不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

剣鬼であろうと

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「おい爺さん!!さっきから黙って聞いてれば好き勝手言いやがって!!レナを殺人鬼扱いするなよくそ爺!!」
「ダイン、あんた……」
「だいたい爺さんだって人の事を言える立場かよ!?王妃に騙されて城の中で散々僕達の邪魔をしたくせにさ!!これじゃあ、どっちが悪者だよ!!」
「ぬうっ……」


代表同士の話し合いの場にダインが割込み、コトミンやゴンゾウ、シズネやエリナもダインの意見に頷く。だが、そんなダインに対してロウガを慕うガロが真っ先に反応する。


「おい、てめえ!!ロウガさんになんて口の利き方をするんだ!!」
「な、何だよ!?本当の事だろ!?人の親友を悪者扱いしておいて、自分は何も悪い事してないなんて言い切れるのかよ!?」
「こいつ……!!」
「おい、落ち着けガロ!!」
「喧嘩は駄目だって!!」


ガロがダインに飛び掛かろうとすると、慌ててモリモとミナがそれを止め、ダインを守るようにゴンゾウが前に出る。2人の言い争いを切っ掛けに他の者達も自分達の意見を言い合う。


「ロウガさん、今のは少し言い過ぎじゃないですか?別にそいつを擁護するわけじゃないですけど、そこの坊主が言っていたように殺人鬼みたいに言うのはあんまりじゃ……」
「おい、何言ってんだよ。ロウガさんが理由もなく、そんな事を言う人じゃないだろ?」
「でもさ、この間の戦闘の時だってあのレナとかいう奴、一番敵を倒してたぜ?だけど誰一人殺してはいなかったし……それにマリアさんの甥だろ?」
「この場合、マリアさんは関係ないだろ?」


レナを危険視するロウガの反応に他の冒険者達が騒ぎ出す。これでは話し合いで統率者を決める暇もなく、ギンタロウが口を挟もうとした時、シズネが全員に向けて叫ぶ。


「ここにいるロウガの言い分が正しいと思う人間がいるのなら、私がこれから話す事を聞きなさい!!」
「何だと?」
「一体何を話す気だ!!」


シズネの言葉に全員が視線を向けると、彼女はレナの肩を掴み、安心させるように笑顔を浮かべるとこれまでの彼の功績を告げる。


「どうやら貴方達は自覚していないようだけど、ここに居るレナは貴方達の命の恩人である事を忘れていないのかしら?腐敗竜が襲撃した時、討伐に最も貢献した者は!?闘技祭の時に出現した地竜を最終的に打ち倒したのは誰!?ここにいるレナよ!!」
「い、言われてみれば……」
「俺も見てたぜ!!あいつが腐敗竜を誘導してナオ王女と一緒に聖剣で倒すところを!!」
「地竜?まさか、あいつも地竜との戦闘に参加していたのか?」


レナが過去に冒険都市に襲撃した2体の竜種との戦闘で活躍した事実を指摘すると、実際にレナと共に戦った冒険者達は否定せず、シズネの言葉に頷く。地竜との戦闘に参戦していたロウガもレナの活躍を目の当たりにしていたので反論は出来ず、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべて黙り込む。


「ここにいるレナは王城で反乱を企てて王妃に従っていた大将軍のミドルを打ち倒し、王妃を捕縛したわ!!確かにレナはミドルを討ち取った事は間違いない、だけど結果的には王妃の反乱を止め、ナオ王女を王位に就けたといっても過言ではない!!これが悪い事だと言うの?悪を倒すために命を絶つ事が間違っているというの?」
「言われてみれば……」
「俺達だって依頼として賊の討伐なんてしょっちゅうやってるしな……」


冒険者は基本的には魔物の討伐を主とした仕事ばかりを受けているように思われるが、時と場合によっては商団や貴族の護衛も行い、その際に襲いかかって来た盗賊などの悪人を討つ事も珍しくはない。特に高ランクの冒険者ほど様々な依頼を引き受けているため、大半の人間が悪党を討伐する仕事を引き受けている。


