蒼き竜の伝承者

エルドラン王国の最北端に位置する風の谷は、まるで世界の果てのような静寂に包まれていた。
アルト・ウィンドブレイカーは、十六歳になったばかりの青年だった。
風の谷の北側には「禁足の森」と呼ばれる深い森が広がっている。村の長老たちは、その森には古い魔法の痕跡が残っており、危険だと言い伝えていた。
昼寝から、ふと目を覚ますと、シロが心配そうに彼の顔を覗き込んでいた。

「どうしたんだ、シロ?」
シロは森の方角を向いて、小さく唸り声を上げている。
 アルトが視線を向けると、禁足の森の入り口あたりで、何かが光っているのが見えた。
アルトは首をかしげながら、光の方向へと歩を進めた。
 シロも警戒しながらも、彼についてくる。
 やがて、木々の間から古い石の遺跡が見えてきた。それは苔に覆われた円形の台座で、その中央で青い光が輝いていた。

 そして、その光の中に...

「あれは...」

 アルトは息を呑んだ。
 そこには、手のひらほどの大きさの、美しい蒼い鱗を持つ小さな生き物がいた。
 それは翼を持ち、細長い首と尻尾を持つ...竜だった。
 小さな竜は傷を負っているようで、片翼を痛々しそうに引きずっている。その瞳には苦痛と、そして助けを求める光が宿っていた。

「竜...本当に竜がいるんだ」

この竜との出会いから始まる物語
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