不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

天然の要塞

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「それにしてもこの街、全部木造製なんだね。王国は殆どが煉瓦造りなのに……」
「基本的に森人族が生活する家は木造製っす。材料ならそこら中にありますし、自然の恵みで作り出された建物ほど過ごしやすい場所はないんですよ」
「なるほど……ちなみにケンタウロス族はどんな家なの?」
「私達は人間が厩と呼ぶ建物で暮らしています。この街にはユニコーンも数多く存在するので彼等と共に生活を送るケンタウロスも少なくはありません」
「良かったなユニコ、お前の遊び相手がいっぱいいるみたいだぞ」
「ヒヒンッ!!」


同族が暮しているという言葉にユニコは嬉しそうに鳴き声を上げ、ウルとアインも興味深そうに街の様子を伺う。基本的に初めて訪れる街では2匹とも物珍しそうに見られるのだが、この街の住民は特に両者に対して大きな反応を示さず、子供達がせいぜい騒ぎ立てる程度だった。


「あ、大きい犬さんがいる!!ギンタロウおじちゃんのお友達なの?」
「こっちの鱗で覆われた巨人さんは目が一つしかないよ!?」
「キュロロッ……」
「ウォンッ?」


自分達に怖がらず纏わりついてくる子供達にウルは不思議そうに首を傾げ、アインは嬉しそうに子供達を抱き上げる。その様子を見てレナは街の住民が普段からケンタウロスのような魔人族と接しているので他の街と比べてもウルとアインが恐れられないのではないかと考えると、エリナが説明を行う。


「この街はギンタロウ叔父さんが管理するようになってから色々な種族が訪れるんですよ。だから街の人達は大抵の魔人族や魔物は恐れませんよ」
「そうなのか……ウルとアインはしばらくこの子達と遊んであげたら?臭いを辿れば俺達の居場所は特定できるだろ?」
「ウォンッ!!」
「キュロロッ♪」
「わ~い!!高い高い!!」
「うわぁっ……モフモフだぁっ!!」


大勢の子供達に取り囲まれたウルとアインを残し、レナ達はギンタロウの案内の元で彼の屋敷へ向かう。ケンタウロスが住んでいる建物なので最初は大きな馬小屋のような場所を想像したレナだが、実際の彼の家は普通の人間が暮すような大きな屋敷だった。但し、建物の構造は洋風ではなく和風である。


「ここが俺の家だ!!お前達、、俺が帰ってきたぞ!!」
「ああ、旦那様!!お帰りなさいませ!!」
「お帰りなさい将軍!!」
「おおっ……凄い人数だな」


屋敷の門を潜り抜けると使用人と思われる森人族と屋敷の中で鍛錬を行っていたケンタウロスの兵士が駆けつけ、ギンタロウ達を出迎える。狩猟に出かけていた者達は今日の収穫分を渡し、改めてギンタロウは麗奈達を屋敷の中に迎え入れた。


「ようこそ我が屋敷へ!!最も俺が暮しているのはこの建物ではなく、敷地内に存在する小屋だがな!!はっはっはっ!!」
「小屋って……」
「この屋敷は代々東聖将を受け継ぐ人物だけが使用を許可されてるんですよ。だけど、叔父さんの前の代の東聖将は全員が森人族だったんで屋敷の構造もケンタウロスにとっては住みにくいんです」
「なるほど、それは不便だな」
「そうでもないぞ?足を洗えば家の中でも入る事は出来なくもないからな!!まあ、面倒だから滅多に俺はこっちの建物には入らんがな!!はっはっはっ!!」
「よく笑う御方でござるな……」


ギンタロウ曰く、どうしても屋敷の中に入る時は客人が訪れて出迎えるときだけらしく、普段は敷地内に増設した小屋の中で暮らしているという。仮にも屋敷の主を敷地内の小屋で暮らす等おかしな話に思えるが、屋敷をケンタウロスが住めるように改築するのも難しいらしく、そもそもギンタロウが将軍の職を辞した後に普通の人間が屋敷に住む事になった場合はケンタウロスが暮らす事が出来る構造の屋敷を与えられても困るだろう。

