不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

ギンタロウ

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「あれ?前にも話しませんでしたっけ?あたしは養子なんですよ。両親が事故で亡くなった後、叔父さんの妹のキョウコさんに拾われたんです」
「うむ!!きっとキョウコの奴もお前がこっちに戻って来た事を知ったら喜ぶだろう!!後でちゃんと顔を見せるんだぞ!!」
「あ、はい……」
「なるほど、養子だから種族が違うのか……」


養子ならばエリナとギンタロウの種族が異なるのはおかしくはなく、事前に話していた人物像通りの性格らしく、唐突に戻って来たエリナに対してギンタロウは特に疑問も抱かずに彼女を迎え入れた。


「エリナ!!今日は家に泊っていけ!!積もる話も色々とあるからな!!お前の友達も歓迎するぞ!!」
「叔父さん、嬉しいけどその前にあたしたちの話を聞いてほしいっす。実はあたし達、帰還許可を得ずに戻って来たんです」
「ほう、それはどういう意味だ?」


エリナの話を聞いたギンタロウは腕を組み、他の者達も不思議そうな表情を浮かべた。エリナが事情を話そうとした時、ギンタロウの配下と思われる女性のケンタウロスが話を聞く前に街に向かう事を提案する。


「将軍、その前に場所を移動しませんか?近頃、この地方にも赤毛熊が出没するようです。話ならば街に戻る途中でも出来ますし……」
「うむ、それもそうだな。エリナ、構わないな?」
「あ、はい。でも、あたし達の他にも仲間が……」
「ウォンッ!!」
「ヒヒンッ!!」
「何だっ!?」


会話の最中にウルとユニコの鳴き声が森の中に響き渡り、茂みを掻き分けて姿を現した2匹を見てケンタウロス達は咄嗟に武器を身構えるが、慌ててレナが彼等の前に立ちはだかる。


「あ、待って下さい!!この子達は俺の仲間ですから!!」
「ウォンッ?」
「ぬうっ……白狼種にユニコーンの子供か、これは珍しいな!!お前達武器を下ろせ!!」
『はっ……』


レナの言葉を聞いてギンタロウは感心したような声を上げ、その一方でウルとユニコは状況が掴めずに不思議そうに首を傾ける。無事に合流を果たしたウルとユニコにレナは安堵すると、ウルが何かを伝えるようにレナの背中に鼻先を押し付ける。


「クゥ~ンッ」
「ん?どうしたんだウル?お腹空いたのか?」
「ウォンッ!!」
「仕方のない奴だな……干し肉で我慢しろよ」
「ほう……随分と人懐っこい狼だな」


小腹を空かせたウルにレナが干し肉を与えると、ギンタロウは物珍しそうにウルを見つめ、恐れる様子もなく近づく。ウルは初めて人間と馬が合わさったような生物を目の前にして警戒心を抱き、唸り声を上げた。


「グルルルッ……!!」
「落ち着けってウル……この人はエリナの叔父さんだよ」
「クゥンッ……」
「ほう、本当によく懐いているな!!君は魔物使いか?」


軽く宥めとあっさりと大人しくなったウルを見てギンタロウはレナが魔物使いの職業かと考えたが、そんなギンタロウの前にユニコが立ちはだかる。


「ヒヒンッ!!」
「ほう、ユニコーンか!!この地方では滅多に見かけないな!!よしよし、後で食べようと思っていたニンジンをやろう!!」
「ヒヒンッ♪」
「あ、ニンジンが好物なんだ……」


ギンタロウが腰の袋に入れていた生のニンジンを取り出すと、ユニコは嬉しそうにニンジンにかぶりつく。実際のユニコーンがニンジンが好物なのかは不明だが、少なくともユニコはニンジンが気に入ったのか一気にかぶりつく。


「はっはっはっ!!元気の良いユニコーンの子供だな!!このままだと俺の腕も齧られそうだ!!」
「こら、ユニコ駄目っすよ!!叔父さんはユニコーンじゃないんだからあんまり甘えすぎちゃ駄目っす!!」
「ヒヒンッ?」


自分と同じ馬の下半身をしている事からユニコはギンタロウに仲間意識を抱いたのか、エリナの言葉を耳にしながらも不思議そうにギンタロウに頬ずりを行う。ギンタロウも特に咎める様子もなく頭を撫で、全員に振り返る。


