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外伝 ~ヨツバ王国編~
森の異変
「皆さんがさっきブタンの群れを殺して死骸を放置してましたけど、あれはさっきのコボルトの亜種を呼び寄せるためですか?」
「ああ……その通りだ。だが、一つだけ注意させてもらうと奴等はただのコボルトの亜種じゃないんだ」
「どういう意味っすか?」
「……実は少し前から森の中で大量の魔獣の死骸が発見されています。死骸は何故か血液だけが吸い尽くされた状態で放置されていたので不振に思った北聖将様は森の見回りの兵士の数を増員しました。その結果、死骸を生み出しているのは先ほどのコボルトの集団だと判明したんです」
兵士達によると数週間ほど前から森の中で得体の知れぬ赤色の体毛のコボルトが出現するようになったらしく、何故かコボルトは襲った獲物の血液を吸い上げるだけで死肉には食いつかず、森のあちこちで殺戮を繰り返しては死骸を放置しているらしい。
疑問を抱いた北聖将はコボルトを兵士を増員させてコボルトの討伐を行わせたが、通常のコボルトとは桁違いの戦闘力を誇り、この数週間の間に兵士の負傷者は数百人を超えたという。
「調査の結果、どうやらこのコボルト達は亜種ではなく元々は普通のコボルトだったようです。実際に鑑定士の職業の人間が調べたところ、コボルトは亜種ではなく通常種である事が判明しています」
「え?なら、あのコボルトはどうしてあんな姿に……」
「我々も調査中なのですが、恐らくはコボルトの肉体に吸血鬼の血液が混じり、突然変異を起こした「変異体」である可能性が高いらしいのです」
「変異体?」
「亜種や進化種とは異なる魔物……要は人工的に生み出された魔物だと考えればいいでござる」
兵士達によると赤色のコボルトは元々はこの森に生息する通常種のコボルトだったらしいが、死骸を調べた結果によるとコボルトの血液に吸血鬼の血液が混じっていたという。
「吸血鬼の血液を混じるだけで魔物も吸血鬼になるの?」
「正確に言えば性質を受け継ぐという表現が正しい。吸血鬼は血液を取り込む事で生き永らえるが、魔物の場合は血液を吸い上げる事で肉体を強化する術を身に着ける事が出来る事が発覚した。恐らく、国内に吸血鬼が紛れ込んでいるのは間違いない」
「コボルト達に血液を与える吸血鬼か……」
レナの脳裏に吸血鬼と言えば思い浮かぶのは「キラウ」しか存在せず、彼女は森人族であると同時に吸血鬼(正確にはサキュバスだが)である。彼女がコボルトに血液を与えて凶暴化させていた場合、その目的が掴めない。
「コボルトはどの程度の数が変異体なのか判明しているんですか?」
「我々も完全には把握し切れていない。最初はコボルトの亜種が現れた程度にしか考えていなかったので放置していたのが災いした……調査の結果、奴等の目撃情報はヨツバ王国の森の北部だけだと判明している。今の所は他の六聖将が管理している森にはコボルトの変異体が発見されたという報告は届いていないが……」
「数百人の兵士が被害を受けているという事は数も相当に存在するのでござろうな……」
「ああ、既に我々も数十体のコボルトを仕留めてはいるが、被害は増す一方だ……目撃情報も後を絶たない。だが、奴等を誘き寄せる手段はそれほど難しくはない。魔物を仕留めて死骸を放置するだけで寄ってくるからな」
「吸血鬼の目的がよく分からないっすね……どうしてコボルトなんかを変異体にしたんですかね?強力な魔物を生み出したいだけならそれこそ赤毛熊のような大型の魔物を狙えばいいのに」
エリナの言葉を聞いてレナも確かに彼女の疑問に頷き、どうして様々な魔物が生息するアトラス大森林の中からコボルトだけを変異体として扱っているのか気にかかり、アイリスと交信を行って真相を確かめた。
『アイリス、話は聞いてた?』
