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外伝 ~ヨツバ王国編~
フェンリル対レナ
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「レナ殿、拙者たちも加勢するでござる!!」
「迂闊に近づくなハンゾウ!!距離を保て!!」
ハンゾウとカゲマルが大樹の枝の上から小袋を取り出し、フェンリルに目掛けて放つ。本能的に危険を察したフェンリルは小袋を回避するために後方に飛ぶと、二人が投げた小袋は地面に衝突した瞬間に破裂して茶色の粉末が散布される。
「キャウンッ!?」
「キュロンッ!?」
「これは……腐敗石の粉末か」
茶色の粉末を吸い込まないようにレナは口元を抑え、ウルとアインは嫌がるようにその場を離れる。腐敗石は魔物だけが嫌がる異臭を発する魔石のため、以前にレナは魔物使いのバジルが使用した粉末剤の事を思い出す。フェンリルも流石に腐敗石の異臭は応えるのか臭いを嫌がるように前脚を振り下ろす。
「ガアッ!!」
「このっ……舐めるな!!」
「嘘っ!?」
爪の形状を想像させる衝撃波によってフェンリルは粉末を吹き飛ばし、その際にレナに攻撃を仕掛けたが、子供の頃にアリアとの遊戯で風の力を「回し受け」の戦技で跳ね返したようにレナは退魔刀を振りぬいて「風」を切り裂く。フェンリルの爪から放たれる衝撃波は力任せに振りぬいて発生させた風圧ではなく、魔力が感じられた。
(こいつの爪と牙は普通じゃない……多分、魔石の様に特別な素材なんだ)
レナは「鑑定眼」の能力を発動させてフェンリルの様子を調べると、予想通りというべきかフェンリルの爪と牙の部分には魔石のように魔力を帯びている事が判明した。鑑定眼の能力で人物を鑑定した場合はステータスが表示されるが、魔物の場合は種族名と能力だけが表示される。
―――――――――――――
フェンリル
種族:魔狼種
属性:風属性
特徴:全ての狼型の魔獣の原種。魔物だけではなく魔石などの鉱石を喰らい、能力を強化する事が出来る。爪と牙は金属のように硬く、これまでに喰らった鉱石の魔力を蓄積して攻撃に利用する。
―――――――――――――
視界に表示された画面を確認したレナはフェンリルの特徴を見て、人間が扱う魔法剣のように魔力を込めた攻撃が出来ると見抜く。要するに先ほどからのフェンリルが繰り出す衝撃波は魔法の力で生み出した物だと分かれば問題なく、恐れずに向かう。
「行くぞ犬ころっ!!」
「ガアアッ!!」
正面から迫ってきたレナに対してフェンリルは前脚を振り下ろして再び衝撃波を生み出そうとしたが、レナが右腕を前に差しだすと「風の聖痕」の紋様が浮かび、正面から放たれた衝撃波を四散させる。
「ッ……!?」
「生憎と、その手の攻撃は効かないんだよ!!」
風の聖痕の所持者に対して風属性の魔法は効果を為さず、どれほどの出力の魔法だろうと吸収する事が出来た。衝撃波を掻き消されたフェンリルは咄嗟に反対の前脚を振り下ろそうとしたが、先にレナが退魔刀を振り翳す。
「回転撃!!」
「ウォンッ!?」
「嘘っ!?」
下から振り上げる形で振りぬいた退魔刀の刃がフェンリルの前脚の爪に衝突し、弾き返す。その光景を見たエリナは驚愕の声を上げ、その一方で大樹から降りてフェンリルの背後から接近していたハンゾウとカゲマルも仕掛ける。
「辻斬り!!」
「抜刀!!」
「ウガァッ……!?」
背後から二人の戦技が放たれ、カゲマルは短刀を両手に構えてフェンリルの首筋を狙い、ハンゾウは刀を引き抜いてフェンリルの後ろ脚を切り裂く。だが、両者の攻撃では表面の毛皮を少し刈り取ったぐらいで肉の部分にまでは刃が届かず、致命傷どころか掠り傷程度しか与えられない。
