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外伝 ~ヨツバ王国編~
誇り高き狼の王
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「刺突!!」
「回転!!」
「和風牙!!」
「ガハァッ……!?」
四方八方から攻撃を仕掛けられたフェンリルは遂に全身を纏う魔力の鎧が消え去り、その隙を逃さずにカゲマル達も動く。
「辻切り!!」
「抜刀!!」
「旋風!!」
「ウォッ……!?」
魔力の鎧が消えた事で攻撃を弾く事も出来ず、既に血塗れの状態に陥っていたフェンリルの肉体に更に鮮血が舞い、最後に反鏡剣を置き、退魔刀を握り締めたレナが動き出す。フェンリルを倒すため、全身全霊の力を込めて刃を放つ。
「一刀、両断!!」
「ガアアアッ……!?」
フェンリルの悲鳴が響き渡り、大剣の刃がフェンリルの首に食い込み、遂に頭部と胴体を切断した。だが、首を失っても尚、フェンリルは倒れる事はなく立ち尽くした状態で動かず、地面に落ちたフェンリルの頭部はやがて瞼を閉じた。
「や、やったのか……?遂に、フェンリルを倒したんだよな!?」
「信じられません……あの伝説の魔獣を私達の手で倒せるなんて」
「そうね、単独では絶対に勝てない相手だった。でも、これで南聖将の戦力は壊滅したといっても過言ではないわ」
「やったでござるなレナ殿……レナ殿?」
「…………」
退魔刀の刃にこびり付いたフェンリルの血液を振り払い、最後の最後まで地面に倒れる事もなく立ち尽くした状態のままのフェンリルの死体に視線を向け、レナは退魔刀を置くとフェンリルの頭部の元へ近寄り、死に顔を確認する。そしてフェンリルの頭部を抱き上げると、倒れているレイビの死体の元へ運ぶ。
「せめて最期は主人の元で眠れ」
フェンリルの頭部をレイビに抱かせるように置くと、心なしかフェンリルの表情が緩んだように見え、お互いに温め合うようにレイビとフェンリルは寄り添い合った状態で逝く。その光景を確認してレナは両手を合わせて二人の冥福を祈ると、全員に振り返って頷く。
「帰ろう、もうここへは用はない。俺の意識が保っている間に東壁街へ戻ろう」
「そうね……あまり長居は出来ないわ」
「麓の方が騒がしい。レイビが呼び寄せた援軍が訪れたのだろう。すぐに戻るぞ」
「……そうだな」
レナの言葉に全員が従う中、ロウガはフェンリルとレイビの死体に視線を向け、最後にレナに顔を振り向く。何か言いたげな表情ではあったが何も言わず、黙ってレナの指示に従う――
――こうしてオロナ鉱山に人質として拘束されていた東聖将軍の兵士達は無事に保護され、更に南聖将レイビとフェンリル、そして赤獣化した魔物達を討ち取る事に成功する。成果だけを見れば南聖将軍の戦力は壊滅状態に陥り、しかもこちらの被害は軽微で済み、東聖将軍の勝利と言える。
一方で王都の方では南聖将軍との連絡が途絶え、更に東聖将の討伐の命令を与えた北聖将が自分の領地に引き返した事で混乱が起きていた。実質、東聖将軍は反乱を引き起こし、更に北聖将は東聖将との間で何らかの取引を行って軍隊を引き返し、遂には南聖将のレイビとも連絡が途絶えた事でやっと王都の者達も危機感を抱く。
王都に存在する王城では重臣が集まり、玉座の間にて国王代理を務めるカレハの前で平伏を行う。彼女の左右には王都を守護する二人の将軍が存在した。
「か、カレハ王女様……いえ、国王代理。この度の東聖将の反乱、並びに北聖将の撤退行動に関してどのように対処するべきか我々では判断出来ません」
重臣の中でも最も最年長の老臣が緊張した面持ちで玉座に座り込むカレハを見上げる。カレハの容姿はティナとよく似ていたが、ティナが金髪に対して彼女の場合は銀髪であり、それにティナよりもずっと大人びていた。だが、二人に大きな違いがあるとすればカレハの右腕には大きな火傷の痕跡が存在した。
かつてカレハは王位継承権を剥奪された時、反乱を引き起こしかけた。そのためにデブリも泣く泣く彼女に処罰を実行し、右腕に決して消えない火傷を施す。この火傷は衣服の類で隠すと身体が疼き、その感覚に耐え切れないために常にカレハは右腕のみを露出した状態で過ごさなければならなかった。
「……東聖将の反乱は予測済みです。北聖将に関しても軍隊を撤退させただけで反乱に加担した保証はありません。南聖将に関しては緑影を送り込んで調査を行っています。今しばらくの間は報告が届くまで待ちましょう」
「お言葉ですが国王代理!!もしも南聖将が敗れていた場合、南方の領地の統治はどうされるのですか?もしも南方の危険種どもが他の領地にまで侵入してきた場合、アトラス大森林の生態系は崩壊します!!すぐに代わりとなる戦力を送らなければ……」
「まだレイビが殺されたとも限らないのに王都の戦力を割くわけにはいきません。仮に王都の戦力を減らして東聖将軍がここまで攻め込んだ場合、貴方に東聖将軍を撃退する術があるのですか?」
「そ、それは……」
「考えも無しに行動するのは愚行です。南方の領地の危険性は理解していますが、無暗に動けばいい物ではありません」
