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「説明に夢中で気付かなかった?」
「っ、すみません、どうしたら、お昼、」
「俺はいい。昼、いつも食堂行かないから。収納に持ってる」
「~~~~~……なら、良かったです。すみません……」
安堵の息を吐く。
相手の方の事情に救われたみたいだ。
…………でも、気付いていたなら切りのいいところで止めてくれればよかったのに。と思わなくもない。
「気にしなくていいよ。情報、予想以上に良かったし。説明も分かりやすかった。夢中になって止まれないのを直したら教師とか向いてるんじゃない?」
「教師、ですか?考えたこともありませんでした……」
というか、将来については何一つ考えていない。
卒業までまだ時間があるから、今は金を稼ぐこととそのための知識を蓄えることで精一杯で。高等部に入ってからでいいか、と。
でも。その選択肢は、思いの外いい気がする。
候補として考えておこう。戻ってきたら伊坂さんにも相談してみるかな?
「ねえ」
「えっ、あ!はいっ」
少し考え込んでいたところに声を掛けられ、慌てて返事をする。
そうだった、まだいたんだった。
いくらなんでもさっきの今で失礼過ぎる。
「他にダンジョン関係の資料って知ってる?」
何事もなかったように問うてくる。
そういう奴だと思われたのだろう。
…………どうせすぐ縁も切れるだろうし別にいいといえばいいんだけど。
「というと……各階層の特徴やモンスターの分布あたりですか?」
「そう。やっぱりあるんだ、そういうの」
「ありますね。ただ、今言った2つに関しては教師であれば誰の許可であっても閲覧可能ですよ」
「へぇ。教師から存在を言うことは?」
「まずないですね。羽佐間さん曰く、失敗も経験、らしいですから」
学園の教師達は、大きな失敗をしてからじゃないとダンジョン関係はアドバイスの一つもしてくれない。
禁帯出図書となっている時点で、学園側が進んでその辺りを生徒に教えたりしないということは理解できるだろう。
別にダンジョンを攻略してほしくないとか、何かを隠してるとかそんなのではないと羽佐間さんは言う。
自分で考えて調べ、判断し、行動する。最終的にダンジョン内で信じられるのは自分だけだと理解する。そうじゃないと生き残れないから。
そこを実感しきちんと理解して折れなかったなら、徹底的に指導するんだそうだ。
折れたら終わり。ダンジョンに関わらない進路を勧める。
要は、篩なんだ。
そこまでしなければ前線で真面に戦える人間など見つけられないし、造れない。
考えれば考えるほど鬱になりそうな現実だった。どこまでもクソ過ぎる。
「それ、教えて」
「え、」
「知らなくても今までやってこれたけど、あるなら知っておきたい」
「で、でも、今回よりずっと時間が、」
「別に構わない。それに、お前も誰かに教えるってことに慣れた方がいいんじゃない?」
「それは……、」
「じゃあ決まりね。時間がある時は来るから」
「え、ちょっと、待っ! …………い、いない」
少し悩んで反応が遅れた隙に勝手にそう決めて、止める間もなく、その人は姿を消した。
いやなんでスキル使ってまで逃げた。
そこまで知りたかったのか?
