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第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!

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 俺とコイヨンは今、町中を歩いている。本当はこんな昼間に町中を歩く予定は無かったのだが、致し方ない。コイヨンがどうしても俺ときたいと言うから。

 本来であればロズリーの後始末、コイヨンのフォローをする予定だった。どれもこれもコイヨンの前で出来ないことだ。だからとりあえず町の探索という事にしたのだ。

 大体は魔術で把握しているとはいえ、実際に歩いてどんな感じかを見た方が良い。前みたいに違う奴に殺されてしまうなんて失敗は出来ない。

 というか、悪徳魔術師がなりを潜めすぎて何も出来ん!!もっと派手に子供誘拐しろよ!!いやいないから困ってるんだろうけどぉ!!!!


「コイヨン、あれ食べたい」
「買ってきます」
「うん」


 今俺は子供の姿のまま、猊下から貰った眼鏡をかけてその上で魔術を使い容姿を変えている。周りから見れば貴族のお坊ちゃんと侍従に見えるだろう。俺は目についた串焼きを売っているお店を指さしコイヨンを行かせる。

 その間に空いているベンチに座って俺はそれが来るのを待った。コイヨンがどれほど金を持っているか分からないが、少しの買い物ぐらいは出来るようだ。さっきから少額の食べ物をちまちま買って貰っているので間違いない。

 あ、ベンチちょっと高い、かも。

 背が低い小柄な体型なので一般的なベンチに座るのすら一苦労だ。よいしょっと体を持ち上げてベンチに座ろうとして影が差す。


「坊や」
「ん?」


 背後から声がして振り返ると見知らぬおじさんがいた。にこっと人の良い笑みを浮かべてこちらを見下ろしている彼。俺はじっとそれを見つめ返しつつとりあえずベンチに座るのを諦めて地面に足をつけた。


「どうしたの?」
「いやあ、おじさん、最近ここに来たばっかりでね。道が分からなくて困っていたんだ。良ければ案内してくれるかな」


 それは大変だ。俺も見知らぬ場所で迷子になった経験があるのでとっても共感できる。俺もこの町に詳しいわけじゃないけど、魔術を使えば分かるので彼の言葉に二つ返事で了承した。


「いいよ。どこ?」
「助かるよ。えーっと……」


 おじさんが恐らく場所の名前か何かが書かれている紙を取り出すつもりなのだろう。懐に手を入れていた。俺はそれを黙って見守っていたのだが不意におじさんの肩に手が置かれた。


「!? な、なんだ急に人の肩をつかん……で……」


 おじさんがそういって振り返った。俺も彼の言葉に顔を上げてそちらを見ると大柄な男がいた。人相悪く眉間にしわが寄っており、肩幅も大きいので余計に厳つい。そんな兎に角威圧感のある男はじろりっとつり上がった目でおじさんを睨みつけていた。

 知り合いかな?と俺は突然現れ、気安く肩を掴んだ彼にそう予想を立てるがおじさんがみるみるうちに顔を青くしていきゆっくりと俺とそして彼と距離を取った。


「? おじさん、どうしたの? 道案内……」
「あ、あー!! そういえばこっちの道を行けばたどり着くのを忘れていたよ。坊や、親切にありがとうね! それじゃあ!!」


 おじさんは素早く方向を変えて足早に去って行く。


「あ、うん、どういたしまして……?」


 俺はその後ろ姿を呆然と見送りつつ、ひとまずそう返した。おじさんに届いているかどうかは分からないが。

 まあ、道を思いだしたのだから良いんだろうと思ったが、一つ問題が浮上した。

 じゃあこの目の前にいる彼は一体どちら様?という事だ。

 彼はじっとおじさんの後ろ姿を睨みつけた後に、俺が座ろうとしていたベンチに腰掛けた。

 そこでこの人はベンチに座りたかっただけかと判断した。まあ、ずっとベンチの前にいて座ろうとしていない俺たちを邪魔だと思ったのだろう。仕方ない。俺は別の場所を探すか。

