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外伝 ~ヨツバ王国編~
剣聖の奇襲
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「この野郎、まだ勝負は……うおっ!?」
「迂闊に近づくな!!巻き込まれるぞ!!」
ハシラに飛び掛かろうとしたガロを何処からか現れたギンタロウが首根っこを掴み、後ろへと引き寄せる。ハシラは複数の矢を同時に番えるのと同時に精霊魔法を利用し、風の精霊を矢に宿らせて放つ。矢は衝突と同時に小規模の衝撃波を生み出して追撃を仕掛けようとする兵士達を追い払う。
「うおっ!?」
「ぐあっ!?」
「な、なんだこの矢は……うわぁっ!?」
通常、精霊魔法を発動させるには普通の砲撃魔法よりも高い集中力を必要とするが、ハシラの場合は自然体で次々と自分の番える矢に風の精霊の力を宿らせて解き放つ。風の精霊を利用して射撃の威力を上昇させるだけならばエリナも同じことは出来るが、ハシラの場合は彼女よりも攻撃の範囲が大きく、隙無く撃ち込む。
ハシラの放つ矢の1つ1つが風属性の砲撃魔法に匹敵するといっても過言ではなく、しかも矢が補充出来る状態ならば無尽蔵に精霊の力を利用して撃ち込む事も出来た。ハシラ一人に対してギンタロウの部隊は次々と被害が拡大化し、流石にギンタロウもハシラを放置できずに動き出す。
「ハシラよ!!ここは大将同士で決着を付けようではないか!!」
「ギンタロウか……悪いがお前と正面から戦うつもりはない!!」
「ぬうっ!?」
ギンタロウが鉞を掲げてハシラに向かうが、正面から接近するギンタロウに対してハシラは足元に矢を放ち、土煙を舞い上げる。その行為にギンタロウは咳込みながら煙を振り払う頃にはハシラは愛馬に乗り込んで他の兵士と共に撤退していた。
「ギンタロウ、今日の所は引き上げよう!!だが、明日までに決着を着けるぞ!!」
「待てハシラ!!」
「全軍、撤退だ!!」
愛馬に乗ったハシラは兵士達に撤退を命じると、負傷兵を抱えて兵士達は自分達の築いた陣に向けて移動を開始する。その様子を眺めたギンタロウは仕方なく鉞を下ろし、自軍の兵士達に命じる。
「仕方あるまい……今日の所はここで退き返す!!負傷した兵士がいれば全員連れ帰るぞ!!」
「おい、追いかけねえのかよ!?こっちはまだ戦えるぞ!?」
「おお、それは頼もしいな!!だが、これも作戦通りだ!!後の事は我が姪の部隊に任せよう!!」
撤退する北聖将軍の追撃を中止させ、東壁街へ引き返す様に命じるギンタロウに対してガロが不満を述べるが、そんな彼に対してギンタロウは別動隊として動いているエリナ達に任せる事を告げて自分達は引き返す事を宣言した――
――同時刻、両軍の戦闘の様子を見守る集団が存在し、木陰の中で撤退する北聖将軍の姿を確認したエリナは他の仲間達に振り返る。
「どうやら作戦通りに上手く叔父さんが追い払ってくれたようです。この様子なら陣に戻るようっすね」
「兵力差が3倍も存在するのに状況が不利と判断したら撤退を命令を出すなんて……だけど、時には士気の大きさが戦力差を覆す事もある。中々優れた判断力を持つ将軍のようね」
「ですが、こちらはそれも予測済みです。仕掛けますか?」
「待て、いくら相手が撤退しているとはいえ、こちらは数人に対して相手は数千人の兵士だ。動くのならば後続の兵士を叩くべきだ」
エリナの前には「シズネ」「ジャンヌ」「ロウガ」の3人の剣聖が存在し、彼等は昨夜の内から北聖将軍が築いた陣地と東壁街の中間に存在する森の中で待機を行い、撤退する北聖将軍の様子を枝の上から伺う。自分達の築いた陣に向けて引き返す兵士達の姿を確認したエリナは頃合いを見計らい、3人の剣聖と共に攻撃を仕掛けた。
