「氷など雪が降れば手に入る」と笑われましたので、夏の薬と葡萄酒と御遺骸はお守りいたしません

ヴェントレース伯爵令嬢ノルディアは、千年続く「氷室守《ひょうしつもり》」の家に生まれた。冬に氷河湖から氷を切り出し、王宮の地下に三層の氷室で夏まで保存する。夏の薬を冷やし、葡萄酒を熟成させ、王家の葬儀の御遺骸を腐らせない——王家の死生を守る氷の番人だ。
婚約者の王太子マクシミリアンは、ノルディアの仕事を「冬の労働」と笑った。
「氷など雪が降れば手に入る。誰でもできることに、わざわざ家業を立てる必要がどこにある」
左様でございますか。ノルディアはそう答えて、王宮の氷室の鍵を返し、家業を畳んで南方の塩湖領へ移った。
半年後、夏の盛り。王太后が崩御する。御遺骸を保存する氷がない。薬も腐り、葡萄酒は酸化する。誰も気づかない——氷を切る冬の労働を、誰も知らないからだ。
「氷は、冬の手がなければ、夏まで届きません」
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