不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
705 / 2,090
外伝 ~ヨツバ王国編~

剣鬼復活!!

しおりを挟む
「ちょ、ティナ様!?それは万が一のために常に身に着けておくように言われていた薬じゃ……!?」
「その万が一がきっと今だよ!!レナたん、これを飲んで!!」
「んぐぅっ……!?ぶはぁっ!?」


意識を失いかけているレナに対してティナは小瓶の中身を飲ませようとしたが、口に含んだ瞬間にレナはせき込んでしまい、飲み干す事が出来なかった。その様子を見たカゲマルが声を掛ける。


「その薬が本物かどうかは知らんが、飲ませるのならば口移しだ!!口移しで無理やり飲ませろ!!」
『口移し!?』
「ちょ、何してんだよお前等!?こっちが敵から視線を逸らすなって!!」


口移しという単語に複数人の女子が反応を示し、最初に回復瓶を持っていたティナが照れ臭そうに自分の口元に小瓶を近づけようとした。


「し、仕方ないよね……緊急事態だもんね。男の子とキスするなんて初めてだけど……私、頑張るよ!!」
「……それは駄目、私がやる」
「ティナ様、それはずるいっす!!」
「待ちなさい!!口移しなら私が……」
「いえ、私が!!」
「ぼ、僕も……」
「ミナ!?」


口移しでレナに薬を飲ませるという方法にティナだけではなく、コトミン、エリナ、シズネ、ジャンヌ、おまけにミナも反応する。一体誰が薬を飲ませるかで争いが始まろうとした時、レナの傍に控えていたスラミンが飛び出してティナから薬瓶を奪う。


「ぷるんっ!!」
『あっ!?』
「スラミン!?」


スラミンは薬瓶を口に含むと、そのまま全てを一気に飲み干し、全体の体色が青色から濃い緑色へと変化を果たす。そして口元を開くとレナの身体に向けて大量の水分を放出した。


「ぷるっしゃあああっ!!」
「ぶはぁっ!?」
『レナ!?』


大量の緑色の液体を見に浴びたレナは岩から転がり落ちてしまい、慌てて他の物が助けだそうとしたが、先に赤獣の1体がレナに目掛けて飛び掛かる。


「ガアアアッ!!」
「いかん!!」
「させないでござる!!」


赤獣のコボルトがレナに攻撃を仕掛ける前にロウガとハンゾウが動き、コボルトを仕留めようとしたが、二人よりも先にコボルトの顔面を掴む存在が居た。


「おらぁっ!!」
「ギャウンッ!?」
「れ、レナさん!?」


地面に倒れていたはずのレナは起き上がると同時にコボルトの顔面を握り締め、勢いよく地面に叩きつけて頭部を粉砕する。そして身体の調子を確かめるように手首や足首を動かすと、足元にすり寄るスラミンを持ち上げて抱きしめる。


「ふうっ……助かったよスラミン、流石はメインヒロインだ」
「ぷるぷるっ♪」
『ええっ!?』


スラミンによって身体を回復したレナは赤獣の群れに視線を向け、状況を理解すると即座にハンゾウとカゲマルに指示を出す。


「カゲマル、ハンゾウ!!俺の武器を早く!!」
「承知!!」
「持っていけ!!」


事前にカゲマルとハンゾウに退魔刀と反鏡剣を預けていたレナは二人から武器を受け取ると、赤獣の群れと向き直り、瞳の色を紅色に光り輝かせながら久しぶりに本気で身体を動かすために切りかかった。


「剣舞!!」
『グギャアアアアッ!?』


退魔刀と反鏡剣を振り払いながらレナは次々と赤獣の群れを薙ぎ払い、死体の山を築く。ジャンヌの回転剣技よりも素早く動き、確実に敵を仕留めていく。身体さえ回復すれば赤獣などレナにとっては只の獲物でしかなく、圧倒的な武力で打ち払う。

ティナの所持していた「精霊薬」と思われる薬の効果はすさまじく、先ほどまでは疲労と魔力不足で倒れそうだったレナの肉体は完全に復活を果たしただけではなく、身体中から魔力が漲っていた。更にレナは風の聖痕を使用して精霊を呼び集め、退魔刀に刻まれた「魔術痕」を利用して風の魔力を纏わせる。


「だああっ!!」
『ウォオオンッ!?』
「す、すげぇっ……!?」


退魔刀を振り払うだけで突風が吹き溢れ、赤獣と化した甲殻獣さえも吹き飛ばし、赤毛熊の首を刎ねた。そのあまりの光景にガロでさえも感嘆の声を上げ、他の者達も戦闘を中断してレナの力に魅入ってしまう。


(これほどの武力とは……!!この力、あのゴウライにも匹敵するかもしれん。これが覚醒した剣鬼の力だというのか……!!)


破壊剣聖のゴウライにも勝るとも劣らぬ剣圧を放つレナに対してロウガは身体が震えるが、今の状況でレナが味方である事は非常に心強い。先ほどまで劣勢を強いられていた冒険者達だったが、レナが復活した瞬間に一気に形成が逆転し、逆に赤獣の群れを追い詰める。


「赤獣を殲滅しろ!!レイビにとってもこいつらは重要な戦力だ!!先ほど人虎と同様に全ての魔獣を討ち取れば奴の戦力は半減する!!」
「魔物退治は冒険者の得意分野だよ!!レナばかりに良い恰好をっさせるんじゃないよあんた達!!」
「キュロロロッ!!」


レナが復活した結果、採掘場の退散という選択肢はなくなり、逆にレイビの戦力を減らすためにバル達は赤獣の群れに襲いかかる。こうなると魔物退治の専門である冒険者の方が圧倒的に有利に立ち、次々と赤獣は討ち取られていく。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。