 そう思い背を向けて歩き始める。


「……おい、坊主。座らないのか?」
「え?」


 不意に彼が俺を呼び止めたと思い振り返る。坊主、というのは多分俺だろう。彼は俺と目が合うと軽く自分の隣のベンチを叩いた。彼の行動理由が分からず首を傾げてしまうが、まあ、許可が出た?ようなのでとりあえず横に腰掛ける。

 届かないので腕を使ってよじ登ろうとしたが、男が簡単に俺の体を抱えて座らせてくれた。


「ありがとう」
「別に良い。一応聞くが、さっきの奴とは知り合いか?」
「ううん。道聞かれたから案内しようと思って」
「へー、そりゃ悪いことしたな」
「? 全然。貴方のお陰で道思い出せたみたいだし」


 案内せずともそんな人助けが出来るなんて凄いよ。俺も見習いたい。
 コイヨンに頼んだ串焼きは時間がかかっているようでまで来る気配がない。それほど離れた場所にいるわけでもないし、コイヨンも俺がどちらに向かっているか確認もしていたので見つけられていないと言うことはないだろうから。

 その間にこの男の人に話し相手になって貰おうかな。何となく、まだ隣にいるみたいだし。ちらりと男の人を見て、ひとまず名前を聞いてみようかと口を開きかける。


「そこの可愛らしい御方。隣、いいかな?」
「……ん?」


 不意に、誰かが声をかけた。隣の男の人が顔を上げてそちらを見るので俺もそれに連られて視線を動かす。そこには、すらりとした体型の男の人がいる。泣きぼくろと垂れ目で人を虜にする甘い笑みを浮かべていた。さらりと初対面の男にあんな言葉が言えるところを見るに、いわゆるプレイボーイというものではなかろうか。

 凄いな。俺このお兄さんヤのつく職業の人だよなあって思ったのに可愛らしいって言えるなんて。

 俺は感心しながら次に厳つい方の男を見て彼は何かに気付いたようにびしりと俺を指さした。


「俺じゃない。お前」
「え? か、勘違いさせたならごめんね坊や。俺は君に言ったんだ。愛くるしい小鳥のような君に」
「……成る程。えーっと、ありがとう?」
「ど、どういたしまして……」


 とりあえず褒められているのだろう。俺はお礼を言うと彼はふにゃりと先ほどまでの笑みではなく、無邪気な笑みへと変貌した。思わずドキリとした。こ、これがギャップ萌え!?

 猊下にも感じたあの感覚に近いものを覚えつつ、ひとまず彼の返答に答えようと俺は大柄な男の方によった。


「良いよ。隣どーぞ」
「ありがとう」


 そういって彼は優雅に腰掛けてそして足を組む。その上に軽く頬杖をつきながらじっと俺を見つめた。何か俺に用があるのだろうか?


「俺に何か用?」


 知らない人だけど、とりあえず話しかけてみる。すると彼はにこやかな笑みを浮かべながら考え込んだ。


「んー、そうだな。あえて言うなら今日この日に感謝してるだけ」
「そ? とりあえず自己紹介でもする?」
「良いの?」
「うん。俺はアルカルド。好きに呼んで」


 話題がないので無難に自己紹介からはじめようと俺は猊下に貰った名前を言った。すると彼は固まって、それから大柄な男の方を見た。


「聞いた?」
「聞いた」
「? お兄ちゃん達は知り合いなの?」
「……っ!!!」


 二人のやりとりに思わずそう聞くと、揃って二人が胸を押さえて体を曲げた。ぎょっとして驚くと二人は深呼吸を繰り返していた。何が、あった。俺何もしてないぞ。


「じ、持病? 発作……?」
「違う違う。これは、お兄ちゃんって言われるのは、何というか慣れなくてね!! 名前で呼んで貰っても良いかな? 俺はフラウ。あっちはジエン」
「そ、そう。分かったフラウにジエン」


 泣きぼくろがフラウで大柄な男の方がジエンね覚えた。とりあえず病を抱えてないなら良かったよ。健康が一番。
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