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第三章 君が考える最も美しい人の姿がこれなの?
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猊下のイケメンな行動に振り回されてると、不意にかちりっと何か変な音が聞こえた。
――と、同時に猊下が俺の手を引っ張って姿勢を低くし肩にかけていたジャケットで頭上を覆う。そして、爆発音が響き渡った。
悲鳴、絶叫、建物が崩れ落ち、どこからともなく黒い煙が立ちこめる。
「火事だ!!」
誰がそう叫んだのだろうか。ともかくその声を聞いた瞬間、会場内はパニックに陥った。
「どけ!」
「出口はどこ!? 早くに逃げなくちゃ!!」
「お、落ち着いて! 落ち着いて下さ……うわっ!!」
「旦那様!!」
招待客全員が狭い扉に駆けつける。我先にと他人を押しのけ外に出ようとする彼ら。このままでは怪我人が出るのは明白で、会場にいた使用人やベイカー伯爵の夫妻、長男がどうにか落ち着かせようとするが全く効果が無い。
このままじゃ、ここにいる猊下もその騒動に巻き込まれて怪我をするかもしれない!!そんなのだめだ!ただでさえ死にやすいモブなのに!!
「貸して!!」
「え!?」
「ルド!?」
俺は何か気を引けるものはないかと思い近くの使用人が持っていたトレーを奪い取った。それをフリスビーのように投げて、人がいない窓を割る。
またしても悲鳴が起こるが、それをかき消す勢いで俺は叫んだ。
「止まれ――っ!!」
俺の大きな声に驚いて出口に走っていた彼らはピタリと足を止めた。俺はこれ幸いと俺は舞踏会で一番高いところに移動をする。そんな俺に会場内の視線が集まり俺はよしよしっと次の指示を出す。
「この黒い煙は有害です! 吸わないようにハンカチやジャケットで口を覆って下さい。それから姿勢を低く保って、ゆっくり歩いて下さい! 大丈夫です! 皆さん絶対に助かります! 落ち着いて、避難誘導に従って下さい!」
俺の声と目を引く容姿のお陰で冷静さを取り戻したのか徐々に落ち着きはじめ俺の指示に従ってハンカチやジャケットで口を覆い、姿勢を低く保つ。俺はちらりとベイカー伯爵夫妻に目をやると彼らは素早く避難誘導をはじめた。
流石主人公の親、きっかけさえあればすぐに対応できるな。もう大丈夫だろうと猊下の元に戻ろうとしてひゅんっと微かに風を切るような音が聞こえた。それと同時に首に圧迫感を感じ背後に引っ張られる。
「……っ!」
「ルド!!!」
猊下が俺を追って上に上がってきたようで、後ろに引っ張られてよろめく俺に切羽詰まったような声を出した。大丈夫だと彼の方を見るが、首についている糸の勢いが強くて俺は窓にたたきつけられてそのままテラスに体を投げ出す。そこでようやく糸が切れそうな刃物、窓ガラスの破片を握って俺はそれを切った。
げほげほっと多少咳き込みながら立ち上がろうとして、大きな腕が伸びる。その腕は力強く俺を包み込むと震える手で必死に俺の服を掴んでいた。
「く、首が、け、けがを、私はまた……っ!!」
「お、俺は平気だよ、お兄ちゃん!!」
かなり猊下が動揺している。痛くないし、ちょっと苦しかっただけだ。でもそれが猊下にとっては心の傷なんだよね!!俺ってば前回から猊下のトラウマしか抉ってねえ!!
こんなつもりじゃ……。スマートに助けるはずが……。
――と、同時に猊下が俺の手を引っ張って姿勢を低くし肩にかけていたジャケットで頭上を覆う。そして、爆発音が響き渡った。
悲鳴、絶叫、建物が崩れ落ち、どこからともなく黒い煙が立ちこめる。
「火事だ!!」
誰がそう叫んだのだろうか。ともかくその声を聞いた瞬間、会場内はパニックに陥った。
「どけ!」
「出口はどこ!? 早くに逃げなくちゃ!!」
「お、落ち着いて! 落ち着いて下さ……うわっ!!」
「旦那様!!」
招待客全員が狭い扉に駆けつける。我先にと他人を押しのけ外に出ようとする彼ら。このままでは怪我人が出るのは明白で、会場にいた使用人やベイカー伯爵の夫妻、長男がどうにか落ち着かせようとするが全く効果が無い。
このままじゃ、ここにいる猊下もその騒動に巻き込まれて怪我をするかもしれない!!そんなのだめだ!ただでさえ死にやすいモブなのに!!
「貸して!!」
「え!?」
「ルド!?」
俺は何か気を引けるものはないかと思い近くの使用人が持っていたトレーを奪い取った。それをフリスビーのように投げて、人がいない窓を割る。
またしても悲鳴が起こるが、それをかき消す勢いで俺は叫んだ。
「止まれ――っ!!」
俺の大きな声に驚いて出口に走っていた彼らはピタリと足を止めた。俺はこれ幸いと俺は舞踏会で一番高いところに移動をする。そんな俺に会場内の視線が集まり俺はよしよしっと次の指示を出す。
「この黒い煙は有害です! 吸わないようにハンカチやジャケットで口を覆って下さい。それから姿勢を低く保って、ゆっくり歩いて下さい! 大丈夫です! 皆さん絶対に助かります! 落ち着いて、避難誘導に従って下さい!」
俺の声と目を引く容姿のお陰で冷静さを取り戻したのか徐々に落ち着きはじめ俺の指示に従ってハンカチやジャケットで口を覆い、姿勢を低く保つ。俺はちらりとベイカー伯爵夫妻に目をやると彼らは素早く避難誘導をはじめた。
流石主人公の親、きっかけさえあればすぐに対応できるな。もう大丈夫だろうと猊下の元に戻ろうとしてひゅんっと微かに風を切るような音が聞こえた。それと同時に首に圧迫感を感じ背後に引っ張られる。
「……っ!」
「ルド!!!」
猊下が俺を追って上に上がってきたようで、後ろに引っ張られてよろめく俺に切羽詰まったような声を出した。大丈夫だと彼の方を見るが、首についている糸の勢いが強くて俺は窓にたたきつけられてそのままテラスに体を投げ出す。そこでようやく糸が切れそうな刃物、窓ガラスの破片を握って俺はそれを切った。
げほげほっと多少咳き込みながら立ち上がろうとして、大きな腕が伸びる。その腕は力強く俺を包み込むと震える手で必死に俺の服を掴んでいた。
「く、首が、け、けがを、私はまた……っ!!」
「お、俺は平気だよ、お兄ちゃん!!」
かなり猊下が動揺している。痛くないし、ちょっと苦しかっただけだ。でもそれが猊下にとっては心の傷なんだよね!!俺ってば前回から猊下のトラウマしか抉ってねえ!!
こんなつもりじゃ……。スマートに助けるはずが……。
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