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外伝 ~ヨツバ王国編~
エリナとユニコーン
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「私がまだ騎士に昇格したばかりの頃、ユニコーン……相棒と一緒に狩猟に出かけました。その時、偶然にも赤毛熊の子供を発見したんです。上手く隙を突いて仕留めるのに成功したんですけど……深追いし過ぎて他に狩猟に出かけていた仲間とはぐれました。あたしが赤毛熊の子供から素材を剥ぎ取るために死体の毛皮を剥いでいる時、赤毛熊の親が現れて襲い掛かって来ました……その時、相棒はあたしを守るために身代わりになって死んでしまいました」
「赤毛熊が……」
赤毛熊は魔獣の中では珍しく親子愛を大切にする生物であり、かつてレナも子供の頃に赤毛熊の子供を仕留めた時に両親である2頭の赤毛熊が怒りを露わにして襲われた事を思い出す。エリナは狩猟の際に最も大事な注意力を欠いた事によって大切な相棒を失い、それ以降は彼女は二度とユニコーンに乗る事はなかったという。
「運が良かったのはあたしだけが生き残ったのは他の狩猟仲間達が駆けつけて赤毛熊を仕留めてくれたんです。だけど、相棒は額の角を折られて死んでしまいました……これが相棒の形見です」
「ユニコーンの角でござるか?」
エリナは自分の懐からユニコーンの角の破片で作り出したピアスを取り出し、大切そうに握り締める。彼女は常日頃からこのピアスを持ち歩き、相棒が常に傍に居るような感覚を覚えていた。死して数十年経過した今でもユニコーンの角は輝きを失わず、宝石のように煌めく。
「あたしがティナ様の護衛役になった後も他のユニコーンには乗っていません。だから移動する時はいつも馬車に乗せて貰いました……あたしにとってユニコーンという存在はこの世で一番優しい生き物なんです。だから、あの時に助けてくれたユニコーンの事を考えると、どうしても見捨てたくはなかった……なのに、こんな事になるなんて!!」
「エリナ……」
自分がユニコーンの命をまたも救えなかった事に対してエリナは悔し気な表情を浮かべ、アインに抱えられているユニコーンの子供の傍に近付き、その身体に触れて涙を流す。そんな彼女に対して誰も何も言えず、今日はここで休もうと提案しようとした時、ユニコーンの子供が目を覚ます。
「ヒィンッ……」
「あ、起こしちゃったんですか……ごめんなさい、君の親を守る事が出来なくて、本当にごめんなさい」
「ヒヒィンッ……?」
目を覚ましたユニコーンの子供は自分の前で涙を流すエリナに対して不思議そうな表情を浮かべ、舌を伸ばして彼女の涙を拭い取る。その行動にエリナは驚くが、苦笑いを浮かべてユニコーンの頭を抱きしめる。だが、その時にユニコーンの肉体の異変に気付く。
「えっ……身体が冷たい!?アイン、その子を下ろして!!」
「キュロロッ?」
「身体から感じられる魔力が弱まっている……兄貴!!回復魔法をこの子に!!」
「分かった!!」
エリナの指示にレナは従い、ユニコーンに対して回復魔法を施す。だが、ユニコーンの衰弱は止まらず、徐々に力が抜けていくのか横たわった状態でぴくりとも動かない。
「不味い不味い不味い!!どんどん魔力が失っていく……!!早く、ありったけの薬草と回復薬を!!」
「拙者の丸薬も使ってほしいでござる!!」
「……俺の回復液も使え」
ハンゾウは薬草を練り固めた薬とカゲマルは竹の水筒に入った回復薬の原液を渡し、急いでユニコーンに飲ませた。効果が表れ始めたのかユニコーンの肉体に熱が帯び始めるが、額の角が輝き出す。それを見たエリナはユニコーンの衰弱化の原因を悟る。
