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外伝 ~ヨツバ王国編~
不可解な行動
「……カゲマル」
「駄目だ、この距離では確実には仕留められん……普通のコボルトならば問題なかったが」
レナはカゲマルに視線を向けるが、流石の彼でもヨウコを危険に晒さずにコボルトを仕留める事は難しく、苦無を握り締めたまま動くことが出来ない。レナも迂闊に動く事は出来ず、その間にもヨウコは泣き叫ぶ。
「うわぁああんっ!!かか、えりなぁっ!!」
「ヨウコ、泣いてはいけません!!刺激しては駄目……!!」
「ウガァッ!!」
泣き喚くヨウコを片腕に抱えたコボルトは彼女の首筋に爪を構え、接近しようとする者達を牽制する。その行動にレナ達は違和感を覚え、森で遭遇したコボルトの変異体と比べて目の前の個体の行動に疑問を抱く。
コボルトは知能はオークよりも高いとはいえ、ゴブリンよりも劣り、そもそも人間を餌としか見做さない。それにも関わらずにレナ達の前に現れたコボルトは真っ先に力の弱い子供のヨウコを捕縛し、人質のように扱う行動を取った。この事から考えられるのは目の前のコボルトの変異体は森の中で遭遇した個体とは異なり、恐らくは魔物使いに「使役」された状態である可能性が高い。
(こいつは操られている?だから子供を殺さずに人質にして俺達を近づけさせないようにしているのか……という事はこいつを使役している主人が何処かに隠れているはず!!)
魔物使いは使役させた魔物を一定の距離内ならば自由に操作する事が出来るため、仮にヨウコを人質にしたのは主人の命令だとした場合、命令を与えた魔物使いを倒せばコボルトは解放される。しかし、解放されたからといってコボルトがヨウコに危害を加えないとは限らず、逆に主人の命令を受け付けなくなったことでヨウコを襲う可能性の方が高い。
(どうする?アイリスと交信して魔物使いの居場所を聞き出せてもヨウコを助けられなかったら意味はない……くそ、武器さえ手元にあればこんな奴なんて一瞬で倒せるのに……)
空間魔法で武器を常に異空間で収納していた事が仇となり、いくらレナでも手ぶらの状態ではコボルトを一瞬で仕留める事は出来ない。だからといって空間魔法を発動させるか、氷塊の魔法で武器を作り出す余裕もなく、コボルトは注意深く周囲の人物を見張るような目つきで後退る。
「グルルルッ……!!」
「こ、こいつ……外に逃げるつもりっすか!?」
「おい、誰か先回りしろ……うわっ!?」
「ガアアッ!!」
「わあっ!?」
障子を蹴飛ばしたコボルトはそのまま屋敷の庭に移動し、逃げ去ろうとした。慌ててレナ達が追いかけようとした時、コボルトの退路を塞ぐように庭の中で待機していたウル達が取り囲む。
「ウォオオンッ!!」
「キュロロッ!!」
「ヒヒィンッ!!」
「ガアッ……!?」
3体の魔獣に取り囲まれた事で一瞬だけコボルトの動作が止まり、その隙を逃さずにエリナがクロスボウを構えてコボルトの後頭部に目掛けて矢を放つ。
「強化射撃っ!!」
「ガウッ!?」
「あいてっ!?」
後方から迫りくる矢を察知したようにコボルトは頭を下げて回避に成功するが、その際に腕に抱えていたヨウコを落してしまい、その隙を逃さずにアインが右足を繰り出してコボルトを蹴り飛ばす。
「キュロォッ!!」
「アガァッ!?」
サイクロプスの丸太のような巨大な足で蹴りつけられたコボルトは吹き飛び、蹴りつけられた際に口内の牙の何本から折れて空中に浮かぶが、運が悪い事に蹴り飛ばした方向にはユニコが存在した。
「ヒヒンッ!!」
「フゲェッ!?」