「行きますよ!!結構うるさいですから耳を塞いでほしいっす!!」
クロスボウを抱えたエリナは鏃の部分に特別な木の実を括りつけた矢を放つと、森の中に独特な音色の風切り音が鳴り響き、移動していた兵士達が何事かと立ち止まる。
「な、なんだこの音は!?」
「奇襲か!?」
「敵は何処に居る!?」
「馬鹿者!!うろたえるな、足を止めるんじゃないっ!!」
森の中に響いた音に対して兵士達は過剰に反応してしまい、撤退中の兵士は足を止めてしまう。その様子を確認した3人の剣聖は同時に枝の上から降り立ち、その圧倒的な「武力」を発揮する。
「牙斬!!」
「うおっ!?」
「な、なんだっ!?」
「武器がっ!?」
剣聖の中でも一番の年長者で獣人族でもあるロウガは両手に短剣を構えると上空から兵士達の元へ降り立ち、不規則な斬撃で兵士達の弓矢を切り裂く。老人ではあるがこの年齢に至るまで現役を貫いているのは伊達ではなく、次々と兵士達の武器を破壊していく。
「回転……円斧!!」
「うおおおおっ!?」
「な、なんだこれはぁっ!?」
その後に続いて降り立った剣聖の中では若手のジャンヌが「旋斧」と呼ばれる斧と剣を組み合わせたような独特の形状の長剣を両手に抱えた状態で刃を振り回し、まるでベーゴマのように回転しながら加速させた刃で兵士達を薙ぎ払う。回転する度に威力を増加させ、攻撃範囲の広さからいっても乱戦に向いた戦技と言える。
「二人ともやるわね、なら私も久々に本気を出させてもらうわ……魔剣、雪月花!!」
「う、うわぁあああっ!?」
「あ、足元が……凍り付く!?」
「何だこれは!?」
――最後に現れたシズネはイレアビトに返却したはずの魔剣「雪月花」を携え、地面に刃を突き刺した瞬間に周囲一帯に冷気を迸らせ、兵士達の身体を氷結化させていく。一時期は彼女の元を離れた七大魔剣の一角だが、バルトロス王国の実権をイレアビトからナオが取り戻したときに回収され、再びシズネの元に戻って来た。
シズネ本人はイレアビトに返却した「雪月花」を自分が手にする事に躊躇したが、彼女程の力量の剣士になると扱う剣も一級品でなければ実力を出し切る事は出来ず、何時までもレナの「反鏡剣」を借り受けるわけにはいかないのでシズネの元に「雪月花」が戻って来た。
雪月花の真の能力は斬撃に冷気を付与させるため、シズネが刃で切りつけた箇所は氷結化を引き起こす。仮に地面に刃を突き刺した場合でも能力は発動し、刃から迸る冷気によって周囲一帯の地面は影響を受ける。兵士達の足元から冷気が迸るだけではなく、その冷気によって肉体は凍り付く。
「さ、寒い……身体が凍える!?」
「な、何が起きているんだ……!!」
「落ち着け!!取り乱すな、相手はたった数人だぞ!!」
「そ、そう言われても……」
数は圧倒的に北聖将軍の方が有利とはいえ、彼等が相対する「剣聖」は普通の人間ではなく、その実力は一騎当千と言っても過言ではない。剣聖の中で若手で未熟であるジャンヌでさえもその繰り出される斬撃は六聖将のギンタロウにも匹敵し、次々と兵士達を蹴散らす。
「はああっ!!」
「この女……うわぁっ!?」
「だ、駄目だ!!強すぎる!?本当に人間なのかこいつら!?」
「俺は獣人族だ!!」
「私の血の半分人魚族よ!!」
兵士は数人がかりで飛び掛かって止めようとしたが、逆にジャンヌの一撃によって吹き飛ばされ、ロウガとシズネも彼女に負けじと兵士達を次々と切りかかる。その様子を確認したハシラは歯を食いしばり、たった数人の敵に自分の軍隊がここまで追い詰められるという現状に怒りを抱く。
(伏兵まで用意していたか……しかも相当の手練れ、恐らくは冒険者の中でも上位陣をここに配置していたか。だが、いくら強かろうと体力には限界が存在するはずだ!!)