「ぐっ……何という固さだ」
「まるでオリハルコンのように硬い毛皮でござる!?」
「怯むな!!」
攻撃を仕掛けた側の二人の方が驚いてしまうが、フェンリルが体勢を整える前にレナは空中に振り上げた退魔刀を握り締め、全力の一撃を繰り出す。
「兜砕き!!」
「ギャウッ!?」
「やった!!」
正面から振り下ろされた退魔刀の刃がフェンリルの胸元に叩き込まれ、カゲマルとハンゾウでは傷つける事も出来なかった頑丈な毛皮を切り裂き、血飛沫が舞う。だが、手元に感じた感触にレナは舌打ちし、急いで距離を取る。
「グゥウッ……ガアアアアッ!!」
「効いていない!?」
「くそっ……なんて筋肉してるんだよ」
毛皮の内側の肉の部分さえも金属のように硬い筋肉繊維に守られ、皮膚を切り裂く事が限界で致命傷には至れなかった。レナは両腕が痺れる感覚を味わい、普通の攻撃ではフェンリルを倒す事は出来ないと悟る。だが、フェンリルの背後から先ほど吹き飛ばされたウルとアインも起き上がり、フェンリルの身体に飛び掛かった。
「ウォオンッ!!」
「キュロロッ!!」
「グガァッ!?」
フェンリルの身体に覆い被さるようにウルが乗り込み、アインは後ろ脚にしがみ付いて動けないように拘束しようとしたが、2匹に対してフェンリルは身体を震わせて引き剥がそうとする。
「ガアアッ!!」
「キャインッ!?」
「ギュロォッ!?」
「ウル、アイン!?くそ、うちのペットに何をする!!」
「ううっ……あ、あたしも加勢します!!」
ウルとアインが吹き飛ばされる光景を見てレナは怒りを抱いて退魔刀を抱えながら駆け出すと、エリナも覚悟を決めたようにクロスボウを取り出し、援護を行う。
「強化射撃!!」
「ウォッ……!?」
「ナイス援護!!」
エリナの放った矢がフェンリルの顔面に迫り、反射的にフェンリルは首を逸らした隙にレナは懐に潜り込み、先ほど切り裂いた胸元の傷口に目掛けて退魔刀を突き刺す。
「刺衝突!!」
「ガハァッ!?」
強烈な突きが傷口に目掛けて放たれ、今度は刃の先端部分が食い込み、遂にフェンリルの鋼鉄の如きに肉体に明確な損傷を与える事に成功した。だが、その行為がフェンリルの逆鱗に触れたらしく、胸元に差し込んだ退魔刀を引き抜こうとしたレナに対してフェンリルは上体を逸らしてレナの身体を空中に放り出す。
「うわっ!?」
「アガアアッ!!」
「レナ殿ぉっ!!」
フェンリルが身体を逸らした際に退魔刀が胸元から離れ、そのまま空中に浮上したレナに向けてフェンリルは牙を剥ける。だが、寸前でハンゾウが「飛脚」の戦技を発動させて跳躍し、足の裏から衝撃波を生み出しながら加速してレナが喰われる前に救出に成功する。
空中でレナを捕まえたハンゾウはそのままフェンリルから逃れるが、二人が着地する前にフェンリルは顎を開き、牙を光り輝かせながら凄まじい音量の咆哮を放つ。
「――オオンッ!!」
「ぐあっ!?」
「あぐぅっ!?」
只の風の魔力で生み出した衝撃波ならばレナの風の聖痕が無効化するが、音による攻撃に関しては聖痕の力では防ぐ事は出来ず、レナを抱えたハンゾウはまともに受け身も取れずに地面に倒れ込む。忍として幼少の頃から五感を研ぎ澄ませる訓練を受けていたハンゾウの聴覚は常人とは比べ物にならない程に鋭く、それが災いして彼女は意識を失う。
「ハンゾウ……おい、ハンゾウ!!大丈夫か?」
「何をしている……早く、そいつを連れてここから離れろ!!こいつの相手は俺がする……!!」
「ガアアアアッ!!」
カゲマルがフェンリルの注意を引くために攻撃を仕掛け、ハンゾウを抱えたレナに逃げるように促す。だが、ハンゾウと同様にカゲマルも聴覚が常人よりも優れているため、身体の動作が鈍い。他の者も少なからず影響を受けているらしく、ウルもアインもエリナも立ち眩みを起こしたように身体を震わせていた。
