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ようやく全員が席についてしばらくは団欒が続いていた。
こうして大勢でする他愛もない話は意外と久しぶりのようで、何だかんだバタバタと忙しなく過ぎる時間。それでもまだ出会って間もないのだから随分と濃い冬だ。
「赤羽さんも特別講師ですか?」
「ん?そうですね。氷怜さん達と同じですよ」
「こいつ俺達のスケジュールで動いてるからな」
「面白いものが見れますので」
所謂、予測不能な事が赤羽さんの生きる糧なんだろう。今日はタブレットが見当たらないけどカバンの中に入っているのだろうか。
「うわ、こんな時間かよ……あーあー俺はこれから会議だからとっととお前ら帰れ」
1時間くらい居たところでぴよちゃんが立ち上がるとしっしと払われる。不満げな声をあげてみても、ありえない力でバンバン廊下に出されてしまう流石の腕力で外に出される。部屋は暖房が効いていたけど当然廊下は寒い。
「さんむ!」
「あのさーー」
瑠衣先輩が寒がって縮こまるおれにぶら下がって猫なで声でお腹すいたーと子供みたいに言う。今日の髪型襟足が外ハネのせいで余計可愛いんだな。
それにおれも同意。頭使ったらお腹すくんだ。
「ねぇ~、たまには食べに行こーよー」
「そういえば最近クラブか家だね……良いよ、この前良いところ見つけたんだよね。みんな辛いもの平気だっけ?」
「いけます!」
秋と優とおれ同時にぶんっと頷いた。
暮刃先輩はコートに袖を通しながらおちゃめなウインク。
「四川料理、パフォーマンスもしてくれるから暇つぶしになるよ」
「わーい!」
「バンザーイ!」
喜んだのはおれなのに瑠衣先輩によって勝手にバンザイをされる。でもそれくらい嬉しいのでされるがままできゃっきゃと騒ぐ。
「パフォーマンスってカンフーとかですか?」
「うん、色々と」
「楽しみ……」
秋と優はどちらかと言えばパフォーマンスに興味があるようで目をキラキラさせていた。クスリと笑った暮刃先輩が2人の頭を撫でる。
「あの俺は、やめておきます……辛いのが」
その横で絶望する桃花に暮刃先輩が笑って辛くないのもあるからおいでと優しくフォローした。
桃花辛いのダメだったの?何でこう可愛いかねと動きそうになる口をつぐんだ。褒め言葉なんだけどむくれる事を流石に学んだ。
忘れ物すんなよーと鍵をかけながらぴよちゃんが羨ましいと嘆く。
「学生はお気楽だ」
「郷」
ドアの施錠を確認したぴよちゃんの横に近づいた氷怜先輩が唐突に名前を呼ぶ。氷怜先輩の雰囲気を悟ったのかぴよちゃんが身体を向き直した。
「榊李恩知ってるか」
その名前を聞くと、もやっとするのは仕方がない事だがその不機嫌さを顔に出すまえに相手が驚いた顔をした。
「榊?まさか会ったのか?……懐かしいな、陰険そうな奴だろ」
「え、ぴよちゃん知ってるの?」
おれが反応した事により、今度はぴよちゃんが反応すると今までと全く違う重いオーラ。まるで氷怜先輩のような低い声。やっぱり似てる、怒りの表現が似てるんだ。
「おい……氷怜、何で巻き込んでんだこいつら」
「……そうだな」
ふいにした悔しそうな顔を今まで見せなかったのは隠していたせいだろうか。優しいこの人は気を使っていたのだろうか。どちらにせよ氷怜先輩にこんな顔させてるのはおれだ。
それに先輩達はいつも遠ざけようとしてくれていたのだから。
「巻き込まれてないよ」
「お前は黙ってろ高瀬」
「巻き込まれてない。それに、おれはあの人に先輩達がどれだけ良い人か次会ったら教えるんだから」
何も答えなかった氷怜先輩の黒い目が見開いた。
ぴよちゃんのシャツの袖を掴んだ事により視線がおれに向き、おれの言葉が頭に入って理解して、その結果受け入れ不可と判断したようだ。
赤羽さんだけが笑みを深める。
「…………はあ?」
「そう、おれちゃんとレクチャーの段取りまで決めたんだから。次会ったら絶対講義するの。あの人の凝り固まった概念をこう」
「待て待て、何言ってんだ」
顔を片手で覆ったぴよちゃんがだからこいつはと唸りだした。
「言い出したら聞かないっすよ。それに今回は俺も賛同」
「残念ながら俺も」
秋も優も手を挙げて、宣誓のように声を上げる。むっとしているだけじゃ始まらない。おれたちが得意な会話で覆して見せるのだ。にっと笑ったおれたちの横で桃花も仕方なさそうに笑って同じく手を挙げた。
「じゃあ、俺もです」
桃花のそういうところが本当に好きだ。
ようやく外した手からのぞいた瞳はもう怒っていない半ば諦めたように先輩達を見ると眉間にシワを寄せた。
「にやけてんじゃねェよ」
ぴよちゃんの言葉にその視線を辿ったが先輩達の顔はいつも通り綺麗で最高に美形でなんら変わりなかった。
それでも一言、綺麗に揃ってこう言うのだ。
「最高だろ」
