文字の大きさ
大
中
小
744 / 2,093
外伝 ~ヨツバ王国編~
レベル80
レナはゆっくりと自分の掌を見つめ、右手に握りめる退魔刀を持ち上げる。今までよりも大剣が軽く感じられ、全身から魔力を迸る感覚が広がる。自分自身の肉体の変化にレナはゆっくりと呟く。
「ミドルの奴も、こんな感じだったのかな……お前等、もう動いていいよ」
『っ……!?』
七影はレナの言葉を聞いた瞬間に全員が距離を開き、冷や汗を流す。レナに声を掛けられるまで感じていた圧迫感が消え去り、同時に言いようの知れない恐怖を抱く。緑影の暗殺者として幾度も修羅場を乗り越え、恐怖を克服してきた彼等だが、目の前に立つレナを見るだけで身体の震えが止まらない。
彼等の様子を見てレナは無意識に発動させていた「威圧」のスキルを解除した事に気付き、この状況で眠気が抑えきれずに欠伸を行う。そのレナの行動に七影は自分達を侮っているのかと怒りを抱き、意を決した一人がレナに向かおうとした。
「貴様!!」
「うるさい」
「えっ……」
背後から仕掛けようとした青年の容姿をした七影が短剣を振り翳した瞬間、レナは振り返りもせずに退魔刀を無造作に振り払い、青年を吹き飛ばす。その光景を見た他の人間たちはあまりの攻撃速度にレナに近付こうとした青年が唐突に吹き飛んだようにしか見えず、青年は屋敷の中に突っ込んで意識を失う。
「ぐあっ……!?」
「何っ!?」
「馬鹿なっ……」
「お前等もうるさい」
吹き飛ばされた青年の姿を見て少年と少女の姿をした七影が声を漏らすが、そんな彼等に対してレナは退魔刀を握り締めていない方の腕を動かし、目にも止まらぬ速度で手刀を放つ。一瞬の出来事で少年も少女も反応すらできずに地面に倒れ込む。
残された4人の七影は一瞬にして倒された仲間達に動揺し、下手に動くことが出来ない。少しでも口を開こうとすれば倒された3人のように同じ末路を迎えるのは間違いなく、残された七影は視線を交わしてどのように対処するべきかを相談する。
(まともに戦えば勝ち目はない……だが、人質さえとれば形成は逆転する)
(3人が時間を稼ぎ、1人が人質を確保すればまだ勝機はある)
(ならば一番ティナ王女と距離が近いお前が行け、時間稼ぎは我等が行う)
(分かった……油断するなよ)
長年の付き合いで視線だけで七影はお互いの考えを読み取る事が出来るため、3人が囮役を担い、最後の1人が屋敷の中に存在するティナを人質として利用する作戦を立てる。既に七影はカレハ王女から最悪の場合はティナの抹殺の命令を受けてはいるが、彼等は王族である彼女を殺すつもりはなく、あくまでも保護という名目で彼女を誘拐するつもりだった。
しかし、七影の3人が敗れた以上は手段は選べず、残った4名はティナ王女を拘束して人質として利用し、この場を逃げる事を決めた。勿論、人質に利用するとしてもティナに危害を加えるつもりはなく、あくまでも彼等は彼女を連れ帰るためにここへやってきた。しかし、最悪の場合は任務の遂行のために仲間を犠牲にしてでもティナを王都へ連れ帰るという覚悟を決めていた。
(次に奴が口を開いた時が合図だ)
七影はレナの様子を伺い、口元に視線を集中させる。そしてレナがゆっくりと唇を開いた瞬間、3人が同時にレナへ向けて武器を振り翳し、1人は屋敷へ向けて駆け出そうとした。
『辻切――!?』
七影の3人の声が重なり、全員が同時に戦技を発動させようとした瞬間、レナの身体が消え去る。それと同時に屋敷の方角から何かが地面に叩きつけられるような音が鳴り響き、攻撃を仕掛けようとした状態で3人は視線を向けると、そこには何時の間にか一瞬で屋敷の前に移動していたレナが人質確保のために駆け出した若い男性の姿をした七影の頭を掴み、地面に顔面をめり込ませる光景が映し出される。
「バレバレだよ、あんた等の作戦」
「がはぁっ……!?」
「馬鹿なっ!?」
「何時の間に……!?」
「縮地か……!?」
まるで瞬間移動したかのように場所を移動したレナに残された3人の七影は後ずさり、そんな彼を見てレナは地面にめり込ませた男性を手放すと、退魔刀を上段へ掲げた。距離が空いているにも関わらずに大剣を構えたレナに七影は訝しむが、そんな彼等に向けてレナは風の聖痕の力を発揮させる。
