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外伝 ~ヨツバ王国編~
変異体
「何だ!?」
「後ろから何かが接近してくるっす!!」
レナ以外に者達も後方から接近する気配を感じ取り、エリナは新調したクロスボウを構え、ハンゾウは腰の短刀に手を伸ばす。数秒後、茂みから全身が赤色の毛皮で覆われたコボルトが出現した。
「ガアアッ!!」
「コボルト!?」
「撃ちます!!」
出現した赤色のコボルトに対してエリナはクロスボウを向けると、矢を放つ。彼女は「狙撃」と呼ばれる固有スキルを所持しているため、狙いを定めれば確実に相手を射抜く。だが、迫りくる矢に対してコボルトは右腕を振りはらって弾く。
「ウガァッ!!」
「嘘っ!?あたしの矢が……」
「ここは拙者に任せるでござる!!」
矢を軽く弾き返したコボルトに対してエリナは驚くが、即座にハンゾウが短刀を構えた状態で駆け出し、コボルトに向かう。しかし、彼女が距離を詰める前にコボルトは身体を屈めて立ち止まり、空中に跳躍した。
「ガウッ!!」
「ウォンッ!?」
「キュロロッ!?」
「ヒィンッ!?」
魔獣達の上を飛び越えてコボルトは10メートルは離れた場所に存在する大樹の枝の上に飛び乗り、レナ達を見下ろす。通常のコボルトよりも身体能力が高く、さらに危険を察知して即座に回避行動に移る辺りは知能も高い。
「何でござるかこいつは……」
「お前達、無事か!!」
「あ、カゲマルさん……」
コボルトが現れた茂みの中からカゲマルが現れ、既に両手に小太刀を握り締めていたカゲマルは枝の上に立つコボルトに視線を向け、目つきを鋭くさせる。どうやらこちらのコボルトがレナ達を尾行していた個体で間違いなく、カゲマルが仕留めきれずに取り逃していたらしい。
「すまん、油断していたわけではないが仕留めそこなった……こいつは亜種だ」
「亜種か……俺も何度か見かけた事はあるけど、赤色のコボルトは初めてだな」
「ガルルルッ……!!」
枝の上から威嚇するように牙を剥き出しにしたコボルトに対してレナ達は警戒を行い、様子を伺う。子供の頃にレナは深淵の森でコボルトの亜種と遭遇した事はあるが、今回のコボルトはあの時に遭遇したコボルトよりも素早く、鋭利な牙と爪を持っていた。
あまりに戦闘が長引くと離れた場所で待ち伏せしている北聖将の配下の兵士達に気付かれる恐れがあり、早急に時間を掛けずに仕留めなければならない。レナは自分が動くべきかと考えた時、コボルトは鼻を鳴らし始める。
「フガッ……グゥウッ!!」
「な、何でござる?」
「血の臭いに気付いたのか?」
コボルトは兵士達が惨殺したブタンの血の臭いを嗅ぎ取ったのか、興奮したように全身の毛を逆立たせ、枝の上を飛び移ってその場から離れる。コボルトの姿を見送ったレナ達は警戒を解くと、即座にカゲマルが小太刀を腰に収めて追跡を行う。
「俺が様子を見てくる、お前達はそこにいろ!!」
「あ、カゲマル……」
別に後を追わずともレナが風の聖痕の力を使えばコボルトの行動を監視する事は出来るのだが、止める暇もなくカゲマルも枝の上を飛び移って姿を消してしまう。仕方なくレナは右手に意識を集中させ、姿を消したコボルトとカゲマルの様子を観察した。
――風の精霊の力を借りてレナはコボルトとカゲマルの位置を把握すると、どうやらコボルトは兵士が罠として仕掛けたブタンの死骸に気付いたらしく、枝の上から地上へ降りて疾走する。環境の違いのせいか深淵の森でレナが遭遇したコボルトの亜種と比べてもやはり小柄で身軽なため、速度という点では圧倒的に速い。
『ウガァッ……!!』