今度はユニコの後ろ脚で蹴り飛ばされたコボルトは顔面に蹄の凹みを刻まれて屋敷を取り囲む囲いの壁にまで吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。辛うじて絶命は避けたようだが損傷は大きく、痙攣しながら動く様子はない。
「ク、ガアッ……!!」
「ウォンッ!!」
どうにか起き上がろうとしたコボルトにウルが接近すると、情け容赦なく右前脚を振り上げて頭部を踏みつぶす。いくら魔物使いに操られていようとコボルトの戦闘力自体が飛躍的に上昇するわけでもなく、変異体とはいえ元々は只のコボルトでしかない魔物では白狼種のウルに太刀打ち出来るはずがなかった。
「うう、か、かかぁっ……!!」
「ヨウコ!!ああ、良かった……!!」
地面に倒れて涙目を浮かべていたヨウコを急いでリョウコが抱きかかえ、涙を流しながら愛娘の安全を確認する。その光景を見て兵士と治療中の患者達は拍手を行い、レナ達はヨウコを救った魔獣達を褒め称える。
「よくやったぞ3匹とも!!今日はご馳走を用意してやるからな!!」
「ウォンッ♪」
「キュロロッ……」
「ヒヒンッ!!」
レナの言葉を聞いてウルは嬉しそうに尻尾を振り回し、アインは照れたように頭を掻く動作を行い、ユニコは鼻息を鳴らす。レナは彼等の頭を撫でている間、カゲマルは死亡したコボルトの変異体に視線を向け、確実に頭部を砕かれて動けないはずではあるが念のために死体を調べた。
「……おい、これを見ろ」
「どうかしたんすか?」
「首筋の裏に契約紋が刻まれている……こいつは誰かに操られていたのは間違いない」
「魔物使いでござるか!?」
「やっぱり……でも、一体誰が」
コボルトの首筋には魔物使いが魔物を使役する際に刻む「紋様」が刻まれ、既に死亡しているので効力を失った紋様は徐々に薄くなって消えていく。その様子を確かめたレナはアイリスと交信を行い、魔物使いの居場所を特定しようとした。
『アイリス!!』
『うわっ、びっくりした。そんなに強く念じないでも通じますよ』
『それはごめん、でも子供を狙ったくそ野郎の位置を知りたい。教えてくれる?』
『残念ながらコボルトを操っていた魔物使いの事は諦めて下さい。ここから相当に距離が離れているのでいくらレナさんでも捕まえるのは無理です』
アイリスと交信を行い、赤獣化させたコボルトを操っていた魔物使いを捕えようと考えたレナだが、彼女の返答を聞いて悔しがる。
『そんなに離れた距離に居るの?』
『居ますね、距離は数キロほどですが、森の中に潜伏しています。どうやらコボルトを利用して街の様子を探っているようですが、最後の一体をレナさん達が仕留めた事で撤退の準備を始めています』
『最後の一体?どういう事?』
『今回の魔物の襲撃は南聖将の計画的な犯行だったという事ですよ。しっかりと説明を聞き洩らさないようにしてくださいね』
――アイリスによると街を襲撃した赤獣化した魔物達は南聖将のレイビが送り込んだ「刺客」らしく、彼は魔物を利用して邪魔者である東聖将と彼の家族を葬るために策を講じて街に魔物を送り込んだという。この計画は大分前から準備していたらしく、既に南聖将は配下の魔物使い数名を連れて東聖将の領地内に侵入していたらしい。
南聖将がより強力な魔物を生み出すために吸血鬼の血液を利用して作り出した「赤獣」だが、コボルト以外の魔物に関しては自我が強い、あるいは戦闘力という点で不安が大きい魔物は失敗作と判断された。しかし、失敗作とはいえ戦闘力という点では赤獣化した魔物は通常種よりも上回るため、南聖将は使役獣としては使えずとも別の用途で利用出来ないかと考えた。
その結果、南聖将はコボルト以外の赤獣化させた魔物達を集めて「夜華」を利用して木箱の中に封じ込め、内密に東聖将の領地へ送り込む。その後は街中に事前に送り込んでいた自分の部下を利用して城門を開かせた後、木箱に眠らさせていた赤獣を解き放ち、混乱に乗じて唯一の成功作であるコボルトの赤獣を利用して東聖将の家族を狙ったという。
