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帝都防衛編

氷河期

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『死ぬがいいっ!!』
「くっ!?」


蛇竜は氷竜の身体に絡みつき、全身を締め付けて体内に存在するルノを押し潰そうとする。氷竜の肉体に徐々に亀裂が走るが、ルノは強化スキルを発動させる。


「これでどうだ!?」
『ぐおおっ!?な、何だっ……!?』


強化スキルの「絶対零度」を発動した瞬間、氷竜の全身から冷気が迸り、全身を拘束していた蛇竜の肉体を氷結化させる。慌てて蛇竜は身体が完全に凍り付く前に氷竜を解放すると、レアは自分の衣服が凍り付く前に強化スキルを解除させ、口内から頭部の上に移動した。


「ふうっ……危うく俺も凍り付くところだった。退魔のローブじゃなかったら死んでたかも」


ルノ自身の肉体は自らの魔法の影響は受けないが、身に付けている衣服に関しては別であり、絶対零度を発動させた氷塊の冷気を受けて氷結化してしまう。しかし、魔法耐性が高い退魔のローブで合った事が幸いし、衣服の表面が軽く冷えた程度で済んだ。もしも普通の衣服だったら凍り付いて身体が拘束されていた可能性もあり、退魔のローブを打ってくれたドルトンに感謝しながらルノは次の攻撃に移る。


「螺旋氷弾!!」
『ふんっ!!今更そんな攻撃を喰らうかっ!!』


氷竜で攻撃しても体格差が大きいので時間が掛かると判断し、ルノは掌を構えて氷の砲弾を撃ち抜く。しかし、蛇竜は巨体の割には俊敏な動作で撃ち抜かれた螺旋状の砲弾を回避し、逆に頭部を氷竜に叩きつけた。


『落ちろっ!!』
「うわっ!?」


攻撃に集中した事でルノは氷竜の操作が遅れてしまい、蛇竜の頭部を真面に受けて危うく氷竜から落下しそうになったが、どうにか頭部の角の部分を掴んで踏み止まる。他の魔法に集中している間は氷竜を操作出来ない事が仇となり、蛇竜は休む暇も与えずに攻撃を仕掛ける。


『アガァアアアッ!!』
「うわっ!?」


大口を開いて蛇竜は火炎を放ち、ルノは咄嗟に氷竜を操作して火炎放射を回避する。砲撃魔法のような光線や光の砲弾とは異なり、蛇竜の放つ炎は文字通りに火炎放射器のように広範囲に火炎が拡散するため、回避に集中しなければ対応できない。


「くそっ……これならどうだっ!!」
『うぐぅっ!?』


ルノは攻撃手段を変更させ、最も攻撃速度が優れた「白雷」を放つ。生物の肉体に帯電する電撃を与えれば蛇竜の動作を制限出来るのではないかと考えたが、蛇竜は一瞬だけ痺れただけで即座に移動する。


『無駄だっ!!その程度の電撃など俺には効かん!!』
「駄目か……」


あまりにも蛇竜が大きすぎるため、電撃を与えた所で電撃が拡散して威力が軽減してしまい、一瞬の隙しか与えられない。強化スキルで威力を上昇させる手段もあるが、その隙を与えずに蛇竜は牙を放つ。


『ガアアアアッ!!』
「またかっ!?」


氷竜を飲み込もうと蛇竜は大口を開き、咄嗟にルノは牙を両手と足で受け止めるが、先ほどよりも咬筋力が強く、徐々に牙を抑え込む氷竜の肉体が押し込まれる。別に破壊されても新しい氷竜を生み出せばいいだけだが、このままでは飲み込まれてしまう。


(また絶対零度を……いや、不味い!!)


ルノは蛇竜が噛みついている隙に氷竜の肉体から再び冷気を生み出させようとしたが、その前に蛇竜の口内から赤色の光が発せられ、危険を感じ取ったルノは氷竜から脱出する。


『アガァアアアアッ!!』


蛇竜は牙で氷竜を拘束した状態から火炎の吐息を放ち、氷竜の全身を溶かす。その光景を確認したルノは飛翔術で空中を移動し、蛇竜の攻撃が届かない高度まで避難した。


「想像以上に厄介だな、あの炎……待てよ?」


上空から蛇竜の様子を確認しながらルノは岩人形との戦闘を思い出し、水属性の魔力を送り込んだ吸魔石を利用して岩人形を凍り付かせたことを思い出す。成功するのかは大きな賭けになるが、ルノは上空から螺旋氷弾を撃ち抜く。


「螺旋氷弾!!」
『ぬっ!?まだ生きていたか!!』


空の上に逃げたルノを発見した蛇竜は彼が打ち出す氷塊の砲弾を回避し、火炎の吐息を放つ。


『落ちろっ!!この蠅めっ!!』
「くっ……まだまだ!!」


ルノは下から放たれる火炎の吐息を回避しながら空中を移動し、執拗に螺旋氷弾を撃ち込む。氷竜を操作する時と比べれば飛翔術を利用して火炎の吐息を回避しながら螺旋氷弾を撃ち込むのは容易く、攻撃に触れないように気を付けながらルノは次々と地面に螺旋氷弾を撃ち抜く。


『ええいっ!!そんな攻撃など今更効かんわっ!!』
「どうかな……周りを見て見ろっ!!」
『何だとっ……こ、これは!?』


蛇竜はルノの言葉に周囲に視線を向けると、何時の間にか自分の周りを取り囲むように螺旋氷弾が地面に突き刺さった状態で放置されている事に気付き、ルノはステータス画面を開いて強化スキルを発動させた。


「氷河期を味わえっ!!」
『うおおおおっ!?』


次の瞬間、地面に刺さった螺旋氷弾から膨大な冷気が噴出し、周辺一帯を氷結化させる。そして中心部に存在した蛇竜の肉体も凍り付き、草原に蛇竜の悲鳴が響き渡る。
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