あなたに最後の贈り物を

しゃーりん

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メルリーが笑われていたのは、夫がアイリーンのキスを受け入れていることを知っているかどうか。

知っているのなら、妻の余裕なのか、あるいは夫を窘められない気弱な妻なのか。

知らないのであれば、その方が幸せなのか。

知った後はどういう対応をするのか。怒るのか、泣くのか、笑うのか、呆れるのか、黙殺なのか。

そんなことが常々話題になっていたという。 

 
「……教えて下さり、ありがとうございました。」

「いいえ、知らなかったのだからいい気分ではないわよね。あのお茶会の夫人方もね、大半はあなたを気の毒に思っているのよ?だけど、『話題にするのはやめましょう』って言い難いの。ごめんなさいね。」 


話題の主導は、主催の伯爵夫人とその取り巻き夫人たち。

ナディア様は彼女たちの話題に乗っかるしかないということは理解できる。 

それに、メルリーが気づいていなければいないほど、彼女たちは面白かったのだろう。


メルリーに知られたブレイズがどういう行動をとったか。

そのうちお茶会で、そのことが話題になるということでもある。
 

メルリーは、ますますこのお茶会が嫌になった。





家に戻ったメルリーは、夫ブレイズが帰ってきたら話をしようと決心していた。

メルリーとブレイズは、親同士が友人で婚約することになった。
親同士が友人といっても家族ぐるみで会っていたわけではないので、別に幼馴染というわけではない。

『相手がいないのなら会わせてみる?』

親のそんな軽い感じで顔合わせをし、メルリーが14歳、ブレイズが15歳で婚約した。


ブレイズは優しくて、顔も体格もそこそこ良い。
ただ、男爵家の次男というと、貴族として先はないと縁談を望む相手がいなかった。
 
しかし、遊び相手としてはいいのか、婚約中でも誘いがあることは知っていた。

ブレイズを咎めたこともある。
他の女性と遊ばないでほしい、と。

すると、『娼婦を相手にするより安全だし、相手も本気じゃないから遊べるんだよ。』と言われた。

さらに、『メルリーと結婚したら、遊ばないから。』とも言われた。


親には相談しにくく、疑問に思ったことを友人に相談したこともある。
でも友人も、『メルリーが相手をしないのであれば遊ぶのは目を瞑るべきだと思うわ。』と言った。

注意し過ぎると、男性は婚約者や妻が鬱陶しくなって、遊びが止められなくなる。

そういうものなのか、相手をできない間は我慢するべきなのか、と嫌な感情を押し込んだ。


でも、その時に感じた疑問を今回のことで思い出してしまった。

ブレイズは、『娼婦を相手にするより安全』だと言った。
性病などを移されることを思えば、そうだろう。

娼婦は『仕事』である。
しかし、遊び相手は、メルリーと顔を合わせる可能性がある女性なのだ。

それは本当に『安全』な遊び?


当時、ブレイズに本気になった令嬢がたまたまいなかったから、何事もなく私たちは結婚した。

婚約中、不快な嘲笑がなかったわけではない。
ブレイズの遊び相手を知りたくなかったから、メルリーは誰なのか見ようとも思わなかった。

ブレイズが結婚前に関係を持っていた女性が何人いたのかも知らない。
 


今回は、結婚前から今も続くキス。

キスは浮気か?

意見は別れると思う。
 

でも、相手の存在が浮き彫りになってしまった。

 
ブレイズは結婚前の遊び同様、キスなど気にしていないのだろうけれど、相手はどうかわからない。


こんなことなら、『仕事』の娼婦の方がまだマシだと思った。

 
 
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