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外伝 ~ヨツバ王国編~
ハヤテの苦悩
――ヨツバ王国内において最も権力と影響力を持つ三大貴族、それが「ハヅキ家」「ミドリ家」「守人家」である。ハヅキ家は優秀な人材を多く産出し、更に「緑影」の管理を任され、ミドリ家は王家の護衛役として騎士を務め、代々の当主は六聖将の「守護将」の任を義務付けられていた。最後の守人家に関してはヨツバ王国でも特殊な存在として扱われ、彼等はアトラス大森林の奥地に存在する領地の守護を任されている。
この3つの貴族の中で最も政治に影響力を持ち、尚且つ王家に信頼されているのはハヅキ家だった。ハヅキ家が管理する緑影は他国の情報収集、危険要因の排除を行い、彼等が存在しなければ国が成り立たない程の功績を上げている。だが、それだけならば王家の守護を任されているミドリ家も国を支える存在である事に違いはない。
ハヅキ家とミドリ家に決定的な差があるとすれば「風の聖痕」の所有者の存在が大きい。ハヅキ家出身の森人族の多くは優秀な魔術師が多く、全ての種族の中で最も魔法に精通する森人族にとっては魔法の才能に満ち溢れた森人族は憧敬の存在として認識されやすい。しかもハヅキ家の当主は代々「風の聖痕」の継承者である。
魔法を増強される「聖痕」の持ち主はヨツバ王国内でも特殊な存在として扱われる事が多く、ヨツバ王家もハヅキ家を特別視していた節がある。聖痕の所有者は誰一人として優秀な魔術師しか存在せず、過去ではマリアのように「最上級魔法」を極める程の逸材まで存在した。
ハヅキ家は王家から絶大な信頼を受け、守人家はヨツバ王国内でも重要な領地の管理を任されているのに対し、ミドリ家は王家の守備として当主は「防護将」の位を授けられるが、王家の守護を完全に任されているわけではない。王家を守護する存在は「守備将」も同じ役目を与えられているため、更に王国四騎士などの存在もあるのでミドリ家だけが王都の守護者の責務を全任されているわけではない。
防護将のツバサの妹であるハヤテは若かりし頃から「剣聖」の領域に至り、史上最年少で「剣術指南役」の任を引き受けた。何かと忙しいツバサの代わりに王都に所属する騎士の指導はハヤテが行い、シュンも彼女の一番弟子として育っていた。しかし、それほどの重要な任務を与えられながらもハヤテはハヅキ家に対して大きな劣等感を覚えていた。
ハヤテはミドリ家が他の二つの貴族家と比べ、王家から与えられる役目が王族の守護だけである事に疑問を抱いていた。しかも王族の守護といっても実際には防護将と守備将の二人の将軍が担うため、ミドリ家の役目は半分しか与えられていない。彼女は昔、どうして防護将だけではなく守備将の位をミドリ家の者が告げないのかと姉に問い質した事があるが、ヨツバ王国の建国からの慣わしでミドリ家の者が務める事が許されているのは防護将の位だけであると決められたらしい。
基本的には王族の守護が防護将を務めるのに対し、守備将は王都の管理を任され、王都の軍勢を率いる事が許されているのは守備将だけである。その事に対してもハヤテは不満を抱き、ハヅキ家は「緑影」の管理を全任されているのに対し、ミドリ家は王族の守護だけで王都の防衛を任されない事に彼女は苛立ちを抱えていた。
『どうしてハヅキ家と守人家だけが優遇されている?王国に最も貢献しているのはミドリ家なのに何故、私達だけが下に見られなければならない?』
誰も口にはしないが、ヨツバ王国の三大貴族といっても実際の所は王家から優遇視されているのはハヅキ家である事は間違いない。そうでなければハヅキ家が後継者である二人の娘が国外に逃げ出したとき、それを力尽くで引き戻す事もせず、逆に二人の娘のために見張り役兼護衛役の人材を送るはずがない。
しかもハヤテが我慢ならないのがハヅキ家が自分達の人材ではなく、ミドリ家に依頼という形で剣術指南役という重要な役目を任せられていた自分を指定して国外へ送り込んだ事である。当然、最初に姉から任務を言い渡されたハヤテは反対しようとしたが、ツバサは当主として命令を下す。
『ハヅキ家との関係を保つため、貴女がアイラ様とマリア様の護衛を務めなさい。この任務はヨツバ王国内で最も剣の腕が立つ貴女にしか出来ません。剣術指南役の代役は私の方で用意しましょう』
『姉上!!私は生まれてからこの国を出た事もない!!どうして他の者に任せない!?』
『他の者ではこの任務を務める事は難しいと私が判断したからです。事前に言っておきますが、既に陛下には話を通しています。これは王命でもありますよ?』
ハヤテはどうしてハヅキ家から抜け出した二人の娘のために自分が向かわなければならないのが抗議したが、王命である以上は王国に仕える騎士として逆らう事は出来ず、大きな不満を抱きながらもハヤテは二人の後を追ってバルトロス王国へ赴く。
『どうしてハヅキ家だけがここまで優遇される……姉上も何故、ハヅキ家なんかの言う事を聞く』
