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外伝 ~ヨツバ王国編~
南聖将の秘策
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「言っておくが、俺は王女様から直々に討伐命令を受けているんだ。だから俺の邪魔をするんじゃねえよ、ギンタロウの奴も王国の連中も俺が全員始末してやる」
『ふざけた事を……』
「おい、これは忠告じゃねえ、警告だ!!だいたいてめえの任務はなんだ!?あの女の監視を命じられているんだろうが!!勝手に持ち場を離れている癖に偉そうに抜かすな!!」
レイビの言葉にハヤテは言い返す事は出来ず、実際の所は彼女がこの場に存在するのは不味い状況だった。もしも王都のカレハにこの事が伝われば彼女の立場は危うくなり、最悪の場合はハヤテがカレハと取り決めた「約束」も保護されてしまう可能性も高い。
気に喰わない事だがハヤテはレイビに見つかった以上はこの地での行動は出来ないと判断し、仕方なく王都へと退散する事にした。だが、去り際に彼女はレイビに忠告を行う。
『……奴等を甘く見るな、特にあの黒髪の少年には気を付ける事だな』
「ふん、余計なお世話だ」
『ちっ!!』
最後に舌打ちをするとハヤテはその場を駆け抜けて立ち去り、その様子を見たレイビも地面に唾を吐く。お互いに気に入らない相手ではあるが、立場上は強力しなければならず、レイビはハヤテが姿を消した後に呟く。
「今に見てろよあの女……俺が六聖将の筆頭になったらぶっ殺してやる。いや、その前に年齢の割には未熟なあの身体を楽しませてもらうのも一興か……かっかっかっ!!」
「ウォンッ……」
下衆な笑い声をあげるレイビはコボルトの背中に乗り込むと、南方の自分の領地へ向けて駆け出す。今日の所は様子見も兼ねてこの地に訪れたが、東聖将と一戦を交えるのならばそれ相応の準備は必要だった。だが、その準備も間もなく整い、あと少しでレイビは目の上のたん瘤であったギンタロウを討ち取る作戦を実行する事が出来る。
「待っていろよくそ野郎が……六聖将に獣はいらねえ、お前と、お前の家族の死体はフェンリルの餌にしてやるぜ」
レイビは北聖将の領地に放っていたフェンリルが帰還次第、すぐに東聖将の領地を攻め込み、ギンタロウの首とバルトロス王国から送り込まれた冒険者達を討伐するつもりだった――
「――とまあ、こういう感じでレイビという人が動き出そうとしています。どうしますかレナさん?」
「なるほどね、そういう事だったのか」
狩猟勝負が実行された日の晩、レナは夢の世界にてアイリスと直接対面を行い、現在のヨツバ王国の状況を彼女に知らされる。本当は交信して話を聞くだけでも良かったが、アイリスと対面して説明して貰う方が分かりやすいために夢の世界で彼女と邂逅する。
「レイビの目的は東聖将の領地を奪うだけではなく、その功績を利用して東聖将の筆頭の座に就き、権力を得る事です。そのためにまずはカレハから信頼を得るために邪魔者であるギンタロウの排除を行おうとしてるんですよ」
「聞けば聞くほど嫌な奴だな……けど、厄介なのはそんな男にフェンリルや赤獣が従っているのか」
「そうですね、赤獣程度ならばともかく、フェンリルを相手にする場合は対策を考えないといけませんね。前の様にユニコーンが助けてくれるなんて奇跡は期待出来ませんから」
レナとアイリスは真っ白な空間の中で座布団に座り、ちゃぶ台を挟んで向き合い、これまでの情報を整理する。まず、狩猟勝負の最中にてハヤテが現れ、レナ達を狙った理由をアイリスは説明した。
「念のためにもう一度だけ最初から説明しましょうか。ハヤテが氷雨を裏切り、カレハに従った理由は拘束されたマリアと弟子のシュンの事が理由です。彼女は何だかんだでマリアの事を気にかけてるんですよ」
「叔母様の命とシュンさんの石化を解くことが出来るのがカレハだけだから従っているという話でしょ?だからハヤテさんは仕方なく俺達の前に現れた、か」
「そうです。ハヤテは心からカレハに従っているわけではなく、自分の面倒を見てくれたマリアと、何だかんだで目に欠けていた弟子のシュンの命がカレハに握られているから従っている状況ですね」
ハヤテが氷雨を去り、ヨツバ王国へ戻ったのは決してカレハに忠誠を誓っていたわけではなく、彼女はカレハの元で捕らわれているマリア、そしてカレハに保護されているキラウの石化の魔眼によって石像にされたシュンを救い出すためにカレハに従わざるを得ないという。この二人はハヤテにとっては最も大切な人達で間違いなく、二人を救う好機を伺うために彼女はカレハの命令に逆らう事が出来なかった。
「ハヤテがレナさん達の前に現れたのは本当は戦闘が目的つもりはなく、どうにか接触して情報交換を行おうとしていたんです。だけど、レイビの支配下に存在する魔物に見つかって結局は交戦するしかなかったんですよ」
「その割には割と本気で殺しにかかってたと思うけど……」
「下手な演技でもして気付かれたら大変な事になりますからね。実際に負傷者は存在しても死んだ人間はいなかったでしょう?まあ、レナさんと戦う間に剣士の血が騒いで本気で戦ってたのは間違いないですけど……」
「こっちはとんだとばっちりだよ……」