「この子、額にも傷跡があります!!そのせいで体内の魔力が漏れ出てるんです!!」
「そんな……どうすればいい?」
「わ、分からない……こんなの、どうすればいいのか分からない!!」
「落ち着け!!お前が取り乱してどうする!!」
「ウォンッ!!」
ユニコーンの生命の源である額の一本角が負傷した事が衰弱化の原意らしく、治療方法が分からないエリナは頭を抱えるが、レナは即座にアイリスと交信して治療法を尋ねる。」
『アイリス!!治療法を教えてくれ!!』
『ユニコーンの角の罅割れに樹精霊の粘液で塞いでください。そうすれば魔力の消費は抑えられますが、応急処置にしか過ぎません。すぐにユニコーンの角と同じ素材の道具で塞げば自然に治るはずです』
『同じ素材の道具……そうか!!』
アイリスから適切な治療法を知ったルノは取り乱すエリナの肩を掴み、彼女に指示を出す。
「落ち着けエリナ!!お前、さっき樹精霊の粘液を持っていただろ!!それで罅割れを塞げ!!」
「ええっ!?」
「そんな事で効果があるのでござるか?」
「試すしかない!!いいから早くやれ!!」
「は、はい!!」
レナの言葉にエリナは即座に自分のカバンから壺を取り出し、角の罅割れ部分に粘液を取り付けて塞ぐ。すると魔力を漏れ出していた傷口が塞がれた影響なのかユニコーンの表情も和らぎ、徐々に身体の方も反応する。だが、あくまでも応急処置にしか過ぎず、このままでは危険な状態である事に変わりはない。
回復魔法を施しながらレナは額の角に視線を向け、エリナに声を掛けようとした。だが、どうやって説明すればいいのか分からず、彼女に相棒の形見を差しだせと言えば納得してくれるのか不安を抱く。それでもユニコーンを助けるにはこれ以外に方法はなく、意を決してエリナに告げた。
「エリナ……多分だけど、こいつの角の罅割れにお前が持っているユニコーンの破片を繋げれば助かるかもしれない」
「えっ……」
「何を言い出すのでござるかレナ殿!?」
「いや、確かにその可能性はあるかもしれん。同じユニコーンの角ならば順応して罅割れを修復出来るかも知れん……魔石が砕けた時、その修復のために同じ属性の魔石の破片や粉末を罅割れに塗り込むと修復するという話を聞いた事がある。ユニコーンの角も魔石の原料となるのならば可能性は高い。だが、決めるのはお前だぞ」
レナの言葉にハンゾウは驚愕するが、カゲマルの方はレナの案に賛成し、エリナに判断を仰ぐ。エリナは自分の相棒の形見のピアスに視線を向け、最初は戸惑った表情を浮かべるが、やがて決意したように装飾具を取り外して角の破片を子供の額に近付ける。
「相棒……この子を助けて欲しいっす」
「ヒヒィンッ……」
エリナが額の罅割れに破片を差し込んだ瞬間、粘液が接着剤の代わりとなって張り付き、やがて額の角が光り輝く。そして光が収まった頃には亀裂が完全に消え去った立派な一本角が子供の額に存在し、治療を受けていたユニコーンは目を覚ます。
「ヒヒィインッ!!」
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
ユニコーンは起き上がると雄たけびを上げ、額の角を強烈に光り輝かせた。どうやら無事に角は修復したらしく、エリナの相棒の忘れ形見は完全に一体化してしまった事で失われたが、命を救う事に成功した。
「ヒヒンッ!!ヒヒィンッ!!」
「ウォオオンッ!!」
「キュロロロッ♪」
嬉しそうにユニコーンはその場を駆け回り、ウルとアインもそれに続いてレナ達の周囲を移動する。その様子を見てエリナは安堵した表情を浮かべ、手元に残った装飾具に視線を向けて涙を流す。
「相棒……ありがとう」
「ヒヒンッ……」
「ひゃんっ!?ちょ、くすぐったい……あははっ」