「迂闊に近づくなハンゾウ!!距離を保て!!」
ハンゾウとカゲマルが大樹の枝の上から小袋を取り出し、フェンリルに目掛けて放つ。本能的に危険を察したフェンリルは小袋を回避するために後方に飛ぶと、二人が投げた小袋は地面に衝突した瞬間に破裂して茶色の粉末が散布される。
「キャウンッ!?」
「キュロンッ!?」
「これは……腐敗石の粉末か」
茶色の粉末を吸い込まないようにレナは口元を抑え、ウルとアインは嫌がるようにその場を離れる。腐敗石は魔物だけが嫌がる異臭を発する魔石のため、以前にレナは魔物使いのバジルが使用した粉末剤の事を思い出す。フェンリルも流石に腐敗石の異臭は応えるのか臭いを嫌がるように前脚を振り下ろす。
「ガアッ!!」
「このっ……舐めるな!!」
「嘘っ!?」
爪の形状を想像させる衝撃波によってフェンリルは粉末を吹き飛ばし、その際にレナに攻撃を仕掛けたが、子供の頃にアリアとの遊戯で風の力を「回し受け」の戦技で跳ね返したようにレナは退魔刀を振りぬいて「風」を切り裂く。フェンリルの爪から放たれる衝撃波は力任せに振りぬいて発生させた風圧ではなく、魔力が感じられた。
(こいつの爪と牙は普通じゃない……多分、魔石の様に特別な素材なんだ)
レナは「鑑定眼」の能力を発動させてフェンリルの様子を調べると、予想通りというべきかフェンリルの爪と牙の部分には魔石のように魔力を帯びている事が判明した。鑑定眼の能力で人物を鑑定した場合はステータスが表示されるが、魔物の場合は種族名と能力だけが表示される。
―――――――――――――
フェンリル
種族:魔狼種
属性:風属性
特徴:全ての狼型の魔獣の原種。魔物だけではなく魔石などの鉱石を喰らい、能力を強化する事が出来る。爪と牙は金属のように硬く、これまでに喰らった鉱石の魔力を蓄積して攻撃に利用する。
―――――――――――――
視界に表示された画面を確認したレナはフェンリルの特徴を見て、人間が扱う魔法剣のように魔力を込めた攻撃が出来ると見抜く。要するに先ほどからのフェンリルが繰り出す衝撃波は魔法の力で生み出した物だと分かれば問題なく、恐れずに向かう。
「行くぞ犬ころっ!!」
「ガアアッ!!」
正面から迫ってきたレナに対してフェンリルは前脚を振り下ろして再び衝撃波を生み出そうとしたが、レナが右腕を前に差しだすと「風の聖痕」の紋様が浮かび、正面から放たれた衝撃波を四散させる。
「ッ……!?」
「生憎と、その手の攻撃は効かないんだよ!!」
風の聖痕の所持者に対して風属性の魔法は効果を為さず、どれほどの出力の魔法だろうと吸収する事が出来た。衝撃波を掻き消されたフェンリルは咄嗟に反対の前脚を振り下ろそうとしたが、先にレナが退魔刀を振り翳す。
「回転撃!!」
「ウォンッ!?」
「嘘っ!?」
下から振り上げる形で振りぬいた退魔刀の刃がフェンリルの前脚の爪に衝突し、弾き返す。その光景を見たエリナは驚愕の声を上げ、その一方で大樹から降りてフェンリルの背後から接近していたハンゾウとカゲマルも仕掛ける。
「辻斬り!!」
「抜刀!!」
「ウガァッ……!?」
背後から二人の戦技が放たれ、カゲマルは短刀を両手に構えてフェンリルの首筋を狙い、ハンゾウは刀を引き抜いてフェンリルの後ろ脚を切り裂く。だが、両者の攻撃では表面の毛皮を少し刈り取ったぐらいで肉の部分にまでは刃が届かず、致命傷どころか掠り傷程度しか与えられない。
「ぐっ……何という固さだ」
「まるでオリハルコンのように硬い毛皮でござる!?」
「怯むな!!」
攻撃を仕掛けた側の二人の方が驚いてしまうが、フェンリルが体勢を整える前にレナは空中に振り上げた退魔刀を握り締め、全力の一撃を繰り出す。
「兜砕き!!」
「ギャウッ!?」