「駄目だ、この距離では確実には仕留められん……普通のコボルトならば問題なかったが」
レナはカゲマルに視線を向けるが、流石の彼でもヨウコを危険に晒さずにコボルトを仕留める事は難しく、苦無を握り締めたまま動くことが出来ない。レナも迂闊に動く事は出来ず、その間にもヨウコは泣き叫ぶ。
「うわぁああんっ!!かか、えりなぁっ!!」
「ヨウコ、泣いてはいけません!!刺激しては駄目……!!」
「ウガァッ!!」
泣き喚くヨウコを片腕に抱えたコボルトは彼女の首筋に爪を構え、接近しようとする者達を牽制する。その行動にレナ達は違和感を覚え、森で遭遇したコボルトの変異体と比べて目の前の個体の行動に疑問を抱く。
コボルトは知能はオークよりも高いとはいえ、ゴブリンよりも劣り、そもそも人間を餌としか見做さない。それにも関わらずにレナ達の前に現れたコボルトは真っ先に力の弱い子供のヨウコを捕縛し、人質のように扱う行動を取った。この事から考えられるのは目の前のコボルトの変異体は森の中で遭遇した個体とは異なり、恐らくは魔物使いに「使役」された状態である可能性が高い。
(こいつは操られている?だから子供を殺さずに人質にして俺達を近づけさせないようにしているのか……という事はこいつを使役している主人が何処かに隠れているはず!!)
魔物使いは使役させた魔物を一定の距離内ならば自由に操作する事が出来るため、仮にヨウコを人質にしたのは主人の命令だとした場合、命令を与えた魔物使いを倒せばコボルトは解放される。しかし、解放されたからといってコボルトがヨウコに危害を加えないとは限らず、逆に主人の命令を受け付けなくなったことでヨウコを襲う可能性の方が高い。
(どうする?アイリスと交信して魔物使いの居場所を聞き出せてもヨウコを助けられなかったら意味はない……くそ、武器さえ手元にあればこんな奴なんて一瞬で倒せるのに……)
空間魔法で武器を常に異空間で収納していた事が仇となり、いくらレナでも手ぶらの状態ではコボルトを一瞬で仕留める事は出来ない。だからといって空間魔法を発動させるか、氷塊の魔法で武器を作り出す余裕もなく、コボルトは注意深く周囲の人物を見張るような目つきで後退る。
「グルルルッ……!!」
「こ、こいつ……外に逃げるつもりっすか!?」
「おい、誰か先回りしろ……うわっ!?」
「ガアアッ!!」
「わあっ!?」
障子を蹴飛ばしたコボルトはそのまま屋敷の庭に移動し、逃げ去ろうとした。慌ててレナ達が追いかけようとした時、コボルトの退路を塞ぐように庭の中で待機していたウル達が取り囲む。
「ウォオオンッ!!」
「キュロロッ!!」
「ヒヒィンッ!!」
「ガアッ……!?」
3体の魔獣に取り囲まれた事で一瞬だけコボルトの動作が止まり、その隙を逃さずにエリナがクロスボウを構えてコボルトの後頭部に目掛けて矢を放つ。
「強化射撃っ!!」
「ガウッ!?」
「あいてっ!?」
後方から迫りくる矢を察知したようにコボルトは頭を下げて回避に成功するが、その際に腕に抱えていたヨウコを落してしまい、その隙を逃さずにアインが右足を繰り出してコボルトを蹴り飛ばす。
「キュロォッ!!」
「アガァッ!?」
サイクロプスの丸太のような巨大な足で蹴りつけられたコボルトは吹き飛び、蹴りつけられた際に口内の牙の何本から折れて空中に浮かぶが、運が悪い事に蹴り飛ばした方向にはユニコが存在した。
「ヒヒンッ!!」
「フゲェッ!?」
