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レッスン外ーあの日のキミー
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母親のミーハーな趣味で、オレは生まれた頃からモデルをやっている。
周りの大人も子どももオレの事を『まるで天使みたい』と言ってもてはやした。
家は金持ちだし、見た目にも自信があってオレ自身も天狗になっていた。そんな頃。
あれはオレが五歳の時だった。いつものように母親に手を引かれて撮影現場に入ると、ざわざわとしていて空気がいつもと違っていた。
「何かあったのかしら……? 由貴ちゃん、聞いてくるからちょっとここで待ってて」
「はい。ママ」
オレは大人しくその場で待っているように見せた。
少し心細そうな表情を作って。でも、誰からも声はかからなかった。
なんだよ! こっちはちゃんときてるのにおれさまをまたせるなんて!
十分程だったか、ようやく母親が戻ってきた。
「由貴ちゃんのお相手の子がお熱で来られなくなったんですって、それで急遽代わりの子を探してるって事なんだけど――」
「もう少し待てる?」と気づかわし気に聞いてくる。
子どもには今の十分でもすごく長い時間に感じられた。ここから更にどれだけ待たされるのか……。
内心では悪態をつきながら、オレはにっこり笑って「ボクまてるよ」と言った。
「えらいわねー」
母親はにこにこ顔で俺の頭を撫でた。
それから少しして現場に安堵の空気が流れた。
代わりの子がみつかったらしい。
オレはスタッフに連れられて来た子を見て言葉を失った。
――――――天使!
天使みたいじゃなくて、天使そのものだった。
キラキラと輝くサラサラの黒い髪。長い睫毛。大きな真っ黒な瞳。唇は小さく桜貝のようで。
その子の登場だけでオレの天狗の鼻はぽっきりと折れ、己の敗北を感じた。
同時に目の前の女の子に恋をしてしまった。
「由貴くんお待たせー。じゃあUTAちゃんとセットに入ってー、撮影するよー」
あの子はうたちゃんっていうのか。
オレはドキドキしながらうたちゃんとポーズをとった。
大きなクマのぬいぐるみを挟んでにっこり笑ったり、ほっぺをくっつけて笑ったり、様々なポーズをとった。
うたちゃんは急遽呼ばれただけで撮影の仕事は初めてだったらしいが、意外にも写真を撮られ慣れてるように思えた。
笑顔が本当に可愛くて、本当に天使で、オレの心臓はドキドキしっぱなしだし、初恋に舞い上がってしまっていた。
オレはつい出来心でうたちゃんの可愛らしい唇に自分の口をくっつけてしまった。
うたちゃんはびっくりした顔をして、次の瞬間オレは殴られていた。
「なにするんだ! おれは男だー!」
そう叫ぶとうたちゃんは目に一杯涙をためて、手の甲で自分の唇をごしごしと力任せに拭っていた。
俺の初恋は粉々に砕け散った。
周りの大人も子どももオレの事を『まるで天使みたい』と言ってもてはやした。
家は金持ちだし、見た目にも自信があってオレ自身も天狗になっていた。そんな頃。
あれはオレが五歳の時だった。いつものように母親に手を引かれて撮影現場に入ると、ざわざわとしていて空気がいつもと違っていた。
「何かあったのかしら……? 由貴ちゃん、聞いてくるからちょっとここで待ってて」
「はい。ママ」
オレは大人しくその場で待っているように見せた。
少し心細そうな表情を作って。でも、誰からも声はかからなかった。
なんだよ! こっちはちゃんときてるのにおれさまをまたせるなんて!
十分程だったか、ようやく母親が戻ってきた。
「由貴ちゃんのお相手の子がお熱で来られなくなったんですって、それで急遽代わりの子を探してるって事なんだけど――」
「もう少し待てる?」と気づかわし気に聞いてくる。
子どもには今の十分でもすごく長い時間に感じられた。ここから更にどれだけ待たされるのか……。
内心では悪態をつきながら、オレはにっこり笑って「ボクまてるよ」と言った。
「えらいわねー」
母親はにこにこ顔で俺の頭を撫でた。
それから少しして現場に安堵の空気が流れた。
代わりの子がみつかったらしい。
オレはスタッフに連れられて来た子を見て言葉を失った。
――――――天使!
天使みたいじゃなくて、天使そのものだった。
キラキラと輝くサラサラの黒い髪。長い睫毛。大きな真っ黒な瞳。唇は小さく桜貝のようで。
その子の登場だけでオレの天狗の鼻はぽっきりと折れ、己の敗北を感じた。
同時に目の前の女の子に恋をしてしまった。
「由貴くんお待たせー。じゃあUTAちゃんとセットに入ってー、撮影するよー」
あの子はうたちゃんっていうのか。
オレはドキドキしながらうたちゃんとポーズをとった。
大きなクマのぬいぐるみを挟んでにっこり笑ったり、ほっぺをくっつけて笑ったり、様々なポーズをとった。
うたちゃんは急遽呼ばれただけで撮影の仕事は初めてだったらしいが、意外にも写真を撮られ慣れてるように思えた。
笑顔が本当に可愛くて、本当に天使で、オレの心臓はドキドキしっぱなしだし、初恋に舞い上がってしまっていた。
オレはつい出来心でうたちゃんの可愛らしい唇に自分の口をくっつけてしまった。
うたちゃんはびっくりした顔をして、次の瞬間オレは殴られていた。
「なにするんだ! おれは男だー!」
そう叫ぶとうたちゃんは目に一杯涙をためて、手の甲で自分の唇をごしごしと力任せに拭っていた。
俺の初恋は粉々に砕け散った。
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