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外伝 ~ヨツバ王国編~
謎の攻撃
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「もっと早く……限界強化!!」
「ぬおっ……!?」
瞬動術を発動させた状態でレナは更に支援魔法で肉体の身体能力を限界まで引き上げると、先行していたギンタロウへと追いつく。ただの人間であるレナがケンタウロス族である自分に追いついてきた事にギンタロウは驚くが、即座に気を取り直して前方へ向けて駆け抜ける。
「流石はエリナが見込んだ兄貴分と見込んだ男だな!!だが、足の速さならばケンタウロス族に勝る者はいない!!」
「わあっ……!?」
ギンタロウは負けじと移動速度を上昇させ、レナの服を掴むと無理やりに自分の背中に乗せる。慌ててレナはギンタロウの肩を掴んでしがみつくと、二人の視界に大樹の根本で横たわるガンモ達の姿を発見した。
「こ、これは……一体何が起きた!?」
「……そんな」
受肉の大樹に到着して早々にギンタロウは眼前の光景に目を見開き、レナも事前に風の精霊を通して状況は把握していたが、やはり自分の目で直に見るとあまりの光景に冷や汗を流す。樹木の傍には無数の魔物の死骸が転がり、樹肉の果実が大量に地面に落ちているにも関わらずに新しい魔物が現れる様子すらない。
魔物の死骸の大半はガンモが率いる冒険者集団が討伐したと考えられるが、死骸の中には明らかに刀傷で切り裂かれた魔物も多く、しかもどれ程の切れ味を誇る獲物で切り裂かれたのか見事なまでに真っ二つの状態で切り裂かれた死骸も少なくはない。ガンモが率いる巨人族の戦士たちの殆どの獲物が闘拳や棍棒の類だったので彼等が刃物で切り裂かれた死体を形成したとは考えにくく、ガンモ達以外の何者かが魔物を殺して死骸を生み出した事になる。
「ううっ……だ、誰か……」
「ち、血が……止まらない」
「がはっ……!?」
「お前達!!一体何が起きた!?」
倒れている者はガンモ達以外にも存在し、ギンタロウの側近を務め、東聖将軍の中でも指折りの実力者であるキン、ギン、ドウの3人のケンタウロスの戦士たちも樹木の根本で倒れていた。全員が致命傷といっても過言ではない程の深手を負い、ギンタロウの姿を確認すると3人は顔色を青くしながらも彼を見上げる。
「しょ、将軍……お逃げ下さい、ここには得体の知れない何かが……」
「危険です、我々に近付かないで……」
「ぐふっ……しょ、将軍……!!」
「くっ……待っていろ、今すぐに治療してやるぞ!!」
「なら、俺が回復魔法を!!」
ギンタロウは周囲を見渡して彼等をここまで追い込んだ存在を探すが、辺り一帯を見まわしても人影は見えず、そもそも生物の気配すら感じない。ギンタロウが森人族ならば風の精霊に呼びかけて周囲の状況を把握する事も出来ただろうが、今は自体が一刻も争う状態なので危険を承知で倒れている3人組の元へ向かう。
「おい、3人を治せるか!?」
「待ってください……傷が深いけど、何とかやってみます」
「だ、駄目だ……すぐに逃げるんだ、俺達に構うな……!!」
レナが3人の容体を確認して傷は深いが、幸いな事に身体の一部が破損は見当たらず、全身を斬りつけられて出血が激しい状態ではあるが、十分に回復超強化の支援魔法で治せる範囲内だった。すぐにレナは3人の治療を行おうとするが、治療を拒むように3人の隊長格であるキンが注意する。
「俺達に構わずにすぐにここから離れろ、将軍も君も俺達と同じようになってしまうぞ……!!」
「ええい、一体何が起きたのだ!!お前達程の戦士を誰がここまで追い詰めたというのだ!?」
「わ、分かりません……我等も何が起きたのか理解出来ないのです。ただ、奇妙な風が我等の身体を包み込んだ瞬間、まるでかまいたちのように全身が切り裂かれて……」
「かまいたち……?」
――治療を行いながらもレナとギンタロウは3人がけがを負うまでの経緯を尋ね、彼等によると3人はガンモ達を迎えに行った兵士が戻ってこない事に疑問を抱き、様子を見にここまで来たらしいが、そこには樹肉の大樹の根本で倒れているガンモと他の冒険者達の姿を発見したという。
3人は負傷したガンモ達を見て慌てて駆けつけようとした時、唐突に一陣の風が正面から3人の身体を飲み込んだ瞬間、身体中に鮮血が舞い上がり、全身に刀傷のような怪我を負ったらしい。何が起きたのか理解出来ないままに3人は倒れ、救出に現れたレナ達と合流したという。
「わ、我々を切り裂いた風は普通ではない……風が通り過ぎた時、確かに魔力の臭いがしました。あれはきっと何らかの魔法による攻撃と思われます。それも普通の魔法ではなく、精霊魔法の類かと……」
