不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

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「あ、兄貴……どうするんですか?」
「ティナがそこまで言うのなら……俺は連れて行ってもいいと思う」
「本当!?」
「正気ですか!?姫様の身に何かあれば私達は大義を失います!!」


レナの言葉にリョウコは反対するが、そんな彼女に対してレナはティナを連れて行く方が色々と利点がある事を説明した。


「ここにティナを残したとしても今の戦力じゃ立て籠もる事しか出来ない。仮に軍隊が送り込まれて籠城戦を持ち込まれてもいずれは物資が尽きてしまう。だから軍隊が派遣される前にティナを別の場所へ移動させる方がいいと思います」
「しかし、西聖将の領地へ向かう以上はティナ様の身に危険が……!!」
「だからといってここに残っても俺達にカレハ王女を止める事は出来ません。それにもしも西聖将の領地へ辿り着いたとしても、西聖将と面識がない俺達だと相手にされないか、あるいは敵と認識されて捕まる恐れがあります。そう考えるとティナがいてくれた方が話が通りやすいんです」
「ですが、もしも西聖将がカレハ王女に寝返っていたらどうするのですか?」
「ここに残ろうと敗北は決まっているんです。なら、一か八か西聖将の元へ向かい、石化された国王を元に戻す以外にカレハ王女を止める方法はない。そのためにティナの力は必要不可欠なんです」
「レナたん、ありがとう……」


自分を必要と言ってくれるレナにティナは嬉しくて涙目になり、それでもリョウコは納得できずに他の者に振り返って彼等を止めるように期待するが、レナの話を聞いていた者達は何も言えない。


「確かにここに立て籠もってもいずれは飢え死にか、あるいは軍隊に滅ぼされるだけか……」
「ここには大勢の民衆がいる。いくら物資があっても足りないからな……」
「それに魔の草原で石化された者達が人質にされた我々はもう……」
「皆さん……分かりました。確かにレナ様の言う通り、私達にこのままでは勝ち目はありませんね」
「すいません、ですけど絶対にティナは守ります」
「そういう事ならあたしも一緒に行って案内役を行います!!王国四騎士に選ばれた時に西聖将の所へも挨拶に行ったことがあるので道は覚えてますから!!」
「当然、私も一緒に行く」
「僕も行くよ……怖いけど」
「拙者も同行するでござる」
「ありがとう皆……だけど、人数が多いと移動方法が困るな。ウルも流石にこれだけの人間を乗せる事は出来ないだろうし」
「キュロロッ!!」
「ブモォッ!!」


レナはウルに乗って移動するつもりだったが、アインとミノが力こぶを作り、自分達に任せろとばかりにポーズを行う。どちらも移動速度も体力も白狼種に劣らぬ事を思い出したレナは頷く。


「そっか、お前達も居たんだよな。皆を頼むぞ」
「兄貴!!ティナ様はあたしがユニコに乗せて運びます!!」
「となると拙者とダイン殿はアインとミノに世話になるのでござるな」
「えっ!?いや、僕もレナと一緒にウルの乗せて……」
「それは駄目、レナの後ろは私の物」
「あ、いいな~……コトミンちゃん、交代しない?」


コトミンがレナの背中に張り付いてウルに一緒に乗り込むのは自分だとアピールすると、ティナは羨ましそうに声を上げ、一方で残されたダインの方はミノに背中を掴まれて無理やりに引きずり出される。


「ブモォッ」
「ちょっ!?待って、せめてアインに乗せて……!!」
「ぷるぷるっ」
「ぷるるんっ」
「キュロロッ」
「アインはもうスラミンとヒトミンを乗せてるから無理だって」
「えええっ!?」


アインの両肩には既にスラミンとヒトミンが張り付き、残されたダインとハンゾウは必然的にミノに運んでもらうしかない。こうして6人と6匹の魔獣達は西聖将の元へ出発するため、急いで準備を整える――




――翌日、レナ達は森の中を全速力で移動していた。最短距離で最速に辿り着くためには王都近辺を通過する路しか存在せず、定期的にレナは風の聖痕を利用して周囲の状況を把握しながら移動を行う。


「エリナ!!この調子だとどれくらいの日程で西聖将の領地へ辿り着けると思う?」
「今の移動速度を保てるとしたらあと半日ぐらいで東聖将の領地を抜け出せます!!けど、そこから先は王都付近や西聖将の領地になるので今の調子で進む事は出来ないと思います!!」


王都から東壁街までの距離はヨツバ王国の管理する馬や甲殻獣で移動する場合は2日は掛かる。だが、魔獣の中でも移動速度に優れた白狼種、魔人族の中でも体力と筋力に恵まれたミノタウロスとサイクロプスならば馬や甲殻獣よりも早く移動は出来た。

しかし、ここまでレナ達が順調に進めたのはあくまでも東聖将のギンタロウが収める領地だからであり、王都付近や西聖将の領地へ入れば大勢の見張りの兵士が配置されているはずであり、慎重に進まなければならなかった。
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