レナの退魔刀には魔術痕が刻まれ、魔力を送り込む事で魔法剣へと変化させる事が出来た。しかも風の聖痕を利用して風の精霊を呼び集める事で風属性の魔力を強化させると、刀身に風を纏わせてレナは振りぬく。
「はあっ!!」
『ぐあああっ!?』
退魔刀を横薙ぎに振り払うだけで強烈な衝撃波が発生し、そのまま吹き飛ばされた残りの七影は屋敷を取り囲む壁に叩きつけられ、白目をむいて倒れ込む。その様子を確認したレナは退魔刀に纏わせた風を消失させると、その場に膝を付く。その様子を見て慌てて屋敷からティナ達が駆け込み、魔獣達も押し寄せる。
「兄貴!?どうかしたんですか!?」
「まさか、怪我を!?」
「大丈夫!?」
「ウォンッ!?」
「キュロロッ!?」
膝を付いたレナに全員が心配そうな表情を浮かべると、レナは腹部を抑えながら一言だけ呟く。
「お腹、空いた……」
その言葉を聞いたティナ達は呆気に取られたが、よくよく考えればずっと眠っていたレナは食事を一切していない事を思い出し、慌てて彼女達はレナを屋敷の中へ運び込む――
「ミドルの奴も、こんな感じだったのかな……お前等、もう動いていいよ」
『っ……!?』
七影はレナの言葉を聞いた瞬間に全員が距離を開き、冷や汗を流す。レナに声を掛けられるまで感じていた圧迫感が消え去り、同時に言いようの知れない恐怖を抱く。緑影の暗殺者として幾度も修羅場を乗り越え、恐怖を克服してきた彼等だが、目の前に立つレナを見るだけで身体の震えが止まらない。
彼等の様子を見てレナは無意識に発動させていた「威圧」のスキルを解除した事に気付き、この状況で眠気が抑えきれずに欠伸を行う。そのレナの行動に七影は自分達を侮っているのかと怒りを抱き、意を決した一人がレナに向かおうとした。
「貴様!!」
「うるさい」
「えっ……」
背後から仕掛けようとした青年の容姿をした七影が短剣を振り翳した瞬間、レナは振り返りもせずに退魔刀を無造作に振り払い、青年を吹き飛ばす。その光景を見た他の人間たちはあまりの攻撃速度にレナに近付こうとした青年が唐突に吹き飛んだようにしか見えず、青年は屋敷の中に突っ込んで意識を失う。
「ぐあっ……!?」
「何っ!?」
「馬鹿なっ……」
「お前等もうるさい」
吹き飛ばされた青年の姿を見て少年と少女の姿をした七影が声を漏らすが、そんな彼等に対してレナは退魔刀を握り締めていない方の腕を動かし、目にも止まらぬ速度で手刀を放つ。一瞬の出来事で少年も少女も反応すらできずに地面に倒れ込む。
残された4人の七影は一瞬にして倒された仲間達に動揺し、下手に動くことが出来ない。少しでも口を開こうとすれば倒された3人のように同じ末路を迎えるのは間違いなく、残された七影は視線を交わしてどのように対処するべきかを相談する。
(まともに戦えば勝ち目はない……だが、人質さえとれば形成は逆転する)
(3人が時間を稼ぎ、1人が人質を確保すればまだ勝機はある)
(ならば一番ティナ王女と距離が近いお前が行け、時間稼ぎは我等が行う)
(分かった……油断するなよ)
長年の付き合いで視線だけで七影はお互いの考えを読み取る事が出来るため、3人が囮役を担い、最後の1人が屋敷の中に存在するティナを人質として利用する作戦を立てる。既に七影はカレハ王女から最悪の場合はティナの抹殺の命令を受けてはいるが、彼等は王族である彼女を殺すつもりはなく、あくまでも保護という名目で彼女を誘拐するつもりだった。
しかし、七影の3人が敗れた以上は手段は選べず、残った4名はティナ王女を拘束して人質として利用し、この場を逃げる事を決めた。勿論、人質に利用するとしてもティナに危害を加えるつもりはなく、あくまでも彼等は彼女を連れ帰るためにここへやってきた。しかし、最悪の場合は任務の遂行のために仲間を犠牲にしてでもティナを王都へ連れ帰るという覚悟を決めていた。
(次に奴が口を開いた時が合図だ)
七影はレナの様子を伺い、口元に視線を集中させる。そしてレナがゆっくりと唇を開いた瞬間、3人が同時にレナへ向けて武器を振り翳し、1人は屋敷へ向けて駆け出そうとした。
