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外伝 ~ヨツバ王国編~
閑話 〈ライコフとキラウ〉
――カレハが新たにマリアを六聖将として迎え入れようとしていた頃、城内の一室ではベッドの上に横たわるキラウの姿が存在した。彼女は黒色の包帯で目元を覆い込み、まるで眠っているかのように動かない。腕の方には何度か血液を採取された形跡が残っており、机の上には注射器が放置されていた。
「……やはり、完全に馴染むまでもうしばらくかかるか」
キラウは起き上がると、目元に手をやり、移植したメドゥーサの魔眼が未だに自分には完全に馴染んでいない事を察する。この包帯を解けばは彼女は無差別に視線を合わせた生物を石化させてしまう能力が発動されるため、普段から包帯で覆い隠している。
王妃から逃れ、偶然にもメドゥーサの魔眼を入手した彼女を救いあげたのはカレハだった。カレハは前々からキラウと接触し、彼女に色々と支援を行っていた。最初は森人族であるカレハを疎んじていたキラウではあったが、彼女も自分の家族のせいで不遇な生活を送っていた事を知り、今では自分を保護してくれた恩もある。なので信頼関係とは言えずとも、お互いを利用する協力関係を築いていた。
「また、来たか……入れ」
『……ライコフです』
扉の外から足音が鳴り響き、キラウは面倒そうに答えると元ティナの婚約者であり、ミドリ家の血筋である「ライコフ」が入室した。彼はティナが冒険都市に訪れた際、ティナの命を救ったレナの存在を憎み、魔物使いを雇ってティナを誘拐させて自分が救い出す事で彼女を手籠めにしようとした。
しかし、ライコフの計画はレナによって見破られ、ライコフの悪事は暴露された事で拘束された。それでもレナに逆恨みしたライコフは拘束から抜け出すと彼に復讐しようとしたが、結局はまたも返り討ちに遭い、レナのせいで彼はミドリ家から追放される。
行き場を失ったライコフをカレハは拾い上げ、現在は彼女の騎士として行動をしており、匿っているキラウの世話役を任されていた。昔のライコフならば自分が使用人のように他人のために働くなどプライドが許さなかっただろうが、レナに三度も敗れて以降、彼のプライドは完全に打ち砕かれ、過去の彼の面影はない。
「……カレハ王女からの伝言です。南聖将のレイビの連絡が途絶え、これ以降の血液の補充は必要なくなりました」
「そう……それは喜ばしいな。これで血を抜かれる事も無くなったか」
「何か、他に用事はありますか?」
「今の所はない。下がれ」
キラウの尊大な命令を受けてもライコフは特に何も言い返さず、黙ってそのまま部屋を退室しようとした。昔のライコフならば自分を使用人のように扱われるなどプライドが許さず、怒り狂っていただろう。しかし、何もかもを失ったライコフに頼れる存在は最早カレハだけであり、彼女の機嫌を損ねるわけにはいかず、黙ってキラウの命令に従う。
「失礼します」
「……待て、やはりこっちに来い」
「はい?」
部屋から退室しようとした時にキラウから呼び戻されたライコフは眉を顰めるが、彼女の言う通りに部屋に戻る。そんなライコフに対してキラウは目隠しされた状態のまま彼に顔を向け、囁く。
「レナ」
「っ……!?」
「なるほど、王女の言う通りにこの名前にだけは反応を示すのか」
レナという言葉を告げただけでライコフは身体が震え、冒険都市で二度目の捕縛の後に自力で脱出した後、ライコフはレナに復讐するために彼の元へ訪れた。しかし、そこでライコフが見たのは「剣鬼」に目覚めたばかりのレナだった。彼の名前を耳にするだけであの日の晩を思い出したライコフは身体の震えが止まらず、完全に剣士としての心が折れてしまう。
「う、ううっ……!!」
「……お前も私と同じか」
「同、じ……?」
「私もお前も負けたんだ……よりにもよって負けたくないと思っていた相手に」
キラウの脳裏に思い浮かんだのは自分を利用した「王妃」と実母である「ハヅキ」だった。彼女はこの二人を殺すために生きてきたといっても過言ではなく、死霊使いの能力を極め、あらゆる策を練った。しかし、結局は前者には良いように利用された後に他の人間に殺されてしまい、後者に至っては自分が殺そうとしたにも関わらずに最期まで自分を気遣って死んだという。
王妃もハヅキもキラウにとっては憎き相手ではあったが、同時に生きる目標でもあった。この二人を殺すためだけに彼女は泥をすすって生き続けたといっても過言ではなく、それなのに二人は勝手に自分の知らない所で死んでしまった。唐突に目標を失ってしまったキラウは自分がこれから何をすればいいのか分からず、結局はカレハに利用されていると知りながらも何も出来なかった。
少し前までのキラウならば自分の吸血鬼の血液を利用して「赤獣」などという魔物を作り出し、軍隊を組織するなどという計画を知らされれば反対していただろう。しかし、今のキラウは以前ほどに覇気はなく、黙ってカレハの言う事だけを聞く存在と化していた。
「……ライコフ、お前の話が聞きたい。お前の身に何が起きた」
「えっ……?」
「お前の話を聞かせてくれ」
