不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
750 / 2,091
外伝 ~ヨツバ王国編~

降霊術

しおりを挟む
「……以上が手紙の内容です」
『…………』


手紙の内容を告げられたレナ達は黙り込み、やはりマリアが敵に回ったことを理解する。だが、確かに手紙の内容ではマリアの態度が普段の彼女を知る人間にとってはおかしな点が見受けられた。


「どうしてマリアはカレハ王女の命令を聞く?まさか、本当に操られているというのか……?」
「しかし、洗脳の類ではないとすると一体どうやって……」
「あのさ……僕、心当たりがあるんだけど」


ダインが手を上げると会議室の全員が彼に視線を向け、マリアがカレハの命令を聞く理由を彼なりに考え、ある魔法の事を話す。


「僕の家系は代々魔術師の家系なんだけどさ、全員が闇属性の使い手なんだよ。そのせいで闇属性の魔法の研究を続けていたんだ」
「闇属性の魔法だと……一体何が言いたい?」
「闇属性の魔法の中には「降霊術」と呼ばれる魔法が存在するんだよ。これは死霊使いが「死霊人形」を生み出す際にも利用される魔法と性質は似ているけど、こっちの場合は死体ではなく生物に死んだ人間の魂を憑依させる事が出来るんだ」
「なんと!?そんな事が出来るのでござるか!?」


死霊使いが死霊人形やアンデッドを生み出す場合、自身の闇属性の魔力を送り込んだり、あるいは死霊石と呼ばれる特殊な魔石を利用する。しかし、ダインの語る「降霊術」の場合は死体を蘇らせるのではなく、あくまでも生物に死んだ人間の魂を憑依させる方法があるという。


「死霊使いが死霊人形を生み出すとき、体内に死霊石を埋め込むのは知ってるよな?この死霊石は生きていた人間の素材を利用して作り出されているんだ。あ、ちなみに素材の内容は聞くなよ、僕も出来れば言いたくないから……」
「嫌な予感がするから聞かない」
「話を戻すけど、降霊術の場合は死霊石を死体ではなく、生きている人間に装着させるんだ。場合によっては肉体に埋め込む事もある。そうなると死霊石の素材となった人間の魂が憑依して、別人格が誕生して肉体を支配するんだ。つまり、死んだ人間が憑依して生きている人間を操作するんだ」
「何だと!?そんな馬鹿な話があるか!!死んだ人間が生きている人間を操って蘇るというのか!?」
「正確に言えば死霊石に宿った魂の残滓を利用して操り人形のように操作する魔法だよ。憑依といっても、生前の記憶なんか殆ど残っていないし、自分を宿した人間の言う事をだけを聞くんだ」
「では、マリア殿はキラウに降霊術とやらを掛けられて操られているのでござるか?」
「その可能性は高いと僕は思う……そうでなければ魔術師がそんな簡単に洗脳されるはずがない。特にマリアさんのような一流の魔術師は魔法耐性も高いからな……洗脳術なんかで操られるはずがない」


魔法の中には「洗脳」に関連する魔法も実在する。該当する魔術師の職業があるとすれば「魔物使い」であり、彼等は契約魔法を使用して魔物の操作を行う際、使役された魔物は少なからず使用者の影響を受けて性格が変化する事が多い。実際にティナが使役にしたアインもミノも野生で暮らしていた時と比べると性格も軟化し、無暗に他人を傷つけるような真似はしなくなった。これはティナの性格が優しく、無暗に彼女は人を傷つけるような人間ではないので、アインもミノも影響を受けて精神面にも影響が出た。

しかし、全ての魔術師は基本的に高い「魔法耐性」を誇り、仮に人間に魔物使いが契約魔法を施そうとしても効果は発揮しない。契約魔法はあくまでも魔物や動物にしか効かず、人間のように知能が高い存在には通用しない。ましてや魔法に対する耐性を持つ存在となると魔法その物が無効化されてしまう。しかもマリアのように魔術師の能力を極めた者に洗脳の類が通じる可能性は皆無である。


「ダイン、降霊術を解く方法はないの?」
「簡単だよ。身体の何処かに埋め込まれているはずの死霊石を取り外すか、あるいは聖属性の魔法を掛ければ憑依している魂は浄化されて簡単に解除されるよ」
『おおっ!!』


ダインの言葉を聞いて会議室の者達が声を上げるが、ハンゾウは冷静に問題を指摘した。


「けど……どちらの方法も、あのマリア殿を相手に実行しなければならないのでござる」
『…………』


マリアを相手に聖属性の魔法を施す、あるいは死霊石を取り出す、どちらの行為も必然的に彼女に接近しなければ成り立たない。恐らくは世界最強の魔術師であるマリアと戦わなければならない事を意味していた。


「ま、待ってください。その死霊石とやらをどうにかすればいいだけの話なんですよね?なら、緑影の方々が王都へ忍び込み、どうにかマリアさんから死霊石を取り外して貰えば……」
「リョウコ殿、申し訳ないが王都の王城の警備はあまりも厳重過ぎて我々でも手出し出来ません。それに先の七影との戦闘で私以外の全ての緑影が倒れています。戦力的に考えても王都への侵入は不可能です……」
「そもそも死霊石を奪われたら不味い事は相手も承知済みのはず、簡単に奪われないように対策は施しているのは間違いないでござる」
「結局、叔母様が一番の難敵という事か……」


会議室で誰もがため息を吐き出し、レナも改めてマリアという存在がどれだけ凄いのかを思い知らされる。今までは味方だったので頼りにしていたが、敵に回るとこれ以上に厄介で恐ろしい相手はいない。
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。