その言葉そのままお返しします。
こうして大勢でする他愛もない話は意外と久しぶりのようで、何だかんだバタバタと忙しなく過ぎる時間。それでもまだ出会って間もないのだから随分と濃い冬だ。
「赤羽さんも特別講師ですか?」
「ん?そうですね。氷怜さん達と同じですよ」
「こいつ俺達のスケジュールで動いてるからな」
「面白いものが見れますので」
所謂、予測不能な事が赤羽さんの生きる糧なんだろう。今日はタブレットが見当たらないけどカバンの中に入っているのだろうか。
「うわ、こんな時間かよ……あーあー俺はこれから会議だからとっととお前ら帰れ」
1時間くらい居たところでぴよちゃんが立ち上がるとしっしと払われる。不満げな声をあげてみても、ありえない力でバンバン廊下に出されてしまう流石の腕力で外に出される。部屋は暖房が効いていたけど当然廊下は寒い。
「さんむ!」
「あのさーー」
瑠衣先輩が寒がって縮こまるおれにぶら下がって猫なで声でお腹すいたーと子供みたいに言う。今日の髪型襟足が外ハネのせいで余計可愛いんだな。
それにおれも同意。頭使ったらお腹すくんだ。
「ねぇ~、たまには食べに行こーよー」
「そういえば最近クラブか家だね……良いよ、この前良いところ見つけたんだよね。みんな辛いもの平気だっけ?」
「いけます!」
秋と優とおれ同時にぶんっと頷いた。
暮刃先輩はコートに袖を通しながらおちゃめなウインク。
「四川料理、パフォーマンスもしてくれるから暇つぶしになるよ」
「わーい!」
「バンザーイ!」
喜んだのはおれなのに瑠衣先輩によって勝手にバンザイをされる。でもそれくらい嬉しいのでされるがままできゃっきゃと騒ぐ。
「パフォーマンスってカンフーとかですか?」
「うん、色々と」
「楽しみ……」
秋と優はどちらかと言えばパフォーマンスに興味があるようで目をキラキラさせていた。クスリと笑った暮刃先輩が2人の頭を撫でる。
「あの俺は、やめておきます……辛いのが」
その横で絶望する桃花に暮刃先輩が笑って辛くないのもあるからおいでと優しくフォローした。
桃花辛いのダメだったの?何でこう可愛いかねと動きそうになる口をつぐんだ。褒め言葉なんだけどむくれる事を流石に学んだ。
忘れ物すんなよーと鍵をかけながらぴよちゃんが羨ましいと嘆く。
「学生はお気楽だ」
「郷」
ドアの施錠を確認したぴよちゃんの横に近づいた氷怜先輩が唐突に名前を呼ぶ。氷怜先輩の雰囲気を悟ったのかぴよちゃんが身体を向き直した。
「榊李恩知ってるか」
その名前を聞くと、もやっとするのは仕方がない事だがその不機嫌さを顔に出すまえに相手が驚いた顔をした。
「榊?まさか会ったのか?……懐かしいな、陰険そうな奴だろ」
「え、ぴよちゃん知ってるの?」
おれが反応した事により、今度はぴよちゃんが反応すると今までと全く違う重いオーラ。まるで氷怜先輩のような低い声。やっぱり似てる、怒りの表現が似てるんだ。
「おい……氷怜、何で巻き込んでんだこいつら」
「……そうだな」
ふいにした悔しそうな顔を今まで見せなかったのは隠していたせいだろうか。優しいこの人は気を使っていたのだろうか。どちらにせよ氷怜先輩にこんな顔させてるのはおれだ。
それに先輩達はいつも遠ざけようとしてくれていたのだから。
「巻き込まれてないよ」
「お前は黙ってろ高瀬」
「巻き込まれてない。それに、おれはあの人に先輩達がどれだけ良い人か次会ったら教えるんだから」
何も答えなかった氷怜先輩の黒い目が見開いた。
ぴよちゃんのシャツの袖を掴んだ事により視線がおれに向き、おれの言葉が頭に入って理解して、その結果受け入れ不可と判断したようだ。
赤羽さんだけが笑みを深める。
「…………はあ?」
「そう、おれちゃんとレクチャーの段取りまで決めたんだから。次会ったら絶対講義するの。あの人の凝り固まった概念をこう」
「待て待て、何言ってんだ」
顔を片手で覆ったぴよちゃんがだからこいつはと唸りだした。
「言い出したら聞かないっすよ。それに今回は俺も賛同」
「残念ながら俺も」
秋も優も手を挙げて、宣誓のように声を上げる。むっとしているだけじゃ始まらない。おれたちが得意な会話で覆して見せるのだ。にっと笑ったおれたちの横で桃花も仕方なさそうに笑って同じく手を挙げた。
「じゃあ、俺もです」
桃花のそういうところが本当に好きだ。
ようやく外した手からのぞいた瞳はもう怒っていない半ば諦めたように先輩達を見ると眉間にシワを寄せた。
「にやけてんじゃねェよ」
ぴよちゃんの言葉にその視線を辿ったが先輩達の顔はいつも通り綺麗で最高に美形でなんら変わりなかった。
それでも一言、綺麗に揃ってこう言うのだ。
「最高だろ」
その言葉そのままお返しします。
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