薬草類に関しても二週間も待っていられないとか言っていたけど、そっちはそっちで関係ないだろうに。
今まで知らずともやってこれたなら、二週間くらい待てばいいのに……。
「―――、―――?」
「―――!――――-!」
「――、――――――!―――――!」
「―――、―――――」
「…………騒がしいな」
少し遠くで、女生徒が複数人騒いでいる気配がする。
ついでに羽佐間さんが静かに怒っている気配もする。
ああ、もう放課後か。
授業が終わった生徒達が図書館に来たんだろう。
面倒事が起きる前に、一旦奥に避難するか。
…………憂鬱だ。
切れると思っていた縁は相手側から繋がれて、まだ当分切れそうにない。
なんでまたこんなことに。
伊坂さん、早く帰ってこないかな……。
「っ、すみません、どうしたら、お昼、」
「俺はいい。昼、いつも食堂行かないから。収納に持ってる」
「~~~~~……なら、良かったです。すみません……」
安堵の息を吐く。
相手の方の事情に救われたみたいだ。
…………でも、気付いていたなら切りのいいところで止めてくれればよかったのに。と思わなくもない。
「気にしなくていいよ。情報、予想以上に良かったし。説明も分かりやすかった。夢中になって止まれないのを直したら教師とか向いてるんじゃない?」
「教師、ですか?考えたこともありませんでした……」
というか、将来については何一つ考えていない。
卒業までまだ時間があるから、今は金を稼ぐこととそのための知識を蓄えることで精一杯で。高等部に入ってからでいいか、と。
でも。その選択肢は、思いの外いい気がする。
候補として考えておこう。戻ってきたら伊坂さんにも相談してみるかな?
「ねえ」
「えっ、あ!はいっ」
少し考え込んでいたところに声を掛けられ、慌てて返事をする。
そうだった、まだいたんだった。
いくらなんでもさっきの今で失礼過ぎる。
「他にダンジョン関係の資料って知ってる?」
何事もなかったように問うてくる。
そういう奴だと思われたのだろう。
…………どうせすぐ縁も切れるだろうし別にいいといえばいいんだけど。
「というと……各階層の特徴やモンスターの分布あたりですか?」
「そう。やっぱりあるんだ、そういうの」
「ありますね。ただ、今言った2つに関しては教師であれば誰の許可であっても閲覧可能ですよ」
「へぇ。教師から存在を言うことは?」
「まずないですね。羽佐間さん曰く、失敗も経験、らしいですから」
学園の教師達は、大きな失敗をしてからじゃないとダンジョン関係はアドバイスの一つもしてくれない。
禁帯出図書となっている時点で、学園側が進んでその辺りを生徒に教えたりしないということは理解できるだろう。
別にダンジョンを攻略してほしくないとか、何かを隠してるとかそんなのではないと羽佐間さんは言う。
自分で考えて調べ、判断し、行動する。最終的にダンジョン内で信じられるのは自分だけだと理解する。そうじゃないと生き残れないから。
そこを実感しきちんと理解して折れなかったなら、徹底的に指導するんだそうだ。
折れたら終わり。ダンジョンに関わらない進路を勧める。
要は、篩なんだ。
そこまでしなければ前線で真面に戦える人間など見つけられないし、造れない。
考えれば考えるほど鬱になりそうな現実だった。どこまでもクソ過ぎる。
「それ、教えて」
「え、」
「知らなくても今までやってこれたけど、あるなら知っておきたい」
「で、でも、今回よりずっと時間が、」
「別に構わない。それに、お前も誰かに教えるってことに慣れた方がいいんじゃない?」
「それは……、」
「じゃあ決まりね。時間がある時は来るから」
「え、ちょっと、待っ! …………い、いない」
少し悩んで反応が遅れた隙に勝手にそう決めて、止める間もなく、その人は姿を消した。
いやなんでスキル使ってまで逃げた。
そこまで知りたかったのか?
薬草類に関しても二週間も待っていられないとか言っていたけど、そっちはそっちで関係ないだろうに。
今まで知らずともやってこれたなら、二週間くらい待てばいいのに……。
「―――、―――?」
「―――!――――-!」
「――、――――――!―――――!」
「―――、―――――」
「…………騒がしいな」
少し遠くで、女生徒が複数人騒いでいる気配がする。
ついでに羽佐間さんが静かに怒っている気配もする。
ああ、もう放課後か。
授業が終わった生徒達が図書館に来たんだろう。
面倒事が起きる前に、一旦奥に避難するか。
…………憂鬱だ。
切れると思っていた縁は相手側から繋がれて、まだ当分切れそうにない。
なんでまたこんなことに。
伊坂さん、早く帰ってこないかな……。
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