『辻切――!?』
七影の3人の声が重なり、全員が同時に戦技を発動させようとした瞬間、レナの身体が消え去る。それと同時に屋敷の方角から何かが地面に叩きつけられるような音が鳴り響き、攻撃を仕掛けようとした状態で3人は視線を向けると、そこには何時の間にか一瞬で屋敷の前に移動していたレナが人質確保のために駆け出した若い男性の姿をした七影の頭を掴み、地面に顔面をめり込ませる光景が映し出される。
「バレバレだよ、あんた等の作戦」
「がはぁっ……!?」
「馬鹿なっ!?」
「何時の間に……!?」
「縮地か……!?」
まるで瞬間移動したかのように場所を移動したレナに残された3人の七影は後ずさり、そんな彼を見てレナは地面にめり込ませた男性を手放すと、退魔刀を上段へ掲げた。距離が空いているにも関わらずに大剣を構えたレナに七影は訝しむが、そんな彼等に向けてレナは風の聖痕の力を発揮させる。
レナの退魔刀には魔術痕が刻まれ、魔力を送り込む事で魔法剣へと変化させる事が出来た。しかも風の聖痕を利用して風の精霊を呼び集める事で風属性の魔力を強化させると、刀身に風を纏わせてレナは振りぬく。
「はあっ!!」
『ぐあああっ!?』
退魔刀を横薙ぎに振り払うだけで強烈な衝撃波が発生し、そのまま吹き飛ばされた残りの七影は屋敷を取り囲む壁に叩きつけられ、白目をむいて倒れ込む。その様子を確認したレナは退魔刀に纏わせた風を消失させると、その場に膝を付く。その様子を見て慌てて屋敷からティナ達が駆け込み、魔獣達も押し寄せる。
「兄貴!?どうかしたんですか!?」
「まさか、怪我を!?」
「大丈夫!?」
「ウォンッ!?」
「キュロロッ!?」
膝を付いたレナに全員が心配そうな表情を浮かべると、レナは腹部を抑えながら一言だけ呟く。
「お腹、空いた……」
その言葉を聞いたティナ達は呆気に取られたが、よくよく考えればずっと眠っていたレナは食事を一切していない事を思い出し、慌てて彼女達はレナを屋敷の中へ運び込む――
感想 5,097
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『ベルンハルト・フォン・バーデンは平穏に暮らしたい』
GamaFrog男爵家三男、ベルンハルト・フォン・バーデン。
家督継承権はなく、本来ならどこかの官職に就くか、他家へ仕えるか、婿入りするか――そんな将来が待っているはずだった。
しかしベルは少しだけ優秀すぎた。
小遣い稼ぎのつもりで始めた商売は成功し、気付けば父親より金を持ち、長男より領地経営に詳しく、次男より商売が上手くなっていた。
本人に出しゃばる気はない。
ただ普通に生きていただけだ。
それでも、優秀すぎる三男の存在は家族との距離を少しずつ広げていった。
家に居場所がなくなった。
だからベルは学園へ来た。
貴族だから一応入学した。
家にいるより気楽だったから。
静かに暮らしたかったから。
寄付金を積んで手に入れた広い寮部屋で、本を読み、昼寝をし、卒業後は適当な文官になって平穏に生きる
そのはずだった。
だが現実は違った。
男装令嬢に懐かれ。
王太子に目を付けられ。
商会には囲い込まれ。
気付けば平穏はどこへやら。
本人はただ平穏に暮らしたいだけ。
周囲はなぜか放っておいてくれない。
これは、面倒事を嫌う規格外の天才が、静かな人生を目指して失敗し続ける物語である。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
クラス全員で異世界召喚されたが、俺だけ教室に取り残されたのでとりあえず帰宅した
中山(ほ) クラス全員で異世界召喚されたが、先生と俺が残っていた。
魔法もチートスキルもステータス画面すら表示されない、ただの「残され損」
異世界に行けなかった俺を待っていたのは、世知辛い現実だった。
AI使用状況
GoogleのGeminiさん使ってます〜
誤字脱字チェックと調べ物お願いしてます
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。