ハヤテがレナ達の前に現れた本当の理由は戦闘が目的ではなく、自分がカレハに従う理由と現在のシュンの状況を聞くために訪れたのだが、運悪く東聖将の領地内に入り込んでいたレイビの魔獣に見つかった事で止む無く怪しまれないようにカレハの手下を演じて襲いかかって来たという。
『ふざけた事を……』
「おい、これは忠告じゃねえ、警告だ!!だいたいてめえの任務はなんだ!?あの女の監視を命じられているんだろうが!!勝手に持ち場を離れている癖に偉そうに抜かすな!!」
レイビの言葉にハヤテは言い返す事は出来ず、実際の所は彼女がこの場に存在するのは不味い状況だった。もしも王都のカレハにこの事が伝われば彼女の立場は危うくなり、最悪の場合はハヤテがカレハと取り決めた「約束」も保護されてしまう可能性も高い。
気に喰わない事だがハヤテはレイビに見つかった以上はこの地での行動は出来ないと判断し、仕方なく王都へと退散する事にした。だが、去り際に彼女はレイビに忠告を行う。
『……奴等を甘く見るな、特にあの黒髪の少年には気を付ける事だな』
「ふん、余計なお世話だ」
『ちっ!!』
最後に舌打ちをするとハヤテはその場を駆け抜けて立ち去り、その様子を見たレイビも地面に唾を吐く。お互いに気に入らない相手ではあるが、立場上は強力しなければならず、レイビはハヤテが姿を消した後に呟く。
「今に見てろよあの女……俺が六聖将の筆頭になったらぶっ殺してやる。いや、その前に年齢の割には未熟なあの身体を楽しませてもらうのも一興か……かっかっかっ!!」
「ウォンッ……」
下衆な笑い声をあげるレイビはコボルトの背中に乗り込むと、南方の自分の領地へ向けて駆け出す。今日の所は様子見も兼ねてこの地に訪れたが、東聖将と一戦を交えるのならばそれ相応の準備は必要だった。だが、その準備も間もなく整い、あと少しでレイビは目の上のたん瘤であったギンタロウを討ち取る作戦を実行する事が出来る。
「待っていろよくそ野郎が……六聖将に獣はいらねえ、お前と、お前の家族の死体はフェンリルの餌にしてやるぜ」
レイビは北聖将の領地に放っていたフェンリルが帰還次第、すぐに東聖将の領地を攻め込み、ギンタロウの首とバルトロス王国から送り込まれた冒険者達を討伐するつもりだった――
「――とまあ、こういう感じでレイビという人が動き出そうとしています。どうしますかレナさん?」
「なるほどね、そういう事だったのか」
狩猟勝負が実行された日の晩、レナは夢の世界にてアイリスと直接対面を行い、現在のヨツバ王国の状況を彼女に知らされる。本当は交信して話を聞くだけでも良かったが、アイリスと対面して説明して貰う方が分かりやすいために夢の世界で彼女と邂逅する。
「レイビの目的は東聖将の領地を奪うだけではなく、その功績を利用して東聖将の筆頭の座に就き、権力を得る事です。そのためにまずはカレハから信頼を得るために邪魔者であるギンタロウの排除を行おうとしてるんですよ」
「聞けば聞くほど嫌な奴だな……けど、厄介なのはそんな男にフェンリルや赤獣が従っているのか」
「そうですね、赤獣程度ならばともかく、フェンリルを相手にする場合は対策を考えないといけませんね。前の様にユニコーンが助けてくれるなんて奇跡は期待出来ませんから」
レナとアイリスは真っ白な空間の中で座布団に座り、ちゃぶ台を挟んで向き合い、これまでの情報を整理する。まず、狩猟勝負の最中にてハヤテが現れ、レナ達を狙った理由をアイリスは説明した。
「念のためにもう一度だけ最初から説明しましょうか。ハヤテが氷雨を裏切り、カレハに従った理由は拘束されたマリアと弟子のシュンの事が理由です。彼女は何だかんだでマリアの事を気にかけてるんですよ」
「叔母様の命とシュンさんの石化を解くことが出来るのがカレハだけだから従っているという話でしょ?だからハヤテさんは仕方なく俺達の前に現れた、か」
「そうです。ハヤテは心からカレハに従っているわけではなく、自分の面倒を見てくれたマリアと、何だかんだで目に欠けていた弟子のシュンの命がカレハに握られているから従っている状況ですね」
ハヤテが氷雨を去り、ヨツバ王国へ戻ったのは決してカレハに忠誠を誓っていたわけではなく、彼女はカレハの元で捕らわれているマリア、そしてカレハに保護されているキラウの石化の魔眼によって石像にされたシュンを救い出すためにカレハに従わざるを得ないという。この二人はハヤテにとっては最も大切な人達で間違いなく、二人を救う好機を伺うために彼女はカレハの命令に逆らう事が出来なかった。
「ハヤテがレナさん達の前に現れたのは本当は戦闘が目的つもりはなく、どうにか接触して情報交換を行おうとしていたんです。だけど、レイビの支配下に存在する魔物に見つかって結局は交戦するしかなかったんですよ」
「その割には割と本気で殺しにかかってたと思うけど……」
「下手な演技でもして気付かれたら大変な事になりますからね。実際に負傷者は存在しても死んだ人間はいなかったでしょう?まあ、レナさんと戦う間に剣士の血が騒いで本気で戦ってたのは間違いないですけど……」
「こっちはとんだとばっちりだよ……」
ハヤテがレナ達の前に現れた本当の理由は戦闘が目的ではなく、自分がカレハに従う理由と現在のシュンの状況を聞くために訪れたのだが、運悪く東聖将の領地内に入り込んでいたレイビの魔獣に見つかった事で止む無く怪しまれないようにカレハの手下を演じて襲いかかって来たという。
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