剣聖の強さを目の当たりにしながらもハシラは冷静に状況を理解し、彼等がいくら強くとも体力に限界を迎えれば対処出来る相手だと判断し、撤退を中断して兵士達に攻撃を仕掛けるように命じた。
「迂闊に近づくな!!巻き込まれるぞ!!」
ハシラに飛び掛かろうとしたガロを何処からか現れたギンタロウが首根っこを掴み、後ろへと引き寄せる。ハシラは複数の矢を同時に番えるのと同時に精霊魔法を利用し、風の精霊を矢に宿らせて放つ。矢は衝突と同時に小規模の衝撃波を生み出して追撃を仕掛けようとする兵士達を追い払う。
「うおっ!?」
「ぐあっ!?」
「な、なんだこの矢は……うわぁっ!?」
通常、精霊魔法を発動させるには普通の砲撃魔法よりも高い集中力を必要とするが、ハシラの場合は自然体で次々と自分の番える矢に風の精霊の力を宿らせて解き放つ。風の精霊を利用して射撃の威力を上昇させるだけならばエリナも同じことは出来るが、ハシラの場合は彼女よりも攻撃の範囲が大きく、隙無く撃ち込む。
ハシラの放つ矢の1つ1つが風属性の砲撃魔法に匹敵するといっても過言ではなく、しかも矢が補充出来る状態ならば無尽蔵に精霊の力を利用して撃ち込む事も出来た。ハシラ一人に対してギンタロウの部隊は次々と被害が拡大化し、流石にギンタロウもハシラを放置できずに動き出す。
「ハシラよ!!ここは大将同士で決着を付けようではないか!!」
「ギンタロウか……悪いがお前と正面から戦うつもりはない!!」
「ぬうっ!?」
ギンタロウが鉞を掲げてハシラに向かうが、正面から接近するギンタロウに対してハシラは足元に矢を放ち、土煙を舞い上げる。その行為にギンタロウは咳込みながら煙を振り払う頃にはハシラは愛馬に乗り込んで他の兵士と共に撤退していた。
「ギンタロウ、今日の所は引き上げよう!!だが、明日までに決着を着けるぞ!!」
「待てハシラ!!」
「全軍、撤退だ!!」
愛馬に乗ったハシラは兵士達に撤退を命じると、負傷兵を抱えて兵士達は自分達の築いた陣に向けて移動を開始する。その様子を眺めたギンタロウは仕方なく鉞を下ろし、自軍の兵士達に命じる。
「仕方あるまい……今日の所はここで退き返す!!負傷した兵士がいれば全員連れ帰るぞ!!」
「おい、追いかけねえのかよ!?こっちはまだ戦えるぞ!?」
「おお、それは頼もしいな!!だが、これも作戦通りだ!!後の事は我が姪の部隊に任せよう!!」
撤退する北聖将軍の追撃を中止させ、東壁街へ引き返す様に命じるギンタロウに対してガロが不満を述べるが、そんな彼に対してギンタロウは別動隊として動いているエリナ達に任せる事を告げて自分達は引き返す事を宣言した――
――同時刻、両軍の戦闘の様子を見守る集団が存在し、木陰の中で撤退する北聖将軍の姿を確認したエリナは他の仲間達に振り返る。
「どうやら作戦通りに上手く叔父さんが追い払ってくれたようです。この様子なら陣に戻るようっすね」
「兵力差が3倍も存在するのに状況が不利と判断したら撤退を命令を出すなんて……だけど、時には士気の大きさが戦力差を覆す事もある。中々優れた判断力を持つ将軍のようね」
「ですが、こちらはそれも予測済みです。仕掛けますか?」
「待て、いくら相手が撤退しているとはいえ、こちらは数人に対して相手は数千人の兵士だ。動くのならば後続の兵士を叩くべきだ」
エリナの前には「シズネ」「ジャンヌ」「ロウガ」の3人の剣聖が存在し、彼等は昨夜の内から北聖将軍が築いた陣地と東壁街の中間に存在する森の中で待機を行い、撤退する北聖将軍の様子を枝の上から伺う。自分達の築いた陣に向けて引き返す兵士達の姿を確認したエリナは頃合いを見計らい、3人の剣聖と共に攻撃を仕掛けた。
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クロスボウを抱えたエリナは鏃の部分に特別な木の実を括りつけた矢を放つと、森の中に独特な音色の風切り音が鳴り響き、移動していた兵士達が何事かと立ち止まる。