コボルトは死骸を発見すると立ち止まり、一瞬だけ左右に首を振る動作を行う。50メートルほど距離を取ったカゲマルは大樹の枝の上から双眼鏡のような魔道具を取り出して様子を観察し、コボルトの行動を見張る。
『グゥウウッ……!!』
涎を垂らしながらコボルトは恐る恐るブタンの死骸の元へ近づき、そのまま死骸に食らいつくかと思ったら無数の傷跡から流れる血液だけを嘗めとる。傷口に爪を押し敢えて無理やり開くとまるで吸血鬼のように血液を吸い取った。
『ッ……!!』
夢中に血液を吸い上げる光景を見たカゲマルは不審な表情を浮かべ、死肉よりも血液だけを味わうようにコボルトは吸い上げ、やがて1頭のブタンの死骸の血液を飲み干すと、肉体に異変が訪れた。
『ウウッ……!!オ、アアッ……!?』
コボルトの全身の筋肉が膨張し、体躯が更に一回り程大きくなった。その姿を見てカゲマルも聖痕の力で観察しているレナも驚愕し、やがてコボルトは咆哮を放つ。
『ウガァアアアアッ!!』
『今だ!!捕らえろっ!!』
『捕獲しろ!!絶対に殺すなっ!!』
周辺の大樹の枝の上や木陰に潜んでいた兵士達が遂に姿を現すと、弓矢を構えて一斉に矢を放つ。肉に食い込むような特殊な形状をした鏃の矢を兵士達は同時に放ち、コボルトは全方位から迫りくる矢に対して目を見開く。
『アガァアアアッ!!』
『馬鹿なっ!?』
『弾いただと!?』
『いかん、攻撃を休むな!!』
あらゆる角度から放たれた矢に対してコボルトはその場をベーゴマのように回転させて身体に触れた矢を弾き返し、地面に無数の矢が転がる。その光景を見て兵士達は動揺するが、隊長格と思われる中年男性の兵士が指示を出す。
追撃を緩めずに兵士達は次々と矢を放つが、コボルトは既に移動を始め、矢から逃れるように四足歩行で駆け抜けた。兵士達はエリナと同様に「命中」や「狙撃」のような射撃を強化するスキルを習得している者も多いが、威力が足りないのかあるいは力量が低いせいなのかコボルトに致命傷を与える事は出来ず、全て弾かれてしまう。
『駄目です!!矢を受け付けません!!』
『ちぃっ……ならば魔法の使用を許可する!!腕や足程度ならば吹き飛ばしても構わん!!』
兵士達は普通に矢を放つだけでは効果が無い事を悟ると、精霊魔法を利用して矢の威力を強化させてコボルトを捕獲しようとしたが、危険を察知したコボルトはまずは枝の上で弓を構える兵士の一人に向けて飛び掛かった。
『ウガァッ!!』
『ぎゃあっ!?』
『何だと!?』
10メートル以上の高度をコボルトは跳躍して飛び移ると、兵士が弓を構える前に鋭利な爪を振り翳して首元を切り裂く。兵士は悲鳴を上げながら地上に転落し、その様子を確認したコボルトは爪先の血を舐めとりながら別の兵士に狙いを定めて次々と大樹の枝の上に配置していた兵士達を襲う。
『ガアアアアッ!!』
『ま、不味い!!退避、退避!!』
『撤退だ!!速やかに離れろ……ぐはぁっ!?』
『た、隊長!?』
遂には隊長の兵士までコボルトの爪に切り裂かれ、地上へと落下してしまう。その様子を見た他の兵士達は混乱を起こし、反撃など考える余裕もなく兵士達は逃げ惑う。
『に、逃げろ……うわぁっ!?』
『何でこんな奴が……ひいっ!?』
『駄目だ、誰か助けて……嫌だぁああっ!?』
『ウガァアアアッ!!』
背中を見せた兵士から優先してコボルトは襲い掛かり、次々とミスリルの如き鋭さを誇る爪で兵士達の急所を切り裂く。その様子を見ていたカゲマルは眉を顰め、その場を退散しようとした。残念ながら兵士達をここで救い出せば自分達の正体も気付かれてしまうため、彼等を助ける事は出来ないとカゲマルは判断した。
――だが、その様子を見ていたレナは次々とコボルトに殺される兵士達の姿を見て居ても立っても居られず、風の聖痕の力を解除して現場へ向けて駆け出していた。