本人自体は屋敷の建物の中に入れない事には不満はないらしく、むしろ大きすぎる家の中で寛ぐのが苦手なのかギンタロウは意気揚々と自分が暮している厩の方へ案内した。


「ここが俺の家だ!!基本的にこの中では寝泊まりしているが、偶に客人が訪れた時だけはこちらの建物に入るぞ!!」
「うわ、近くで見ると結構大きいんですね」
「ああ、俺以外のケンタウロス族の者も一緒に寝泊まりしているからな!!」
「その大きな声は……やはり貴方でしたか」


厩の前でギンタロウがレナ達に説明している最中、小屋の中から美しい女性が姿を現した。外見年齢は20代後半を思わせ、綺麗な黒髪が特徴的の女性だった。但し、下半身は立派な馬の四本脚で構成され、さらに背中には小さなケンタウロスの女の子がしがみ付いていた。


「とと、おかえりっ」
「おお、愛する妻と娘よ!!今帰って来たぞ!!」
「そんなに騒がなくても聞こえてますよ……あら、そこにいるのはエリナちゃんじゃない!?久しぶりねぇっ!!」
「あ、どうも……リョウコさん、もしかしてその背中の子供って」
「ええ、私達の子供よ。ほら、挨拶をしなさいヨウコ」
「くんにちは~?」
「惜しい、一文字違いだ」


リョウコという名前のギンタロウの妻は背中にしがみついていた娘のヨウコを抱きかかえると、ヨウコは初めて顔を見るレナ達に不思議そうに挨拶を行う。母親と似て子供ながらに端正な顔立ちをしており、ヨウコはハンゾウとカゲマルの恰好を見て母親に声を掛ける。


「カカ、このおにいさんとおねえさん、まっくろ!!」
「こら、あんまり他の人の服装に口出ししちゃ駄目よ?」
「むっ……ここでは我等の恰好はひときわ目立つようだな」
「ずっと忍び装束のままで行動していたでござるからな……後で普通の服に着替えるでござる」
「そうした方が良いよ……こんにちは、お嬢ちゃん」
「おおっ?こんにち……はぁっ?」
「語尾がまだたどたどしいな……」
「すいませんね、この子はもう3才なのにまだ初めて会う人と話すと緊張しちゃって上手く喋れないんです」
「はっはっはっ!!どうだ、我が妻と娘は美人だろう?」


ヨウコはレナに挨拶されると恥ずかしそうに母親の胸元に顔を埋め、そんな二人をギンタロウは抱きしめて自慢げに話しかける。仲睦まじい親子の姿にレナは無意識に笑みを浮かべるが、ここに来た本来の目的を思い出す。


「あの、すいません。東聖将さん」
「いや、俺は東聖将ではあるが東聖将という名前じゃないぞ?」
「じゃあ、えっと将軍さん?」
「それは他人行儀過ぎるだろう。エリナの兄貴分ならば俺達の甥のような物だからな!!」
「え?この男の子はエリナの同僚さんなのかしら?」
「いや、そういう訳じゃないっすけど色々とお世話になってる大切な人っす」
「あらあら……あのエリナが同僚以外の男の子を連れて帰ってくるなんて、今夜は赤飯を焚かないとね」
「赤飯もこの世界にあるのか……」
『割と食材関係は豊富ですよ』


若干天然気味のリョウコの言葉にレナはこちらの世界にも赤飯が存在する事を知り、交信していないのにアイリスの声が聞こえたような気がした。だが、今後の事を話し合うためにエリナは真剣な表情でギンタロウ夫妻と向かい合う。


「叔父さん、今回は真面目な話なんです。ここまでの道中で理由を話したでしょう?今のヨツバ王国の滅亡の危機を抱えているんです!!」
「ぬう、そうだったな……すまんが二人とも、俺は今日は屋敷の方で泊るぞ。夕餉は一緒に食べられるからここで待っていてくれ」
「あら……そうなの?」
「え~?」


ギンタロウの言葉にリョウコとヨウコは不思議そうな表情を浮かべるが、いくらギンタロウの妻と言えども国家の存亡を関わる話をするわけにもいかず、ギンタロウは二人を残してレナ達を屋敷の建物の中に案内した――
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