「な、なんだこの音は!?」
「奇襲か!?」
「敵は何処に居る!?」
「馬鹿者!!うろたえるな、足を止めるんじゃないっ!!」
森の中に響いた音に対して兵士達は過剰に反応してしまい、撤退中の兵士は足を止めてしまう。その様子を確認した3人の剣聖は同時に枝の上から降り立ち、その圧倒的な「武力」を発揮する。
「牙斬!!」
「うおっ!?」
「な、なんだっ!?」
「武器がっ!?」
剣聖の中でも一番の年長者で獣人族でもあるロウガは両手に短剣を構えると上空から兵士達の元へ降り立ち、不規則な斬撃で兵士達の弓矢を切り裂く。老人ではあるがこの年齢に至るまで現役を貫いているのは伊達ではなく、次々と兵士達の武器を破壊していく。
「回転……円斧!!」
「うおおおおっ!?」
「な、なんだこれはぁっ!?」
その後に続いて降り立った剣聖の中では若手のジャンヌが「旋斧」と呼ばれる斧と剣を組み合わせたような独特の形状の長剣を両手に抱えた状態で刃を振り回し、まるでベーゴマのように回転しながら加速させた刃で兵士達を薙ぎ払う。回転する度に威力を増加させ、攻撃範囲の広さからいっても乱戦に向いた戦技と言える。
「二人ともやるわね、なら私も久々に本気を出させてもらうわ……魔剣、雪月花!!」
「う、うわぁあああっ!?」
「あ、足元が……凍り付く!?」
「何だこれは!?」
――最後に現れたシズネはイレアビトに返却したはずの魔剣「雪月花」を携え、地面に刃を突き刺した瞬間に周囲一帯に冷気を迸らせ、兵士達の身体を氷結化させていく。一時期は彼女の元を離れた七大魔剣の一角だが、バルトロス王国の実権をイレアビトからナオが取り戻したときに回収され、再びシズネの元に戻って来た。
シズネ本人はイレアビトに返却した「雪月花」を自分が手にする事に躊躇したが、彼女程の力量の剣士になると扱う剣も一級品でなければ実力を出し切る事は出来ず、何時までもレナの「反鏡剣」を借り受けるわけにはいかないのでシズネの元に「雪月花」が戻って来た。
雪月花の真の能力は斬撃に冷気を付与させるため、シズネが刃で切りつけた箇所は氷結化を引き起こす。仮に地面に刃を突き刺した場合でも能力は発動し、刃から迸る冷気によって周囲一帯の地面は影響を受ける。兵士達の足元から冷気が迸るだけではなく、その冷気によって肉体は凍り付く。
「さ、寒い……身体が凍える!?」
「な、何が起きているんだ……!!」
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「そ、そう言われても……」
数は圧倒的に北聖将軍の方が有利とはいえ、彼等が相対する「剣聖」は普通の人間ではなく、その実力は一騎当千と言っても過言ではない。剣聖の中で若手で未熟であるジャンヌでさえもその繰り出される斬撃は六聖将のギンタロウにも匹敵し、次々と兵士達を蹴散らす。
「はああっ!!」
「この女……うわぁっ!?」
「だ、駄目だ!!強すぎる!?本当に人間なのかこいつら!?」
「俺は獣人族だ!!」
「私の血の半分人魚族よ!!」
兵士は数人がかりで飛び掛かって止めようとしたが、逆にジャンヌの一撃によって吹き飛ばされ、ロウガとシズネも彼女に負けじと兵士達を次々と切りかかる。その様子を確認したハシラは歯を食いしばり、たった数人の敵に自分の軍隊がここまで追い詰められるという現状に怒りを抱く。
(伏兵まで用意していたか……しかも相当の手練れ、恐らくは冒険者の中でも上位陣をここに配置していたか。だが、いくら強かろうと体力には限界が存在するはずだ!!)
剣聖の強さを目の当たりにしながらもハシラは冷静に状況を理解し、彼等がいくら強くとも体力に限界を迎えれば対処出来る相手だと判断し、撤退を中断して兵士達に攻撃を仕掛けるように命じた。
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