暇つぶしがてらにキラウは自分の気持ちを理解してくれる存在かも知れないライコフに話しかけ、彼の身に何が起きたのかを問う。キラウが他人に興味を示すなど久しぶりの事であり、そんな彼女に対してライコフは命じられるがままに自分の過去を話す――
「……やはり、完全に馴染むまでもうしばらくかかるか」
キラウは起き上がると、目元に手をやり、移植したメドゥーサの魔眼が未だに自分には完全に馴染んでいない事を察する。この包帯を解けばは彼女は無差別に視線を合わせた生物を石化させてしまう能力が発動されるため、普段から包帯で覆い隠している。
王妃から逃れ、偶然にもメドゥーサの魔眼を入手した彼女を救いあげたのはカレハだった。カレハは前々からキラウと接触し、彼女に色々と支援を行っていた。最初は森人族であるカレハを疎んじていたキラウではあったが、彼女も自分の家族のせいで不遇な生活を送っていた事を知り、今では自分を保護してくれた恩もある。なので信頼関係とは言えずとも、お互いを利用する協力関係を築いていた。
「また、来たか……入れ」
『……ライコフです』
扉の外から足音が鳴り響き、キラウは面倒そうに答えると元ティナの婚約者であり、ミドリ家の血筋である「ライコフ」が入室した。彼はティナが冒険都市に訪れた際、ティナの命を救ったレナの存在を憎み、魔物使いを雇ってティナを誘拐させて自分が救い出す事で彼女を手籠めにしようとした。
しかし、ライコフの計画はレナによって見破られ、ライコフの悪事は暴露された事で拘束された。それでもレナに逆恨みしたライコフは拘束から抜け出すと彼に復讐しようとしたが、結局はまたも返り討ちに遭い、レナのせいで彼はミドリ家から追放される。
行き場を失ったライコフをカレハは拾い上げ、現在は彼女の騎士として行動をしており、匿っているキラウの世話役を任されていた。昔のライコフならば自分が使用人のように他人のために働くなどプライドが許さなかっただろうが、レナに三度も敗れて以降、彼のプライドは完全に打ち砕かれ、過去の彼の面影はない。
「……カレハ王女からの伝言です。南聖将のレイビの連絡が途絶え、これ以降の血液の補充は必要なくなりました」
「そう……それは喜ばしいな。これで血を抜かれる事も無くなったか」
「何か、他に用事はありますか?」
「今の所はない。下がれ」
キラウの尊大な命令を受けてもライコフは特に何も言い返さず、黙ってそのまま部屋を退室しようとした。昔のライコフならば自分を使用人のように扱われるなどプライドが許さず、怒り狂っていただろう。しかし、何もかもを失ったライコフに頼れる存在は最早カレハだけであり、彼女の機嫌を損ねるわけにはいかず、黙ってキラウの命令に従う。
「失礼します」
「……待て、やはりこっちに来い」
「はい?」
部屋から退室しようとした時にキラウから呼び戻されたライコフは眉を顰めるが、彼女の言う通りに部屋に戻る。そんなライコフに対してキラウは目隠しされた状態のまま彼に顔を向け、囁く。
「レナ」
「っ……!?」
「なるほど、王女の言う通りにこの名前にだけは反応を示すのか」
レナという言葉を告げただけでライコフは身体が震え、冒険都市で二度目の捕縛の後に自力で脱出した後、ライコフはレナに復讐するために彼の元へ訪れた。しかし、そこでライコフが見たのは「剣鬼」に目覚めたばかりのレナだった。彼の名前を耳にするだけであの日の晩を思い出したライコフは身体の震えが止まらず、完全に剣士としての心が折れてしまう。
「う、ううっ……!!」
「……お前も私と同じか」
「同、じ……?」
「私もお前も負けたんだ……よりにもよって負けたくないと思っていた相手に」
キラウの脳裏に思い浮かんだのは自分を利用した「王妃」と実母である「ハヅキ」だった。彼女はこの二人を殺すために生きてきたといっても過言ではなく、死霊使いの能力を極め、あらゆる策を練った。しかし、結局は前者には良いように利用された後に他の人間に殺されてしまい、後者に至っては自分が殺そうとしたにも関わらずに最期まで自分を気遣って死んだという。
王妃もハヅキもキラウにとっては憎き相手ではあったが、同時に生きる目標でもあった。この二人を殺すためだけに彼女は泥をすすって生き続けたといっても過言ではなく、それなのに二人は勝手に自分の知らない所で死んでしまった。唐突に目標を失ってしまったキラウは自分がこれから何をすればいいのか分からず、結局はカレハに利用されていると知りながらも何も出来なかった。
少し前までのキラウならば自分の吸血鬼の血液を利用して「赤獣」などという魔物を作り出し、軍隊を組織するなどという計画を知らされれば反対していただろう。しかし、今のキラウは以前ほどに覇気はなく、黙ってカレハの言う事だけを聞く存在と化していた。
「……ライコフ、お前の話が聞きたい。お前の身に何が起きた」
「えっ……?」
「お前の話を聞かせてくれ」
暇つぶしがてらにキラウは自分の気持ちを理解してくれる存在かも知れないライコフに話しかけ、彼の身に何が起きたのかを問う。キラウが他人に興味を示すなど久しぶりの事であり、そんな彼女に対してライコフは命じられるがままに自分の過去を話す――
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