23 / 50
22. ノアは仕事で隣国へ赴く
しおりを挟む
「バルモント公、外交には行かなくていいと言ったはずだが?」
王城、謁見の間、国王アレクサンダーの前でノアルファスは跪いていた。
今日は他人の目もあるため彼は国王としての話し方をしている。
それでも少し砕けてしまうのは、幼馴染だから仕方のない事なのだが······。
「はい。ですが、急の要件でありまして······」
「公が行かなくてはいけない理由は?」
「はっ。各国の外交関係に携わる者が集まるようで。情報も仕入れておきたく」
「他の奴に行かせよ」
「陛下!」
「お前はもう少し内の事に目を向けよ。妻一人分かってやれなくて何が外交だ!」
痛い所を突かれ、ノアは顔を歪めた。
そして小さく呟く。
「······でも、もう家にはいないので」
「は?······いまなんと?」
「······妻は家を出ていきました」
「な、なんですって!!?」
国王の隣に座っていた王妃マリアンヌが思わず立ち上がった。
「マリアンヌ······」
「も、申し訳ございません」
「······バルモント公爵、今回の外交は許そう。だが、妻をそこまで追い詰めるなど、男としてどうなのだ?それに私が直々に整えてやった結婚なのに、だ。そんな男に、他人と交流をはかる外交など任せられるとは到底思えぬ。分かるな?」
「······はい」
ノアは王城から公爵邸に帰宅後、直ぐに準備をして馬車に乗り込んだ。
目的地は隣国ギプロスだ。
「はあ、このままでは公爵位も危ういな······アレクかなり怒っていたしな」
アレクが自分に妻を選べと言って、国王の側室候補者が集まった場に同席した日。
その候補として挙がっていた女性の中に、ノアルファスはフィリスを見つけた。
派手に着飾らず、高位の貴族令嬢にしてはあまりに素朴。だが、彼女であれば、仕事の忙しい自分にとやかくケチをつける事もなさそうだし都合がよい。と軽く決断したのだ。
それに彼女の家は財政難に見舞われていた為、両親は両手を挙げて喜び、フィリスを差し出した。
だから、ノアルファスとフィリスの結婚は、国王アレクの介入の元、政略結婚として簡単に整った。
そう······、フィリスの意思は全く聞かずに決まった結婚だった。
でも······、とノアルファスはその時の自分の気持ちを思い出す。
もしかすると、フィリスの意思を聞くのが怖かっただけなのかもしれない。
『こんな男、イヤだ』と、もし拒絶されたら、心が壊れてしまいそうで。契約結婚だ!なんて豪語し、自分への詮索や関与をしないように再三後押しをしてしまっただけかも。
だって、本当はどうだっただろうか?
アレクの側室候補者の中からフィリスを見つけた時、一瞬で目を奪われて、アレクに進言しに言ったのは自分なのに。
それを知られたくなくて、『この結婚は国王に言われたからだ』なんて······。
自分の心が弱いから、ほかに繋ぎとめておく方法もなく、最悪子供ができて母親になれば、この家に留まってくれるかもしれない。と淡い期待を抱いていたのも事実だったから······。
ノアは馬車の窓から雄大な景色を見つめた。
こんな所にフィリスを連れてきたら、両手を上げて走りまわりそうだ。
自由をこよなく愛する彼女なら、きっと喜ぶに違いない。
「いつか、連れてくるか······」
その時は子供も一緒か、とノアは想像を膨らませながら頬を緩める。
だが、そんな幸せな映像がノアの脳裏で流れたとき、彼の心は現実に引き戻された。
『そんな事が本当に起こるのだろうか?自分が契約結婚と言って突き付けた状況なのに?彼女はそんな俺との幸せな未来など、もはや望みはしないのではないか?』
しかし、国王アレクとの謁見での対談に疲れ、フィリスに家出をされているという心の重圧に耐えきれず、ノアはその思いに蓋をする。
「無駄な事は考える必要はないな······」
だが、想像は自由だ。
ノアは再び外の景色に視線を移すと、現実逃避をするように瞳を閉じた。
王城、謁見の間、国王アレクサンダーの前でノアルファスは跪いていた。
