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しおりを挟むイザベルと意見が合わない。
僕は田舎貴族なので、普段は領地住まいだ。前にも説明した。
宝石もドレスも田舎ではあまり必要ではない。
なのに、勝手に買ってくる。
結婚式も領地でいいのに王都ですることになったので、ウエディングドレスも王都価格だ。
領地は親に任せて、王都に住みたいと言い出した。ここで何して過ごすんだ?
このままではイザベルのせいで没落する未来が現実となりそうだ。
領地の跡継ぎは僕しかいないのに。いや、従弟がいるな。跡継ぎを譲るか?
イザベルは怒るだろうな。結婚しないっていうかな。それもいいな。
でもその後の僕は?何をすればいい?
キースの言うことを聞けばよかった。
あいつは何をしてるんだっけ?そうだ。もう王宮で働き始めているか。
…会いに行ったら話を聞いてくれるかな?
僕には他に誰もいなかった。
手紙を王宮に届けた。
仕事が終わったら、この公園で待ってるって書いて。来てくれるかな?
キースは来てくれた。…嫌そうだけど。
軽く雑談から入ると、キースが婚約したと言った。相手はオリビアだった。
衝撃を受けた。あのオリビアと?
陰気だろ?と言うと、どこが?と不思議そうに言われた。
穏やかで優しいあの微笑みが可愛いし、オリビアの話を聞いていると癒される。と幸せそうだ。
あぁ、そう言えば何となく二人の纏う雰囲気が似ている気がする。
だから、キースと友人になったのかもしれない。
イザベルの現状を愚痴ってしまった。
どうすればいいかわからなくなったと打ち明けた。
イザベルを領地に連れて行ったのかと聞かれて、まだだと答えた。
早めに現実を見せるべきだ。王都にも住めないし、月に自由にできる金額を把握させるべきだ。
今、イザベルを操縦できなければ領主になる資格はない。そう言われた。
そうだよな。わかってはいるんだ。
キースはもう一つ、助言をくれた。
領地に住み自由な金は少ない。これを告げると、不満に思ったイザベルは他に狙いを定めるために浮気をする可能性がある。そこを押さえると婚約破棄できるんじゃないか?…なるほど。
学園で言おうとしていたことを教えてくれた。
イザベルは老人の後妻から逃げようと婚約者を探していたこと。
僕を狙う前にも数人狙っていたこと。遊び人の先輩と関係があって捨てられたこと。
お前にも親にも体で落とすのが決定打になるとわかっていただろうこと。
今ならイザベルに近づくべきではなかったとわかる。
でも、あの時の僕は聞いていても信じなかったと思う。
それにしても、話題が豊富なだけでどうしてイザベルを聡明だと思ったのか不思議だ。
だって、3年間貴族の最下位クラスだったのに…
キースにお礼を言って別れた。
幸せそうだったな。
もう、僕には純粋なオリビアの微笑みを見ることはないだろう。
どこかで出会って微笑んでくれても、僕の心が歪んでしまったから…
優しく微笑んでくれる婚約者を自ら手放して今さら後悔しても遅すぎた。
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