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外伝 ~ヨツバ王国編~
不可視の鎧
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「皆さん、退いて下さい!!」
「うわっ!?」
助走をつけて跳躍したジャンヌが旋斧を空中で振り翳し、白毛の人虎の元へ振り下ろす。だが、白虎は防御する姿勢も取らずに正面から彼女の振り下ろした刃を受け止め、金属音が鳴り響く。
「くうっ!?」
「ぬっ……なるほど、少しはやるな」
弾き飛ばされたジャンヌはどうにか空中で体勢を整えて着地すると、人虎は自分の額に流れる血に気付き、感心した表情を浮かべる。だが、ジャンヌ本人は首を飛ばすどころか頭部を粉砕する勢いで振り下ろした自身の刃を受けても額に血が流れる程度の損傷を与えられなかった事に衝撃を受ける。
「ば、馬鹿な!?どうして今の一撃をまともに受けて生きていられる!?」
「何だってんだいこいつは!?」
「まさか……こいつが白虎か!?」
「……なるほど、お前達は剣聖か」
他の人虎から白虎と呼ばれた個体は自分の流した血を確認し、ジャンヌとロウガとシズネの方に視線を向けて二人を剣聖だと見抜く。ジャンヌはともかく、ロウガとシズネは交戦していないにも関わらずに白虎は並外れた直観力で二人の力量を見抜き、自分が本気で戦う相手と定めた。
「面白い……剣聖と戦うのは、久しぶりだな」
「待て!!貴様の相手はこの俺だ!!」
「ほう……その出で立ち、東聖将か」
ギンタロウが他の者を掻き分けて前に出ると、白虎は彼の容姿と武器を見て即座に正体を見抜き、正面から向き合う。ギンタロウは鉞を握り締めると白虎を睨みつけ、即座に接近する。
「旋風!!」
「ぬうっ……」
鉞が左右から振り払われ、反射的に白虎は両腕で刃を防ぐと、やはり金属音が鳴り響いて鉞は弾かれてしまう。しかし、それを予測していたかのようにギンタロウは前脚を上げ、白虎を蹴り飛ばそうとした。
「ぬんっ!!」
「むっ……」
「やった!?」
ギンタロウから繰り出された馬脚を受けた白虎の身体が浮き上がり、後退する。しかし、攻撃を仕掛けた方のギンタロウの方は表情を険しくさせ、自分の前脚の様子を見て歯を食いしばる。
「ぐうっ……!?」
「将軍!?どうされたのですか!?」
「まさか……!?」
「足を怪我されたのですか!?」
何時の間にかギンタロウの両前脚には複数の「切り傷」が存在し、先に攻撃を仕掛けたギンタロウの方が負傷した事に他の者達は驚く一方、その傷跡の具合を見て何名かは白虎の能力の正体を見抜く。
「複数の切り傷……それに弾かれる攻撃、まさかこれは!?」
「シズネ殿、何か分かったのでござるか?」
「ええ、やっと分かったわ。こいつは王国四騎士のアカイと同じ能力の使い手なのよ!!」
「アカイだと……まさか!?」
「嵐鎧を使えるというのか!?」
「ほうっ……よくぞ見抜いたな」
白虎の能力の正体は王国四騎士の筆頭を務めるアカイの「嵐鎧」と同じく、自分の身に風の魔力を纏わせて鎧のように身を守り、相手の攻撃を弾き返していた事が判明する。しかもアカイの場合は全身に常に風の鎧を纏わせていたのに対し、この白虎は攻撃を受ける瞬間に「嵐鎧」を発動させ、これまでのギンタロウ達の攻撃を防いでいたのだ。
ちなみにアカイの扱う嵐鎧は彼自身の魔力だけで構成しているわけではなく、風の精霊の力を借りて発動させていた。なので環境によっては能力の質が大きく変化し、屋外で行えば驚異的な防御力を誇り、場合によっては攻撃にも利用できる。但し、室内のような隔離された空間では本来の力を発揮出来ず、身を守る事も難しい。
「お前達は、アカイを知っているようだな……だが、奴の嵐鎧と俺の「防風」は練度が違う。この技は元々、クレナイと俺の手によって生み出した技術だ」
「クレナイ……ですって?」
「お前の事は知っているぞ、シズネ……お前の父とも戦った事がある」
「父が貴方と戦った……?」
シズネは白虎の言葉に戸惑い、父親の口からは彼の存在を聞いた事はないが、白虎によるとシズネの父親は過去に一度だけ交戦したという。
「お前の父親がクレナイとの勝負を挑み、引き分けたと聞いて興味が湧いた。だから俺はお前の父親を知りたくて、王国の地に訪れた事がある。結果は……つまらない終わり方だったがな」
「どういう意味かしら?まさか、父が貴方に負けたとでも言うの?」
「お前の父親は、確かに強かった。だが、既に力が衰え始めていた……既に全盛期を終え、力が衰えていく男と戦っても意味はない。そう判断した俺は勝負を放棄し、この地へ戻った」
「なんですって……!!」
「お前達、人間の寿命は短い……奴と出会うのが10年早ければお互いに遺恨なく戦えただろう」
白虎の言葉にシズネは激しい怒りを抱き、尊敬する父親を乏しめられたと考えたシズネは我慢できず、雪月花を引き抜いて白虎と向き合う。
「私の前で父の侮辱は許さない……武人の娘として、父親の屈辱は晴らさせてもらうわ」
「そうか……ならば、掛かって来い」
シズネが雪月花を構えると白虎も初めて構えを取り、二人の間に緊張感が走る。そして先に動いたのはシズネの方だった。
