恋愛音痴による恋愛のすゝめ

ハリネズミ

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レッスン1-手をつなごうー

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 俺は大学のキャンパスにあるカフェでひとり、コーヒーを飲んでいた。

 実はあれから特に進展もなくそのまま解散になって一週間が過ぎていた。
 ライ〇もなければメールも電話もないし、直接会う事もなかった。

 あぁ、なんだからかわれたのか、と思った。
 あれだけそろったイケメンが俺に『恋愛』を教えて欲しいなんてなんの冗談だよって思ったけど、本当に冗談だったんだな。
 ほっと安心のため息が出た。その中にわずかばかりの違う感情が含まれていた事を本人も気づかないまま。

「せーんぱいっ」

 どーんっと重い衝撃の後、のしーっと大きなものが背後からのしかかってきた。
 飲んでいたコーヒーを思わず吹き出しそうになった。

「わっ?」

「先輩寂しかったです――!」

 俺の肩口に頭をぐりぐりこすりつけてくる。
 地味に痛い。
 や、本当痛いから、やめて?

「白井――やめ、止めろ! 重いし、痛い!」

 しゅんと肩を落としぶんぶん振っていたしっぽが垂れるのが見えた。
 それでも白井は背後から抱きしめるのは止めなかった。

「何なのお前?」

「何なのって僕たち付き合ってるんですよ? 一週間も会えなかったんですよ? 恋人としてこのくらいのスキンシップあってもいいと思うんです。くすん」

「えーあーいや? あのさ、フリだろう?」

「えぇフリですよ? でも僕に『恋愛』教えてくれるんでしょう? だったらこれはアリだと思うんですけど」

「アリ無しのジャッジって俺がするんだろう?」

「う――はい……」

「これは、無しだ」

 きっぱりはっきり言う俺の発言に、不満そうに俺を抱きしめる腕に力が籠る。

「白井、付き合ったフリを……あーもう面倒くさい。お互い分かってるから、付き合ってるって事でいいか。俺たちが付き合い始めたのは一週間前でお前はこの一週間姿をくらましてただろう? それでいきなり抱き着かれても相手おれは戸惑うだろうが」

「――はい……」

 俺の言葉に不承不承といった感じでそろそろと俺を解放した。

「それにだな、抱き着くよりまずは、て……て、手を、繋ぐとこからだろう?」

 何言ってんだ俺、恥ずかしい……! 少し裏返ってしまったのも恥ずかしい!
 白井は一瞬ぽかんとしてすぐに嬉しそうに笑った。
 ぶんぶんしっぽも健在だ。

「はい!」

 俺の隣りに座ると俺の指に自分の指を絡ませてきた。
 所謂恋人繋ぎというやつだ。俺でも存在は知っていた。クリスマスとかイベントシーズンにやたらとそういう繋ぎ方をする男女をみかけたからだ。

「なっ!」

「先輩と手繋ぎですー! へへ」

 手を繋ぐところからなんて自分で言った手前もあるし、あまりにも嬉しそうにするもんだから今更無しとは言えず、この恥ずかしい状況を受け入れることにした。
 白井は手を繋いだまま親指の腹でさすさすとさすってくる。その度に俺はなぜかぞくぞくとして下腹部に熱が集まる感じがした。

 とても居心地が悪く、それを誤魔化すように会話を始めた。

「――で、この一週間どうしてたんだよ?」

 俺の質問に白井は少しだけ言い淀んだように見えた。

「――――――お仕事ですー」

「仕事?」

「はいー。モデルを小さい頃からやってまして、時々集中的に忙しくなるんです。今回急だったので連絡もせずすみませんでした」

 ぺこりと頭を下げる。

「そっか。学業と両立は大変だろうけど、がんばれよ」

 なんとなく、繋いでない方の手で白井の頭をぽんぽんと撫でた。
 びっくりしたのか見開かれる白井のキラキラの瞳。

「あ、ごめ」

 急いで手を引っ込めようとする俺の手を白井は慌てて握って自分の頭の上に乗せ、頭を摺り寄せてきた。

「もっと撫でてください。僕がんばりました。先輩に撫でられるの好きです」

 俺の口からふっと笑いが零れた。
 再度白井を撫で始めると、白井は目を閉じてうっとりとしていた。




 キュン……。



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