『ふがっ!?あ、すいません……ちょっと徹夜で龍〇如く7を遊んでました』
『こっちが命懸けで動いている時に何してんだよ!!』
不眠不休で動けるはずのアイリスの言葉にレナは呆れるが、彼女からコボルトの変異体を生み出した者の正体と、その理由を質問する。
『コボルトの変異体を生み出したのはキラウで間違いない?』
『はい、彼女の血液を利用して変異体が生み出されているのは間違いありません。ですが、キラウ本人は変異体の存在の事を知らないようです』
『え?どういう事?』
『コボルトの変異体を作り出しているのはキラウではなく、カレハの指示を受けた兵士の仕業なんです。カレハはキラウを保護する事を条件に彼女から血液を採取して魔物の変異体を生み出す実験を繰り返しています』
『何でそんな事を……自国の兵士が被害を受けてるんだぞ?』
変異体を生み出しているのはキラウではなく、カレハだと聞いたレナは驚き、どうして自国内でそんな危険な実験を行うのか理解できなかった。アイリスもカレハのやり方には呆れているらしく、その経緯を話す。
『カレハは吸血鬼の血液を魔物に与える事で生まれる変異体を利用し、戦力の強化を図っているんです。六聖将の中にフェンリルを操作する魔物使いが居る事はレナさんも教えましたよね?』
『うん』
『六聖将の名前はレイビ、彼の配下は全員が魔物使いで数多くの魔獣を従えています。レイビを除く魔物使いの兵士達が操る魔獣はコボルトやオークといったある程度は知能が存在して力が強い魔物なんですが、そもそも魔物使いの職業自体が珍しい職業ですから兵士の数は50人にも満たしていません』
『へえ……』
魔物使いは不遇職の支援魔術師や錬金術師と比べれば数は多いが、魔術師の職業の間では珍しい職業のため、ヨツバ王国の国内でも魔物使いの職業の人間は少ない。そのため、南方の守備を任されている南聖将は他の将軍と比べると最も兵士の数が少ない。
しかし、兵士の数は少なくともレイビの契約獣である「フェンリル」を筆頭に魔物使いの兵士達はコボルトやオークなどの魔物を従える事で南方の領地を支配していた。兵士の数は少なくとも操れる魔物の数は多く、決して他の将軍の部隊にも戦力的に劣っているわけではなかったが、最近の間で問題が起きたという。
『100年ぐらい前までは南聖将の兵士の数も100人は居たんですが、年老いて現役を引退した兵士や最近になって立て続けに増えてしまい、しかもここ十数年の間に魔物使いの森人族が誕生しなかった事で兵士はどんどんと減っているんです。そのせいで戦力は弱体化して現在は他の将軍の協力を得てどうにか南方の領地を管理している有様なんですよ』
『それは大変そうだな』
『なのに南聖将のレイビは非常にプライドが高い人で、自分が守護を任された領地に他の将軍の兵士が出入りする事自体を嫌がったんです。だけど、現状では南聖将の部隊だけでは領地の管理も難しいので仕方なく他の将軍から力を借りていたんですが、それが南聖将にとっては非常に苦痛だったんです。自分の領地を自分一人で守る事も出来ない愚か者と他の将軍に馬鹿にされているのではないかと心配するぐらいに精神的に追い込まれていました』
『いや、仕方ない事だろ』
『まあ、確かにレナさんの言う通りに仕方がない事なんですが、南聖将は何度もデブリ国王に直訴して自分の領地から他の将軍の兵士を退去させるように願いましたが、その提案は却下されました。実際に南聖将の部隊だけでは領地の管理は到底無理でしたからね。なのに南聖将はデブリ国王の判断に不満を抱き、どうにか自分達の部隊だけで他の将軍の力を借りずに領地を守護する方法を考えていたところにカレハが接触してきたんです』
『なんか話が読めて来たよ……』
アイリスの説明を聞かずともレナは嫌な予感を覚え、案の定と言うべきか精神的に追い込まれていた南聖将のレイビはカレハと手を組んで途轍もない事態を引き起こしたという。
※更新が遅れて申し訳ありません!! OTL
「ああ……その通りだ。だが、一つだけ注意させてもらうと奴等はただのコボルトの亜種じゃないんだ」
「どういう意味っすか?」
「……実は少し前から森の中で大量の魔獣の死骸が発見されています。死骸は何故か血液だけが吸い尽くされた状態で放置されていたので不振に思った北聖将様は森の見回りの兵士の数を増員しました。その結果、死骸を生み出しているのは先ほどのコボルトの集団だと判明したんです」
兵士達によると数週間ほど前から森の中で得体の知れぬ赤色の体毛のコボルトが出現するようになったらしく、何故かコボルトは襲った獲物の血液を吸い上げるだけで死肉には食いつかず、森のあちこちで殺戮を繰り返しては死骸を放置しているらしい。
疑問を抱いた北聖将はコボルトを兵士を増員させてコボルトの討伐を行わせたが、通常のコボルトとは桁違いの戦闘力を誇り、この数週間の間に兵士の負傷者は数百人を超えたという。
「調査の結果、どうやらこのコボルト達は亜種ではなく元々は普通のコボルトだったようです。実際に鑑定士の職業の人間が調べたところ、コボルトは亜種ではなく通常種である事が判明しています」
「え?なら、あのコボルトはどうしてあんな姿に……」
「我々も調査中なのですが、恐らくはコボルトの肉体に吸血鬼の血液が混じり、突然変異を起こした「変異体」である可能性が高いらしいのです」
「変異体?」
「亜種や進化種とは異なる魔物……要は人工的に生み出された魔物だと考えればいいでござる」
兵士達によると赤色のコボルトは元々はこの森に生息する通常種のコボルトだったらしいが、死骸を調べた結果によるとコボルトの血液に吸血鬼の血液が混じっていたという。
「吸血鬼の血液を混じるだけで魔物も吸血鬼になるの?」
「正確に言えば性質を受け継ぐという表現が正しい。吸血鬼は血液を取り込む事で生き永らえるが、魔物の場合は血液を吸い上げる事で肉体を強化する術を身に着ける事が出来る事が発覚した。恐らく、国内に吸血鬼が紛れ込んでいるのは間違いない」
「コボルト達に血液を与える吸血鬼か……」
レナの脳裏に吸血鬼と言えば思い浮かぶのは「キラウ」しか存在せず、彼女は森人族であると同時に吸血鬼(正確にはサキュバスだが)である。彼女がコボルトに血液を与えて凶暴化させていた場合、その目的が掴めない。
「コボルトはどの程度の数が変異体なのか判明しているんですか?」
「我々も完全には把握し切れていない。最初はコボルトの亜種が現れた程度にしか考えていなかったので放置していたのが災いした……調査の結果、奴等の目撃情報はヨツバ王国の森の北部だけだと判明している。今の所は他の六聖将が管理している森にはコボルトの変異体が発見されたという報告は届いていないが……」
「数百人の兵士が被害を受けているという事は数も相当に存在するのでござろうな……」
「ああ、既に我々も数十体のコボルトを仕留めてはいるが、被害は増す一方だ……目撃情報も後を絶たない。だが、奴等を誘き寄せる手段はそれほど難しくはない。魔物を仕留めて死骸を放置するだけで寄ってくるからな」
「吸血鬼の目的がよく分からないっすね……どうしてコボルトなんかを変異体にしたんですかね?強力な魔物を生み出したいだけならそれこそ赤毛熊のような大型の魔物を狙えばいいのに」
エリナの言葉を聞いてレナも確かに彼女の疑問に頷き、どうして様々な魔物が生息するアトラス大森林の中からコボルトだけを変異体として扱っているのか気にかかり、アイリスと交信を行って真相を確かめた。
『アイリス、話は聞いてた?』
『ふがっ!?あ、すいません……ちょっと徹夜で龍〇如く7を遊んでました』
『こっちが命懸けで動いている時に何してんだよ!!』