ユニコーンの子供はエリナの存在に気付くと、彼女が手にした装飾具に視線を向けて全てを察したのか、自分の命を救ってくれたエリナの顔を舌で嘗めとる。そんなユニコーンに対してエリナは満面の笑顔を浮かべ、他の者達は安心した表情を浮かべた。
「赤毛熊が……」
赤毛熊は魔獣の中では珍しく親子愛を大切にする生物であり、かつてレナも子供の頃に赤毛熊の子供を仕留めた時に両親である2頭の赤毛熊が怒りを露わにして襲われた事を思い出す。エリナは狩猟の際に最も大事な注意力を欠いた事によって大切な相棒を失い、それ以降は彼女は二度とユニコーンに乗る事はなかったという。
「運が良かったのはあたしだけが生き残ったのは他の狩猟仲間達が駆けつけて赤毛熊を仕留めてくれたんです。だけど、相棒は額の角を折られて死んでしまいました……これが相棒の形見です」
「ユニコーンの角でござるか?」
エリナは自分の懐からユニコーンの角の破片で作り出したピアスを取り出し、大切そうに握り締める。彼女は常日頃からこのピアスを持ち歩き、相棒が常に傍に居るような感覚を覚えていた。死して数十年経過した今でもユニコーンの角は輝きを失わず、宝石のように煌めく。
「あたしがティナ様の護衛役になった後も他のユニコーンには乗っていません。だから移動する時はいつも馬車に乗せて貰いました……あたしにとってユニコーンという存在はこの世で一番優しい生き物なんです。だから、あの時に助けてくれたユニコーンの事を考えると、どうしても見捨てたくはなかった……なのに、こんな事になるなんて!!」
「エリナ……」
自分がユニコーンの命をまたも救えなかった事に対してエリナは悔し気な表情を浮かべ、アインに抱えられているユニコーンの子供の傍に近付き、その身体に触れて涙を流す。そんな彼女に対して誰も何も言えず、今日はここで休もうと提案しようとした時、ユニコーンの子供が目を覚ます。
「ヒィンッ……」
「あ、起こしちゃったんですか……ごめんなさい、君の親を守る事が出来なくて、本当にごめんなさい」
「ヒヒィンッ……?」
目を覚ましたユニコーンの子供は自分の前で涙を流すエリナに対して不思議そうな表情を浮かべ、舌を伸ばして彼女の涙を拭い取る。その行動にエリナは驚くが、苦笑いを浮かべてユニコーンの頭を抱きしめる。だが、その時にユニコーンの肉体の異変に気付く。
「えっ……身体が冷たい!?アイン、その子を下ろして!!」
「キュロロッ?」
「身体から感じられる魔力が弱まっている……兄貴!!回復魔法をこの子に!!」
「分かった!!」
エリナの指示にレナは従い、ユニコーンに対して回復魔法を施す。だが、ユニコーンの衰弱は止まらず、徐々に力が抜けていくのか横たわった状態でぴくりとも動かない。
「不味い不味い不味い!!どんどん魔力が失っていく……!!早く、ありったけの薬草と回復薬を!!」
「拙者の丸薬も使ってほしいでござる!!」
「……俺の回復液も使え」
ハンゾウは薬草を練り固めた薬とカゲマルは竹の水筒に入った回復薬の原液を渡し、急いでユニコーンに飲ませた。効果が表れ始めたのかユニコーンの肉体に熱が帯び始めるが、額の角が輝き出す。それを見たエリナはユニコーンの衰弱化の原因を悟る。
「この子、額にも傷跡があります!!そのせいで体内の魔力が漏れ出てるんです!!」
「そんな……どうすればいい?」
「わ、分からない……こんなの、どうすればいいのか分からない!!」
「落ち着け!!お前が取り乱してどうする!!」
「ウォンッ!!」
ユニコーンの生命の源である額の一本角が負傷した事が衰弱化の原意らしく、治療方法が分からないエリナは頭を抱えるが、レナは即座にアイリスと交信して治療法を尋ねる。」
『アイリス!!治療法を教えてくれ!!』