今日は他人の目もあるため彼は国王としての話し方をしている。
それでも少し砕けてしまうのは、幼馴染だから仕方のない事なのだが······。
「はい。ですが、急の要件でありまして······」
「公が行かなくてはいけない理由は?」
「はっ。各国の外交関係に携わる者が集まるようで。情報も仕入れておきたく」
「他の奴に行かせよ」
「陛下!」
「お前はもう少し内の事に目を向けよ。妻一人分かってやれなくて何が外交だ!」
痛い所を突かれ、ノアは顔を歪めた。
そして小さく呟く。
「······でも、もう家にはいないので」
「は?······いまなんと?」
「······妻は家を出ていきました」
「な、なんですって!!?」
国王の隣に座っていた王妃マリアンヌが思わず立ち上がった。
「マリアンヌ······」
「も、申し訳ございません」
「······バルモント公爵、今回の外交は許そう。だが、妻をそこまで追い詰めるなど、男としてどうなのだ?それに私が直々に整えてやった結婚なのに、だ。そんな男に、他人と交流をはかる外交など任せられるとは到底思えぬ。分かるな?」
「······はい」
ノアは王城から公爵邸に帰宅後、直ぐに準備をして馬車に乗り込んだ。
目的地は隣国ギプロスだ。
「はあ、このままでは公爵位も危ういな······アレクかなり怒っていたしな」
アレクが自分に妻を選べと言って、国王の側室候補者が集まった場に同席した日。
その候補として挙がっていた女性の中に、ノアルファスはフィリスを見つけた。
派手に着飾らず、高位の貴族令嬢にしてはあまりに素朴。だが、彼女であれば、仕事の忙しい自分にとやかくケチをつける事もなさそうだし都合がよい。と軽く決断したのだ。
それに彼女の家は財政難に見舞われていた為、両親は両手を挙げて喜び、フィリスを差し出した。
だから、ノアルファスとフィリスの結婚は、国王アレクの介入の元、政略結婚として簡単に整った。
そう······、フィリスの意思は全く聞かずに決まった結婚だった。
でも······、とノアルファスはその時の自分の気持ちを思い出す。
もしかすると、フィリスの意思を聞くのが怖かっただけなのかもしれない。
『こんな男、イヤだ』と、もし拒絶されたら、心が壊れてしまいそうで。契約結婚だ!なんて豪語し、自分への詮索や関与をしないように再三後押しをしてしまっただけかも。
だって、本当はどうだっただろうか?
アレクの側室候補者の中からフィリスを見つけた時、一瞬で目を奪われて、アレクに進言しに言ったのは自分なのに。
それを知られたくなくて、『この結婚は国王に言われたからだ』なんて······。
自分の心が弱いから、ほかに繋ぎとめておく方法もなく、最悪子供ができて母親になれば、この家に留まってくれるかもしれない。と淡い期待を抱いていたのも事実だったから······。
ノアは馬車の窓から雄大な景色を見つめた。
こんな所にフィリスを連れてきたら、両手を上げて走りまわりそうだ。
自由をこよなく愛する彼女なら、きっと喜ぶに違いない。
「いつか、連れてくるか······」
その時は子供も一緒か、とノアは想像を膨らませながら頬を緩める。
だが、そんな幸せな映像がノアの脳裏で流れたとき、彼の心は現実に引き戻された。
『そんな事が本当に起こるのだろうか?自分が契約結婚と言って突き付けた状況なのに?彼女はそんな俺との幸せな未来など、もはや望みはしないのではないか?』
しかし、国王アレクとの謁見での対談に疲れ、フィリスに家出をされているという心の重圧に耐えきれず、ノアはその思いに蓋をする。
「無駄な事は考える必要はないな······」
だが、想像は自由だ。
ノアは再び外の景色に視線を移すと、現実逃避をするように瞳を閉じた。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
3,381
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる