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「それで、返事を聞かせてもらえるかな?」

一か月後。
ブルーノ王子は私の家を訪れていた。
今度はウエイターではなく、誰が見ても王族だと分かるような、豪華な衣装に身を包んでいた。

「はい」

私は頷くと、緊張した口調で言葉を続ける。

「私はずっとこの赤髪をコンプレックスに思ってきました。友達だった子には石を投げられ、心無い言葉を言われ、ずっと苦しんできました。でも、王子は私の赤髪を美しいと言ってくれました」

王子に求婚されたあの時に、返事は決まっていたのかもしれない。

「ブルーノ王子。こんな私でよければ、婚約者にしてください!」

「もちろんだよ、アカネ」

王子は嬉しそうな笑顔を浮かべると、私の手を取った。

……それからの日々は幸せに満ち溢れていた。
王子は毎日のように私の家に来ては、面白い話をたくさんしてくれた。
平民の恰好をして街に飛び出した時のこと、一人で南の森を探索したこと、そして赤髪の魔女に出会ったこと。

魔女の話をしてくれたのは、私たちが婚約して三か月が経った時のことだった。
その日は、私たちは丘の上に建つレストランで食事をしていた。
窓から見える星空を眺めながら、おもむろに王子が口を開く。

「実は昔ね、僕は魔女に会ったことがあるんだ」

「……え?」

突然の言葉に食事の手を止めた私。
真剣な瞳の王子が嘘を言うはずもない。

「彼女は君と同じ赤い髪をしていた。まるであの星のような」

王子はそう言うと、夜空に浮かぶ赤い星を指さした。
煌々と輝くその星は、夜空で一番目立っていた。

「あれは僕がまだ十歳の時。王宮を抜け出していつものように森へ行っていた時のことだ……」

どこか懐かしい目をしながら、王子は自分の過去を語り始めた。
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