不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

変わり果てた王族

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――決闘を終えたレナはハシラを引き連れ、東壁街へと引き返す。撃退したと思われた軍勢が戻って来た事に東聖将軍は慌てたが、事情を話すとギンタロウは快く受け入れ、ハシラと話し合う。


「はっはっはっ!!まさかお前の方から来てくれるとは思わなかったぞ北聖将よ!!」
「……余計な事を話すつもりはない。俺はお前達が匿っているという王族の方々が本当に存在するのか確認しに来ただけだ。事前に言っておくが街に入るつもりはないぞ」


ギンタロウの言葉にハシラは眉を顰め、軍勢を同行させたのはレナ達の言葉を完全には信じておらず、もしも自分を罠に嵌めようとしているのならば再戦を挑むつもりだからである。初戦は敗走してしまったが、兵力は北聖将軍が勝っている事に変わりはない。

ハシラと共に戻って来たレナ達は事前に応援としてバルトロス王国から引き連れてきた氷雨の冒険者達と合流し、マリアの代わりに彼等の代表として取りまとめているカゲマルに事情を話す。


「手筈通り、どうにか説得してここまで連れて来たよ。そっちの様子はどう?」
「予定通りに王都から連れて来た氷雨、黒虎、牙竜の高ランク冒険者100名、更に緑影の部隊の協力のお陰で戦力は十分に整った。これならばヨツバ王国の軍勢にも十分に対抗出来るだろう」
「貴方達がヨツバ王国に侵入している間、こっちも方々に散らばった高ランクの冒険者達を集めるのは苦労したわよ……でも、お陰でバルトロス王国の中でも腕利きの冒険者達を呼び集める事は出来たわ」


冒険都市に存在する3つのギルドから腕利きの冒険者を集め、更にギルドマスターであるバルも呼び寄せる事に成功したのはバルトロス王国の協力があってこそである。女王であるナオの願いならば冒険者ギルドも無視出来ず、特にナオと面識があるバルは真っ先に協力を申し出た。氷雨の冒険者に関しても自分達のギルドマスターのマリアがヨツバ王国に拘束されていると聞けば無視できるはずがなく、牙竜の冒険者に関しては先日の一件でギルドマスターのギガンが捕まった事もあり、これ以上に王国側の印象を悪化させないために冒険者達が志願した。

総勢で100名を超える腕利きの冒険者、並びにラナの命令の元で集まったバルトロス王国地方に潜伏していた緑影の部隊が集まり、戦力面という点ではギンタロウの軍勢を含めれば十分に他の六聖将にも対抗出来る戦力は整っていた。だが、残念ながら剣聖に関してはジャンヌ、ロウガの両名と連絡を取れることは出来たが、破壊剣聖であるゴウライに関しては残念ながら見つける事が出来なかった。


「ゴウライさんは結局見つからずじまいなのは残念だったな……」
「……捜索はしたが、奴は武者修行と称して塔の大迷宮に向かったらしい。目撃者によれば大迷宮に一度入ってから戻ってこない辺り、今頃も大迷宮内に残っているのだろう」
「あの男……いえ、女だったわね。肝心な時にいないなんて本当に困った奴ね」


破壊剣聖であるゴウライを味方に付ければレナ達の戦力も大幅に強化されただろうが、生憎とゴウライは期限内に見つける事は出来ず、結局は諦めるしかなかった。だが、現時点の戦力でも1万を超えるヨツバ王国の軍勢を相手に正面から戦えるだけの戦力は存在し、ゴウライが不在でも大きな問題にはならない。


「おい、何時までこそこそと話し合っている。王族の方々は何処に居るというんだ?」
「あ、すいません……カゲマル、準備してくれた?」
「既に整えている……門を開いてくれ!!」


カゲマルの言葉に東壁街の城門が開け開かれ、大きな馬車が街の方から姿を現す。その馬車を目撃したハシラは本当にヨツバ王国の王族を連れて来たのかと緊張した面持ちで確認すると、馬車が両軍の間で停止する。最初にギンタロウが馬車の前に赴くと、その場で跪いて馬車の中に声を掛ける。


