒な事態になるため、枝の上に隠れていたレナは空間魔法を発動させて新調した「退魔刀」を取り出す。
――ミドルとの戦闘の際、レナの退魔刀は破損してしまい、装着していた7つの魔石も完全に壊れてしまった。そこでレナはガジンに頼み込んで新しく剣を打ち直してもらう。黒渦の中から以前よりも重量感が増し、漆黒の刃に7つの魔術痕が刻まれた大剣を手にしたレナは赤毛熊に目掛けて飛び降りる。
「はあっ!!」
「ガアッ……!?」
赤毛熊の頭上から振り下ろされた退魔刀の刃が巨体を二つに切り裂き、かつては苦しめられた強敵も今現在のレナならば戦技を発動させずに容易く倒す。文字通りに一刀両断された赤毛熊の死体が地面に倒れると、その様子を確認していたエリナ達が驚愕の表情を浮かべた。
「ひええっ……兄貴、相変わらず凄いっすね。成体の赤毛熊をこんなにあっさり倒すなんて……」
「より腕に磨きがかかったでござるな……」
「流石はマリア様の甥……いや、この場合は拳鬼の息子というべきか」
「こんなのミドルの奴と比べたら赤ちゃんみたいなもんだよ。ほら、先に進もう……あ、ウル!!勝手に死骸を食い漁ろうとするな!!」
「ウォンッ!?」
切り裂いた赤毛熊の死骸に空腹だったウルは噛みつこうとしたが、レナの命令を受けて慌てて離れる。死骸に食いつけば必然的に血の臭いも付いてしまうため、移動の際に嗅覚が鋭い魔獣に感づかれる恐れがあった。残念ながら死骸は放置しなければならず、素材を剥ぎ取る時間もないのでレナ達は先に急ぐ。
「それにしても森の出入口で赤毛熊と遭遇する事になるなんて……普通の赤毛熊は森の奥に住処を作ると思ってたけど、このアトラス大森林ではあんなのが普通に出てくるの?」
「いや、少し前まではこんな事は滅多に起きなかったんですけどね……旧都にユニコーンが住処を形成してから旧都周辺に暮らしていた魔獣が別の場所に住処を移した事で生態系に影響が出てこっちも困ってるんですよ。普通なら赤毛熊がこんな森の端の方に現れるなんて有り得ない事なんすけど……」
「竜種が生息する地域には魔獣が寄り付かないように、力が強い個体が生息する地域には他の魔獣は恐れを為して近寄る事もない。赤毛熊程の魔物が住処を移動する当たり、その旧都に住み着いたユニコーンとやらは竜種に匹敵する力を持つのかもしれん」
「竜種か……」
レナが遭遇した竜種は全部で3体存在し、まずは聖剣の力を使用して打ち倒した「腐敗竜」次に塔の大迷宮にて遭遇した世界最強の竜種と言われている「白竜」最後に冒険都市に襲撃した「地竜」である。地竜の幼体である「土竜」と遭遇した事も含めれば合計で4体の竜種とレナ達は遭遇し、その内の2体は討伐を果たしていた。
竜種は災害の象徴と呼ばれる程に驚異的な戦闘力と能力を持ち、対抗出来る存在は聖剣の所有者か、あるいはマリアやゴウライのような規格外の能力を持つ人間(両者の場合は森人族だが……)にしか対応出来ない。英雄の領域に至ったレナでさえも単独では腐敗竜や地竜には及ばない。そんな竜種と同等かあるいはそれに近い力を持つユニコーンが旧都を支配した事によってアトラス大森林の生態系は大きく影響を受けているという。
「旧都を支配したユニコーンをどうにかしないと生態系がどんどん乱れるんじゃないの?」
「それはまあ、分かってはいるんですけどね……国の象徴でもあるユニコーンを流石に討伐するのは不味い事なんで……」
ヨツバ王国側もユニコーンの成体がアトラス大森林の生態系に大きな影響を与えている事は承知しているが、どうしても討伐までには踏み入る事が出来ず、仕方なく放置している状況だった。
