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28. それは、マズいのでは?!

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『公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!』感想について 
(https://www.alphapolis.co.jp/mypage/diary/view/220130)
近況ボードで一言+謝罪も含め添えております。
宜しければ今後本小説を読むか否かの参考にして下さい。よろしくお願い致します。

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「はあ、もう······どうしようね、?コレ、」

 溜息交じりにそう呟いたウィリアムはとりあえずノアを担ぎ上げると王城に向かった。
 宰相向けに今日の事件における内容を記した言伝を魔法で残しておく。これで、明日の朝一番で宰相が事の真相を突き止めるように動いてくれる筈だ。

 『カルロス伯爵には後ろ黒い噂が多々ある様だし。きっと証言人も多くいるだろうな』

 ウィルは落馬しない様に自分の馬にノアを括りつけると、自分もそこに跨った。
 そして馬の首を優しくなでる。

「ごめんね、重いよね。頑張ってくれるかい?」

 ブルルルッ、と馬が鳴いたのを肯定と取り、ウィリアムは括りつけられたノアと共に帰路についた。



「······ウィルっ!!」

 家の前に着けば、外に立って待っていたエレインが駆け寄ってくる。
 馬上から流れるように飛び降りて、ウィリアムはエレインを抱きしめた。

「遅くなってすまない。心配させたね?」
「本当にッ!本当に、心配したわ!!魔法で何かメッセージでもくれればいいのにっ······!死ぬほど心配したのだから!!」
「······エレイン」

 ウィリアムはエレインの頤に優しく触れる。
 二人が見つめ合って、ゆっくりと唇が触れ合った。
 甘い吐息が漏れて、エレインは自分の美しい夫を見ようと瞳を開ける。

 そして、視界の端に、今にも落ちそうな大男が馬に括りつけられているのを見つけた······───


「───······ヒィッ、イやあぁぁぁああ!」
「エ、エレイン!!?大丈夫かい!?」

「だ、だ、大丈夫ではないわ!え"?!な······、な、ナニ······アレ······。
 ウィル······誰かあやめてしまったの?そうなのね?!!どうしましょう······私達、もうこのギプロスにも居れなくなってしまうのね!?でも大丈夫······落ち着きなさい、エレイン!私は何があってもウィルと一緒にいると誓ったのだから、こんな、ヒト一人あやめてしまったくらいで動揺しては駄目ね······。騎士団団長の妻たるものッ」

「エ、エレイン!落ち着いて!!あれは死体じゃないんだよ!それに、ヒト一人だって動揺してもらわないと困るよ!?」
「······え?殺していない?」

「うん!意識を失っているだけなんだ。ただ、括り付けたからあんなズレ落ちているけど······。遅くなった理由も、彼をでね」

 ウィリアムが合図をだして呼べば、馬が近づいてきて、その人物の特徴がよく見えた。
 直後、エレインの瞳が驚きに見開かれていくのをウィリアムは見逃さなかった。

「······ノ、ノア君?!!」
「やっぱり、彼が現バルモント公爵かい?フィリスちゃんの旦那さん、なんだね?」
「え······ええ、そうね。でも何で······?」

 一先ず、とウィリアムはノアを担いで家に入れる。ソファに横たえて、エレインに事情を分かる範囲で話した。
 そして全てを話し終わった彼は、エレインを見つめて頭を下げる。

「······というわけで、家に連れてきてしまった。独断で、本当にごめんね。でもフィリスちゃんが寝ていて良かったよ」

 ウィリアムは時計を見る。時刻はもう深夜を回っていて、彼は堪えきれず漏れだした欠伸を噛み殺した。

「ノア君もそんな女の子にひっかかって薬を盛られるなんて……。私の教育不足の所為ね……もっと色々と言ってあげるべきだったのよね、きっと。
 ウィル、彼を救ってくれて本当にありがとう。継母とはいえ、本当に母親と思っているの。息子を助けてくれた御礼を言うわ。それに、もう今日は遅いし、先に寝ていて?ここは私が使用人となんとかするから」

「エレイン、君の所為ではないだろう?彼はもういい大人なんだ。自分で失敗して学ぶしかないもう方法はないと思うよ?それより······本当に任せても大丈夫かい?」

「ええ、大丈夫!私もすぐに寝るわ」
「分かった。おやすみ、エレイン」

 彼女の額にキスを落として、ウィルは寝室に上がっていく。
 それを見送って、ソファに横たわったまま微動だにしないノアを見下ろして、エレインは大きな溜息をついた。


「もう、本当に、······どうしましょうね、」


 エレインは直ぐにメイドを一人呼ぶ。
 小さなこの家にはメイドが二人しかいない。一人はまだ赤子の娘の世話をしているから、実質一人だ。
 エレインは、その貴重な一人をノアに当てなくてはならないという苦渋の決断をした。

「この人はこれでも、ロザリアの偉い方なの。”離れ”に寝かせて差し上げましょう。貴女は彼が目覚めるまで様子を見てあげて」
「はい、畏まりました」





 翌日、ウィリアムは目を擦りながらダイニングへと足を運んだ。
 キッチンにいるエレインを見て、すぐに駆け寄り後ろから抱きしめる。

「エレイン、おはよう」
「ウィル、おはよう」

 触れるだけのキスをして、ウィルはダイニングに腰掛ける。

「さて今日は何かな~?」と手作りの料理を待つウィルに、エレインは微笑んだ。

「本当に、ウィルは私の作る手料理が好きなのね?」
「うん!メイドが作るのも美味いけどね。エレインはから料理が得意だったでしょう?王女なのに自分でなんでも出来るなんて本当にすごいなと思っていたんだよね」

 ””、というのは、自分が王女で彼が護衛騎士だった時の事だ。
 護衛騎士の彼に振り向いて欲しくて、色々料理をしたり、刺繍をしたり花嫁修業には特別精を出して励んでいた事を思い出し、エレインは赤面した。

「あれ······、でも、そういえば」

 ウィリアムは家の中を見渡す。そして首を傾げた。

「ノア君は?まだ起きていない?薬を盛られたんだし、少し心配だな。どこの部屋で寝ているの?」
「······?ノア君なら、昨日の晩にメイド一人を宛がって、“離れ”に泊めているわ?」

 もうすぐ起きるのではないかしら?とエレインは時計を見た。

「え"っ?!ちょっとそれはマズくないかい?!······フィリスちゃんは?」

「フィリスちゃんは、お外に行ったわ?気分転換に行ってきますって」

「それは······”離れ”に行ったんじゃ······」
「え?確かに毎朝外には気分転換に行っているみたいだけれど。そんな毎日”離れ”に行くなんて事は······───」

 そしてエレインは茫然とするウィリアムの顔を見た。

「───······あるのね?」

「······ああ。エレインも知っている通り、僕はあそこの隣で毎朝鍛錬をしているけど、フィリスちゃんも毎朝あそこのウッドデッキに腰掛けて湖を見つめているんだ。それが日課なんだって」

「「······」」

 二人は暫し沈黙し、見つめ合った。
 そして同時に時計に視線を移す。

 ······ああ、今頃。
 二人は、運命の再会を果たしている時だろうか。と。
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