「面白い奴等を連れて来たなエリナ!!よし、今日は宴を開くぞ!!お前達全員を歓迎してやろう!!」
「宴?」
「ちょうど今日の狩猟も終えたばかりだからな!!遠慮せずに今日は飲み食いしてくれ!!さあ、街に戻るぞ!!」
『はっ!!』


ギンタロウの言葉に全員が従い、一先ずは近くに存在するというギンタロウが統治している「街」へ向かう――




――東聖将が管理する街は周囲を岩山で取り囲まれた大木街だった。元々は巨大な岩山を森人族の精霊魔法によって地道に頑丈な岩壁を削り取り、やがては街が作り出せる程に広大な空間を作り出したという。ちなみにこの街を作り出されたのはヨツバ王国が建国された時からである。

周囲を岩壁で取り囲まれ、出入口は「硬樹」と呼ばれる世界で最も硬い樹木を素材にした巨大な門によって封鎖され、高台には複数の物見櫓が設置されているので外部からの侵入者や上空から街に入り込もうとする魔獣の警戒も怠らない。

街の住民の数は1万人を超え、更に東聖将が管理する森人族の兵士が300人とケンタウロスが1000人は存在した。森人族の兵士は基本的に街の警備を担当し、ケンタウロスは主に外の警備を担当している。この街以外にも東聖将の領地内にはいくつかの村が存在し、北聖将と南聖将に貸している兵士を含めれば総勢で3000人程度の兵士を東聖将は管理している事になる。


「ははははっ!!俺が戻って来たぞお前達!!」
「あ、ギンタロウ様だ!!」
「ギンタロウ様が戻って来たぞ!!」
「お帰りなさいギンタロウ様!!」


門が開かれるとギンタロウは背中に大きな袋を抱えながら街中に入り込むと、瞬く間に大勢の住民が群がる。住んでいるのは森人族だけではなく、人間や小髭族の姿もちらほらと存在し、中にはケンタウロスの姿もあった。


「おう、ギンタロウの旦那!!新しい鞍を作ったんだ!!後で見てくれよ!!」
「うむ!!約束だ!!」
「ギンタロウのおじさん!!今日はどんな獲物を狩ってきたの?」
「おお、今日は大量だったぞ!!一番の大物は赤毛熊だな!!」
「ギンタロウさん!!またうちの店に酔ってくれよ、サービスするからさ!!」
「おう!!では近いうちに部下達と共に遊びに行くぞ!!」


住民から随分と慕われているらしく、親し気に話しかけてくる民衆に対してギンタロウは笑顔で受け答えを行い、その様子を見たレナはエリナに話しかける。


「叔父さん人気者だね」
「そうっすね、昔から街の人達にはこんな感じですよ。強くて優しくて気前も良いから皆から好かれるんです」
「それだけではありませんよ。我が当主の最大の魅力は狩猟の腕ですから!!」
「うわ、びっくりした!!」


会話の最中に同行していたケンタウロスの女性が話しかけ、自慢げにギンタロウの事を話す。ギンタロウがケンタウロスでありながら東聖将に選ばれた理由はその狩猟の腕前が素晴らしく、彼の噂を聞きつけたデブリ国王が東聖将の位を授けたという。


「ギンタロウ様は「千里眼」と呼ばれる希少な固有スキルを習得されております。このスキルは「心眼」の上位互換に位置するスキルでありとあらゆる状況を見て取れるスキルなんですよ」
「千里眼?」
「叔父さんはその場を動かずとも周囲の状況を把握出来るんです。何でも叔父さんが言うには能力を発動させるとまるで自分が鳥になって大空を移動するように色々な場所を見通す事が出来るらしいんです。この力を使って叔父さんは森の中に潜むありとあらゆる生物の居場所を見つけ出したり、若い頃は他の仲間に頼まれて女子の着替えを覗いた事もあるとか……」
「前者は凄いと思うけど、後者は最低な使い方だな……」
「女の敵でござる」
「……覗きはともかく、偵察などでは役立ちそうな能力ではあるがな」
「ま、まあ若気の至りという言葉もありますし……それに今のギンタロウ様は奥様一筋です!!そのような使い方はしませんから!!」


エリナの説明にレナ達は呆れてしまうが、慌てて部下の女性がフォローを行う。



※若かりし頃のギンタロウ

ギンタロウ「何?街一番の美人の女の身体が知りたい?いいだろう、俺に任せろ!!」
部下「おおっ!!」
ギンタロウ「ふむふむ……な、何と!!こやつ、女ではなく男ではないか!!これはびっくりだな!!」
部下「ええっ!?」




※おまけ 今回の投稿5秒前

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