慣れない異国の地でアイラとマリアの後を追い、二人と接触しないように気を配りながらヨツバ王国に報告を行わなければならない生活にハヤテはますますハヅキ家への不満を募らせ、何時しか憎しみに近い感情を抱く。だが、ヨツバ王国に仕える者として与えられた任務は真っ当しなければならなかった。
『あの二人は自由奔放だな、こちらの苦労も気付かずに……』
アイラとマリアが冒険者として活動し、バルトロス王国内で自由に過ごす中、ハヤテは二人に気付かれぬ範囲で援助を行う。時には二人の存在を脅かす輩、あるいは二人を利用しようとする邪な考えを抱く人間の排除、バルトロス王国の人間に二人の素性が気付かれないように隠蔽工作も行う。
『この生活を何時まで続けなければならない……二人が死ぬまで私は国へ戻れないのか?』
二人が冒険者活動を開始してから数年が経過した頃、ハヤテは現在の生活に限界を感じ始め、勘当される事を承知で国へ引き返して任務を解くように直談判しようかと悩み始めたころ、ある人物が彼女に接触を果たす。
『初めまして……ではないわね、貴女が私達の事を裏で助けてくれていた事は気付いていたわ』
『お前は……!?』
『少し、お話をしましょう?』
ある時、ハヤテの前に護衛対象であるマリアが現れると、彼女はハヤテを誘って自分が考えている計画を話す。
『私はいずれ冒険者ギルドを作り出そうと考えているのは知っているわね?その目途は遂に出来たの』
『知っている……私はお前達の事をずっと監視していた』
『そうね、だけど私はともかく、自由に生きる姉さんの観察を続けるのは大変だったでしょう。でも、これからはそんな苦労も少しは解消されるわ。私は貴女を冒険者ギルドの一員として迎え入れたいの』
『何だと……馬鹿な、私に冒険者の真似事でもしろというのか!?』
マリアは近い将来に冒険者ギルドを設立し、そのギルドの冒険者としてハヤテを招く。よりにもよって自分が嫌うハヅキ家の血筋を継ぎ、しかも任務の護衛対象からそのような提案を持ち掛けられたハヤテは断ろうとしたが、マリアは条件を付け加える。
『勿論、貴女が私達に良い感情を抱いていないのは理解しているわ。だけど、何時までも私達の観察を続ける生活をおくり続けるのは厳しいでしょう?それならいっその事、私の作り出すギルドの冒険者の一人として常に私の傍で行動する方が賢明よ』
『……何故、今になって私を誘う?別にわざわざ冒険者ギルドを設立せずとも、私が適当な冒険者ギルドに加入してお前達の冒険者集団に入ればいいだけの話だ』
『それでは意味はないのよ。私は一人でも多くの戦力が欲しいの……そうでなければあの女に対抗する事は出来ない』
『あの女?』
ハヤテはマリアの言葉に疑問を抱くと、マリアはどうして急に自分が冒険者ギルドを設立する理由を語る。
この3つの貴族の中で最も政治に影響力を持ち、尚且つ王家に信頼されているのはハヅキ家だった。ハヅキ家が管理する緑影は他国の情報収集、危険要因の排除を行い、彼等が存在しなければ国が成り立たない程の功績を上げている。だが、それだけならば王家の守護を任されているミドリ家も国を支える存在である事に違いはない。
ハヅキ家とミドリ家に決定的な差があるとすれば「風の聖痕」の所有者の存在が大きい。ハヅキ家出身の森人族の多くは優秀な魔術師が多く、全ての種族の中で最も魔法に精通する森人族にとっては魔法の才能に満ち溢れた森人族は憧敬の存在として認識されやすい。しかもハヅキ家の当主は代々「風の聖痕」の継承者である。
魔法を増強される「聖痕」の持ち主はヨツバ王国内でも特殊な存在として扱われる事が多く、ヨツバ王家もハヅキ家を特別視していた節がある。聖痕の所有者は誰一人として優秀な魔術師しか存在せず、過去ではマリアのように「最上級魔法」を極める程の逸材まで存在した。
ハヅキ家は王家から絶大な信頼を受け、守人家はヨツバ王国内でも重要な領地の管理を任されているのに対し、ミドリ家は王家の守備として当主は「防護将」の位を授けられるが、王家の守護を完全に任されているわけではない。王家を守護する存在は「守備将」も同じ役目を与えられているため、更に王国四騎士などの存在もあるのでミドリ家だけが王都の守護者の責務を全任されているわけではない。
防護将のツバサの妹であるハヤテは若かりし頃から「剣聖」の領域に至り、史上最年少で「剣術指南役」の任を引き受けた。何かと忙しいツバサの代わりに王都に所属する騎士の指導はハヤテが行い、シュンも彼女の一番弟子として育っていた。しかし、それほどの重要な任務を与えられながらもハヤテはハヅキ家に対して大きな劣等感を覚えていた。
ハヤテはミドリ家が他の二つの貴族家と比べ、王家から与えられる役目が王族の守護だけである事に疑問を抱いていた。しかも王族の守護といっても実際には防護将と守備将の二人の将軍が担うため、ミドリ家の役目は半分しか与えられていない。彼女は昔、どうして防護将だけではなく守備将の位をミドリ家の者が告げないのかと姉に問い質した事があるが、ヨツバ王国の建国からの慣わしでミドリ家の者が務める事が許されているのは防護将の位だけであると決められたらしい。