今度はユニコの後ろ脚で蹴り飛ばされたコボルトは顔面に蹄の凹みを刻まれて屋敷を取り囲む囲いの壁にまで吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。辛うじて絶命は避けたようだが損傷は大きく、痙攣しながら動く様子はない。
「ク、ガアッ……!!」
「ウォンッ!!」
どうにか起き上がろうとしたコボルトにウルが接近すると、情け容赦なく右前脚を振り上げて頭部を踏みつぶす。いくら魔物使いに操られていようとコボルトの戦闘力自体が飛躍的に上昇するわけでもなく、変異体とはいえ元々は只のコボルトでしかない魔物では白狼種のウルに太刀打ち出来るはずがなかった。
「うう、か、かかぁっ……!!」
「ヨウコ!!ああ、良かった……!!」
地面に倒れて涙目を浮かべていたヨウコを急いでリョウコが抱きかかえ、涙を流しながら愛娘の安全を確認する。その光景を見て兵士と治療中の患者達は拍手を行い、レナ達はヨウコを救った魔獣達を褒め称える。
「よくやったぞ3匹とも!!今日はご馳走を用意してやるからな!!」
「ウォンッ♪」
「キュロロッ……」
「ヒヒンッ!!」
レナの言葉を聞いてウルは嬉しそうに尻尾を振り回し、アインは照れたように頭を掻く動作を行い、ユニコは鼻息を鳴らす。レナは彼等の頭を撫でている間、カゲマルは死亡したコボルトの変異体に視線を向け、確実に頭部を砕かれて動けないはずではあるが念のために死体を調べた。
「……おい、これを見ろ」
「どうかしたんすか?」
「首筋の裏に契約紋が刻まれている……こいつは誰かに操られていたのは間違いない」
「魔物使いでござるか!?」
「やっぱり……でも、一体誰が」
コボルトの首筋には魔物使いが魔物を使役する際に刻む「紋様」が刻まれ、既に死亡しているので効力を失った紋様は徐々に薄くなって消えていく。その様子を確かめたレナはアイリスと交信を行い、魔物使いの居場所を特定しようとした。
『アイリス!!』
『うわっ、びっくりした。そんなに強く念じないでも通じますよ』
『それはごめん、でも子供を狙ったくそ野郎の位置を知りたい。教えてくれる?』
『残念ながらコボルトを操っていた魔物使いの事は諦めて下さい。ここから相当に距離が離れているのでいくらレナさんでも捕まえるのは無理です』
アイリスと交信を行い、赤獣化させたコボルトを操っていた魔物使いを捕えようと考えたレナだが、彼女の返答を聞いて悔しがる。
『そんなに離れた距離に居るの?』
『居ますね、距離は数キロほどですが、森の中に潜伏しています。どうやらコボルトを利用して街の様子を探っているようですが、最後の一体をレナさん達が仕留めた事で撤退の準備を始めています』
『最後の一体?どういう事?』
『今回の魔物の襲撃は南聖将の計画的な犯行だったという事ですよ。しっかりと説明を聞き洩らさないようにしてくださいね』
――アイリスによると街を襲撃した赤獣化した魔物達は南聖将のレイビが送り込んだ「刺客」らしく、彼は魔物を利用して邪魔者である東聖将と彼の家族を葬るために策を講じて街に魔物を送り込んだという。この計画は大分前から準備していたらしく、既に南聖将は配下の魔物使い数名を連れて東聖将の領地内に侵入していたらしい。
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その結果、南聖将はコボルト以外の赤獣化させた魔物達を集めて「夜華」を利用して木箱の中に封じ込め、内密に東聖将の領地へ送り込む。その後は街中に事前に送り込んでいた自分の部下を利用して城門を開かせた後、木箱に眠らさせていた赤獣を解き放ち、混乱に乗じて唯一の成功作であるコボルトの赤獣を利用して東聖将の家族を狙ったという。
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