大森林という名前が付けられている事からレナは密林のような場所だと思い込んでいたが、実際のアトラス大森林はレナの想像を遥かに超えていた。1つ1つの樹木の大きさが尋常ではなく、まるで自分が小人になったような錯覚を感じる程に巨木が延々と続いていた。
「ここがアトラス大森林……なんか、想像していたよりも凄い光景だな」
「人間の方々を連れてくるとだいたいそういう感想を抱かれますね。あたし達は産まれた時からこの森の中で育っているのでよく分からないんですけど、そんなに変な光景なんすか?」
「いや、変と言うより壮大過ぎて他の感想が思いつかないんだよ……」
「拙者たちの知る「森」とは大きく異なるようでござるな……」
「気圧されるな、これから我等はこの森の中を進むんだぞ」
「ウォンッ……」
どんなに小さい樹木でも全長が50メートルを超える巨木のため、深淵の森と比べても遥かに規模や雰囲気が違う森に圧倒されてしまうが、何時までも立ち止まっていても仕方がないのでレナ達は先に進む。ここから先は警備を行う兵士に見つからないように移動しなければならないため、慎重に進む。
「じゃあ、しっかりとあたしに付いてきてください。産まれた時から住んでいるとはいえ、この森は広大なのであたしも全部把握しているわけじゃありませんから気を付けて進まないと迷子になって一生出てこれなくなりますから……」
「怖い事を言うなよ……もしも兵士に見つかったどうする?」
「出来る限り交戦は避けなければならん。相手は1万の軍隊、一方でこちらは4人と2体……最悪の場合は撤退するしかあるまい」
「ここから先は見つからないようにスキルを駆使して移動するでござる」
「ウルとアインは野生の魔獣のふりをして過ごせよ」
「ウォンッ……」
「キュロロッ……」
レナは久々に「隠密」「無音歩行」「気配遮断」の戦技を発動させ、更に周囲の状況を詳しく把握するために「気配感知」「魔力感知」で周囲の警戒、お呼び「遠視」「観察眼」「鑑定眼」のスキルも発動させて様子を伺う。本来ならば複数のスキルの同時の使用は体力を消耗するが、今のレナならば苦にもならない。
(森の中にも生物の気配が結構感じるな……深淵の森と比べても魔獣が多く生息しているようだ。時々、魔力が強い個体がいるけどこれは樹精霊かな?)
森の中を進みながらレナは次々と生物の存在を感じ取り、中には魔獣ではなく魔人族らしき反応も確認した。敵は森人族の兵士だけではなく、森の中に巣食う凶悪な魔獣も相手にしなければならない。深淵の森と比べても魔物の数や質は高いらしく、時折強力な反応を感じとる。
「待て、あちらの方角から強い獣臭を感じる……恐らく、赤毛熊だろう」
「え?臭いだけで種類が分かるの?」
「兄者の嗅覚は確かでござる。犬型の獣人族にも負けない程の鋭い嗅覚を持っているから拙者たちでも嗅ぎ取れない臭いでも分かるのでござる」
「凄いっすね、あたしも鼻には自信があるけど全然臭わないのに……」
「グルルルッ……!!」
先頭を移動していたカゲマルが赤毛熊の臭いを感じ取ると、ほぼ同時にウルも気づいたらしく、こちらに向けて接近してくる赤毛熊の存在を感知した。戦闘になると厄介な相手のため、レナ達はお互いに散って身を隠す。
「ウガァッ……?」
レナ達が身を隠してからしばらくすると、森の奥から体長が5メートルを超える赤毛熊が姿を現し、鼻を鳴らしながら周囲の様子を伺う。どうやらレナ達の臭いを嗅ぎ取って訪れたようだが獲物の姿が見えない事に疑問を抱き、しつこく周囲の様子を探る。