「精霊魔法だと……という事は、相手は森人族という事か?」
「分かりません……ですが、我々よりもガンモ殿達の治療を優先してください。彼等は我等よりも危険な状態です……既に樹肉の大樹の影響を受けているはずです」
「くっ……お前達はそこにいろ、レナ君!!治療を続けてくれ!!」
「は、はい!!」
ギンタロウはキンが指し示す方向に視線を向け、樹肉の大樹の根本の部分に放置されたガンモ達の様子を見て歯を食いしばり、すぐに彼等を救出するために一人で向かう。気絶した状態で樹肉の大樹の近くで倒れると、周囲に横たわる魔物の死骸のように体内の栄養分が吸収され尽くす恐れがあり、すぐに彼等を安全場所まで避難させる必要があった。
キン、ギン、ドウの治療をレナに任せたギンタロウは周囲の状況を警戒しながらもガンモ達の元へ向かい、まずは怪我の具合と意識の有無を確かめる。幸いと言うべきか、まだ全員辛うじて生き残っており、意識は失っていたが死んではいなかった。
「おい、しっかりしろ!!俺の声が聞こえるか!?」
「うっ……」
「駄目か、仕方あるまい……多少、粗っぽくなるが我慢しろ!!」
ギンタロウはガンモの身体を持ち上げようと肩を掴み、自分よりも体長を上回る巨人族の肉体を背負う。東聖将を務めるだけはあり、ギンタロウの身体能力はミノタウロスやサイクロプスさえも上回る。
「ふんぬぬぬっ……あと少しだ、踏ん張れお前達!!」
だが、ギンタロウはガンモだけではなく、他の4人の巨人族の戦士たちも背負い込もうと力を込め、顔面を紅潮させながらも4人の巨人を抱えてレナの元へ運び込む。冷静に考えれば一人ずつ運べば良いのだが、得体の知れぬ攻撃を行う敵が近くに潜伏している以上、一刻も早くガンモ達を運び出す必要があった。
「将軍!!こ、これはどういう状況ですか!?」
「レナ、無事か……うわ、何だよこれ!?」
「おおっ……お前達も来たか!!」
移送の最中にやっとギンタロウの配下の他の兵士達やダイン達も追いつき、周囲一帯に横たわる大量の魔物の死骸とキン、ギン、ドウの治療を行うレナ、更に4人の巨人族を背負うギンタロウの姿を見て驚愕する。すぐに状況を理解した者はレナとギンタロウの元に駆けつけ、怪我人の治療を急ぐ。
「レナ、代わって……私の魔法で治す」
「ありがとうコトミン……俺の魔法じゃ応急処置が限界だったよ」
「ぬううっ……やはり、重いな」
「ほら、あんたらも見てないで手伝いな!!巨人族のガキだけ働かせる気かい!?」
「わ、分かってるよ!!手伝えばいいんだろ!?」
回復魔法を扱えるコトミンがレナの代わりに3人の治療を交代すると、残り者達はギンタロウが背負う4人の巨人の移送を手伝い、ゴンゾウが率先して自分のギルドの先輩に当たるガンモを運び込む。バル達も力を合わせて残りの巨人を運び込もうとした時、草原に突風が発生してレナ達の身体を包み込む。
「ぬおっ……!?」
瞬動術を発動させた状態でレナは更に支援魔法で肉体の身体能力を限界まで引き上げると、先行していたギンタロウへと追いつく。ただの人間であるレナがケンタウロス族である自分に追いついてきた事にギンタロウは驚くが、即座に気を取り直して前方へ向けて駆け抜ける。
「流石はエリナが見込んだ兄貴分と見込んだ男だな!!だが、足の速さならばケンタウロス族に勝る者はいない!!」
「わあっ……!?」
ギンタロウは負けじと移動速度を上昇させ、レナの服を掴むと無理やりに自分の背中に乗せる。慌ててレナはギンタロウの肩を掴んでしがみつくと、二人の視界に大樹の根本で横たわるガンモ達の姿を発見した。
「こ、これは……一体何が起きた!?」
「……そんな」
受肉の大樹に到着して早々にギンタロウは眼前の光景に目を見開き、レナも事前に風の精霊を通して状況は把握していたが、やはり自分の目で直に見るとあまりの光景に冷や汗を流す。樹木の傍には無数の魔物の死骸が転がり、樹肉の果実が大量に地面に落ちているにも関わらずに新しい魔物が現れる様子すらない。
魔物の死骸の大半はガンモが率いる冒険者集団が討伐したと考えられるが、死骸の中には明らかに刀傷で切り裂かれた魔物も多く、しかもどれ程の切れ味を誇る獲物で切り裂かれたのか見事なまでに真っ二つの状態で切り裂かれた死骸も少なくはない。ガンモが率いる巨人族の戦士たちの殆どの獲物が闘拳や棍棒の類だったので彼等が刃物で切り裂かれた死体を形成したとは考えにくく、ガンモ達以外の何者かが魔物を殺して死骸を生み出した事になる。
「ううっ……だ、誰か……」
「ち、血が……止まらない」
「がはっ……!?」
「お前達!!一体何が起きた!?」