「後ろから何かが接近してくるっす!!」
レナ以外に者達も後方から接近する気配を感じ取り、エリナは新調したクロスボウを構え、ハンゾウは腰の短刀に手を伸ばす。数秒後、茂みから全身が赤色の毛皮で覆われたコボルトが出現した。
「ガアアッ!!」
「コボルト!?」
「撃ちます!!」
出現した赤色のコボルトに対してエリナはクロスボウを向けると、矢を放つ。彼女は「狙撃」と呼ばれる固有スキルを所持しているため、狙いを定めれば確実に相手を射抜く。だが、迫りくる矢に対してコボルトは右腕を振りはらって弾く。
「ウガァッ!!」
「嘘っ!?あたしの矢が……」
「ここは拙者に任せるでござる!!」
矢を軽く弾き返したコボルトに対してエリナは驚くが、即座にハンゾウが短刀を構えた状態で駆け出し、コボルトに向かう。しかし、彼女が距離を詰める前にコボルトは身体を屈めて立ち止まり、空中に跳躍した。
「ガウッ!!」
「ウォンッ!?」
「キュロロッ!?」
「ヒィンッ!?」
魔獣達の上を飛び越えてコボルトは10メートルは離れた場所に存在する大樹の枝の上に飛び乗り、レナ達を見下ろす。通常のコボルトよりも身体能力が高く、さらに危険を察知して即座に回避行動に移る辺りは知能も高い。
「何でござるかこいつは……」
「お前達、無事か!!」
「あ、カゲマルさん……」
コボルトが現れた茂みの中からカゲマルが現れ、既に両手に小太刀を握り締めていたカゲマルは枝の上に立つコボルトに視線を向け、目つきを鋭くさせる。どうやらこちらのコボルトがレナ達を尾行していた個体で間違いなく、カゲマルが仕留めきれずに取り逃していたらしい。
「すまん、油断していたわけではないが仕留めそこなった……こいつは亜種だ」
「亜種か……俺も何度か見かけた事はあるけど、赤色のコボルトは初めてだな」
「ガルルルッ……!!」
枝の上から威嚇するように牙を剥き出しにしたコボルトに対してレナ達は警戒を行い、様子を伺う。子供の頃にレナは深淵の森でコボルトの亜種と遭遇した事はあるが、今回のコボルトはあの時に遭遇したコボルトよりも素早く、鋭利な牙と爪を持っていた。
あまりに戦闘が長引くと離れた場所で待ち伏せしている北聖将の配下の兵士達に気付かれる恐れがあり、早急に時間を掛けずに仕留めなければならない。レナは自分が動くべきかと考えた時、コボルトは鼻を鳴らし始める。
「フガッ……グゥウッ!!」
「な、何でござる?」
「血の臭いに気付いたのか?」
コボルトは兵士達が惨殺したブタンの血の臭いを嗅ぎ取ったのか、興奮したように全身の毛を逆立たせ、枝の上を飛び移ってその場から離れる。コボルトの姿を見送ったレナ達は警戒を解くと、即座にカゲマルが小太刀を腰に収めて追跡を行う。
「俺が様子を見てくる、お前達はそこにいろ!!」
「あ、カゲマル……」
別に後を追わずともレナが風の聖痕の力を使えばコボルトの行動を監視する事は出来るのだが、止める暇もなくカゲマルも枝の上を飛び移って姿を消してしまう。仕方なくレナは右手に意識を集中させ、姿を消したコボルトとカゲマルの様子を観察した。
――風の精霊の力を借りてレナはコボルトとカゲマルの位置を把握すると、どうやらコボルトは兵士が罠として仕掛けたブタンの死骸に気付いたらしく、枝の上から地上へ降りて疾走する。環境の違いのせいか深淵の森でレナが遭遇したコボルトの亜種と比べてもやはり小柄で身軽なため、速度という点では圧倒的に速い。
『ウガァッ……!!』
コボルトは死骸を発見すると立ち止まり、一瞬だけ左右に首を振る動作を行う。50メートルほど距離を取ったカゲマルは大樹の枝の上から双眼鏡のような魔道具を取り出して様子を観察し、コボルトの行動を見張る。
