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3.
しおりを挟む伯爵家に戻ったディアンヌたちは、一息ついた。
「すぐに気づかれたわね。」
「僕、間近で王太子殿下を見たのは初めてだったけど本当に似ててびっくりした。」
「だから何年も前から言っていただろう?しれっと誤魔化すのは無理だって。
俺はルドルフが産まれてすぐに、俺の子だとするには無理があると思ってたよ。」
「そんなこと言われても……私に似てくれていれば誤魔化せたのに。」
そう。ディアンヌとフランクは、王太子殿下の子供を自分たちの実子として伯爵家を継がせるつもりでいたのだ。
しかし、あまりにもルドルフがウィルベルトそっくりに産まれてしまったことで頭を抱えた。
王太子妃キャサリンが産む子供がどうか王子でありますように。と真剣に祈った。
いや、オリアナ王女が産まれてからも、次は王子が産まれるはずだと願ってきた。
だが、王太子夫妻にはオリアナ王女ただ一人しか、まだいない。
女王でもいいじゃない!と思っているのに聞こえてくるのは側妃を王太子殿下に勧めているが本人が乗り気ではないという話。
ヤキモキしている間に、とうとうルドルフも交流を始める歳になってしまったのだ。
少し遅いくらいだが、友人も必要だからいつまでも閉じ込めておくわけにはいかない。
こうなったら招待されたオリアナ王女の誕生日パーティーで他人の空似で突き通そうと意気込んで出席したところ、すぐに無理だと悟った。
親たちの視線はルドルフに集中したのだから。
「王女様の一言、アレに止めを刺されたわ。ルドルフをお兄様だなんて……」
「そっか。王女様って僕の妹なんだね。ちょっと嬉しいかも。」
「そんなノンキなこと言ってるけど、お前にはこれから厳しい教育が待ってるぞ。」
「やっぱり僕、王家に連れていかれそう?」
ルドルフのその言葉に、ディアンヌは項垂れた。
「確実にね。後で来られた両陛下や大臣の方々が涙を流しそうな勢いで喜んでいたもの。
王太子妃殿下も目を輝かせていたわ。王女を女王にしたくないって噂は本当みたいね。
やっぱり、カツラでルドルフの髪色だけでも誤魔化すべきだった?」
「いや、それでもあまり意味はなかったんじゃないかな。
一時しのぎにはなっても、よく見ればわかるし。
娘がいる貴族は娘の婚約者の目星をつけるために初見の男の子を観察していたからね。」
「僕、ずっとカツラだなんて絶対嫌だったよ。バレたら仕方ないと初めから思っていたし。」
フランクとルドルフは実の親子ではないのに、意外と考えが似ている。
ディアンヌみたいに過ぎたことをクヨクヨしないのだ。
手紙には、まずルドルフ抜きでディアンヌと2人で話がしたいと書いてあった。
それからフランクと。
ルドルフとは大人たちの話し合いが終わってからになるみたい。
本人の意思確認はないってことね。
こんなことになるはずではなかったのに。
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