余計な戦闘は避けなければならないが、臭いを嗅ぎ取って追跡されると面倒な事態になるため、枝の上に隠れていたレナは空間魔法を発動させて新調した「退魔刀」を取り出す。
――ミドルとの戦闘の際、レナの退魔刀は破損してしまい、装着していた7つの魔石も完全に壊れてしまった。そこでレナはガジンに頼み込んで新しく剣を打ち直してもらう。黒渦の中から以前よりも重量感が増し、漆黒の刃に7つの魔術痕が刻まれた大剣を手にしたレナは赤毛熊に目掛けて飛び降りる。
「はあっ!!」
「ガアッ……!?」
赤毛熊の頭上から振り下ろされた退魔刀の刃が巨体を二つに切り裂き、かつては苦しめられた強敵も今現在のレナならば戦技を発動させずに容易く倒す。文字通りに一刀両断された赤毛熊の死体が地面に倒れると、その様子を確認していたエリナ達が驚愕の表情を浮かべた。
「ひええっ……兄貴、相変わらず凄いっすね。成体の赤毛熊をこんなにあっさり倒すなんて……」
「より腕に磨きがかかったでござるな……」
「流石はマリア様の甥……いや、この場合は拳鬼の息子というべきか」
「こんなのミドルの奴と比べたら赤ちゃんみたいなもんだよ。ほら、先に進もう……あ、ウル!!勝手に死骸を食い漁ろうとするな!!」
「ウォンッ!?」
切り裂いた赤毛熊の死骸に空腹だったウルは噛みつこうとしたが、レナの命令を受けて慌てて離れる。死骸に食いつけば必然的に血の臭いも付いてしまうため、移動の際に嗅覚が鋭い魔獣に感づかれる恐れがあった。残念ながら死骸は放置しなければならず、素材を剥ぎ取る時間もないのでレナ達は先に急ぐ。
「それにしても森の出入口で赤毛熊と遭遇する事になるなんて……普通の赤毛熊は森の奥に住処を作ると思ってたけど、このアトラス大森林ではあんなのが普通に出てくるの?」
「いや、少し前まではこんな事は滅多に起きなかったんですけどね……旧都にユニコーンが住処を形成してから旧都周辺に暮らしていた魔獣が別の場所に住処を移した事で生態系に影響が出てこっちも困ってるんですよ。普通なら赤毛熊がこんな森の端の方に現れるなんて有り得ない事なんすけど……」
「竜種が生息する地域には魔獣が寄り付かないように、力が強い個体が生息する地域には他の魔獣は恐れを為して近寄る事もない。赤毛熊程の魔物が住処を移動する当たり、その旧都に住み着いたユニコーンとやらは竜種に匹敵する力を持つのかもしれん」
「竜種か……」
レナが遭遇した竜種は全部で3体存在し、まずは聖剣の力を使用して打ち倒した「腐敗竜」次に塔の大迷宮にて遭遇した世界最強の竜種と言われている「白竜」最後に冒険都市に襲撃した「地竜」である。地竜の幼体である「土竜」と遭遇した事も含めれば合計で4体の竜種とレナ達は遭遇し、その内の2体は討伐を果たしていた。
竜種は災害の象徴と呼ばれる程に驚異的な戦闘力と能力を持ち、対抗出来る存在は聖剣の所有者か、あるいはマリアやゴウライのような規格外の能力を持つ人間(両者の場合は森人族だが……)にしか対応出来ない。英雄の領域に至ったレナでさえも単独では腐敗竜や地竜には及ばない。そんな竜種と同等かあるいはそれに近い力を持つユニコーンが旧都を支配した事によってアトラス大森林の生態系は大きく影響を受けているという。
「旧都を支配したユニコーンをどうにかしないと生態系がどんどん乱れるんじゃないの?」
「それはまあ、分かってはいるんですけどね……国の象徴でもあるユニコーンを流石に討伐するのは不味い事なんで……」
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