基本的には王族の守護が防護将を務めるのに対し、守備将は王都の管理を任され、王都の軍勢を率いる事が許されているのは守備将だけである。その事に対してもハヤテは不満を抱き、ハヅキ家は「緑影」の管理を全任されているのに対し、ミドリ家は王族の守護だけで王都の防衛を任されない事に彼女は苛立ちを抱えていた。
『どうしてハヅキ家と守人家だけが優遇されている?王国に最も貢献しているのはミドリ家なのに何故、私達だけが下に見られなければならない?』
誰も口にはしないが、ヨツバ王国の三大貴族といっても実際の所は王家から優遇視されているのはハヅキ家である事は間違いない。そうでなければハヅキ家が後継者である二人の娘が国外に逃げ出したとき、それを力尽くで引き戻す事もせず、逆に二人の娘のために見張り役兼護衛役の人材を送るはずがない。
しかもハヤテが我慢ならないのがハヅキ家が自分達の人材ではなく、ミドリ家に依頼という形で剣術指南役という重要な役目を任せられていた自分を指定して国外へ送り込んだ事である。当然、最初に姉から任務を言い渡されたハヤテは反対しようとしたが、ツバサは当主として命令を下す。
『ハヅキ家との関係を保つため、貴女がアイラ様とマリア様の護衛を務めなさい。この任務はヨツバ王国内で最も剣の腕が立つ貴女にしか出来ません。剣術指南役の代役は私の方で用意しましょう』
『姉上!!私は生まれてからこの国を出た事もない!!どうして他の者に任せない!?』
『他の者ではこの任務を務める事は難しいと私が判断したからです。事前に言っておきますが、既に陛下には話を通しています。これは王命でもありますよ?』
ハヤテはどうしてハヅキ家から抜け出した二人の娘のために自分が向かわなければならないのが抗議したが、王命である以上は王国に仕える騎士として逆らう事は出来ず、大きな不満を抱きながらもハヤテは二人の後を追ってバルトロス王国へ赴く。
『どうしてハヅキ家だけがここまで優遇される……姉上も何故、ハヅキ家なんかの言う事を聞く』
慣れない異国の地でアイラとマリアの後を追い、二人と接触しないように気を配りながらヨツバ王国に報告を行わなければならない生活にハヤテはますますハヅキ家への不満を募らせ、何時しか憎しみに近い感情を抱く。だが、ヨツバ王国に仕える者として与えられた任務は真っ当しなければならなかった。
『あの二人は自由奔放だな、こちらの苦労も気付かずに……』
アイラとマリアが冒険者として活動し、バルトロス王国内で自由に過ごす中、ハヤテは二人に気付かれぬ範囲で援助を行う。時には二人の存在を脅かす輩、あるいは二人を利用しようとする邪な考えを抱く人間の排除、バルトロス王国の人間に二人の素性が気付かれないように隠蔽工作も行う。
『この生活を何時まで続けなければならない……二人が死ぬまで私は国へ戻れないのか?』
二人が冒険者活動を開始してから数年が経過した頃、ハヤテは現在の生活に限界を感じ始め、勘当される事を承知で国へ引き返して任務を解くように直談判しようかと悩み始めたころ、ある人物が彼女に接触を果たす。
『初めまして……ではないわね、貴女が私達の事を裏で助けてくれていた事は気付いていたわ』
『お前は……!?』
『少し、お話をしましょう?』
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『私はいずれ冒険者ギルドを作り出そうと考えているのは知っているわね?その目途は遂に出来たの』
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『そうね、だけど私はともかく、自由に生きる姉さんの観察を続けるのは大変だったでしょう。でも、これからはそんな苦労も少しは解消されるわ。私は貴女を冒険者ギルドの一員として迎え入れたいの』
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マリアは近い将来に冒険者ギルドを設立し、そのギルドの冒険者としてハヤテを招く。よりにもよって自分が嫌うハヅキ家の血筋を継ぎ、しかも任務の護衛対象からそのような提案を持ち掛けられたハヤテは断ろうとしたが、マリアは条件を付け加える。
『勿論、貴女が私達に良い感情を抱いていないのは理解しているわ。だけど、何時までも私達の観察を続ける生活をおくり続けるのは厳しいでしょう?それならいっその事、私の作り出すギルドの冒険者の一人として常に私の傍で行動する方が賢明よ』
『……何故、今になって私を誘う?別にわざわざ冒険者ギルドを設立せずとも、私が適当な冒険者ギルドに加入してお前達の冒険者集団に入ればいいだけの話だ』
『それでは意味はないのよ。私は一人でも多くの戦力が欲しいの……そうでなければあの女に対抗する事は出来ない』
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