※本日はコミカライズ版の更新日でしたが、南條先生が体調を崩したそうなので更新は来週の27日となります。皆様もお体を大切にしてください。
「うわっ!?」
助走をつけて跳躍したジャンヌが旋斧を空中で振り翳し、白毛の人虎の元へ振り下ろす。だが、白虎は防御する姿勢も取らずに正面から彼女の振り下ろした刃を受け止め、金属音が鳴り響く。
「くうっ!?」
「ぬっ……なるほど、少しはやるな」
弾き飛ばされたジャンヌはどうにか空中で体勢を整えて着地すると、人虎は自分の額に流れる血に気付き、感心した表情を浮かべる。だが、ジャンヌ本人は首を飛ばすどころか頭部を粉砕する勢いで振り下ろした自身の刃を受けても額に血が流れる程度の損傷を与えられなかった事に衝撃を受ける。
「ば、馬鹿な!?どうして今の一撃をまともに受けて生きていられる!?」
「何だってんだいこいつは!?」
「まさか……こいつが白虎か!?」
「……なるほど、お前達は剣聖か」
他の人虎から白虎と呼ばれた個体は自分の流した血を確認し、ジャンヌとロウガとシズネの方に視線を向けて二人を剣聖だと見抜く。ジャンヌはともかく、ロウガとシズネは交戦していないにも関わらずに白虎は並外れた直観力で二人の力量を見抜き、自分が本気で戦う相手と定めた。
「面白い……剣聖と戦うのは、久しぶりだな」
「待て!!貴様の相手はこの俺だ!!」
「ほう……その出で立ち、東聖将か」
ギンタロウが他の者を掻き分けて前に出ると、白虎は彼の容姿と武器を見て即座に正体を見抜き、正面から向き合う。ギンタロウは鉞を握り締めると白虎を睨みつけ、即座に接近する。
「旋風!!」
「ぬうっ……」
鉞が左右から振り払われ、反射的に白虎は両腕で刃を防ぐと、やはり金属音が鳴り響いて鉞は弾かれてしまう。しかし、それを予測していたかのようにギンタロウは前脚を上げ、白虎を蹴り飛ばそうとした。
「ぬんっ!!」
「むっ……」
「やった!?」
ギンタロウから繰り出された馬脚を受けた白虎の身体が浮き上がり、後退する。しかし、攻撃を仕掛けた方のギンタロウの方は表情を険しくさせ、自分の前脚の様子を見て歯を食いしばる。
「ぐうっ……!?」
「将軍!?どうされたのですか!?」
「まさか……!?」
「足を怪我されたのですか!?」
何時の間にかギンタロウの両前脚には複数の「切り傷」が存在し、先に攻撃を仕掛けたギンタロウの方が負傷した事に他の者達は驚く一方、その傷跡の具合を見て何名かは白虎の能力の正体を見抜く。
「複数の切り傷……それに弾かれる攻撃、まさかこれは!?」
「シズネ殿、何か分かったのでござるか?」
「ええ、やっと分かったわ。こいつは王国四騎士のアカイと同じ能力の使い手なのよ!!」
「アカイだと……まさか!?」
「嵐鎧を使えるというのか!?」
「ほうっ……よくぞ見抜いたな」
白虎の能力の正体は王国四騎士の筆頭を務めるアカイの「嵐鎧」と同じく、自分の身に風の魔力を纏わせて鎧のように身を守り、相手の攻撃を弾き返していた事が判明する。しかもアカイの場合は全身に常に風の鎧を纏わせていたのに対し、この白虎は攻撃を受ける瞬間に「嵐鎧」を発動させ、これまでのギンタロウ達の攻撃を防いでいたのだ。
ちなみにアカイの扱う嵐鎧は彼自身の魔力だけで構成しているわけではなく、風の精霊の力を借りて発動させていた。なので環境によっては能力の質が大きく変化し、屋外で行えば驚異的な防御力を誇り、場合によっては攻撃にも利用できる。但し、室内のような隔離された空間では本来の力を発揮出来ず、身を守る事も難しい。
「お前達は、アカイを知っているようだな……だが、奴の嵐鎧と俺の「防風」は練度が違う。この技は元々、クレナイと俺の手によって生み出した技術だ」
「クレナイ……ですって?」
「お前の事は知っているぞ、シズネ……お前の父とも戦った事がある」
「父が貴方と戦った……?」
シズネは白虎の言葉に戸惑い、父親の口からは彼の存在を聞いた事はないが、白虎によるとシズネの父親は過去に一度だけ交戦したという。
「お前の父親がクレナイとの勝負を挑み、引き分けたと聞いて興味が湧いた。だから俺はお前の父親を知りたくて、王国の地に訪れた事がある。結果は……つまらない終わり方だったがな」
「どういう意味かしら?まさか、父が貴方に負けたとでも言うの?」
「お前の父親は、確かに強かった。だが、既に力が衰え始めていた……既に全盛期を終え、力が衰えていく男と戦っても意味はない。そう判断した俺は勝負を放棄し、この地へ戻った」
「なんですって……!!」
「お前達、人間の寿命は短い……奴と出会うのが10年早ければお互いに遺恨なく戦えただろう」
白虎の言葉にシズネは激しい怒りを抱き、尊敬する父親を乏しめられたと考えたシズネは我慢できず、雪月花を引き抜いて白虎と向き合う。
「私の前で父の侮辱は許さない……武人の娘として、父親の屈辱は晴らさせてもらうわ」
「そうか……ならば、掛かって来い」
シズネが雪月花を構えると白虎も初めて構えを取り、二人の間に緊張感が走る。そして先に動いたのはシズネの方だった。
※本日はコミカライズ版の更新日でしたが、南條先生が体調を崩したそうなので更新は来週の27日となります。皆様もお体を大切にしてください。
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