「ティナ王女様、お姿をお見せ下さい!!」
「う、うん……」
『おおっ……!!』


ギンタロウが声を掛けると馬車の扉が開き、ティナが姿を現す。その光景を目撃した兵士達に動揺が走り、正真正銘のヨツバ王国の王女であるティナが姿を現した事に歓声が上がる。


「ティナ王女様だ!!間違いない、本物だぞ!!」
「バルトロス王国に拘束されていたはずでは……?」
「本物だ!!あの可憐な御姿、間違いなく本物のティナ様だ!!」
「お、おおうっ……意外と人気があるんだティナ」
「ティナ王女様は人気者っすよ。何しろ王女様ですから!!」


兵士達の反応にレナは意外な表情を浮かべるが、ティナの側近であるエリナによると彼女はギンタロウが収める東壁街によく赴くらしく、兵士や民衆からも人気が高いという。北聖将の軍勢に関してもバルトロス王国に捕縛されているはずのティナが姿を現した事に混乱しながらも彼女が無事であった事に安堵する者も多い。

だが、北聖将のハシラはティナの姿を見て険しい表情を浮かべ、彼女の前に赴く。そしてティナの前で跪くと、ハシラは早速質問を行う。


「ティナ王女様、ご無事で何よりでございます。しかし、どうしてバルトロス王国に捕縛されたと聞いた貴女様がここにおられるのか理由を聞いてもよろしいですか?」
「え、えっとね……何処から話せばいいかな?あのね、実は私達は……」
「ティナ様!!その前に師匠に他の王族の方々の姿を見せて欲しいっす!!」


ティナが説明を行う前にエリナが口を挟み、彼女の言葉にハシラは眉を顰めるが、ティナはエリナの言葉に頷くと馬車の荷台の方に移動して中に待機している者達に声を掛けた。


「皆!!お父様やお兄様やお姉様を出して!!」
「は、はい!!」
「すぐに用意いたします!!」
「用意?それはどういう……こ、これは!?」


馬車の荷台に待機していたヨツバ王国の女騎士達は十数人がかりで大きな木箱を3台運び出す。木箱を横一列に並べると蓋を開き、その中身を覗き見たハシラは驚愕の表情を浮かべる。そして隣に立つギンタロウも険しい表情を浮かべ、木箱の中身を確認した他の者達は怪訝な表情を浮かべる。


「あ、あれは……なんだ?」
「国王様達の石像、か?」
「どうしてそんな物をここへ……」
「それにしても精巧に作られた石像だな、小髭族が作り出したのか?」


木箱の中に入っていたのはデブリ、アルン、ノルの王族の3人の石像が収められ、決して壊れないように大切に保管されていた。そのあまりにも精巧な石像の姿に兵士達は戸惑いを隠せず、どうしてこの場に3人の石像を持ち込んだのかと疑問を抱く。

だが、北聖将であるハシラは長年の間に仕えてきたデブリ国王の石像を目の当たりにすると、信じられない表情を浮かべながらもゆっくりと近づき、石像に触れて愕然とした表情を浮かべる。そんな彼の姿に兵士達は何事かと心配して声を掛けようとした時、ハシラはゆっくりと口を開く。


「これは……どういう事だ、どういう事なんだ!!ギンタロウ!!」
「ぬうっ……」
「将軍!?」
「一体どうされたというのですか!?」


我を忘れたようにハシラはギンタロウに掴みかかると、憤怒の表情を浮かべて事情を説明するように問う。彼の行為に配下の兵士達は慌てふためくが、ギンタロウは冷静にハシラの肩を掴んで離れさせる。


「やはりお前も気付いたか、ハシラ」
「当然だ!!この俺がこの御方を見間違えるはずがない!!だからこそ信じられん!!この石像は一体何なのだギンタロウ!!」
「見ての通りだ……この御三方はある者の手によって肉体を石化され、石像へと変わり果ててしまったのだ」
「なん、だと……!?」


ギンタロウの言葉にハシラは呆然と3体の石像に視線を向け、自分が忠誠を誓った相手のあまりにも変わり果てた姿に腰を抜かしてしまう。
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