「やった!!」
正面から振り下ろされた退魔刀の刃がフェンリルの胸元に叩き込まれ、カゲマルとハンゾウでは傷つける事も出来なかった頑丈な毛皮を切り裂き、血飛沫が舞う。だが、手元に感じた感触にレナは舌打ちし、急いで距離を取る。
「グゥウッ……ガアアアアッ!!」
「効いていない!?」
「くそっ……なんて筋肉してるんだよ」
毛皮の内側の肉の部分さえも金属のように硬い筋肉繊維に守られ、皮膚を切り裂く事が限界で致命傷には至れなかった。レナは両腕が痺れる感覚を味わい、普通の攻撃ではフェンリルを倒す事は出来ないと悟る。だが、フェンリルの背後から先ほど吹き飛ばされたウルとアインも起き上がり、フェンリルの身体に飛び掛かった。
「ウォオンッ!!」
「キュロロッ!!」
「グガァッ!?」
フェンリルの身体に覆い被さるようにウルが乗り込み、アインは後ろ脚にしがみ付いて動けないように拘束しようとしたが、2匹に対してフェンリルは身体を震わせて引き剥がそうとする。
「ガアアッ!!」
「キャインッ!?」
「ギュロォッ!?」
「ウル、アイン!?くそ、うちのペットに何をする!!」
「ううっ……あ、あたしも加勢します!!」
ウルとアインが吹き飛ばされる光景を見てレナは怒りを抱いて退魔刀を抱えながら駆け出すと、エリナも覚悟を決めたようにクロスボウを取り出し、援護を行う。
「強化射撃!!」
「ウォッ……!?」
「ナイス援護!!」
エリナの放った矢がフェンリルの顔面に迫り、反射的にフェンリルは首を逸らした隙にレナは懐に潜り込み、先ほど切り裂いた胸元の傷口に目掛けて退魔刀を突き刺す。
「刺衝突!!」
「ガハァッ!?」
強烈な突きが傷口に目掛けて放たれ、今度は刃の先端部分が食い込み、遂にフェンリルの鋼鉄の如きに肉体に明確な損傷を与える事に成功した。だが、その行為がフェンリルの逆鱗に触れたらしく、胸元に差し込んだ退魔刀を引き抜こうとしたレナに対してフェンリルは上体を逸らしてレナの身体を空中に放り出す。
「うわっ!?」
「アガアアッ!!」
「レナ殿ぉっ!!」
フェンリルが身体を逸らした際に退魔刀が胸元から離れ、そのまま空中に浮上したレナに向けてフェンリルは牙を剥ける。だが、寸前でハンゾウが「飛脚」の戦技を発動させて跳躍し、足の裏から衝撃波を生み出しながら加速してレナが喰われる前に救出に成功する。
空中でレナを捕まえたハンゾウはそのままフェンリルから逃れるが、二人が着地する前にフェンリルは顎を開き、牙を光り輝かせながら凄まじい音量の咆哮を放つ。
「――オオンッ!!」
「ぐあっ!?」
「あぐぅっ!?」
只の風の魔力で生み出した衝撃波ならばレナの風の聖痕が無効化するが、音による攻撃に関しては聖痕の力では防ぐ事は出来ず、レナを抱えたハンゾウはまともに受け身も取れずに地面に倒れ込む。忍として幼少の頃から五感を研ぎ澄ませる訓練を受けていたハンゾウの聴覚は常人とは比べ物にならない程に鋭く、それが災いして彼女は意識を失う。
「ハンゾウ……おい、ハンゾウ!!大丈夫か?」
「何をしている……早く、そいつを連れてここから離れろ!!こいつの相手は俺がする……!!」
「ガアアアアッ!!」
カゲマルがフェンリルの注意を引くために攻撃を仕掛け、ハンゾウを抱えたレナに逃げるように促す。だが、ハンゾウと同様にカゲマルも聴覚が常人よりも優れているため、身体の動作が鈍い。他の者も少なからず影響を受けているらしく、ウルもアインもエリナも立ち眩みを起こしたように身体を震わせていた。
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◆ ◆ ◆
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