倒れている者はガンモ達以外にも存在し、ギンタロウの側近を務め、東聖将軍の中でも指折りの実力者であるキン、ギン、ドウの3人のケンタウロスの戦士たちも樹木の根本で倒れていた。全員が致命傷といっても過言ではない程の深手を負い、ギンタロウの姿を確認すると3人は顔色を青くしながらも彼を見上げる。
「しょ、将軍……お逃げ下さい、ここには得体の知れない何かが……」
「危険です、我々に近付かないで……」
「ぐふっ……しょ、将軍……!!」
「くっ……待っていろ、今すぐに治療してやるぞ!!」
「なら、俺が回復魔法を!!」
ギンタロウは周囲を見渡して彼等をここまで追い込んだ存在を探すが、辺り一帯を見まわしても人影は見えず、そもそも生物の気配すら感じない。ギンタロウが森人族ならば風の精霊に呼びかけて周囲の状況を把握する事も出来ただろうが、今は自体が一刻も争う状態なので危険を承知で倒れている3人組の元へ向かう。
「おい、3人を治せるか!?」
「待ってください……傷が深いけど、何とかやってみます」
「だ、駄目だ……すぐに逃げるんだ、俺達に構うな……!!」
レナが3人の容体を確認して傷は深いが、幸いな事に身体の一部が破損は見当たらず、全身を斬りつけられて出血が激しい状態ではあるが、十分に回復超強化の支援魔法で治せる範囲内だった。すぐにレナは3人の治療を行おうとするが、治療を拒むように3人の隊長格であるキンが注意する。
「俺達に構わずにすぐにここから離れろ、将軍も君も俺達と同じようになってしまうぞ……!!」
「ええい、一体何が起きたのだ!!お前達程の戦士を誰がここまで追い詰めたというのだ!?」
「わ、分かりません……我等も何が起きたのか理解出来ないのです。ただ、奇妙な風が我等の身体を包み込んだ瞬間、まるでかまいたちのように全身が切り裂かれて……」
「かまいたち……?」
――治療を行いながらもレナとギンタロウは3人がけがを負うまでの経緯を尋ね、彼等によると3人はガンモ達を迎えに行った兵士が戻ってこない事に疑問を抱き、様子を見にここまで来たらしいが、そこには樹肉の大樹の根本で倒れているガンモと他の冒険者達の姿を発見したという。
3人は負傷したガンモ達を見て慌てて駆けつけようとした時、唐突に一陣の風が正面から3人の身体を飲み込んだ瞬間、身体中に鮮血が舞い上がり、全身に刀傷のような怪我を負ったらしい。何が起きたのか理解出来ないままに3人は倒れ、救出に現れたレナ達と合流したという。
「わ、我々を切り裂いた風は普通ではない……風が通り過ぎた時、確かに魔力の臭いがしました。あれはきっと何らかの魔法による攻撃と思われます。それも普通の魔法ではなく、精霊魔法の類かと……」
「精霊魔法だと……という事は、相手は森人族という事か?」
「分かりません……ですが、我々よりもガンモ殿達の治療を優先してください。彼等は我等よりも危険な状態です……既に樹肉の大樹の影響を受けているはずです」
「くっ……お前達はそこにいろ、レナ君!!治療を続けてくれ!!」
「は、はい!!」
ギンタロウはキンが指し示す方向に視線を向け、樹肉の大樹の根本の部分に放置されたガンモ達の様子を見て歯を食いしばり、すぐに彼等を救出するために一人で向かう。気絶した状態で樹肉の大樹の近くで倒れると、周囲に横たわる魔物の死骸のように体内の栄養分が吸収され尽くす恐れがあり、すぐに彼等を安全場所まで避難させる必要があった。
キン、ギン、ドウの治療をレナに任せたギンタロウは周囲の状況を警戒しながらもガンモ達の元へ向かい、まずは怪我の具合と意識の有無を確かめる。幸いと言うべきか、まだ全員辛うじて生き残っており、意識は失っていたが死んではいなかった。
「おい、しっかりしろ!!俺の声が聞こえるか!?」
「うっ……」
「駄目か、仕方あるまい……多少、粗っぽくなるが我慢しろ!!」
ギンタロウはガンモの身体を持ち上げようと肩を掴み、自分よりも体長を上回る巨人族の肉体を背負う。東聖将を務めるだけはあり、ギンタロウの身体能力はミノタウロスやサイクロプスさえも上回る。
「ふんぬぬぬっ……あと少しだ、踏ん張れお前達!!」
だが、ギンタロウはガンモだけではなく、他の4人の巨人族の戦士たちも背負い込もうと力を込め、顔面を紅潮させながらも4人の巨人を抱えてレナの元へ運び込む。冷静に考えれば一人ずつ運べば良いのだが、得体の知れぬ攻撃を行う敵が近くに潜伏している以上、一刻も早くガンモ達を運び出す必要があった。
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「ありがとうコトミン……俺の魔法じゃ応急処置が限界だったよ」
「ぬううっ……やはり、重いな」
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