カレハの正論に対して意見を申し出た重臣は反論も出来ずに黙り込み、この状況下でも冷静さを失わないカレハに重臣たちは不思議と安堵する。
「回転!!」
「和風牙!!」
「ガハァッ……!?」
四方八方から攻撃を仕掛けられたフェンリルは遂に全身を纏う魔力の鎧が消え去り、その隙を逃さずにカゲマル達も動く。
「辻切り!!」
「抜刀!!」
「旋風!!」
「ウォッ……!?」
魔力の鎧が消えた事で攻撃を弾く事も出来ず、既に血塗れの状態に陥っていたフェンリルの肉体に更に鮮血が舞い、最後に反鏡剣を置き、退魔刀を握り締めたレナが動き出す。フェンリルを倒すため、全身全霊の力を込めて刃を放つ。
「一刀、両断!!」
「ガアアアッ……!?」
フェンリルの悲鳴が響き渡り、大剣の刃がフェンリルの首に食い込み、遂に頭部と胴体を切断した。だが、首を失っても尚、フェンリルは倒れる事はなく立ち尽くした状態で動かず、地面に落ちたフェンリルの頭部はやがて瞼を閉じた。
「や、やったのか……?遂に、フェンリルを倒したんだよな!?」
「信じられません……あの伝説の魔獣を私達の手で倒せるなんて」
「そうね、単独では絶対に勝てない相手だった。でも、これで南聖将の戦力は壊滅したといっても過言ではないわ」
「やったでござるなレナ殿……レナ殿?」
「…………」
退魔刀の刃にこびり付いたフェンリルの血液を振り払い、最後の最後まで地面に倒れる事もなく立ち尽くした状態のままのフェンリルの死体に視線を向け、レナは退魔刀を置くとフェンリルの頭部の元へ近寄り、死に顔を確認する。そしてフェンリルの頭部を抱き上げると、倒れているレイビの死体の元へ運ぶ。
「せめて最期は主人の元で眠れ」
フェンリルの頭部をレイビに抱かせるように置くと、心なしかフェンリルの表情が緩んだように見え、お互いに温め合うようにレイビとフェンリルは寄り添い合った状態で逝く。その光景を確認してレナは両手を合わせて二人の冥福を祈ると、全員に振り返って頷く。
「帰ろう、もうここへは用はない。俺の意識が保っている間に東壁街へ戻ろう」
「そうね……あまり長居は出来ないわ」
「麓の方が騒がしい。レイビが呼び寄せた援軍が訪れたのだろう。すぐに戻るぞ」
「……そうだな」
レナの言葉に全員が従う中、ロウガはフェンリルとレイビの死体に視線を向け、最後にレナに顔を振り向く。何か言いたげな表情ではあったが何も言わず、黙ってレナの指示に従う――
――こうしてオロナ鉱山に人質として拘束されていた東聖将軍の兵士達は無事に保護され、更に南聖将レイビとフェンリル、そして赤獣化した魔物達を討ち取る事に成功する。成果だけを見れば南聖将軍の戦力は壊滅状態に陥り、しかもこちらの被害は軽微で済み、東聖将軍の勝利と言える。
一方で王都の方では南聖将軍との連絡が途絶え、更に東聖将の討伐の命令を与えた北聖将が自分の領地に引き返した事で混乱が起きていた。実質、東聖将軍は反乱を引き起こし、更に北聖将は東聖将との間で何らかの取引を行って軍隊を引き返し、遂には南聖将のレイビとも連絡が途絶えた事でやっと王都の者達も危機感を抱く。
王都に存在する王城では重臣が集まり、玉座の間にて国王代理を務めるカレハの前で平伏を行う。彼女の左右には王都を守護する二人の将軍が存在した。
「か、カレハ王女様……いえ、国王代理。この度の東聖将の反乱、並びに北聖将の撤退行動に関してどのように対処するべきか我々では判断出来ません」
重臣の中でも最も最年長の老臣が緊張した面持ちで玉座に座り込むカレハを見上げる。カレハの容姿はティナとよく似ていたが、ティナが金髪に対して彼女の場合は銀髪であり、それにティナよりもずっと大人びていた。だが、二人に大きな違いがあるとすればカレハの右腕には大きな火傷の痕跡が存在した。
かつてカレハは王位継承権を剥奪された時、反乱を引き起こしかけた。そのためにデブリも泣く泣く彼女に処罰を実行し、右腕に決して消えない火傷を施す。この火傷は衣服の類で隠すと身体が疼き、その感覚に耐え切れないために常にカレハは右腕のみを露出した状態で過ごさなければならなかった。
「……東聖将の反乱は予測済みです。北聖将に関しても軍隊を撤退させただけで反乱に加担した保証はありません。南聖将に関しては緑影を送り込んで調査を行っています。今しばらくの間は報告が届くまで待ちましょう」
「お言葉ですが国王代理!!もしも南聖将が敗れていた場合、南方の領地の統治はどうされるのですか?もしも南方の危険種どもが他の領地にまで侵入してきた場合、アトラス大森林の生態系は崩壊します!!すぐに代わりとなる戦力を送らなければ……」
「まだレイビが殺されたとも限らないのに王都の戦力を割くわけにはいきません。仮に王都の戦力を減らして東聖将軍がここまで攻め込んだ場合、貴方に東聖将軍を撃退する術があるのですか?」
「そ、それは……」
「考えも無しに行動するのは愚行です。南方の領地の危険性は理解していますが、無暗に動けばいい物ではありません」
カレハの正論に対して意見を申し出た重臣は反論も出来ずに黙り込み、この状況下でも冷静さを失わないカレハに重臣たちは不思議と安堵する。
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