『グゥウウッ……!!』
涎を垂らしながらコボルトは恐る恐るブタンの死骸の元へ近づき、そのまま死骸に食らいつくかと思ったら無数の傷跡から流れる血液だけを嘗めとる。傷口に爪を押し敢えて無理やり開くとまるで吸血鬼のように血液を吸い取った。
『ッ……!!』
夢中に血液を吸い上げる光景を見たカゲマルは不審な表情を浮かべ、死肉よりも血液だけを味わうようにコボルトは吸い上げ、やがて1頭のブタンの死骸の血液を飲み干すと、肉体に異変が訪れた。
『ウウッ……!!オ、アアッ……!?』
コボルトの全身の筋肉が膨張し、体躯が更に一回り程大きくなった。その姿を見てカゲマルも聖痕の力で観察しているレナも驚愕し、やがてコボルトは咆哮を放つ。
『ウガァアアアアッ!!』
『今だ!!捕らえろっ!!』
『捕獲しろ!!絶対に殺すなっ!!』
周辺の大樹の枝の上や木陰に潜んでいた兵士達が遂に姿を現すと、弓矢を構えて一斉に矢を放つ。肉に食い込むような特殊な形状をした鏃の矢を兵士達は同時に放ち、コボルトは全方位から迫りくる矢に対して目を見開く。
『アガァアアアッ!!』
『馬鹿なっ!?』
『弾いただと!?』
『いかん、攻撃を休むな!!』
あらゆる角度から放たれた矢に対してコボルトはその場をベーゴマのように回転させて身体に触れた矢を弾き返し、地面に無数の矢が転がる。その光景を見て兵士達は動揺するが、隊長格と思われる中年男性の兵士が指示を出す。
追撃を緩めずに兵士達は次々と矢を放つが、コボルトは既に移動を始め、矢から逃れるように四足歩行で駆け抜けた。兵士達はエリナと同様に「命中」や「狙撃」のような射撃を強化するスキルを習得している者も多いが、威力が足りないのかあるいは力量が低いせいなのかコボルトに致命傷を与える事は出来ず、全て弾かれてしまう。
『駄目です!!矢を受け付けません!!』
『ちぃっ……ならば魔法の使用を許可する!!腕や足程度ならば吹き飛ばしても構わん!!』
兵士達は普通に矢を放つだけでは効果が無い事を悟ると、精霊魔法を利用して矢の威力を強化させてコボルトを捕獲しようとしたが、危険を察知したコボルトはまずは枝の上で弓を構える兵士の一人に向けて飛び掛かった。
『ウガァッ!!』
『ぎゃあっ!?』
『何だと!?』
10メートル以上の高度をコボルトは跳躍して飛び移ると、兵士が弓を構える前に鋭利な爪を振り翳して首元を切り裂く。兵士は悲鳴を上げながら地上に転落し、その様子を確認したコボルトは爪先の血を舐めとりながら別の兵士に狙いを定めて次々と大樹の枝の上に配置していた兵士達を襲う。
『ガアアアアッ!!』
『ま、不味い!!退避、退避!!』
『撤退だ!!速やかに離れろ……ぐはぁっ!?』
『た、隊長!?』
遂には隊長の兵士までコボルトの爪に切り裂かれ、地上へと落下してしまう。その様子を見た他の兵士達は混乱を起こし、反撃など考える余裕もなく兵士達は逃げ惑う。
『に、逃げろ……うわぁっ!?』
『何でこんな奴が……ひいっ!?』
『駄目だ、誰か助けて……嫌だぁああっ!?』
『ウガァアアアッ!!』
背中を見せた兵士から優先してコボルトは襲い掛かり、次々とミスリルの如き鋭さを誇る爪で兵士達の急所を切り裂く。その様子を見ていたカゲマルは眉を顰め、その場を退散しようとした。残念ながら兵士達をここで救い出せば自分達の正体も気付かれてしまうため、彼等を助ける事は出来ないとカゲマルは判断した。
――だが、その様子を見ていたレナは次々とコボルトに殺される兵士達の姿を見て居ても立っても居られず、風の聖痕の力を解除して現場へ向けて駆け出していた。
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