不眠不休で動けるはずのアイリスの言葉にレナは呆れるが、彼女からコボルトの変異体を生み出した者の正体と、その理由を質問する。
『コボルトの変異体を生み出したのはキラウで間違いない?』
『はい、彼女の血液を利用して変異体が生み出されているのは間違いありません。ですが、キラウ本人は変異体の存在の事を知らないようです』
『え?どういう事?』
『コボルトの変異体を作り出しているのはキラウではなく、カレハの指示を受けた兵士の仕業なんです。カレハはキラウを保護する事を条件に彼女から血液を採取して魔物の変異体を生み出す実験を繰り返しています』
『何でそんな事を……自国の兵士が被害を受けてるんだぞ?』
変異体を生み出しているのはキラウではなく、カレハだと聞いたレナは驚き、どうして自国内でそんな危険な実験を行うのか理解できなかった。アイリスもカレハのやり方には呆れているらしく、その経緯を話す。
『カレハは吸血鬼の血液を魔物に与える事で生まれる変異体を利用し、戦力の強化を図っているんです。六聖将の中にフェンリルを操作する魔物使いが居る事はレナさんも教えましたよね?』
『うん』
『六聖将の名前はレイビ、彼の配下は全員が魔物使いで数多くの魔獣を従えています。レイビを除く魔物使いの兵士達が操る魔獣はコボルトやオークといったある程度は知能が存在して力が強い魔物なんですが、そもそも魔物使いの職業自体が珍しい職業ですから兵士の数は50人にも満たしていません』
『へえ……』
魔物使いは不遇職の支援魔術師や錬金術師と比べれば数は多いが、魔術師の職業の間では珍しい職業のため、ヨツバ王国の国内でも魔物使いの職業の人間は少ない。そのため、南方の守備を任されている南聖将は他の将軍と比べると最も兵士の数が少ない。
しかし、兵士の数は少なくともレイビの契約獣である「フェンリル」を筆頭に魔物使いの兵士達はコボルトやオークなどの魔物を従える事で南方の領地を支配していた。兵士の数は少なくとも操れる魔物の数は多く、決して他の将軍の部隊にも戦力的に劣っているわけではなかったが、最近の間で問題が起きたという。
『100年ぐらい前までは南聖将の兵士の数も100人は居たんですが、年老いて現役を引退した兵士や最近になって立て続けに増えてしまい、しかもここ十数年の間に魔物使いの森人族が誕生しなかった事で兵士はどんどんと減っているんです。そのせいで戦力は弱体化して現在は他の将軍の協力を得てどうにか南方の領地を管理している有様なんですよ』
『それは大変そうだな』
『なのに南聖将のレイビは非常にプライドが高い人で、自分が守護を任された領地に他の将軍の兵士が出入りする事自体を嫌がったんです。だけど、現状では南聖将の部隊だけでは領地の管理も難しいので仕方なく他の将軍から力を借りていたんですが、それが南聖将にとっては非常に苦痛だったんです。自分の領地を自分一人で守る事も出来ない愚か者と他の将軍に馬鹿にされているのではないかと心配するぐらいに精神的に追い込まれていました』
『いや、仕方ない事だろ』
『まあ、確かにレナさんの言う通りに仕方がない事なんですが、南聖将は何度もデブリ国王に直訴して自分の領地から他の将軍の兵士を退去させるように願いましたが、その提案は却下されました。実際に南聖将の部隊だけでは領地の管理は到底無理でしたからね。なのに南聖将はデブリ国王の判断に不満を抱き、どうにか自分達の部隊だけで他の将軍の力を借りずに領地を守護する方法を考えていたところにカレハが接触してきたんです』
『なんか話が読めて来たよ……』
アイリスの説明を聞かずともレナは嫌な予感を覚え、案の定と言うべきか精神的に追い込まれていた南聖将のレイビはカレハと手を組んで途轍もない事態を引き起こしたという。
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