「ロウガ、貴方はレナを殺人鬼になると思い込んでいるようだけど、貴方だってこれまでに何人の命を奪ってきたの?一人や二人ではないわよね。でも、別にその事を責めるつもりはないわ。傭兵である私だってこれまでに何人も敵を討ち取って生きてたわ」
「……確かにお前の言う通りだ。だが、俺が言いたいのは人を殺す事を咎めているわけではない!!人を殺す事で快楽を得る行為が許せんのだ!!」
「快楽?それこそ笑わせないでくれないかしら?ここにいるレナが人殺しを楽しむような男だというの?貴方にレナの何がわかるのよ!!」
「そうだそうだ!!」
「レナはそんな人間じゃないっ……!!」
「そうですよ!!兄貴がそんなくそ野郎なはずがないっす!!」
「その通りだ!!」
「皆……」


シズネの言葉にレナの仲間達が賛同し、この場には居ないがもしもティナや他の魔獣達が居れば彼女達も同意してくれただろう。自分が剣鬼だとしても殺人鬼に堕ちる事はないと信じてくれる仲間達にレナは勘当するが、ロウガはそれでも納得がいかないのか自分の考えを曲げない。


「お前達がその少年をそこまで信用している事はよく分かった。だが、今は良くても将来的にそいつが悪鬼にならんと言い切れるのか?」
「それを言えば逆にレナが悪鬼になる確証もないでしょう?水掛け論に付き合うつもりはないわ、私達はレナを信じている。それだけの話よ」
「ロウガ様、私も皆さんと同じ考えです。私は過去にレナ様と剣を合わせましたが、レナ様の強さの正体は剣の技量だけではなく、足りない物を他の部分で補っているように感じ取れました。レナ様の強さの秘密はそこにあるのではないのでしょうか?」
「ジャンヌ……お前もそいつを信じるというのか?」


弟子のように可愛がっていたジャンヌからも反論を受けたロウガは動揺し、それでも自分が間違っているとは認められず、ロウガはレナを睨みつけて再度問い質す。


「ならば……俺の質問に答えろレナよ!!お前はかつて確かに親しい人間を殺したはずだ!!それは何者だ!?」
「あんた、いい加減に……!!」
「いいよ、バル。大丈夫だから……」


人が触れられたくない部分を問い質そうとするロウガにバルが怒りを抱くが、そんな彼女を抑えてレナはロウガと向き直り、覚悟を決めたように口を開く。


「確かに俺は家族と呼べるような人を殺した事がある」
「えっ……!?」
「れ、レナ!?嘘だろ!?」
「やはりな……それは誰だ?」


レナの言葉に他の者達は衝撃を受けるが、それでもレナはアリアの事を思い返し、彼女が自分にとってどのような存在なのかを迷いなく答えた。


「母親、姉、友人、先生……とにかく一言では言い切れない程に大切な人だった。だけど、彼女は俺の命を奪おうとしてきた」
「何?」
「俺は自分が生き残るため、彼女を討ち取った……だけど、最後にあの人は俺に笑ってくれた。あの人は自分が殺される事を知りながら戦ったんだ。だから、俺は後悔なんかしない……あの人に教わった事を無駄にしない」


アリアとの最後の邂逅の時を思い返し、レナは自分の掌を見つめると、握り拳を作り出す。その答えを聞いたロウガは黙り込み、やがてある結論に至る。


「お前が殺した相手は、お前の剣の師だったのか」
「そういう事になるかな……」
「つまり、お前は剣の師を超えるために戦ったという事か」
「はい」
「……そうか」


数十年前、ロウガは自分に剣を教えてくれた師匠の事を思い出す。重病に侵された師匠が病に殺されるぐらいならばたった一人の弟子であるロウガに命を絶たれる事を求め、二人は決闘を行った。ロウガが自分の師匠の胸に剣を突き立てた時、師匠は彼に向けて笑顔を浮かべていた事を思い出した。
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