『ユニコーンの角の罅割れに樹精霊の粘液で塞いでください。そうすれば魔力の消費は抑えられますが、応急処置にしか過ぎません。すぐにユニコーンの角と同じ素材の道具で塞げば自然に治るはずです』
『同じ素材の道具……そうか!!』
アイリスから適切な治療法を知ったルノは取り乱すエリナの肩を掴み、彼女に指示を出す。
「落ち着けエリナ!!お前、さっき樹精霊の粘液を持っていただろ!!それで罅割れを塞げ!!」
「ええっ!?」
「そんな事で効果があるのでござるか?」
「試すしかない!!いいから早くやれ!!」
「は、はい!!」
レナの言葉にエリナは即座に自分のカバンから壺を取り出し、角の罅割れ部分に粘液を取り付けて塞ぐ。すると魔力を漏れ出していた傷口が塞がれた影響なのかユニコーンの表情も和らぎ、徐々に身体の方も反応する。だが、あくまでも応急処置にしか過ぎず、このままでは危険な状態である事に変わりはない。
回復魔法を施しながらレナは額の角に視線を向け、エリナに声を掛けようとした。だが、どうやって説明すればいいのか分からず、彼女に相棒の形見を差しだせと言えば納得してくれるのか不安を抱く。それでもユニコーンを助けるにはこれ以外に方法はなく、意を決してエリナに告げた。
「エリナ……多分だけど、こいつの角の罅割れにお前が持っているユニコーンの破片を繋げれば助かるかもしれない」
「えっ……」
「何を言い出すのでござるかレナ殿!?」
「いや、確かにその可能性はあるかもしれん。同じユニコーンの角ならば順応して罅割れを修復出来るかも知れん……魔石が砕けた時、その修復のために同じ属性の魔石の破片や粉末を罅割れに塗り込むと修復するという話を聞いた事がある。ユニコーンの角も魔石の原料となるのならば可能性は高い。だが、決めるのはお前だぞ」
レナの言葉にハンゾウは驚愕するが、カゲマルの方はレナの案に賛成し、エリナに判断を仰ぐ。エリナは自分の相棒の形見のピアスに視線を向け、最初は戸惑った表情を浮かべるが、やがて決意したように装飾具を取り外して角の破片を子供の額に近付ける。
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エリナが額の罅割れに破片を差し込んだ瞬間、粘液が接着剤の代わりとなって張り付き、やがて額の角が光り輝く。そして光が収まった頃には亀裂が完全に消え去った立派な一本角が子供の額に存在し、治療を受けていたユニコーンは目を覚ます。
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「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
ユニコーンは起き上がると雄たけびを上げ、額の角を強烈に光り輝かせた。どうやら無事に角は修復したらしく、エリナの相棒の忘れ形見は完全に一体化してしまった事で失われたが、命を救う事に成功した。
「ヒヒンッ!!ヒヒィンッ!!」
「ウォオオンッ!!」
「キュロロロッ♪」
嬉しそうにユニコーンはその場を駆け回り、ウルとアインもそれに続いてレナ達の周囲を移動する。その様子を見てエリナは安堵した表情を浮かべ、手元に残った装飾具に視線を向けて涙を流す。
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「ヒヒンッ……」
「ひゃんっ!?ちょ、くすぐったい……あははっ」
ユニコーンの子供はエリナの存在に気付くと、彼女が手にした装飾具に視線を向けて全てを察したのか、自分の命を救ってくれたエリナの顔を舌で嘗めとる。そんなユニコーンに対してエリナは満面の笑顔を浮かべ、他の者達は安心した表情を浮かべた。
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